Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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ちょっと汚いネタが入ります。


第六十七話 第188交易所、ベロニカ

 

 

 

 

 

 夜。

簡易ベッドの上で私は夜空を見上げていた。

深い深い闇の中に、煌びやかな星たちが浮かんでいる。

いつか中東で見た夜空も同じだった。

どれだけ離れていようとも、星空は変わらない。

 

お兄ちゃんは今、何をしているのだろう。

詩人たちは、どれだけ離れていても空の下で繋がっていると言う。

でも、世界ごと離れてしまった私はどうだろうか。

あの厳しいけれど優しい兄、そしてその仲間たちと私は繋がっているのだろうか。

 

考えるだけ無駄だった。

無駄だと思いたくないけれど、それは無駄な事なのだ。

 

過去を振り返るのもいい。

だが、今を生きることはそれよりも重要だ。

明日生きているかどうかすら分からない。

 

 

「はぁ……」

 

 

疲れたように溜息をつく。

なんだかナーバスになってしまった。

抱き枕代わりのED-Eを強く締め付ける。

スリープ状態の彼は何も言わない。

 

ブーンも今は寝ている。

ライフルを手元に置いて、いつでも戦闘が出来る状態にある。

 

私ももう寝よう。

そう思い、目を閉じる。

 

暗闇という空間は、感覚が最も研ぎ澄まされる。

ただでさえ夜は暗いが、それでも月明りやまだ起きている者達の光で多少なりとも明かりはあるのだ。

 

それも、目を閉じてしまえば関係ない。

沈み込むように闇に溶け、意識を夢の中へと潜らせようとする。

 

手足の感覚が冴えわたる。

この瞬間が好きだった。

普段気が付かないような自分の身体の変調を確認できるからだ。

 

なんだか最近胸のあたりがきつくなってきた。

順調に成長しているのだろうか。それは嬉しい事だ。

 

 

「……?」

 

 

ふと、右手に何かが触れる。

最初は石か何かが当たったのだと思った。

 

だが、それにしては柔らかい。

なんだろうか、気配はないから誰かが狙ってきたとかそう言うのではない。

そもそもブーンがいるのに私一人を狙いに来ることなどしない。

 

 

目を開ける。

 

開けて、目がなじむまで、右手のあたりをじっと見る。

 

慣れてきた頃、何かがそこにあった。

 

ボロボロの布きれが右手に被さっている……こんなものあっただろうか?

 

 

「……?」

 

 

それを払うようにして右手を動かそうとした瞬間、

 

 

ガシッ。

 

 

布切れから女性の顔が出てきて、そいつが私の腕を掴んだのだ。

 

 

「ッ!!!???」

 

 

驚いて声が出なかった。

幽霊とかそう言うのは科学的根拠がないから信じていなかったが、昔からそういった話は苦手だったのだ。

 

びくっと体をビクつかせ、そのまま左腕を動かしてその女を殴ろうとする。

 

が、

それも女が突然覆いかぶさった事によってできなくなる。

マウントされてしまったのだ。

ED-Eもいつの間にか身体の横に置かれている。

 

胸のあたりからまたがられてしまっては手は動かない。

膝蹴りを繰り出そうとしたが、それも女が前屈みになってしまったために不発に終わってしまった。

それでもめげずに数発膝蹴りを入れるが、まるで効いていない。

 

 

声を出そうとした。

 

 

「だぁ~め♡」

 

 

口を手で塞がれる。

この女、明らかに格闘になれている。

 

 

「~~~~!!!!!!」

 

 

必死にもがいて声を出そうとするが出来ない。

女は別に殺しにかかるでもなく、凶暴な笑みで私の顔をじっと見ていた。

 

しばらく眺めて女の顔が私の顔に近づく。

整った顔をしているが、今はそんな事どうでもいい、こいつはヤバい。

 

 

「可愛いわね……名前は?」

 

 

唐突に名前を聞かれるが、口がふさがれているので何も言えない。

 

と、女が静かに、っというようなジェスチャーをした後、口から手を離した。

万が一の事を考え、私は叫ばなかった。

 

 

「えらいえらい、叫ばないんだ」

 

 

小声で囁くように言う女。

言葉には愛情が篭っているが、どこか歪だ。

 

彼女は私の頬を撫でる。

それが妙に優しすぎて気持ち悪い。

 

 

「名前は?」

 

 

「……クロエ」

 

 

「んふ、可愛いわ、食べちゃいたい」

 

 

ゾクッとした。

この女は食人鬼なのだろうか。

いや、それならもう殺しているはずだ。ならば……

 

あっ(察し)

 

 

「お姉さんあなたに一目惚れしちゃった。ねぇ……いいでしょ?」

 

 

「な、なにがですか?」

 

 

その問いに女はにっこり笑う。

 

 

「えっちして?」

 

 

「嫌です」

 

 

「なんで?」

 

 

回答を拒否すると殺意を含んだ目をこちらに向ける。

どう考えても頭がおかしい。

 

 

「私……そっちの趣味はないですから」

 

 

「大丈夫、私が優しく教えてあげるから、ね?」

 

 

何が大丈夫なのだろうか。

どう考えても駄目だろう。

 

 


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