Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第六章 They Went That-a-Way 2
第六十六話 第188交易所、妄想女


 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、キャンプ・フォーロンホープから北の道。

 

 

私とブーン、そしてED-Eのパーティーは、キャンプ・フォーロンホープを離れ、第188交易所へと向かっていた。

 

今は昼まで、突き刺すような陽の光が厳しい。

Pip-boyで交易所の位置と現在地を確認しながら進んでいく。どうやら今見えている丘陵を越えた先に現在の目的地である第188交易所があるようだ。

 

 

「これならお昼ご飯はあそこで食べられそうね」

 

 

私がそう呟くと、すぐ後ろのブーンは相槌を打った。

その相槌も、どこかよそよそしい。

元々彼は積極的に喋る方ではないが、それでも私には分かってしまう。

何か彼は恐れているようだった。

 

原因は……探るまでもない。

恐らく昨日の、ネルソンでの出来事が原因だろう。

 

 

あの時、扉が蹴り破られたあと。

私は意識を失っていた。

気が付けば私はブーンやヘイズ中尉達に必死に押さえつけられていて、すぐ目の前には原型を留めていないリージョン兵の死体が転がっていたのだ。

 

ヘイズ中尉曰く、私が蹴り飛ばされた直後に異変が起きたらしい。

 

まず、家屋からリージョン兵たちの指揮官であるデッドシーとその部下が飛び出して来た。

中尉達は取っ組み合いになり、危うく殺されるところだったらしい。

そんな時、私がものすごい勢いで彼らの間に割って入り、拳銃とナイフでもってリージョン兵たちを瞬間的に倒したのだそうだ。

 

それだけならまぁ、よくあるっちゃよくある光景だが、騒ぎはそれで収まらなかった。

 

 

命乞いするデッドシーに対し、私は殺さない程度に拳銃を撃ちこみ、それから……

 

それから、ナイフで彼の指や耳を切り落としていった、らしい。

 

 

らしい、というのは、私にその記憶がないから、つまりは覚えていないのだ。

 

 

淡々と彼らを切り刻む私に異変を感じたヘイズ中尉とブーンが止めに入ったらしいが、それを尋常ではない力で振りほどいてまで私は拷問を続けたらしい。

 

結局私の拷問が止まる頃には、デッドシーどころかその部下も死亡、ブーンとヘイズ分隊全員が総出になって私を押さえつけたらしい。

 

 

それは彼もよそよそしくなる。

ついでに言えば、それを空から見ていたED-Eもどこか恐れた様なリアクションを取る。

 

 

「ED-E」

 

 

ふと、彼を呼んでみる。

 

 

「Beeee!?」

 

 

驚いたようにこちらへ振り向くED-E。ちょっと傷つく。

こっちに来てからずっと一緒だったED-Eにさえもそんなリアクションを取られ、私の機嫌はかなり悪かった。

 

ぷくっと頬を膨らませ、顔をしかめると立ち止まって大声で叫ぶ。

 

 

「……ばかっ。みんな大っ嫌い、ばーかっ!」

 

 

「おいなんだ急に……」

 

 

それだけ告げると私は見えて来た第188交易所へと駆け出す。

すべてを忘れるように全力疾走する私の後ろ姿を、ブーンとED-Eは黙って追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第188交易所。

戦前は恐らくただの交差点だったこの場所は、200年経った今では交易所として栄えている。栄えていると言っても、寄せ集めの商人や通行人がこの場所で一時的に休息をとったりトレードしたりしているだけなので、立派な建物やそれらしい店はありはしない。

唯一ここに固定している店もちょっとした軽食屋さん程度のものだ。

 

しかしこの場所は南には95号道路、東西には93号線が走っていて、モハビの主要な場所へと向かう際には必ず通らなくてはならない場所でもあるのだ。

それ故、普段は見かけないような武器商人と言った人種も多く、何かとNCRはこの場所を重要視している。現に、ここはNCRの休憩地点としても知られており、さっきから疲れた顔をしたNCR兵たちがベンチや簡易ベッドに腰かけてボーっとしている。

 

 

軽食屋さんで昼食を取る。

どうやら厳密には軽食屋さんではないらしく、その名を188スロップ&ショップというらしい。

店員は二人の親子がやっていて、娘は愛想が良いが父親は仏頂面で装備の修理などに勤しんでいた。

 

 

ベンチに座り、焼きトウモロコシを食べる。

トウモロコシの甘さと歯ごたえが素晴らしい。

 

 

「なぁ、そう怒るなよ」

 

 

「Beep、Beep」

 

 

その横に座るブーンとED-Eが、サンドイッチを頬張りながら言った。

もちろん、サンドイッチを食べているのはブーンで、ED-Eは彼の膝上で便乗する様に鳴いている。

 

 

「……そんなに私が恐いかしら」

 

 

「少なくとも、リージョンの奴らよりはおっかなかった」

 

 

「……正直すぎてむかつくわ」

 

 

反省する気の無いブーン。

心なしか、いつもより彼は明るい気がする。

私を傷つけてしまったことに、多少なりとも罪悪感でもあるのだろうか。

だとしたら、意外と彼は面倒見がいい気がする。

 

まぁ、こちらとしてもいつものように無口でひたすら謝られても困るのだけれど。

 

 

「ふん、心の広い私は許すことにするわ。ED-E、こっちに来なさい」

 

 

「Beep」

 

 

ポンポン、と私が膝を叩くと、ED-Eは男の硬い膝よりも、乙女の柔らかい太ももを選んだ。

まあ、あの時の私もどうかしていたから、これでチャラにしよう。

 

 

「今後はどうするんだ。ボルダーシティに向かうんだろう?」

 

 

ふと、ブーンが尋ねてきた。

 

 

「そうね。とりあえず一晩ここで休んでから……もちろん補給もするわよ。情報を集めてボルダーシティへ向かうわよ」

 

 

ブーンは了承し、きれいな水を一口飲んだ。

さすがに昼間から酒は飲まない常識人であるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 

 《彼女》は、スロップ&ショップの傍にあるベンチにて、その少女を眺めていた。

眺めると言っても、被っているボロボロのフードから、ばれない程度にチラ見するぐらいだが、それでも彼女としては品定めする様にじっと少女を見つめていた。

 

スレンダーで、ショートカットというには長くて美しい銀髪。

肌は若さゆえの潤いときめ細かさを保っており、見る者の下心を鷲掴みにするだろう。

こんなに暑いモハビ・ウェイストランドにおいてあの肌の白さはいったいどういう事か。

黒いレザーアーマーはそんな彼女の天使のような白さを強調しているようだ。あのアーマーのぴっちり具合も、意外と彼女がメリハリのある身体をしている事を表していてエロイ。

ボロボロのポンチョで上半身は隠れてしまっているが、後ろからわずかに見える尻が、逆に劣情を湧きたてていた。

 

隣りの男と彼女の膝の上に居座るエンクレイブ製アイボットがクッソ邪魔で目障りだが、彼女の仲間だろうか。

あのアイボットを分解して構造を調べてみたいという科学者の心と、あの少女と一晩甘い一時を過ごしてみたいという野獣の心は、今のところ拮抗すらもしていない。

 

 

つまるところ、少女をチラ見している変態女……ベロニカは、同性愛者だった。

 

 

想像する。

あの少女との一時を、自身の持てる力を総動員させて。

 

 

以下、変態の妄想。

 

 

 

 『ほら、可愛い子ちゃん、私にすべてを委ねなさいな』

 

 

 真っ白なベッドに、純白のシーツ、そしてそれに包まっている生まれたばかりの姿の少女。

雪のように白い彼女の頬は、恥ずかしさで赤く染まっていた。

 

困ったように上目遣いでこちらを見てくる彼女は、まるで小動物みたいに愛らしい。

ベロニカは年上の余裕を見せつけるかのように不敵に笑い、舌なめずりすると、四つん這いになって彼女に迫った。

 

もちろん、服など身に着けていない。

 

 

『いや……恥ずかしい……』

 

 

小さな声で呟く少女に、きゅんっと心が締め付けられる。

なんだこの愛らしい女の子は。もうめちゃくちゃにしてあげたい。

 

 

『お姉さんに全部見せて……あなたの……すべてを……』

 

 

『あぁ、だめよ!』

 

 

『いいじゃないのえへへへへへへ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはぁああああああああッ!!!!!!いいわぁ、超可愛い!んおぉおおおお」

 

 

一人叫ぶ変態女。

通りがかった数人が彼女の奇声に驚いて振り返る。

 

 

「何見てんだこの野郎、ぶち殺すぞコラァッ!!!!!!」

 

 

すぐさま視線に気が付いたベロニカは、通行人に対して罵声を吐いた。

気を取り直して少女を眺める作業に戻る。が、すでに彼女は居ない。

 

慌てて辺りを見回すと、少女とその仲間たちは橋の下に居座っているガンランナーと何やら話し込んでいた。

 

 

「……」

 

 

にやりと、獣のような視線と笑みを浮かべながら彼女を見る。

その姿はもはや人ではない。性欲をさらけ出した、醜い野獣だった。

 

決めた。

今夜、彼女を大人にして差し上げよう。

餓えた獣は、邪悪な感情を、最も向けてはならない者に向けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何やら嫌な視線を感じ、私は急いで先ほどのベンチから離れた。

視線の主は、少し離れた場所でベンチに座っていた女性。

フードを被っていたために顔や性別は確認できなかったが、身体つきからして女性だろう。

 

感じたのは敵意ではない。

それよりも、もっとおぞましくて、醜い何か……

まるで、ゲスな男が私を品定めするようなものだった。

 

 

「……気持ち悪っ」

 

 

別に性に対する姿勢は人それぞれだし、差別するほど安っぽい人生は送っていない。

だが、それを向けられるとなれば話は別だ。

鳥肌が立って震えが止まらなかった。

感性や動物的勘が優れていると、こういった事になる……

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

珍しくブーンが心配しているが、私は頷くだけ。

正直大丈夫ではないので、とっととここで武器弾薬を調達しよう。

 

……一晩、ここで過ごすのかぁ。

 

 

 




レズはホモ

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