Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第六十二話 ネルソン、襲撃3

 

 

 

 

 

 

 

 制圧した監視台から、こっそりネルソンの状況を確認する。

結論から言ってみれば、現時点でこの町を落とすのは比較的容易だろうだろう。

 

まだ日が昇って早い時間、起きている兵士は最低限だ。

ここの指揮官であるデッドシーとかいうデカヌスもまだ目覚めてはいないようだし、普段なら高水準の指揮系統も効果は薄い。

 

 

「ブーン、レディ」

 

 

「あぁ」

 

 

双眼鏡片手に私が命令すると、ブーンは狙撃の準備に取り掛かる。

準備といってもいつでも撃てるようにしろというだけなので、弾薬を装填してスコープの調整をするだけだ。

ネルソンという町はそこまで大きくはなく、狙撃という環境にはあまり向いてはいないのだが、彼曰く慣れ親しんだライフルならば関係ないとの事。

 

ちなみにED-Eは現在上空から町を監視している。

なにか不穏な動きがあれば、彼がPip-boyに知らせてくれるだろう。

 

 

「……あれは」

 

 

ふと、町の中心に位置する広場を覗く。

そこには簡易的な十字架と、それに磔にされたNCRの兵士が。

彼らは総じて外傷を負っており、酷く衰弱しているがまだ息はあるようだ……

捕虜にもこの仕打ちとは。

リージョンが野蛮だと言われるのも納得してしまう。

 

ブーンも私の横からこそこそとスコープを覗く。

 

 

「いいか運び屋、リージョンの虫けら共は捕虜らしい捕虜を捕らない。奴らに捕まるということは死を意味するぞ」

 

 

「その前に殺してしまえば厄介ごとも減るわ」

 

 

「……そう言う所、嫌いじゃないぞ」

 

 

デレたようにブーンが言った。

何かしら、たまにこのスナイパーが可愛く思えてしまう。

おっさんを可愛いと思うなんて、ちょっと放射能浴び過ぎかしら……

 

おっといけない、もうそろそろ時間だ。

私はNCRに借りた無線機をポーチから取り出すと、周波数を合わせた。

 

 

「こちら運び屋。中尉、聞こえるかしら?」

 

 

しばらくして、ノイズの中から聞き慣れた声が混じる。

 

 

『聞こえるぞ、運び屋。状況を知らせろ、オーバー』

 

 

「北側の監視台を制圧。いつでもいいわ、オーバー」

 

 

『確認した。そちらからこっちを確認できるか?オーバー』

 

 

言われて、私は双眼鏡で町の入り口のさらに奥を覗き見る。

少し探すのに手間取ったが、ヘイズ中尉がこちらを眺めているのが見えた。

町の西、入口よりさらに50メートル奥の岩陰だ。

あそこなら町よりも標高がやや高いから見つからないだろう。

 

 

「視認したわ」

 

 

良い笑顔ね、軍曹。

 

 

『よし、今から攻撃を仕掛ける。町の中央に捕虜が居るため、出来る限り注意されたし。アウト』

 

 

通信が切れ、無線機をポーチへとしまう。

私はバーミンターライフルをPip-boyから取り出すと、チャンバーに弾薬を装填する。

ショットガンを使ってもいいが、ここ最近撃ちすぎてシェルが少ないためになるべく節約したいのだ。

それに、これだけ距離があるとスラッグ弾でなければ有効打を得られないだろう。

 

 

「今から攻撃隊が行動するわ。もう一度確認するけど、私たちの任務は彼らの援護と寄ってくる敵の排除よ」

 

 

「分かってる。奴らに部隊はやらせん」 

 

 

「頼もしいわね」

 

 

同じ個所で、しかも二人で狙撃というのはあまり推奨されないが、今回の任務はあくまで支援。

バックアップなのだ。だから、注意自体は攻撃隊に向く。

それに襲撃で正常な判断なんてできないだろうから私達に気が付く奴らは少ないだろう。

 

さて、中尉の腕の見せ所ね。

 

 


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