Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第五十七話 キャンプ・フォーロンホープへ、カウンター

 

 

 

 

 Pip-boyのGPSを確認してみる。

今私達がいるのがヘリオス1から500メートル離れた地点で、砂漠の入り口だ。

トラッキングマーカーが示しているのは、現地点から南東に約500メートル程度。

これならお昼にはキャンプ・フォーロンホープへ荷物を届けることができるだろう……

もちろん、量にもよるが。

 

Pip-boyとED-Eの四次元スペースの積載量を考えれば、バラモン一匹が運んでいた量ぐらいは何とかなる。

 

だが、今の問題はそんな単純なことではなかった。

 

 

「……きな臭いな」

 

 

「やっぱりそう思うかしら」

 

 

ブーンの発言に同意する。

それはそうだ、突然砂漠の真ん中で行方不明になるなんてこと、土地勘がある人間ならあり得ない。

それにこの砂漠はサウジアラビアやエジプトみたいに広大ではない。

3時間も歩けば脱出できる程度のものなのだ。

いくらこの時代の野生動物が危険だと言っても、武装した兵士がそう簡単にくたばるわけがない。もちろんデスクローやスーパーミュータントは除く。

 

加えて昨日のリージョン兵による襲撃。

経験が豊富な私達ですら一歩間違えればやられてもおかしくはなかった。

 

もしかすると、最悪の状況が起こったのかもしれない。

 

 

「残り200メートル……」

 

 

考え事をしているうちに、目的地のマーカーまでわずかの距離となっていた。

この砂漠は無駄に高低差があるため、天気が良くても見晴らしが利かない。

だから、仮に待ち伏せされていても索敵が難しいのだ……普通なら。

 

 

「ED-E、出番よ」

 

 

でも、私にはこの可愛いロボットがいる。

 

 

「Beep!」

 

 

仕事を与えられ、上空へと上がるED-E。

何も命令されずとも考えている事を実行してくれるというのは実に賢い。

きっと成長しているのだろう。

 

しばらくその地点で待つと、ED-Eからの情報がPip-boyに送られてくる。

やっぱり。

マーカー地点にはNCR兵とバラモンの死体。

そしてその周辺を囲むように、リージョン兵が砂に紛れている……ED-Eの赤外線探知からは逃れられない。

 

ED-Eに戻ってくるように伝えると、私は背負っていたハンティングショットガンを手前へ手繰り寄せる。

 

 

「やられっ放しは性に合わないわね」

 

 

言いつつ、マガジンチューブ内にショットシェルを詰めていく。

この砂漠では交戦距離が一律とは言えないため(もちろんどこの戦場でも同じことが言えるがこういった砂漠は特に)、使用するのはスラッグ弾。

これなら100メートルまでなら十分対応できるし威力も高い。

バーミンターライフルは使いやすいが、.22口径のボルトアクションということで対人向けとはいかないのだ。

 

 

「同感だ」

 

 

多少口元をニヤケさせると、ブーンはライフルのボルトを少し引いて弾薬が装填されている事を確かめる。

ようし、旧ローマのコスプレ集団に昨日の借りを返させてもらおうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……デカヌス、我々はいつまでここに潜めば?」

 

 

ふと、砂の中に潜んでいるリージョン兵が言った。

潜むと言っても、戦前の人たちが夏のビーチで砂に埋まって遊んでいるよりも深くはない。

起き上がろうとすれば簡単に起き上がれるレベルだ。

 

 

「黙れ、お前の声でNCRにばれたらどうする!」

 

 

砂に埋もれたリージョン兵達を束ねるデカヌスと呼ばれる位の兵士が怒鳴った。

むしろお前の声の方がデカい、と言わんばかりにリージョン兵達の顔が歪む。

もちろんマスクをしているから表情で察することなどできないのだが。

 

彼らはもう1週間もこんな状態で待ち伏せしていた。

食料を食べる時だけは上半身だけ起こし、用を足す時には砂の中を這ってなるべく遠くまで行ってから砂の中でする……

ずっと這っているため、体中が痛い。

 

それでもこんな事をしなきゃならないのは、このアホな上官のせいだ。

いや仮にもデカヌスなのだから頭が悪いわけではないのだろうが、いかんせん小さい手柄に固執しすぎる。

そのせいで何度も彼らはバカを見ている。

 

きっと、もうNCRは来ないだろう。

あのキャンプには物資を回収できるほどの人材があるとは思えないし、そもそも1週間も来ない時点でこの上官は気付くべきだ。

 

食料ももうすぐ底をつく。

そうなれば、きっとこのアホでも諦めるだろう。

 

 

そう思っていた。

 

 

「……よし、飯にしよう」

 

 

ふとデカヌスが言う。

それに合わせて副官である兵士が周辺の潜む兵士たちに見えるようにハンドサインを送った。

 

ずっと寝転んでいるモノだから、上半身だけでも起こせるのは非常に有がたいが難しい。

全員で一斉に起き上がると、それぞれが隣りに隠してあるリュックから携帯食を出して食べ始めた。

 

同時に発砲音がしてデカヌスの頭が消し飛んだ。

 

 

「ッ!?」

 

 

飯どころではなくなった。

待ち伏せしていたはずなのに、攻撃されているのだ。

 

 

「攻撃だ!」

 

 

リージョン兵の誰かが叫び、全員立ち上がろうとする……が。

身体が鉄のように重くておまけに痛いから動きづらい。まるで老人みたいにゆっくりと動く事しかできないのだ。

 

 

「ぐぉおおおおお」

 

 

それでも力を振り絞って応戦しようとするが、その前に発砲音が聞こえて兵士の身体に穴が空く。

なんとか発砲音の方向を見てみると、一人の少女が身の丈に合わないショットガンを構え、ひたすら、まるで狩りのように発砲し続けていた。

 

 

「右だ!右だぁ!」

 

 

方向を知らせつつ、砂に隠していた武器を構える。

レバーアクション式のリピーターで、当たれば致命傷は免れない。

 

そして反撃しようと皆がレバーをコッキングするが、

 

 

ガッ。

 

 

硬い。

まるでレバーが接着されているように硬くなっているのだ。

もちろん任務の前にしっかりと整備はしてある。

そもそもNCR兵を襲撃する際にしっかりと機能していたから、整備はしっかりと出来ていたのだ。

 

 

「あっ」

 

 

気が付いた。

砂が機関部どころか細かいパーツに噛んでしまって、動かないのだ。

こんなアホらしい新兵並みのミスに気が付かないなんて、いつの間に彼らまであほになってしまったのだろうか。

 

こうして待ち伏せしていたはずのリージョン兵たちは、反撃することも出来ず一方的に、スラッグ、レーザー、ライフル弾の雨に倒れて行ったのだ。

 

 

 


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