Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第五十六話 ヘリオス1、物資

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……もう、勝手に安請け合いして……」

 

 

拗ねながら、ブーンとED-Eを引き連れて砂漠を歩く。

数時間前のことになるが、ヘイズ中尉との会話の後、ブーンが突然キャンプ・フォーロンホープを手助けすると言いだしたのだ。

私が何度も首を横に振ってアピールしているのにも関わらず、ブーンはトントン拍子で責任者のボラトル少佐と会い、協力を約束してしまった。

意外とこのスナイパーは一枚岩ではないようだ。

 

一方でブーンは何も言わず、周辺を索敵している。

何とか言いなさいよ……

 

 

「Beep、Beep」

 

 

ED-Eは私をなだめるようにそう鳴くが、そんなんで私の怒りは収まらない。

ていうか、なんでED-Eまで割と乗り気なのか理解に苦しむ。

一応決めるのは私なのに……まぁ、表立ってNoと言わなかった私にも非はあるのだが。

 

 

フォーロンホープで一晩過ごした私たちは、ヘリオス1というNCRの拠点に向けて前進している。

ボラトル少佐曰く、フォーロンホープの兵士を物資補給のためにそこへ送ったらしいのだが、一週間も帰って来ないので様子を見てこいとのことだ。

まぁ、ヘリオス1までそんなに距離は無いし、一週間も帰ってこない時点で大体察することはできるのだが……

この件はそれの確認を含めているのだろう。

 

さて、前方に大きな建物が見えて来た。

建物自体も大きいのだが、その横にそびえ立つアンテナのようなものも相当大きい。

ざっと70メートル、いやそれ以上はあるだろうか。

 

聞いたところによると、昔はBoSという集団があそこを拠点としていたらしい。

確かBoS(Brotherhood of Steel)というのは、過去の技術を保存するために手段を選ばない、一種のレイダーのような存在だ。

私も聞いた話だからよくは知らないが、練度や装備の質が高くテクノロジーのために平気で人殺しをするため、レイダー以上に厄介な存在だと言われていた。

今はNCRに掃討されたが、噂では生き残りがあちこちにいるらしい。

 

 

「ヘリオス1へ行った事は?」

 

 

「第一偵察隊に配属された時に一度」

 

 

会話終了。

なかなかブーンは心を開いてくれないわね。

 

 

「確か太陽発電施設だったかしら」

 

 

「そうだ」

 

 

「……わざとやってる?」

 

 

「いや」

 

 

「……」

 

 

胃が痛くなりそう。

ここまで会話が続かないのは久しぶりだ。

まぁ奥さんの件やら何やらがあるから仕方ないっちゃ仕方ないだろうが……

そんなに私は信用できないだろうか。

人を信用しすぎるのは良くないが、かと言って全く信用しないのもいかがなものか。

それでは人生を円滑に進めることも、生き残ることもできない。

それが、運び屋をして得た教訓だ。

 

 

30分ほどして、ようやくヘリオス1へと到着した。

周辺には土嚢やフェンスが敷かれており、一見すると強固に守られているように見えなくもないが、それにしては見張りの兵士が少ない。

 

 

「そこで止まりなさい!一般人は立ち入り禁止よ!」

 

 

と、玄関付近にいたNCRの女性兵士が銃を携えてこちらに警告してきた。

私は両手を上げて敵意が無い事を示し、交渉を開始する。

 

 

「《NCR》NCRに協力している者です。キャンプ・フォーロンホープのボラトル少佐からの依頼でこちらへ参りました」

 

 

そう言うと、尉官であるだろうその女性は少し私達を観察した後に、銃を下げた。

どうやらこちらの言い分を信じてくれたようだ。

 

 

「《成功》悪かったわね、規則だから通行する人が居るたびにこうして聞いてるの。それで要件は何かしら?」

 

 

手を下げると、私はやや微笑みながら話を切り出す。

 

 

「一週間前、キャンプ・フォーロンホープからこちらに物資調達のための人員をお送りししましたが、覚えておいででしょうか?」

 

 

「えぇ、確か2人とバラモン一匹が来たわね」

 

 

どうやらヘリオス1に到着はしていたようだ。

 

 

「その人員ですが、未だにフォーロンホープに帰還していないのです」

 

 

えっ、と驚いたような反応をする。

まぁ一週間前の事を尋ねられて、それも楽な任務がまだ終わっていないとなれば驚くのも無理はない。

それに、物資を送ったのにまだ届いていないともなれば責任問題にもなり得る。

まぁ、この場合の責任は人員を送ったフォーロンホープ側にあるだろうが。

 

 

「おかしいわね。別に迷うような地形でもなければ野生動物が活発な場所でもないのに……」

 

 

確かにその通りだ。

とすれば、やはり逃げ出してしまったのだろうか。

あんな地獄にいれば逃げ出してしまいたくなるのも理解できる。

レンジャーのような特殊部隊とは違い、一般兵の士気はそれほど高くない。

 

ふと、女性兵士が私の腕に着いたPip-boyに着目する。

 

 

「あら、あなたPip-boyを持っているのね」

 

 

「えぇ、何かと便利ですから……それが?」

 

 

すると女性はあぁ、と説明を始めた。

 

 

「いやね、一定量を超える補給物資には必ずGPSマーカーを取り付ける義務があるのよ。Pip-boyを持ってるなら、そっちにデータを送って物資の場所を特定することができるわけ」

 

 

なるほど。

意外にもNCRはハイテクな技術を持っているようだ。

しかし、GPSマーカーがあればヘリオス1からでも補給物資が届いていないとわかるものではないだろうか……

 

 

「これがGPSの座標データよ。リアルタイムで受信されるはずだから」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言って女性兵士からホロテープを受け取る。

確かPip-boyのホロテープ機能は、本体上のカバーを開けて中へと入れればいいんだったか。

説明書なんてないから、手探りでホロテープを挿入する。

うん、これでよし。機械音痴ではないが、慣れないとすぐにはできない。

私、アナログ人間だから……

 

 

しばらくして、地図上に補給物資があるであろう座標が表示される。

なんだ、先ほど通って来た砂漠の中にマーカーがあるじゃないか。

 

 

「ではこれで失礼します」

 

 

そう告げると、私達は旧世界の発電所を背に砂漠へと歩み始めた。

 

 


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