Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第五十三話 東へ、暗殺部隊

 

 

 元NCRスナイパーのブーンが旅に同行することになった。

それはいいのだが、彼の頼みを聞いたためにノバックに居られなくなってしまったから私たちは割と慌てて町を出る用意をしていた。

 

もう日の出は過ぎている。

まだ朝の六時だが、キャラバン隊や住民の一部は目覚めていてもおかしくはない。

ブーンは一時的に自室へ戻り、必需品をパックしているため、私とED-Eも自室へ戻り必要なものをPip-boyとED-Eの四次元スペースへ詰めている。

 

と言ってもつい昨日まで旅をしていたので、部屋には元々あった衣料品や衣類しかない。

衣類も旅をするのには不向きな戦前のよくわからない服なので、持って行かなくていい。

 

20分後にはダイナソー横でブーンと合流するが、もうやることはなかった。

無理矢理見つけたやるべきことと言えば、時間いっぱいまでベッドに埋もれてその暖かさと柔らかさを堪能しておくこと。

しばらくはこんなに質のいいベッドで寝れないだろう。

 

 

「はぁ~……ついてないなぁ」

 

 

昔からついていないが、今回はかなりついていない。

仲間が一人増えるという事は、食費や弾薬費の問題も倍になるという事だ。

その点ED-Eは素晴らしい。だってご飯も食べないし、いつも使用しているレーザーの弾も再利用できるらしいから心配いらない。

 

でも、ブーンは成人男性だから私より食べるだろう。それにあのライフル……ただの狙撃用ライフルじゃない。それなりに金がかかっているのだろう、弾も特殊なものを用いている。

.300 Winchester Magnum弾なんて今まで見た事なんてなかった。

それだけ貴重な弾薬であることは言うまでもない。

あれは確か、広く普及している.308口径弾よりも威力が高くガンランナーと呼ばれる商人たちしか取り扱っていないはずだ。

どうやって補充しようかしら……

 

 

と、そんな事を考えているうちに18分経過。

もう待ち合わせ場所へ行かなければ。

 

 

「Beep」

 

 

ED-Eが時間に近づいている事を知らせる。

ため息まじりにベッドから起き上がり、怒りに任せてED-Eを抱きしめる。

 

 

「もぉ~~~~!」

 

 

普段滅多に怒らないせいか、ED-Eにそのストレスをぶつけると、私は部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでブーンを加えて旅をする。

本来ならそのまま北上したかったのだが、彼がジーニー・メイ・クロフォードを殺害したことが仇となった。

ジーニー・メイ・クロフォードの死体はノバックの前に放置されているので、見つかるのは時間の問題だろう。

主要人物の死体が見つかればノバックは半パニックになるわけで、そこを通ったキャラバンにももちろん情報が届く。

仮に私達がそのまま北上して第188交易所に行ってしまうと、情報を聞いたキャラバンが私達を目撃する可能性が高い。

 

そうなるとほとぼりが冷めるまで第188交易所へは行けないだろうから、それまでどこかで時間を潰すしかないのだ。

 

第188交易所へ行くのは確定事項である。

なぜなら、このあたりで満足に補給できるのはあそこくらいしかないからだ。

あそこは様々なキャラバンが休憩のために立ち寄るので、買い物が捗る……らしい。

 

私も他人から聞いたことなので何とも言えないが、信用できる同業者からの情報なので大丈夫だろう。

 

 

それに、マニー・バルガス曰く、私を撃った奴らはそこを通ってボルダーシティという寂れた町へ行くらしい。無視はできない。

 

 

 

さて、ではどのようにして時間を潰すか。

ほとぼりが冷めるまでは何とも言えないが、キャラバンと直接関係がない事なので三日から一週間程度だろう。

 

なら、北東へ向かい懐かしい顔のいるキャンプ・フォーロンホープへ向かおうではないか。個人的に、『彼ら』は気になるし、挨拶ぐらいは軍も許すだろう。

 

その南には現在リージョンが占領しているネルソンという町があり、最前線であるのは間違いないが、立ち寄るだけなら戦闘に巻き込まれることはないだろう。

ギリギリを通ればリージョンも手は出してこない、というのがブーンと私の見解だ。

 

だって毎日小競り合いしているような奴らが、部外者を気にしている余裕はないだろう。

 

 

「……ふむ、キャンプ・フォーロンホープはここから数キロの場所ね」

 

 

Pip-boyのGPS機能を使って位置を把握する。

今日中には余裕で辿り着けそうだ。

 

 

「あそこは今かなりの激戦地らしい。下手をしたら死ぬぞ」

 

 

私の後ろを歩くブーンが言う。

 

 

「激戦地なら散々歩いて来たわ。心配ご無用よ」

 

 

反論する。

彼なりの心配なのか知らないが、無口なのに急に喋りだすからちょっと怖い。

 

 

そうしてまたモハビの地を歩く。

この周囲は砂漠よりも岩場が多く、起伏が多少ある。

さて、これは険しい道のりになるな、と考えていた……その時。

 

 

「Beep!」

 

 

ED-Eが何かを探知する。

前方に感アリ、というのがPip-boyに記載されていた。

 

 

「コンタクト、前方」

 

 

それを伝えてすぐにその場に伏せ、周囲を確認する。

ブーンも私の横数メートルへ伏せ、ライフルを背中から手繰り寄せ、スコープ越しに監視を始めた。

 

ここは周囲に岩場があるから、待ち伏せされるには最適である。

要は上をとられやすい地形だ。

今からED-Eに偵察させたいが、もし既に岩場に陣取られていたら空へ上がるED-Eは良い的なので私の横にいる。

 

どこの誰か知らないが、私達を襲おうとするとは良い度胸だ。

 

 

しばらくそのまま待機する。

すると、ブーンが何かを見つけた。

 

 

「……コヨーテが数匹いるな。距離300m」

 

 

ふむ。

別に待ち伏せではなかったのだろうか。

杞憂だったのだろうか。

 

 

「……ブーン」

 

 

「あぁ」

 

 

杞憂じゃなかった。

殺気をそこら中から感じる。

 

ハンティングショットガンを背中から手繰り寄せる。

もう囲まれているようだ……気付かなかった。こいつらただの盗賊連中じゃない。

 

 

「全周警戒、敵が見え次第射撃実施」

 

 

そう伝えると、ブーンは頷く。

ED-EもBeep音で了承したことを伝えたが、その瞬間だった。

 

周囲の高い岩場から、シーザーリージョンの兵士が飛び出して来たのだ。

 

 

 


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