Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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新しいオリジナルの小説も連載しております。
ノリがクロエちゃんに比べてクッソ汚いですが、暇があれば読んでやってください。


第五十一話 ノバック、調査2

 

 

 

 

 調査は難航していた。

あれから数時間、私は町の新顔という事を利用し、挨拶もかねて町の人々にブーンの妻、カーラという人物について尋ねている。

だが、得られるのはどれもよろしくない情報ばかり。

やれ生意気だ、ノバックを田舎扱いするだ、挙句の果てにはチュパカブラだ。

 

チュパカブラに関してはどうでもいいが、この町の住人は総じてカーラと言う人物に対して良い印象は抱いていない事は確定していて、住民全員が怪しい。

そもそもブーンと同じで社交的じゃないという時点で、こういった閉鎖されたコミュニティでやっていくのは厳しいだろう。

 

とにかく、中でも一番怪しいのが、元ブーンの軍隊時代の相棒であるマニー・バルガスだ。

彼はやたらとブーンの妻を敵視していて、口喧嘩もしょっちゅうだったらしい。

しかもその理由が、ブーンがカーラに取られてしまったような気になったから。

乙女か。

 

いや、同性愛的な何かなのだろうか?気が付いたらレプコンの時のクリスが彼の部屋に住んでいるし……知らない方が良い世界だ。

 

 

「Beep……」

 

 

ED-Eが悩むように声を鳴らす。

どうやらED-Eはこういった探偵紛いの事が好きらしく、持ち前の機械的な頭脳で私よりも考えている。

だが、そんな彼の頭脳でも今回の件は難しいらしい。

 

 

「はあ……」

 

 

私も思わずため息が出る。

気が付けば午後3時。

今日こそはこの町を出発しようと考えていたのだが、こうも立て続けに厄介ごとに巻き込まれてしまえばそうはいかない。

 

そもそも、これは誘拐なのか。

ただ単に、他に男でも出来て逃げてしまったんじゃないだろうか。

夫としてはそれが信じられず、こうして問題を大きくしてしまったのではないだろうか。

 

 

次は誰に聞こうかしら。

あと残っているのはこの町を仕切るジーニー・メイ・クロフォードという老婆。

彼女と話したのは、この部屋の鍵を貰った際の一回程度だが、感じは悪くなかった。

ちょっと強気で、町の事を良く思っている極めて普通の住人、それが私が抱いた第一印象だ。

 

時折、目つきが鋭くなるのがひどく気になったが。

 

 

さて、休憩終わり。

私はベレー帽を被ったED-Eを抱っこし、ジーニーがいるであろうモーテルの事務室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、クロフォードさん」

 

 

事務所に入り一礼し、そう挨拶する。

するとデスクに座って事務処理をしていたクロフォードがにっこりとした笑顔で私に手を振った。

私の印象は悪くないみたいだ。運び屋で、態度が良い善良な少女……自分でこう評価しているのもなんだかおかしいが。

 

 

「やぁ運び屋さん、モーテルはどうだった?」

 

 

「帰る場所があってベッドがふかふか。言う事ありませんわ」

 

 

「そりゃよかった」

 

 

私の回答に彼女は心底誇らしそうな顔をした。

この調子でそれとなく聞こう。

 

 

「あの、ちょっと聞きたい事があって」

 

 

「なんだい?」

 

 

クロフォードが老眼鏡を取って手の動きを止める。

 

 

「ブーンって人……奥さんがいなくなったとか」

 

 

その話題を出した瞬間、彼女の目が鋭くなる。

緊張が、高まった。

 

 

「だからどうしたって?」

 

 

クロフォードが言ってから鼻をすする。

 

 

「今、挨拶をして回っているんです。だから、いなくなったとしても町の人の事は知っておこうと思いまして」

 

 

あぁ、と彼女は納得したように頷いた。

少しばかり目つきが柔らかくなる。

だが、それでも彼女の目は普通じゃない。何かがある目だ。

 

深い闇のような、何かが。

 

 

「大した事は知ってないさ。見た目は美人だったけどね、とても近寄れたもんじゃなかったさ」

 

 

「美人に刺があるのはどこでも同じですね」

 

 

「それじゃああんたにも刺があるのかい?あはは、冗談さ」

 

 

ちょっと嬉しい。

かわいいと言われた事はあれど、美人と言われた事は少ない。

だって、美人って大人っぽいじゃない。

 

私は困ったように笑う。

もちろん本心も現れているが、建て前もある。

 

美人に刺があると言うのは、事実のようだ。

 

 

「まぁ、ここでの生活は好きじゃなかったみたいだけどね。ニューベガスの華やかなネオンがお気に入りだったのさ」

 

 

よくある話だと思った。

田舎の子供が都会に憧れる、そんな感じだと。

私にはそんな余裕はなかったが、この世界に来る前での生活で、都会や華やかな生活に憧れていた子たちはいっぱい知っている。

 

クロフォードは続ける。

 

 

「ブーンの奴と一緒に出ていくつもりだったみたいだけど、待つのに疲れたんだろうさ。旦那を置いて出てっちまったわけさ」

 

 

クロフォードが鼻をすする。

 

なるほど。

旦那と駆け落ち……になるのか分からないが、する前に忍耐が尽きたと。

 

だが、それなら腑に落ちない部分がある。

ブーンの部屋には生活必需品が沢山あった。それも、女性用のものが。

これを置いて、一人で出ていくだろうか。

それも、元NCRの最上級の斥候部隊の夫に何も悟られず、出し抜いて逃げきれるものなのだろうか。

 

 

「分かりました。お忙しい中時間を割いていただいてありがとうございます」

 

 

「いいのさ。今度夕飯でも食べにおいで、歓迎会も含めてね」

 

 

「光栄です、ジーニーさん」

 

 

そうして、私はオフィスを後にした。

 

 

 

 

 

 

夜。

皆が寝静まる時間になる。

銃の手入れや服の洗濯を終えてから、私は行動に移ることにした。

 

行動とは、ジーニー・メイ・クロフォードのオフィスに忍び込む事。

目的は、ブーンの妻、カーラに関する情報を得ることだ。

 

今日、彼女と会って確信した事がある。

それは、彼女の鼻をすする動作。

 

人には癖がある。

私は癖のような癖は無いから例え辛いが、彼女には明確に表れていた。

 

鼻をすする動作がそれにあたる。

どうやら、緊張したり、何か不都合があるとその癖が出るようだ。

 

 

「ED-E、上空で待機」

 

 

ED-Eを上空に待機させ、空から町の監視をさせる。

万が一、クロフォードなどの人物がオフィスに入って来たら厄介だ。

そのために彼には見張っていてもらわなければならない。

 

ED-EがBeep音を鳴らし、上空へ飛ぶのを確認すると、私はオフィスの扉の前にしゃがむ。

 

そして髪留めに使っているヘアピンを一本、そしてマイナスドライバーを取り出すと、両方を鍵穴に突っ込んだ。

中には誰もいない。それは確認済みだ。

 

ヘアピンを回し、鍵のロック部分を探る。

カチ、っという感触がしたため、ドライバーを一気に回す。

 

カチャン。開いた。

これくらいの鍵なら楽勝だ。

 

 

ドライバーをしまい、ヘアピンを髪にさす。

ドアを開けると真っ暗な部屋に入り込んだ。

 

視力が良くて夜目が利く私もさすがにこの中で資料を探したり文字を読むのは辛い。

だから、面白いものを飲んできた。

 

 

キャットアイ。

成分や仕組みは分からないが、戦前の薬で、真っ暗闇でもナイトビジョンを使ったように目が利くようになる。

 

予め飲んできたため、今の私にはこの暗闇も夕方程度の明るさに見える。

 

 

「さて、仕事をしましょう」

 

 

呟き、彼女の机を漁る。

もちろん後でばれないように丁寧に、素早くだ。

 

そして数分探し、何もない。

あるのは経営に関する資料ぐらいと、あのチュパカブラおじさんに対する苦情。

結構あのおじさんやらかしてるんだなぁ……

 

 

「ないわね……私の勘違いだったかしら」

 

 

それならそれでいい。

彼女が内通者でないならば、死人が出ないし夕飯も奢ってもらえる。

まぁ、その前にこの町から出て行ってしまうのだが。

 

と、その時だった。

足元に何かある。

性格には、クロフォードが座っていた椅子の真下だ。

 

 

不思議に思って下を見てみると、隠すように金庫があった。

 

これだ。

 

 

急いで私は資料を片づけ、ヘアピンとドライバーを手に金庫の鍵を破りにかかる。

先ほどの扉と異なり、この金庫はそれなりに手こずる。

幸いED-Eから何も異常報告はないので、そこまで焦る必要はないが、個人的に事の真相が気になったのだ。

 

 

「もうちょい……、…………来たっ」

 

 

ガチャン。

ようやく開いた。

 

取っ手を引っ張り、金庫を開ける。

 

 

そこにはかなりのキャップと、紙束があった。

何かの資料や手紙のようだ。

 

キャップには目もくれず、資料に手を付ける。

これでもない、あれでもない……そうしてようやく見つけた。

 

 

 

 

リージョンとの、人身売買の記録が。

 

 

 

 

 

 

 

 


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