Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第三十八話 レプコン-実験エリア、インターホン

 

 

 

 レプコンの実験エリア近くに来ると、検問所が見えた。

戦前はここで運ばれてくる車などをチェックしていたのだろうが、今では襲撃者に備えるための砦と化していた。

 

至る所に弾薬や土嚢が積まれており、何かの襲撃に備えていたのだろう。

その何かとは……

 

この場にあるのは死体が複数に私とED-Eだけ。

死体も普通の人間ではない。

 

まずはグール。

フェラル・グールが複数体、私が殺したものも含める。

問題なのは、通常のグールについてだ。

皆、共通のローブを着ているのだ。手にはレーザーピストル……戦闘慣れしているようには見えないが、ウェイストランドでこれだけの装備を共有できるということは、それなりに大きい勢力なのだろう。

 

グールはグールに対して攻撃しない。

手を出されない限りは、だが。

見た所、フェラルも通常のグールもお互いの攻撃で死んだようには見えない。

 

ならば一体誰が彼らを葬り去ったのか。

私以外の介入者はいったい誰か。

 

 

「……スーパーミュータント……」

 

 

目の前に横たわる大きな亡骸を見て呟く。

そう、正解はスーパーミュータントだった。

 

それも普通の、よく見られる緑の肌ではない。

青い肌に壊れたステルスボーイ……ナイトキンと呼ばれる亜種だ。

 

 

ステルスボーイとは、携行型の光学迷彩だ。

一時的に透明になって周囲の風景と同化する恐るべき兵器。

バッテリー消費が尋常じゃないというのがネックだが。

 

ナイトキンはただでさえ生命力と力が強いのに加え、ステルスボーイを使用して姿を消すのだ。

 

 

「ED-E、通常の生体センサーの他にサーマルセンサーとソナーも起動しなさい」

 

 

「Beep!」

 

 

ED-Eにそう命令する。

ステルスボーイが効果を及ぼすのは通常視覚効果のみだが、若干の対熱源放射があると聞いたことがある。

ならば、通常ED-Eがアクティベイトしているセンサーだけでは発見できないかもしれない。

 

 

ほんとについてない。

まさか、グールだけじゃなくスーパーミュータントとも戦う可能性が出てくるとは……

 

 

「帰ったら追加報酬請求ね……」

 

 

そうぼやくと、私はとうとうレプコン、実験エリアの正面玄関へとやって来た。

ちなみにフェラル・グールが複数いたが、すでに排除済みだ。

 

扉に張り付き、ゆっくりと開けるとしっかりクリアリングしていく。

ちなみに今は9㎜ピストルを手にしている。

そりゃそうだ、建物内ではハンティングライフル等の長物は取り回しがきかない。

ピストルのマズルにはしっかりとマズルが取り付けられている。

 

 

「……クリア、かしら」

 

 

玄関内は誰もいない。

だがどうやらこの建物内には何かがいるらしく、ED-EがPip-boy越しに通知してくれた。

ラッドローチだったら嫌だな……

 

 

 

『おい!そこのスムーズスキン!お前だ!』

 

 

 

不意に、真横から怒鳴るような声が聞こえた。

あまりにも突然だったので、拳銃を向けてしまう。

 

が、その先には誰もいない。

あるのはインターホンだけだ。

 

 

「……?」

 

 

戦前からあるインターホンが機能するのだろうか?

確かに音質もいいものではなかったが……

 

 

『おい!銃を向けるなスムーズスキン!』

 

 

やはり、インターホンだったようだ。

聞こえる声は人間で、中年男性の声。

 

 

「だぁれ?」

 

 

銃を下ろし、そう尋ねる。

 

 

『建物の東側にある大部屋へ行って金属の階段を登れ!』

 

 

「建物の東側にある大部屋に行って金属の階段を登れ!さん?」

 

 

『違うッ!名前なんてどうでもいい!いいからそこへ向かえ!』

 

 

もちろん私なりのギャグだ。

だが、こんな無礼な人にまともな会話はしたくない。

 

 

「なんであなたの言う事を聞かなくちゃいけないの?」

 

 

ここはもはや敵地だ。

敵地にいる人間に碌なのはいない。

 

 

『好きにしろ。だがお前に対しても悪い話じゃないはずだ』

 

 

そう言うと、ブツッと音が途切れた。

どうやらインターホンの電源が切れてしまったようだ。

 

何なんだろう一体……

 

 

「Beep……」

 

 

同情する様にED-Eが鳴く。

そんなED-Eを撫でると、私は考える。

 

とりあえず、このグール大量発生の手がかりは今の所、インターホンの主だけだ。

なら、向かってみてもいい。

 

仮に攻撃されるようなら、返り討ちにしてやればいい。

そう楽観的に構えながら、私は建物の東側へ向かう事にした。

 

 


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