Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第三十話 二プトン、処刑

 

 

 

 

 「なんて空気がうまいんだ!」

 

 

 二プトンに到着、私が警戒しながら町中を探索していると、なにやらおかしな男が飛び出してきた。

こちらを襲うでもなく、突然こちらに空気がうまいだのと言い出し、大自然の恵みを教授してくる。

 

私は反応に困ったが、なんとか断片的に話を聞くところ、宝くじに当たったらしい。

町がこんな大惨事になっている中でのんきなものだ、とも思ったが、二プトンの惨状についての話を聞くと様子が一変し、走り去ってしまった。

その際も、空気がうまいだの言っていたのは正直どうでもいい。

 

 

さて、町の様子であるが、外で観察していたものよりも一層酷い。

死体があちこちで焼かれているのは見えたが、まさか十字架に磔にもされていたとは……

しかも、磔にされている人の中には身体の一部が無い者もいる。

 

何をしたのか知らないが、なぜ磔なんだろうか。

まるで古代のローマ人が罪人に科した罰のようだ……

確かに、リージョンの思想や服装などは古代ローマに基づいたものだとは聞いたことはある。

 

……あるが、残虐性まで真似なくても、他に学ぶことはあるだろうに。

 

 

「……ED-E、生体反応は?」

 

 

Pip-Boy越しにED-Eに話しかける。

本来Pip-Boyには無線機はついていないが、ED-Eを介してソフトをアップデートしたことにより、ED-Eとの通信のみが可能となった。

 

いつものようにBeep音が返ってくるのではなく、Pip-Boyのディスプレイに簡単な文が表示される。

これが彼の報告である。

 

 

《市庁舎に複数の熱源体反応  他の地域での生体、及び熱源反応は野生動物の可能性大》

 

 

市庁舎……仮にここを襲ったであろうリージョンが潜伏、あるいは休息をとるのであれば、そう言った場所でとる可能性が高い。

町にとって重要な拠点をみすみす逃すような奴らではないだろう。

 

 

「了解、引き続き警戒して。アウト」

 

 

通信を切ると、私はGPSで市庁舎の位置を確認する。

恐らくこの町で一番大きな建物がその市庁舎だろう。

 

位置はここから100メートルもない。

次の曲がり角を右に行けば、もう入口が見えるはずだ。

 

 

身長に、ショットガンを構えながら進んでいく。

スピードは重視していない。

 

リージョンの得意な戦い方の一つに、ゲリラ戦法がある。

仮に探索しに来た者を待ち伏せしているなら、時間がかかっても慎重にクリアリングしていった方が安全であるのは明白だろう。

 

 

ゆっくり、まるでカタツムリのようなスピードで曲がり角を覗く。

 

 

 

「酷い……」

 

 

 

敵は居なかった。

それなのに、私は思わず呟いてしまう。

 

市庁舎へと通じる大通りには、ずらりと十字架が立てられていて、住民だった者達がやはり磔にされていた。

しかも、数人は息があるようで、浅く呼吸をしているのが分かった。

 

 

私はそのうちの一人へと駆け寄ると、なんとか降ろせないか試してみる……が、駄目だ。

 

 

無理に降ろせば、死んでしまうだろう。

着地した衝撃ですら彼らは耐えられない……

 

 

「……せめて、最後くらいは安らかに眠りなさい」

 

 

ホルスターから拳銃を取り出す。

そして、磔にされた人々を解放する。

 

今の私にできる、精一杯が、これだった。

 

 


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