無事ジャッカル団を蹴散らした私とED-Eは煙が出ている二プトン手前に到着。
途中待ち伏せを受けたこと以外は順調に進んでいたので、なんとか夕方になったが辿り着くことが出来た。
ついでと言っては何だが、彼らの武器庫が見つけやすい場所にあったので色々拝借してきた。
10㎜ピストルとその弾薬、レバーアクション式のショットガンと使用する20ゲージのショットシェル、ダイナマイトとフラググレネードが主な収穫だ。
これらをED-Eに持ってもらった。
さて、これから二プトン内に入る前に偵察だ。
煙が上がっている原因を調べなくてはならないし、生存者の確認もしなければならない。
仮に襲撃を受けて煙が出ているのだとしたら、略奪者がいるはずだ。
ノコノコ行ったらまた待ち伏せに遭うだろう。そうしたら今度は無傷では済まないかもしれない。
Pip-Boyから双眼鏡を取り出し、丘の上から匍匐して約500m先の二プトンを覗き見る。
まずは町の入り口。
ズームしてよく見てみると、なにやら火が炊かれている。
キャンプファイヤーではなさそうだ。
もしかしたら害獣撃退用の火かもしれない……
が。
「……なに、あれ」
焼かれていたもの。
それは木炭でも、戦前の価値のない本でもない。
ましてやボロボロの衣類でもなかった。
人の死体だ。
黒焦げになった人の塊が、火にくべられていたのだ。
正直、こういった光景はウェイストランド全体では珍しくない。
略奪者達が虐殺した後に住民の死体を晒すこともあるし、もしくは侵入者への警告として死体を見せびらかすこともある。
また、疫病なんかが流行った時は、病死した人を燃やしたりもする。
だから、今回もそういう類なのだと信じたかった。
けど。
量が尋常ではない。
少なくとも二プトンには100人近くの住人がいたはずだ。
前哨基地からは遠すぎて分からなかったが、煙が上がっているのは一か所だけではなかった。
十か所ほどから、入り口のような煙が上がっている。
もし、仮に、だが、住人がほぼすべて殺されていたらと、あの煙の数に納得してしまう
自分がいた。
「Beep……」
望遠レンズ越しに山積みの焼死体を見つけたED-Eが小さく呟く。
そのボディはいつになく震え、恐怖を表わしているようにも見えた。
だが、一体誰がこの町を襲ったのだろう?
NCRは論外、パウダーギャングはむしろ裏で二プトンと手を結びそうだし、町一つ殺戮できるほどの戦力はあるようには思えない。
野生動物はそもそもファイヤー・ゲッコーぐらいしか火が使えないし、一か所にまとめて処理するなんて事は出来るはずもない。
ならスーパー・ミュータント?スーパー・ミュータントというのは、2メートルは優にあるであろう巨体と緑の肌、そして怪力と恐ろしいまでの放射能耐性を持つ人間の変異体だ。彼らなら知能も人間程度にある者もいるし残虐性も高いから、ああいった事をしても不思議ではない。
だが、モハビではスーパー・ミュータントの動きは大人しめのはずだ。
唯一大きな被害があるのは、勝手にラジオの電波にわけのわからない放送を流しているくらい……実は、あの放送割と面白かったりする。
と、しばらく考えにふけていた私だったが、ある旗が炎の傍にあることに気が付く。
赤い旗に描かれた、怒れる
シーザー・リージョンの紋章。
その瞬間、私の顔には自然と笑みが浮かんでいた。
我に返り、観察をやめて双眼鏡をしまう。
行かなければならない。
仮にリージョンの連中がこの惨事を引き起こしたのなら、報いを受けなければならない。
「ウィンチェスターを、ED-E」
そう言って立ち上がり、ED-Eが四次元スペースから取り出したレバーアクション式のショットガン、M1887の20ゲージモデルだ。
恐らくモハビで作られたレプリカであろうこのショットガンは、レバーアクションによる給弾とチューブ式マガジンの採用により、近距離では猛威を振るう。
「上空から偵察して、何かあったらすぐに知らせなさい。反撃のみを許可とします」
そう命令すると、ED-Eは素早く上空へと舞い上がった。