Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第二十七話 モハビ前哨基地、依頼

 

 

 

 

 

 前哨基地で一晩を過ごし、今は早朝。

足止めを食らっているトレーダー達と情報や物資の取引をしてから、私はこの基地を出るためにオフィスのソファーで荷物を整理していた。

食料、武器、弾薬、飲み物、生活用品……買い足していたりしてたら意外と多くなってしまった。

 

一部Pip-Boyにも収納できなくなったものをED-Eに持たせる。

ED-EにもPip-Boyと同様、ある程度の荷物を収納できる多目的四次元スペースが搭載されている。

Pip-Boyとは違ってある程度大きいものでも収納できるため、武器としては9㎜サブマシンガンを持ってもらっている。

 

あと、いいものが手に入った。それは、バーミンターライフル用のスコープだ。

倍率は6倍で、中距離ならこれで安々と対応できる。

そして一番の目玉は、このスコープが暗視装置を搭載しているという事だ。

この暗視スコープは周囲の光量が低くなると自動で起動する仕組みで、普段はただのスコープと変わらないから使い勝手もいい。

 

スリング伝いにバーミンターライフルを背負う。

 

 

さて、今日は二プトンへの道を進もう。

Pip-BoyのGPSで確認したところ、二プトンはここから西にしばらく行ったところにある。

休憩しなければ夕方までには着くだろうか。

 

 

「二プトンから大きな煙が上がってるの、何か報告はない?」

 

 

ふと、そんな会話が耳に入る。

そちらに目をやると、NCRの士官と二人のレンジャーが何やら良くない雰囲気で話をしていた。

先ほど二プトンの話題を出したレンジャーは女性で、背中には.44口径のレバーアクション式トレイルカービン、そして渋いサングラスをかけていて、肌は幽霊のように白い。

 

もう一人のレンジャーは立派な髭を生やしていて、かなりのベテランであることが窺える。

 

一方で士官は……なんというか、頼りなさそう。

 

 

「いや、ないな。どうせ地元のアホ共が何か燃やしてるんじゃないのか?」

 

 

「それこそ無いな。あいつらに目立つメリットは無いぞ」

 

 

と、士官の言葉に反論するベテランレンジャー。

もっともだ。二プトンは売春で栄えていると言っても過言ではないと聞いている。

それも、NCRの許可無しに。

いくらリージョンに手を焼いていて取り締まりどころではないNCR相手でも、表面的には良く取り繕おうとするはずだ。

 

 

「何か臭うわね……一昨日からから無線にも応答しないわ」

 

 

「故障じゃないのか?よくあるだろう」

 

 

「タイミングが良すぎるわ。誰か送れる隊員はいないかしら?」

 

 

「今はどこも手一杯だ。プリムの件だってあるし……」

 

 

と、何やら難航している。

そうだ、と私は良い事を思いつく。

 

 

「あの~」

 

 

そーっと会話に割り込んでいく。

すると、三人のNCR兵士たちは私を訝しむような目で見つめた。

子供が大人の会話に入ってくるな、という顔だ。

しかも傍らには見慣れないロボットがいる。

 

 

「なんだ?」

 

 

「私、今から二プトンに向かうんですけど、もしよろしければ連絡しましょうか?あ、私モハビ・エクスプレスの者です」

 

 

下手に出た方が刺激しなくて済む。

もちろんこれは単なるお使いではない。

 

 

「……どうする少佐?」

 

 

ベテランレンジャーが士官に尋ねる。

 

 

「いや……まぁ、行ってくれるんならいいんじゃないかな」

 

 

よし、乗ってきた。

 

 

「報酬の方は少々の弾薬とキャップで十分ですので……ね?」

 

 

うっ、と三人は少女に苦い顔を向ける。

突然入って来て報酬の話をされれば誰だっていい顔はしないだろう。

だが、彼らは私に頼らざるを得ない。

 

少しだけ少佐は渋ったが、最終的には了承し、ED-Eがどこからともなく取り出した即席の契約書にサインしたのだった。

 


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