プリム、夜。
なぜかNCRの兵士たちを焚き付けてしまった私は、町からギャングを掃討する作戦の臨時指揮官としてヘイズ少尉に雇われていた。
もともとレンジャー志望だったヘイズ少尉は私の装備と佇まいを見て相当な手練れだと判断したらしく、指揮権をただの運び屋である私に譲って見せたのだ。
今は少尉のテントで銃の点検をしている。
他では少尉と、彼が連れてきた兵士たちがお互いの戦術について話している。
優秀な部下を連れて来たらしく、その中には先ほどプリム前で話した伍長もいる。
彼は元はスナイパー候補だったらしく、今では先ほどのサービスライフルではなく自前のスコープ付ハンティングライフルを背負っている。
「奴らはホテル裏のジェットコースターのレールを監視台にしているようだ」
「なら西はおろか南からも攻めるのは難しいな……」
「北はダメだ、やつらキャンプを張ってる。銃撃戦にでもなれば増援が来ちまうぞ」
「なら正面から攻めるの?そんなの無茶すぎるわ、ジャクソン達がどうなったか見たでしょ?」
どうやら会議は難航しているようで、先ほどからまったく進まない。
私はそんな彼らの横で整備した9㎜サブマシンガンを組み立てる。
貰った時よりも動作が快調になったボルトを引くと、私は言った。
「正面の警備人数は何人なの?」
指揮権を与えられたため、私の口調は同格にたいしてのものになる。
すると、水を差された兵士たちは一斉に私を見た。
なにかいい案でもあるのか、そんな視線が私に向けられる。
だが、こんなのはシンプルに事を済ませばいい。
私はスリングをSMGに取り付けて背負うと立ち上がり、言った。
「何人なの?」
それに答えたのはヘイズ少尉だった。
「およそ五人だ。だが、一発でも発砲があれば中から……」
「なら見つからなけらばいいのよ」
それだけ言うと、彼らは黙ってしまった。
そして数秒経つと、笑いだす。
その笑い声が酷く不安定だったのは精神状態の現れかもしれない。
私はマチェットを取り出し、机の上に刃を突き立てる。
「《Silent Running》静かに近寄り音もなく殺す。数や武装で勝てないなら知恵を使いなさい」
先ほどまで笑っていた兵士たちは、私の突き立てたマチェットを、息をのんで見る。
私はテーブルの上に腰を預け、マチェットを抜き取ると鞘に納めた。
ヘイズ少尉の表情からは無謀だの、無理だのといったものが読み取れる。
私はため息をつくと言う。
「私が正面の見張りを片づけるわ。あとは
それだけ言うと、私はテントから出ようとする。
そして去り際に一言。
「あとは貴方たちが判断しないと勉強にならないわ」
そういう私の表情は、彼らにどう映っていたのだろうか。
笑顔だったのか、それとも別の表情だったのか。
だが、一つ言えることがある。
それは、いつになく私の心は晴れていたという事だ。
戦が、始まる。
大好きで、大嫌いな戦いが。
誰も私を止めることは出来ない。