説得が終わってから三日経った。
私はイージーピートと共に待ち伏せの為にダイナマイトとC4を、ヤツらが通るであろう道の付近の瓦礫に埋設する。
ダイナマイト単体でも爆発の威力はなかなかだが、起爆装置つきのC4と組み合わせれば任意のタイミングで起爆できるし、瓦礫の中に入れておけば爆風だけでなく破片が奴らを襲う。
設置個所に少し迷ったが、イージーピートの助言でなんとかやり遂げた。
見張りはリンゴとサニーさん、そして私のローテーション制で、24時間監視できた。
非番の時はパウダーギャングを待ち伏せるための人員配置を考え、それを伝達する。
時間は十分だった。
この町の人は狩りのために銃を扱える人が多かったのもプラスになった。
そして今、私はリンゴとイージーピートと共にプロスペクターサルーンで昼食を食べていた。
トルーディさんのキッチンを借りて作ったビッグホーナーのステーキで、味は中々だ。
リンゴやイージーピートも味を褒めてくれたし、自信を持っていいだろう。
トルーディさんからしばらく店で働かないかと言われたが、さすがに断っておいた。
本業は運び屋だし、今はそれよりもやらなくてはならないことが多すぎる。
しばし羊の美味しい肉を味わっていたら、見張りをしていたサニーさんが血相を変えて店へとやって来た。
「パウダーギャングよ!みんな準備して!」
「町の皆さんは?」
すぐに食事をやめ、カウンターに立てかけていたライフルを掴み、弾倉を入れる。
「もう準備できてるわ、やってやりましょう!」
そう言うと、酒場にいた他の人たちもやる気を出してそれぞれの武器を手に取る。
リンゴは若干不安そうだったが、すぐに気合をいれるように、自前の9㎜ピストルに弾薬を送り込んだ。
さぁ、戦いだ。
その時コッブとその一味は、割と上機嫌だった。
今からグッドスプリングスを、パウダーギャングに逆らったという大義名分で略奪できるからだ。
逆らう者は皆殺し。それが彼らのやり方だった。
「へっ、馬鹿な奴らだぜ。俺らに逆らうとはよ」
構成員の一人が言った。
「まったくだぜ、これで当分物資には困らねぇし、勢力を広げられるチャンスだ」
応えるように、チェイサーハットを被った構成員が笑う。
しかし、一見楽勝にも見えた襲撃だったが、コッブの顔色は優れなかった。
構成員の一人がコッブに尋ねる。
「どうしたコッブ、なんか変なもんでも食ったか?」
その問いに、コッブは鼻で笑って見せる。
「お前じゃねぇんだ、そんなことするかよ」
「じゃあどうしたんだ?ビビってんのか?」
「そんなわけねぇだろ!!!!!!……いや、すまん」
突然キレてしまったコッブに周囲の仲間は黙った。
どうやらただ事ではないらしい。
「別に大したことじゃねぇんだ、ただ、その……酒場にいた女のガキが気になって……」
「お前ノンケかよぉ!?」
「当たり前だろッ!!!!!!いい加減にしろ!!!!!!」
さすがにコッブは悪くなかったため、仲間は吹き出すように笑った。
たまにバカなのが難点だが、コッブにとっては面白いやつらだ。
「どんなガキだったんだ?」
そう仲間が尋ねると、コッブは答える。
「見た目は人形みたいに整ってる。髪は珍しい色してて、悪くないんだが……雰囲気がおかしかった」
「いいじゃねぇか、ミステリアスな若い女、一度お相手してもらいたいね」
「そうじゃない、あれは……NCRのレンジャーとか、そういうヤツらの、殺しの雰囲気だ」
コッブがそう言うと、節操無しのアホ共も黙ってしまった。
そうしている内に、一団は村付近まで辿り着いた。
しかしなにか様子がおかしい。
普通は日中、グッドスプリングスの住人がこの辺まで来て作物を収穫したり、ビッグホーナーの世話をしているのが見えるのだ。
しかし今は人っ子一人見えない。
もしかしたら昼飯を食っているのかもしれない。
そうなら、絶好の襲撃チャンスだ。
コッブは気持ちを切り替え、仲間を鼓舞する。
「ようし野郎ども、今日こそはあの寂れた町を俺らの物にするぞ!」
応えるように仲間は声を上げた。
そして、アタッカーの仲間の何人かが鉄パイプやショットガンを持って突撃していく。
町まではあと100メートルほどあるが、ジェットという薬物を決めた人間なら息切れせずに走り抜けられる。
このまますぐに制圧できるだろう、そう考えていた。
先頭の仲間たちが、爆発に吹き飛ばされるまでは。