Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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第二話 アフガニスタン、少年兵

 

 

 

――2007年、アフガニスタン。

 

 

当時、あそこは激戦地だった。

 

国連軍や現地軍、そして抵抗勢力。

更にタリバーンやアルカイダと呼ばれる勢力が命を散らしていたのを覚えている。

 

街では罪のない大人や子供たちがIED(即席爆弾)や自爆テロの犠牲になっていた。

そのテロをする側にも、女性や子供がよく混じっていた。

 

 

そんな中、私も少年兵として、聖戦と呼ばれる草の根運動に参加していたのだ。

 

私は物心がついたころには親はいなかった。

孤児として難民キャンプを転々とし、気が付けば奴隷となっていたのだ。

幸いにも、女性としての尊厳が奪われるようなことは無かった。

どこの世界にも物好きはいるが、私の周りにはいなかったらしい。

 

 

ある日、私達奴隷を収容していた武装勢力のキャンプが傭兵集団の攻撃を受け、壊滅した。

奴隷も見境なく殺され、倉庫の奥で震えていた私を見つけるのも時間の問題だった。

 

 

 

でも、倉庫の片隅でどぶねずみみたいに汚れた私の前に現れたのは、傭兵なんかじゃなかったんだ。

 

 

 

 

「一緒に来ないか」

 

 

 

 

覚えている限り、初めて私に優しくしてくれた。

 

彼は私より1つか2つ年上の日系人で、イスラム系過激派組織の一員だった。

 

私を拾ってくれた彼らは、少し変わってた。

なんでも、周りの過激派グループとは考えが異なり、自爆テロはおろか女性差別も許さない組織で、構成員もほとんどが誘拐されたりして再教育を受けた外国人だった。

 

もちろん国連軍とも相容れないらしく、彼らは襲撃を繰り返していたのだ。

 

 

私は皆にとても優しくされた。

特に、最初に助けてもらった日系人のお兄ちゃんには。

 

彼には色々な事を教えてもらったし、常に尊敬の念を受ける彼は私の憧れでもあった。

私は、自然と戦闘員になることを志願したのだ。

 

 

「クロエ。それが君の名前だよ」

 

 

私は彼から名前という物をもらった。

 

本当にうれしかった。

まだ覚えている。歓喜して泣いてしまい、彼に頭を撫でられたこと。

 

彼は、血の繋がらない兄となった。

 

 

それからしばらくして、私は戦闘員としての才能があることが分かった。

お兄ちゃんは私が戦場に出る事に思うところがあったみたいだけど、何かの形で恩を返したかったから。

 

私が戦場に行けば、いっぱい敵を殺せたし、いっぱい物資が奪えた。

だから褒められた。

お兄ちゃんは悲しそうな顔をしていたけど、それでも褒められるのは嬉しかったのだ。

 

 

さて、いろいろあって、私は少年兵たちを率いる隊長になった。

 

いつも通り、私たちは戦場に赴く。

 

 

 

でも、ある日、待ち伏せにあった。

 

 

 

大抵、待ち伏せに遭遇しても返り討ちにしたり、撤退したりも出来たけど、その時は違った。

 

国連軍の、機械化した小隊に攻撃されたのだ。

 

 

 

そこで運命は決まった。

 

仲間を逃がして一人で戦っても、そうそううまくはいかない。

最後は装甲車の砲弾が近くに当たって吹っ飛んだ。

 

 

そうしてお兄ちゃんや仲間の事を考えつつ、私は生涯を終えたのだ。

 

 

 

 

 

が、気が付いたら未来の荒廃した世界にいた。

 

酷い所ではアフガニスタンよりも酷い、放射能で汚染されたアメリカ。

 

 

これが私の第二の人生。

 

そこで私は持ち前のスピーチスキルを生かして仕事を探し、運び屋になることが出来た。

 

戦いから離れ、色々な場所を巡った。私は西を歩いた。

様々な部族や人々が、必死に暮らしていた。

 

私はあれこそ人間本来の姿だと思ったものだ。

 

 

 

それから……それから、あれ。

 

 

 

なんだっけ。

 

なにか凄く重要な事があったはず。

 

 

思い出せない。

 

忘れちゃいけないこと。

 

 

語り継げない、でも背負っていかなきゃいけない事。

 

 

私は。

 

 

 

 

私は、何かをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大切な何かを、壊してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで回想、次から本編

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