Fallout 運び屋の少女   作:Ciels

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自称初投稿です。


第一章 Ain't That a Kick in the Head
第一話 墓地、運び屋


 

 

 

――かつて、戦争があった。

 

巨大な二つの国家、二つの価値観、二つの文化が激しくぶつかり合い、互いに殺し合った。

 

 

 

一方はアメリカ。 星条旗を掲げ、自由と民主主義を愛する者たち。

 

もう一方は中国。 共産主義による徹底管理で民衆を従えた者たち。

 

 

代理戦争や直接的な戦闘を経て、彼らは侵してはならない領域へと踏み込む。

 

 

核兵器。

 

大地を焼き、その後も人々を半永久的に苦しめる、悪魔の兵器。

 

 

誰が始めたのかは分からない。

 

だが、最初の一発が放たれると、報復のために幾つもの核兵器が世界に散らばっていった。

 

 

世界は、文字通り核の炎に包まれた。

 

人々は地下に逃げ込み、逃げられなかった者たちもわずかに生き残った。

 

 

それから200年。

 

かつて栄華を誇ったアメリカは失われた。

 

そして西部には、代わりに新たな国と部族が出来た。

 

 

西海岸を治める新カリフォルニア共和国(NCR)と、それに対立する強大な部族シーザー・リージョン。

 

200年経った今も、二つの勢力がダムの電力や権力を求めて互いにしのぎを削っていたのだ。

 

 

 

 

 

さて、それとはまた別の世界において、とある少女が死の危機に瀕していた。

 

 

 

この物語は、誰にでも愛され、誰にでも愛を向け、誰でも殺してしまう、狂った少女の物語。

 

 

 

 

人は、過ちを繰り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――男の声がする。

 

発生源は四メートル前、数は三人。

恐らく30台だろう。

 

酷く頭が痛い……なにがあったんだっけ。

 

 

稼ぎの良い仕事を受けて、運んで。

 

インターステート15を抜けて目的地のストリップ地区へ行くために、グッドスプリングスっていう町に寄ろうとしたんだ。

 

それで、確か……そうだ、キャラバンを装った奴らに襲われたんだ。

そのうちの一人の、スーツを着たへんてこなヤツに頭を殴られて。

 

 

 

「ん……」

 

 

私は目を開ける。

どうやら何かに寄っかかった状態だったらしく、目の前を見れば私を襲った男たちが何やら言い争っていた。

 

金はいつ払うんだ、とか、早いとこ埋めちまおうぜ、とか、物騒な事を言っている。

この場合埋められるのは……私だろう。

 

男たちの隣にはシャベルが置いてあり、あれで穴を掘って私を埋めるのだろう。

まずいなぁ、なんて思いながら私は特に危機感を抱いていなかった。

 

武器を取り上げられて、手も縛られている。

 

 

完全に自由は無かった。

 

 

周りを見渡してみる。

 

どうやらここは高台に作られた墓地のようで、辺りには墓標と思わしき木でできた白い十字架がたくさん建っていた。

私もここにある墓標の一つになるのだろうか。

 

そう考えると、悲しくなるばかりか、マシだと思ってしまった。

 

 

ここ、ウェイストランドでは墓をつくられること自体が珍しい。

 

飢え、時に襲われ、後には死体だけしか残らない。

誰にも気づかれず、死んでいくのだ。

 

 

 

「おい、こいつ起きたみたいだぜ」

 

 

一人の男が私の起床に気が付き、スーツの男に注意を促す。

 

スーツの男は咥えていたタバコを捨てて踏み潰すと、こちらへ向き直り、にやりと笑った。

 

 

「おい……」

 

 

連れの、グレートカーンズと呼ばれる部族の格好をした男が何か言おうとすると、スーツの男が制止した。

 

 

「相手に敬意を払わないのがカーンズ流かもしれないが……俺は違う」

 

 

特徴のある声でそう言った。

そして、スーツの男は懐を探ると、カジノのチップのようなものを取り出した。

 

私は目を見開く。

驚くと言うより、その手に収められているものをよく見るためだ。

 

 

「お前は仕事を立派に果たした」

 

 

そのチップは、私が運んでいるものだった。

軽くて、それでいてお金になる幸運のチップ……のはずが、最悪をもたらすチップになってしまった。

 

本当に運が悪いなぁ、私。

 

後悔をしてもどうにかなることではないが、それでも恨み言を言わずにはいられない。

 

 

「巻き込んでしまって申し訳ない」

 

わざとらしい溜息を吐いてそう言う。

なら解放してくれないかしら。

 

 

「こんな状況に置かれたら、自分の運の悪さを恨むだろう」

 

 

スーツの男がそう言って、チップをしまい、代わりに拳銃を取り出す。

 

もう恨んでます。

小声でそう言うが、おそらく聞こえていないだろう。

 

 

男の拳銃は、少し変わっていた。元の銃は、スライドストップの形状から、モハビ・ウェイストランドで広く出回るブローニング・ハイパワーだろう。

おかしいのは、目立ちそうな金色のフレームに金色のスライド。

それを包むような彫刻(エングレーブ)

ちらりと男の手から見えるグリップは白く、一体あの一丁に何キャップかけているんだろうか。

 

そんな、死ぬ前に気にするような事じゃない事を考えていると、男は銃を私に向けた。

 

 

「……だが」

 

 

 

私の頭を走馬灯が駆け巡る。

過去に起きたすべての事が、頭を駆け巡る。

 

 

楽しかった事、辛かった事、嬉しかった事、悲しかった事、そして。

 

 

 

 

 

「最初から決まっていたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がこの世界に来る前の事。




どうでもいいですが文字数が1919でした。
こんなところまでホモの魔の手が迫るのか・・・・・・(困惑)

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