東方小傘物語   作:寂しい幻想の刀鍛冶

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第30話 とある雨の日

 ~多々良小傘Side~

 

 

「今日は雨みたいね朱鷺子ちゃん」

 

「そうみたいですね小傘さん。あ、お茶を持ってきますね!」

 

天気が雨である今日も、何時もの様にお店を開いていた。

 

雨の日はあまり客や知り合いが来る事はないので実質暇である。

 

そう思っていると店の扉が開き、誰かが入って来た。

 

「いらっしゃいませ!ようこそ道具屋『傀儡屋』へって、貴方ずぶ濡れじゃない!?」

 

そこには雨に濡れてしまっている小さな角がある女の子が立っていた。

 

そのため私は急いでタオルを出してその子へと渡した。

 

「っわ!?」

 

「これで拭きなさい。そのままだと風邪ひいちゃうわよ?朱鷺子ちゃーん!!暖かい飲み物持って来てちょうだーい!!」

 

『わかりましたー!!』

 

その返事を聞いて私は女の子の方へと向き直った。

 

すると女の子が顔に疑問を浮かべている様な顔をしていた。

 

「なんで今日初めて会った私にこんなに親切にしてくれるんだ?」

 

「あら、それは私がお店の店長で、貴方がお客様だからよ?まぁ、そうじゃなくてもたすけるかもしれないけどね!」

 

その様な会話をしていると朱鷺子ちゃんが暖かそうな牛乳を持ってやって来た。

 

「ご苦労様朱鷺子ちゃん。あの子に渡してあげて頂戴」

 

「はい!どうぞ!体が温まりますよ」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

朱鷺子ちゃんから牛乳を受け取った女の子は、牛乳を少し飲むと息をついた。

 

「お、おいしい・・・」

 

「それはよかったです!!」

 

「・・・それで、貴方は今回はどの様なご用件で来たのかしら御嬢さん?」

 

そう私が聞くと女の子は俯いてしまった。

 

「雨宿りさせてもらおうと思って・・・・・・」

 

「そう、それならゆっくりして行きなさい。急いでるなら傘をあげるわよ」

 

そう言いながら私は近くに置いてあった売り物の唐傘を手に取って女の子に差し出した。

 

すると女の子は驚いた表情になって訊いてきた。

 

「いいのか?これって商品だろう?」

 

「えぇ、構わないわ。今はそれほど生活に困っている訳でもないし、道具も使われてこそ意味を成すと私は思っているからね」

 

私がそう答えると、女の子は傘を受け取った。

 

「・・・それじゃあ、もらうよ」

 

そう言いながら女の子は私に飲み終えて空になったコップとタオルを渡してきた。

 

「・・・そろそろ失礼する」

 

「そう・・・・・・困った事があったら此処に来てもいいわよ。手伝える事は協力するわ」

 

私のセリフを聞いていたみたいだが、それには答える事はなく女の子は傘を差して去って行った。

 

「・・・何ていうか・・・・・・何か抱えていそうな感じね」

 

「あれ?あの子はもう帰られたのですか?」

 

「えぇ、もう帰ったわ。私の飲み物はあるかしら?」

 

「はい!先程淹れたのがあるので持ってきます!!」

 

そう言うと朱鷺子ちゃんは奥へと走って行った。

 

はぁ、あの女の子とはまた会う様な気がするわね・・・・・・

 

 

 ~多々良小傘Sideout~


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