真・恋姫✝無双~とある男のそれなりに不幸な人生~   作:世紀末敗者寸前

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第六話

咲夜は自分の天幕に戻ってから今までのことを振り返ることにした

自分は確かに前世の記憶…この世界でいうと天の世界の記憶…らしいが…

まあこの世界の未来に近い記憶を所持していた為、当初は劉備や曹操、孫堅などとは関わりを持ちたくないと考えていたはず…

なのにだ…

 

運命は余程咲夜を嫌っているのだろう

 

樊城の太守になることを拒んだはずなのにいつの間にか領民や武官、文官の人たちの希望を受けて、樊城太守になっていて…自分の記憶を使ったり今まで学んできたことを活用しては領民の人たちに幸せになって欲しいと願っていたらいつの間にか樊城が他の領域よりも繁栄していて…

その影響があってか他の諸侯達もこっちを気にするようになって…

そしたらまたいつの間にか曹操とか孫堅と真名を交換する中になったり…

今日は劉備に何故か懐かれていたり…

 

 

 

「ふぅ…儘ならないか、やっぱり不幸なのかねぇ俺は」

 

 

劉封の体のせいなのか…それとも本来の自分が元々不幸体質なのか…あるいは両方なのか…

咲夜は度々こうして思い悩んでは、その解決策を探しているのだが…何分これは目に見える問題ではないのでどうにも出来ないのだ

 

 

そしていつも出る答えは

 

 

 

「ケ・セラ・セラ…だな」

 

 

結局こういった結論にしか至らないのだ

それでも前向きに生きていこうとするのが今の咲夜である

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

咲夜は一息入れ、次のことを考え始めた

 

それは先程真名を交換した劉備こと桃香と楽進こと凪のことであった

 

 

それぞれ教えることは異なるがこの進軍の最中に可能な限りのことを教えて欲しいというのが二人の希望

 

 

 

「凪に関しては俺の独断でどこまで強くするかは決められる…けど桃香に対しては……雛里と風の二人と相談して決めるか」

 

 

さらさらと咲夜は持ってきていた木簡に目録を書き始めた

書いているのは2本の木簡にそれぞれ桃香用と凪用である

 

 

それを約30分かけて作成し終えた後に少しひと眠りしようとしたその時…

 

 

 

ヒュンッ

 

 

咲夜の背後に何者かがやってきた

 

 

「…影夜か」

「(コクッ)」

 

 

咲夜がかつて育成した忍び部隊の一人で主に諜報を任としている者である

性名を捨て、咲夜から与えられた真名のみで生きている者の一人である

咲夜が忍者部隊としたのはかつて戦争で両親や親類を失って行き場を失った子供たちである

その中で希望を集い、厳しい訓練を積み、それをやり遂げた者がこうして忍びとなって生きているのだった

樊城にはこういった忍びが約300人はいる

因みにそうならなかった子供達は沢山いるが彼らにも新しい場所を提供したりしているため、問題は一切起こっていない

 

 

 

「…樊城?それとも襄陽から?」

「…(カキカキ)【襄陽よりお手紙を】」

「そう…なら貰えるかな」

「(コクコク」

 

 

影夜は昔、賊によって両親が目の前で殺されたため、その時から話せなくなったそうだ

影夜は両親の配慮によって物陰に隠れたため難を逃れたのだが…

咲夜に助けられた当初は重度のショック状態で何も食べず飲まずで今にも死にかけそうな状態だった

それを助けたのが咲夜であり、咲夜は影夜の親代わりとなって仕事の合間をぬって影夜の面倒を見てあげていた

その成果があってか、影夜は少しずつ心を開くようになったのだ

今ではこうして咲夜の影となって精一杯働いている

 

 

 

咲夜は影夜から手紙を受け取るとそれを開封し、読み始めた

その間、影夜はというと…

 

 

 

「~~~♪」

「えっと、何々?(ナデナデ)」

 

抱き枕状態になっていた

咲夜の体系は雛里と大して変わらない為、咲夜の抱き枕係の射程圏内なのだった

 

 

「……ふぅ、また劉表の狸爺が襄陽に攻める準備をしている気配有り…懲りないねぇ。……いっそ、徹底的に滅ぼすか?(ボソッ)」

「(ビクッ)」

「ああ、ごめんごめん。驚かせた?」

「(フルフル)」

「さて…(サラサラ)よし、これ位で良いかな? 後は狸宛てに送る手紙をっと…」

「~~~♪」

 

 

 

咲夜は襄陽宛、樊城宛、そして劉表宛に手紙を書き、それを影夜に手渡した

 

 

 

「よし、これを持って行ってくれるかな? 劉表のいる荊州城にはいつもの通り矢文で。わざわざ使者を立ててやる義理はないから」

「(コクコク)」

「ふふ、この戦いが終わったら一緒に遊んであげるからね。頑張ってよ、影夜」

「//////」

 

 

 

影夜は一瞬顔を真っ赤にすると、すぐさま自分の仕事に戻って行った

咲夜以外に気配を悟らせずに…

 

 

 

「やれやれ…あの狸爺、残った城は荊州と江陵辺りが有力だからって面倒な事だ。ん~、やっぱり早めに手をうったほうがいいか…このままにしておくと無駄に領民の人たちに被害が及ぶ可能性もある……ふぅ、まずはやっぱり劉表軍の頭となっている蔡瑁と張允を捕えて…向こうの有能な人材を引き抜くか。内側からボロボロにしてやる」

 

 

末恐ろしいセリフを吐きながら今後の対劉表軍殲滅作戦をキーワードだけ木簡にメモして行く咲夜

その背後には鬼が居た

 

 

 

その為暫くの間…咲夜の天幕には誰も近寄ることが出来なかったそうだ

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日…

 

 

 

 

「ふぁ~~~…もう朝か」

 

咲夜は何時も決まった時間に起きている

だがいつもと違うのは咲夜の周りには散らかった木簡が幾つも転がっていたこと

そして咲夜は寝台ではなく、何故か天幕の中の床で眠っていたこと

咲夜の体には幾多の生傷と打撲の跡が残っていた

 

 

「あ~、今日はあの日かぁ~…ついてない」

 

 

あの日というのは…

 

 

 

ガンッ!!!

 

 

「いったっ!?」

 

 

ぐきっ!!

 

 

「ギッ!!!?」

 

 

 

ゴンッ!!!

 

 

「んぐぁ!?」

 

 

 

咲夜は起き上がって直ぐに頭をぶつけ、足を捻り、そのまま側頭部を寝台に打ちつけた

 

 

 

「いっ……たい……ハァ……」

 

 

そう、咲夜の言うあの日というのは…咲夜に不幸が降りかかる日であった

といっても丸一日続くものではない

精々続いて半日といった所だ

洛陽に居た際に詠の不幸の日と絡んだ時は咲夜が真剣に死ぬ寸前にまでいった程だった

だが一つ違うのは咲夜の不幸体質は周りに飛び火しないこと

咲夜自身のみがこの不幸を被るのだ

だがこの日に至っては咲夜は自分の周りに人を寄せ付けない様にしていた

何故なら、自分の不幸に他人を巻き込む可能性があるからだ

飛び火はしないが巻き込みはする

無駄に厄介な体質である

 

 

 

だがここで咲夜はある重大なミスをしていた

 

 

「……あれ? そう言えば今日って華琳さん達が食事に来る日じゃね?」

 

 

サアッと咲夜の顔から血の気が引いた

 

 

 

「(ヤバ…もし今日華琳さんが俺に付き添ったりしたら……マジやばい……くっ、こうなったら皆に協力してもらうしか……いや、待て華琳さんのことだ。ここは正直に話した方がいいのでは?いや、一応不可侵の関係ではあるため多少は信頼し合うべきだが、こんな変な弱みはあまり握られたくない……どうする? どうする?どうするよ俺!?)」

 

 

再び悶え苦しむ咲夜

 

 

暫く考えこんだ後…

 

 

 

「…正直に話そう。無駄に波紋呼びたくないし。まあ華琳さん達が来る前に不幸が終わってくれるのなら万々歳なんだけど」

 

 

 

真っ向から理由を話すことにした

 

 

 

「それにしても…幾ら悲劇の将軍とか不幸な人だって言われてたからって…これはないでしょ?」

 

 

実は咲夜は気付いていないが、前世から咲夜はあまり運が良い方ではなかったのだ

その為、特典で引いた【前世での能力引き継ぎ】という物は運動神経や頭脳だけでなく、不幸値という面も引き継いだのだ

劉封に憑依したのもそれが一因である

加えて、劉封の体がもともと持っていた不幸体質に加えて、咲夜の引き継いだ不幸値が合わさったのが今の咲夜だった

 

 

 

それに気付かない咲夜は…

 

 

 

「(ガンッ) …痛い、ハァ~~~……不幸だぁ」

 

 

 

酷い目に合う羽目となっていました

特典もいいことばかりではないのです

加えて言うのなら咲夜の引いた【死亡フラグ回避】の能力ですが、これもどんなフラグを立てても死なないだけで、死ぬギリギリの目にはあうという意味もあったそうな…

唯一まともな特典は武具だけだった

 

 

こんなことになったのも実はあの山田という咲夜が転生する前に合った女性によって加えられた要素であった

こんなことをした理由はというと…

 

 

「あん? 私に気にしていることを抜かしたからよ」

 

 

だそうです

 

傍若無人にも程がねぇ?

 

 

 

だがいくら山田でも手を出し過ぎることが出来なかったので、こうして特典にちょっとばかりのマイナス要素を加えることしか出来なかったのだ

 

 

 

だがそれでも咲夜にとって地味にきついものだった

 

 

 

「くっくっく…ばれなきゃいいのよ」

 

…どSでした、この痴女

 

 

 

 

 

 

ということもあって、咲夜は本日はUnhappy Timeなのでした

 

 

 

咲夜は身支度を整えるとすぐさま皆の集まっている場所に赴き、全員の前で宣言した

 

 

「…今日は、あの日です」

 

 

 

 

ピクッ…

 

 

 

それを聞いた瞬間、皆の目が一瞬で咲夜を憐れむような顔をし出した

 

 

 

 

「あ~、お兄さん。大丈夫ですか~?」

「…あ、あはは…も、問題ないよ。ただここに来るまでに何回も躓いたり頭打ったり、何故か頭上から色々なものが降ってきたりしただけだから…OTZ」

「だ、大丈夫じゃない気がします」

「おいおい、大丈夫か?」

「咲夜様、今日はもうずっと天幕に居た方が」

「…いや、正直外に居た方がまだましかもしれん……加えて、今日は華琳さん達が食事に来る予定だ」

「「「「え゛…」」」」

「…何その反応は?」

「じ、実は…その後で皆で咲夜様に伝えようと思ったのですが…その…」

「あ、ああ…桃香達も食事に来たいって...」

「OTZ…俺の不幸加速中」

「さ、咲夜様」

 

 

 

咲夜…先程からずっと凹みっぱなしである

 

 

 

「皆…一応言っておくけど気を付けて……特に女性。何故か着替えていたり湯浴みをしている時とか何故か俺が飛ばされたりするから……」

「「「「は、はい!!(べ、別に咲夜様なら構わないのだけど///)」」」」

 

 

地味にフラグ立ててもてているのだが、それに全く気付いていないのも咲夜クオリティ

 

 

 

それから華琳や桃香達が来るまでの間…咲夜はもうドリフの罰ゲームとしか言いようのない不幸を味わった

 

 

何故か頭上からたらいが落っこちてきたり…

何故かどでかい鳥に服の先を咥えられてリアルスカイダイビング経験したり…

その後で女性兵士たちが水浴びしている所に落っこちたり…

 

 

 

気付けば体中ボロボロになっていた咲夜(女性陣の所に飛び込んだ際は助けられるだけで何もされなかったのだが…)

 

 

 

 

「…もういや…疲れた………」

項垂れて真っ白な灰となった咲夜

さながら明日○ジョー的な絵柄がぴったりだった

 

 

 

「あうぅ…さ、咲夜様ぁ」

「あらら、お兄さん。今回は特に酷いみたいですね」

 

 

身体の治療をしながら食事の用意を手伝う風と雛里

秋葉と焔耶はそれぞれ桃香、華琳を呼びに行っている

因みに不幸スキルは夕方になってから効果が薄くなるため、今の時間を見計らって咲夜は食事を用意し始めたのだ

下準備は雛里や他の料理の得意な兵士たちに任せておいたため手間は殆ど掛かっていない

 

 

 

 

 

「あら、どうしたの?」

「あ、あれ? 曹操さん? それに……って咲夜さん!? ど、どうしたんですかその怪我!?」

 

 

暫くして秋葉に連れられ、華琳、春蘭、秋蘭、桂花、凪、真桜、沙和、流流、季衣

陣の方は曹仁、曹真、曹純、夏候恩という将達に任せたそうだ

 

 

桃香の方はというと愛紗、鈴々、朱里が焔耶に連れられてきた

陣の方は靡芳、靡竺という二人に任せたそうだ

 

全員咲夜の姿を見てひどく驚いたようだった

 

 

 

「ああ…実は」

 

 

 

咲夜は自分の体質のことを話し始めた

すると…

 

 

 

「グスッ…さ、咲夜さん。い、今までそんな苦労を(ウルウル)」

「…良く今まで生きて来れたわね、ある意味感心するわ」

 

 

桃香は泣きだし、華琳は半分呆れたような顔をした

だがその場に居た全員の顔には咲夜に対して憐れむ目が向けられた

 

 

 

「…あの、そんな目で見ないで…いやマジで。俺はもう既に割り切ってるから」

 

非常に不本意な同情を受けるのはもう慣れたという顔をして普通に接する咲夜

 

 

だが食事が始まるまでの時間、咲夜はずっとそんな目で見られ続けた

 

 

 

 

 

 

 

やがてすべての食事の用意が終わり、皆用意されていた場所に案内された

 

 

 

 

 

「さて咲夜、進軍中の食事は本来味よりも保存を主としている。だが貴方は私を招待した。その意味は分かっているのね?」

「まあ俺の軍は補給した日には御馳走を作るって決まっているし…多分他の軍よりも食事はいいと思うよ? 色々と悪い所を改善していったからね」

「そう…なら期待させてもらうわ」

 

席順は

 

桃香・咲夜・華琳

愛紗・焔耶・春蘭

鈴々・秋葉・秋蘭

凪・真桜・沙和

朱里・雛里・桂花

稟・風・季衣・流琉

という風に三人一組状態で座っている

最後のは一人余る形となったので大きめの席に座ることに

席が円状になっているので誰でも気軽に話しかけやすくなっている

 

 

 

「さて本日の食事の献立は…(パチンッ)」

咲夜が指を鳴らすと食事を持ってきた女性兵士たちがやってきた

ただし、着ている服が和風メイド服だった

 

 

「…さ、咲夜さん? この人たちの服は?」

「ああ、それは俺が職人に考案を渡して作らせた給仕服だよ」

「か、可愛い…」

「こういった服は樊城に来れば手に入るよ?」

「「「「ほ、本当に!?」」」」

 

 

おしゃれに興味津々の子たちが咲夜のセリフに喰らいついた

特に沙和が…

 

 

「で、でも~、阿蘇阿蘇にはそんなの載ってなかったの~」

「それはうちの中で情報規制を厳しくしたからだよ。国内が安定しないうちは内部の特産とか新しい物は外に伝わりにくくしたわけ」

「うう~、他にはどんなものがあるの~?」

「…まあそれはいずれ来た時のお楽しみということで。それよりも今は食事を楽しんでね」

 

 

その日用意したのは味噌煮込み饂飩と味噌煮込みおでん他にも色々と用意し、それにちょっと何か摘まみたいという人のために酒とフライドポテトを用意しておいた

勿論、一から作るのは結構大変だったようだ

特に油の臭いの面や饂飩を一から作る作業、おでんの具作りなど大変な事盛りだくさんだったが…

 

 

「では…頂きましょう」

 

パクッ…モグモグ……ッ!!!

 

 

 

「お、おいしぃ~~~~~~♪」

「これは……今までに食べたことのない」

「美味いのだ~~~♪」

「…いいなぁ、雛里ちゃん。いつもこんなの食べてるの」

「そ、そんなことないよ!? わ、私がこれを食べられるのは進軍中は本当に時々だから!!」

「むぅ…今日のおでんは中々……秘蔵の酒を持ってくるべきだったなぁ」

「秋葉…お前な」

「……(これは以前食べた味噌汁という物に似ている…だけどこの麺は何かしら。こしがあって…)」

「(がつがつがつがつ)」

「姉者、もう少し落ち着いて食べてくれ。流石に恥ずかしいぞ」

「ふ、ふん!! 男が作ったにしてはまあまあじゃないの!!」

「あらら~、桂花ちゃんは素直じゃないですね~」

「ふむ…それにしてもこんな味は食べたことがありませんね…」

「(もぐもぐもぐもぐ)おいひぃ~~♪」

「ああ、もう季衣。ほっぺに色々と付いてるよ」

「咲夜様! 本当に美味しいです」

「ほんまやな! 特にうちはこの芋の揚げ物が好きや!」

「沙和はこの煮物が好きなの~」

 

 

各々に食事を楽しんでくれているようだった

 

 

「楽しんでくれてなによりだよ」

「…咲夜」

「何ですか?」

「これは長い間持つ物なの?」

「いえ、味噌は黴が生えやすいのでそうとは言えませんね。だからこそ補給して直ぐに作ったんですよ。長期にわたって保存できる物は他にありますから」

「…おしえな「駄目です」…即答したわね」

「当たり前でしょう。これらは樊城で生まれた食事なんですから。それに味噌は色々と工夫しやすいんですよ」

「…例えば?」

「そうですね…味噌ラーメンとか味噌御握り、魚の味噌煮込みとかも作れますからね」

「…ならまた訪ねさせてもらうわ」

「厄介事なしでお願いします」

「分かってるわよ」

 

 

 

 

食事会が終わり、咲夜は片付けに向かった

その間、女性陣は各自の天幕(陣)へと戻り(移動し)、ガールズトークをすることとなった

 

 

 

→劉封陣にて→

 

「皆さん、どう思いますか?」

「風さん、やっぱり私は桃香様、曹操様のお二人はいずれ咲夜様にとって障害になり得る方だと思います」

「そうだな…桃香の方はまだまだだがこの進軍の際に咲夜様が色々教えるみたいだし…それに愛紗、鈴々、朱里と粒玉も揃っている。これに兵力と名声が加われば恐ろしい敵だ」

「曹操の方は着々と力を付けていっているし、覇道を往く奴だ。桃香様よりも樊城に攻めてくる可能性が高い…と私は思うのだが……合っているか?」

「焔耶ちゃん、正解です。その調子でしっかりと考えることを止めないでくださいね。では残った諸侯で警戒する必要のある勢力といったらどこでしょ~?ふぅむ…秋葉ちゃん」

「俺か? そうだな…とりあえず当たり前だが劉表だな。奴とは領土が隣合わせだし、襄陽の件もあるからな。後は……西涼の馬騰、幽州の公孫賛、益州の劉障、長沙の孫堅、南陽の袁術、それに…ここ最近噂になっている【天の御遣い】が落ちたと言われている袁紹だな」

「正解です。加えていうのなら孔由、鮑信、韓馥、張燕、張魯、丁原などもまだまだ油断ならない勢力ですよ~」

「私達の勢力、樊城・襄陽は他の領域に比べて裕福な上に総兵力が先の戦いの捕虜たちを加えて約60000、将兵の数も他に比べてかなり多くなっています。そういった面では樊城・襄陽のどちらかが落ちても拙いことになるというわけです。だからこそ、咲夜様は出陣の際、鉄壁とも言える守りで自領を固めたんです」

「それに襄陽を守っているのは紫苑、杏、麻理に燐花と厳重過ぎるといっても良い位に守りに長けてる皆が守っているし…樊城の方も汝南への国境付近は厳重な罠が敷かれているし、警備も万全。とりあえずそれで少しは安心できてるんだよな」

「汝南…確か袁術が治めている領土だったな」

「そういうことです~。まあ悪く言えば私達は袁術と劉表に挟み打ちということも有り得るんですけどね~。でもまだ江夏の地に劉祥さんもいらっしゃいますから今すぐに袁術が攻めてくるということはないでしょう。…袁術がアレなので少し不安ですけど」

「「「ああ…」」」

 

 

三人ともそれだけで納得してしまった袁家クオリティ

 

 

 

「それにしても…天の御使いが袁紹のいる渤海に落ちたなんてなぁ」

「でもその占いだってあの出鱈目で有名な管路が占った物なんだろ? 当てにならないだろう」

「いえ~、報告によるとその人は男性で何でもキラキラと輝く服を着ていたとか~」

「…それならもう既に咲夜様が似たような服を作っているだろう?」

「そうですね…現状では全く分かりません。でも私は今は問題ないと思いましゅ」

「…雛里がそういうのなら」

「風も雛里ちゃんの意見に同意ですね~」

「俺もだな、今こう考えていても仕方がない。それよりも今は実のある話をしようじゃないか!!」

「実のある話? 秋葉、それは一体…」

「コホン…【第一回、咲夜様を男性として好いている人はいるか居ないか!! 大告白大会!!】」

「「えええええええーーーーー!?」」

「成程~、それは確かに興味深いのですよ~」

「チョッ!? 風!! なんてことを言うんだよ!!」

「しょ、しょうでしゅよ!! そ、そんなふ、不敬な…///」

「ふむふむ…その反応を見る限り、雛里ちゃんはお兄さんが好きということですね~」

「あわわ…そ、それは…しょの///」

 

反論できずに顔を真っ赤にする雛里

 

 

「他にも今留守にしている奴だと…紫苑、麻理、杏は確定か? 燐花はちょっと難しいな。あいつ、普通の恋がしたいって言ってたからなぁ」

「他国の将だと…女の勘では楽進将軍と桃香様が怪しいですねぇ~」

「(プシュ~~)///あわわ…あわわ///」←フリーズ中

「いや、風。流石に今日会ったばかりで好きになるなんて」

「甘いぞ焔耶!! 例えるなら出来たての胡麻団子に更に砂糖と蜂蜜を加える位に甘いぞ―――!!!」

「うえ…それは確かに甘ったるそうだな」

「そういう意味ではないのですよ~。恋はいつも突然。そういった言葉が咲夜様の小説に書かれていたではないですか~」

「う…だ、だけど流石に現実でそんなことが起こるわけが」

「女心は雲のようだ。そうも書かれていましたよね~? 女性の心は変わりやすいのですよ~、ましてや恋心なら尚更なのですよ~」

「ウグッ、な、なら風はどう思っているのだ!?」

「好きですよ~」

「俺も好きだな。咲夜様は今までに見ないいい男だ。確保したいというのは女として当然だろう?」

「ううぅ~~…」

「なら焔耶ちゃんはどうなのですか~?」

「……わ、分からない」

「ふむぅ、まあ時間はまだまだありますよ。ゆっくり考えるといいですよ~」

「……うん」

「かっかっか!! あの魏文長も咲夜様のことになると骨抜きじゃな!!」

「ウグッ…」

「あううぅ…あわわぁ///」←未だフリーズ中

 

 

「やれやれ…お兄さんはこれだけ好かれているというのに。当の本人は全く気付かないのですからねぇ~。困ったものですよ」

「おうおう、鈍感王とはまさにあの人のことだな」

「これこれ宝譿、そういうことは言ってはいけませんよ~」

 

 

 

→劉備陣にて→

 

「どうだった朱里」

「そうですね…まず曹操軍ですが、いずれ私達がより大きくなった時に真っ先に対立するのは曹操軍です。その理由は思想の違いですね」

「???」

「…それって、やっぱり私の考えが甘いから?」

「…曹操さんが目指すのは覇道。その道を往くために障害を力で排除し、己が天命を全うすべし。それが曹孟徳のやり方ですからね。桃香様の思想とは真逆なんですよ」

「…でも私は諦めないよ。咲夜さんに色々と教えてもらって私は私の理想を現実にして見せる。難しいかもしれないし…他の人には受け入れてもらえないかもしれないけど…でも私は諦めないよ!!」

「桃香様、私達はそんな桃香様だからこそ、一緒にその道を歩んでいきたいと思ったのです。桃香様が揺らぐことないように、桃香様の理想を現実とするためにこの関雲長、存分にお使いください!!」

「愛紗ちゃん…ありがとう」

「鈴々も難しいことは分かんないけど、頑張るのだーーー!!」

「鈴々ちゃん…」

「ふふ、桃香様。私も精一杯頑張らせていただきます。ですから、桃香様は私達をもっと頼ってくださいね」

「うん♪ でも皆にばっかり任せるわけにはいかないよ? 私自身ももっと頑張らないと…」

 

 

「所で…その咲夜殿の方は如何致すのだ?」

「こちらから攻めたりするのは絶対に禁物にしましょう。樊城・襄陽は他の領域に比べても異常なくらいの差があります。ですから私達が城を任された際には直ぐに同盟、もしくは曹操さんと同じように不可侵の約束を取り付けることが良いと思います」

「4大将軍に4軍師…それに兵力が確か以前まででも50000はあったそうだな」

「はい、それに他にも有能な将や文官も揃っていますし、軍師金や兵糧のことも殆ど問題なく調達することが出来ます。相手にすれば確実に負けるでしょう」

「つまり…どういうことなのだ?」

「(ガクッ) り、鈴々ちゃん? 少し黙っていてね?」

「分かったのだーー!!」

 

 

鈴々は何処かに走って行った

 

 

 

「コホンっ。さて…とりあえず咲夜殿には一定の距離を保つということでいいですか、桃香様?」

「……(ボー…)」

「と・う・か・さ・ま?」

「Σえ、な、何!?」

「? どうかされたのですか、桃香様?」

「んっとね…ちょっと咲夜さんのことを考えていたんだけど……その、ね。な、なんだか咲夜さんのことを思い浮かべると……そ、その///」

「…(なあ朱里、これって…)ヒソヒソ」

「…(た、多分…愛紗さんの思っている通りだと)ヒソヒソ」

「(ま、拙くないか?)ヒソヒソ」

「(と、とりあえず今は気付いていない様ですし…黙っておくほうがいいかと)ヒソヒソ」

「??? 二人して何を話しているの?」

「「な、何でも有りませにょ?!」」

「???」

 

 

 

咲夜…地味にフラグ建設

それが死亡フラグなのか…ただの恋フラグなのか

それを知る者は誰もいない

 

 

 

 

→曹操陣→

 

「やはり咲夜は現在最も警戒する必要のある人物ね」

「華琳様、劉備も今はまだ力無き物ですが、武将には関羽と張飛、そして軍師には伏龍と謳われている諸葛孔明が居ます。私は劉封よりも劉備の方が華琳様の覇道を阻害するものになると思いますが」

「桂花、それは分かっているわ。でもそれよりも恐ろしいのは咲夜が敵に回った時よ。劉備と異なって咲夜は名声に兵力、そして有能な将と軍師が揃っている。今の私たちでは敵わないわ」

「その面なら既に不可侵の約束を取り付けてありますし…問題はないかと」

「そうね…でも秋蘭、物事には絶対なんてないのよ」

「…そうですね、申し訳ありません」

「だから一番いいのは咲夜をこちら側に入れることなのよ」

「それは難しいのでは?」

「そうね稟。普通のやり方ならあいつは懐柔なんてされないでしょうね。でも普通じゃないやり方ならどうかしら?」

「…華琳様、それはもしかして…」

「ええ、あいつとの間に子供が生まれてしまえばいいのよ」

「「「な、なんだってーーーー」」」

 

 

無茶苦茶過ぎる…

 

 

 

「まあそれは冗談よ。一応は有効な手ではあるけどね」

「そ、そうですよね…」

「まあ兎に角、あの劉封がこちらに入ってくれるようになればよし。ならなければ我が覇道を脅かすものとして見なければならないわ」

 

 

 

 

それから各陣営で話し合いが行われていた

 

 

 

 

その頃、咲夜はというと…

 

 

 

「えっと…とりあえず凪は氣が使えて身体能力もそれなりにあるから…烈風拳入れるとして…ライジングタックルとか疾風迅雷脚とか飛燕疾風脚、後ネタとしてKOFのザキさんのヤキ入れとか教えてみようかな?」

 

 

…何やらいらないことを考えていたようだった

 

 

 

「後は…とりあえず体を軸として、身体全体を使った技と合気道とかみたいにカウンター主体で力を殆ど使用しない技とかも教えるといいかなぁ」

 

 

サラサラっと木簡に記していく咲夜

 

 

 

「やれやれ…とりあえず凪のはこれでよしっと…次に纏めるのは桃香の分だな」

 

 

咲夜は自身の仕事をこなす序に二人のために色々と考えたものを木簡に書き記していった

 

 

その夜、各天幕では明りが全く消えなかったそうだ


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