真・恋姫✝無双~とある男のそれなりに不幸な人生~   作:世紀末敗者寸前

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第三話

帝からの使者が来てから数日後…

襄陽も一段落した為、咲夜は護衛に焔耶と洛陽には言ったことのないという雛里を連れて洛陽に向かうことになった。

その間、襄陽は紫苑、燐花、風に。

樊城は劉泌、秋葉、そして新たに入ってきて頭角を見せ始めた姜維や諸葛瑾らに任せた。

 

 

 

 

「それにしても…帝様は何の用があって咲夜様を呼んだんだろうな…前回って何の為でしたっけ?」

「…劉弁様、劉協様に世の中のことを教えてやって欲しいと頼まれたから俺の知っていることを話したんだよ。でも霊帝様自身と劉弁様に聞かせることは出来なかったがな」

「? どうしてですか?」

「十常侍。主に張譲。霊帝様には無駄な知識を付けて欲しくないみたいだな。自身の操り人形にしておきたいんだろうな。そして劉弁様はハッキリ言うと劉協様よりも物覚えは良い方じゃない。つまり…」

「…第二の霊帝様を作るため…ですか」

「そういうこと。加えて言うのなら劉弁様は元々正式な皇族の者同士の交際ではなく、現大将軍の妹との間に生まれた子だ。その為、今朝廷では劉弁様派と劉協様派とで対立が日に日に激しくなっているそうだ。だからこそ世は乱れているんだよな」

 

 

 

そう言い終えると焔耶も雛里も何も言わなくなってしまった

少しは知っていた程度であった、現漢王朝の腐敗気味を生で聞いたのだから仕方のないことなのだろうが…

 

 

 

「…これから……この国はどうなっていくんでしょうか?」

 

 

雛里が恐る恐る咲夜に尋ねた

だがその目は何か悟ったような…そんな気配を漂わせていた

 

 

 

「…十中八九、朝廷の混乱に乗じて大反乱がおこる。現にその徴候が今起こり始めている。ここ最近、冀州、揚州、荊州、徐州、豫州などを中心に中規模な暴動が起こっている。それも一度や二度でなく幾度もそれだけのことが起こっている。これはもうただの暴動じゃないだろうな」

 

咲夜が知っているこの時代の知識、その中で後漢の衰退の中起こる大反乱、それは黄巾の乱だ

184年(中平1年)、太平道の教祖張角を筆頭とし、その弟張梁と張宝らが主犯者となった大規模な農民反乱である

「蒼天已死 黄天(夫)當(当)立 歳在甲子 天下大吉」というキャッチフレーズはかなり有名だろう

だがこれと全く同じことが起こるとは限らないだろう

この世界は咲夜の知識とは少しかけ離れている部分がある

だからこそ咲夜は今まであらゆる可能性を想定して様々な事に対処できるように準備はしていた

 

 

 

洛陽に着くとまずは謁見の間に案内された

霊帝とその後ろには張穣率いる十常侍の姿が…

 

ここに呼び出された理由は最近起こっている反乱を鎮めるために軍をだして欲しいという要請だった

それについて咲夜は疑問に思うことがあった

この洛陽は現在、董卓や何進大将軍らを筆頭にそれなりに名を連ねた将軍が居るはずなのだ

そのはずなのに態々咲夜に出兵要請

加えて董卓や賈駆は勿論のこと、他の重臣が全く姿を見せていない

今ここに居るのは非戦闘員であり、私腹を肥やしている駄宦官だけだった

それを見て何となく分かったことがあった

つまりは戦力不足になってきたのだろう

 

相手は数で勝る元農民の反乱軍

今はまだ指導者が出ていない様だから数の暴力のみみたいだが…

その反面、朝廷は現在最低限の軍しか保有することが出来ていない

つまりは多くの兵を雇えるだけの金がないのだろう

だから過去の威光を利用して諸国の太守達にこうやって無理に従わせているのだろう

もし、これに従わなかったら朝敵とされるからな…

 

 

 

「…(断れんな流石に…ハァ、仕方ない。皆に伝えた後、領民の皆にも伝えておくか)」

 

 

 

咲夜は渋々その要請を承諾し、その後劉協の元に案内された

 

 

 

また霊帝と劉弁に会うことが出来なかったのだが…

 

 

案内された部屋には董卓、賈駆、華雄、呂布、陳宮、そしてまだ会ったことのない女性と劉協が居た

 

 

 

「よ、久しぶり」

「あ、咲夜さん」

「咲夜、手紙読んで来てくれたのね」

「ん、まあな」

「……咲夜、おなかすいた」

「れ、恋殿~。いきなりそれはないと思いますですよ?」

「ふははは! 仕方ないだろう、咲夜の作る食事は美味いのだからな!!」

「へぇ、ってことはこいつが劉封かいな」

「…えっと、貴方は?」

「自己紹介が遅れたなぁ。うちは性を張、名を遼、字を文遠や。よろしゅう」

「ああ、こちらこそ(…何で関西弁???)」

「咲夜、久しぶりなのじゃ!!」

「劉協様こそ、お久しぶりです」

「むぅ~~、咲夜。ここには月達以外は誰もおらん。真名で呼んでたも」

「…はい、承知しました。聖様」

 

 

「うむ、でじゃ!! 早速咲夜の作る珍しいものを食したいのじゃ!」

「ふふ、承知しました。月ちゃん達はどうする?」

「へぅ、では頂いてもよろしいですか?」

「そうね…丁度お昼時だし、ボクも貰うわ」

「何や? 劉封が作るんか?」

「ああ、霞は知らないのだったな。咲夜が作る料理は絶品なのだ!」

「はいなのです!! 咲夜殿が作ったあの甘~いお菓子は最高なのです!!」

「ほぅ、それは楽しみやな!!」

「………いっぱいたべる」

「…あ、あはは…まあ期待にこたえられる様にするよ」

 

 

 

「ん、そう言えばさっきからあんたの後ろに居るの…焔耶は分かるけど、もう一人は初めて見るわね」

「あ、紹介が遅れたね。この子は先日、うちの軍師であり文官でもある鳳士元だよ」

「は、初めまして!! ほ、ほうし、ほうしげんでしゅ!!? (がりっ)~~~~~っ!!」

「あ~、雛里。あんまり緊張しないの。後口の中見せてみなさい、舌噛んだんでしょ?」

 

 

 

この数日で雛里への対処も慣れた咲夜だった

 

 

 

その後、咲夜はとりあえず簡単に作れるお菓子を作ってあげた

というよりも前もって少しだけ用意はしていたのだ

以前来た時、恋が無茶苦茶食って咲夜はその食すスピードに追い付くほどの速さで恋が満足するまで手を止めなかったのである

あの時のことを思い返すだけで腕が痛くなる思いがする咲夜だった

 

 

 

その後はいつもと同じように劉協に洛陽外のことや自分が経験してきた旅の体験談を話したりした

この大陸の外のことには月達も興味を持ったようで皆真剣に聞き入っていた

 

 

 

だがそんな楽しい空気も劉協のある一言で分散してしまった

 

 

 

 

「のう…咲夜」

「はい、どうかなさいましたか聖様」

「…主は漢王朝がこれからどうなっていくと思う?」

「…………それはどういう意味でしょうか」

「誤魔化さんでもよい。分かっておるのじゃ、もうこの漢は長くはないということが…」

「っ…!!」

「…父様と弁兄様に意図的に会わせなかったり、十常侍が裏で色々とやってるのは聞いてる」

「…誰から?」

「何進大将軍」

「っ!? 何であいつが…」

 

 

ハッキリ言うと何進にとって劉協という存在は邪魔なだけな存在である

何故なら何進は劉弁を時期皇帝の座に押し上げて自身の立場を更に強くしたいという野心を抱いているためである

なお、この考えは現大后である何進の妹も贅沢な生活を手放したくない一心で何進に賛同しているそうだ

つまり、劉協にそういった裏の事情を話すのは何進にとってデメリットしかないともいえるのである

 

 

だが咲夜や詠、音々音、雛里などの有能な軍師はその思惑を見抜いていた

 

 

 

「…成程、何進ってただの小心者ってわけじゃないのね」

「いや、多分あの鶏野郎には多分助言者がいるんだろうな。じゃなきゃこんな先を見通したこと出来ないぞ」

「それについてはねねも同意するのです。でも一体誰が…」

「…何進さんが更に堅固な権力を持つことによって利を得ることが出来る人物…それだけでもかなり多くの人がいます。絞り込むには情報が足りないかと」

 

 

 

「? どういうことや?」

「…簡単に説明すると何進は誰かに助言されている」

「いい? 霊帝様の体は正直言ってかなり悪くなっているわ。つまりもう先が殆どない。そんな中、何進や張穣みたいな連中はどうにか今以上の権力を得ようとするわ」

「でも今は劉弁様と聖様という二人の次期帝候補がいるのですよ。だから、権力を得るには取捨選択を強いられるのです。つまり、どちらかしか選べないのです」

「ですが何進さんにはその選択肢という選択肢を撤廃する方法も有ります。例えば、劉弁様が次の皇帝の座についたとします。そうなると何進さんは自然と強大な権力を得ることが出来ます。逆に聖様が皇帝の座についたとします。その場合、何進さんは今と殆ど変らない権力しか得られません。そればかりか場合によってはその権力を失う恐れさえあります。ですが、もし聖様がその座に就く前に何進さんに絶大な信頼を託した、もしくは何進さん以外信用することが出来ない状況になる。そうなってしまえば話は違ってきます」

「…つまり、何進は今、どちらが皇帝になっても自身に利が来るように動いているってわけ」

 

 

 

 

それだけ話すと皆ようやく納得してくれたようだった

 

 

 

「確かにそれなら納得がいくわな」

「ああ、あの何進にそんな考えが出来るとは考えにくい」

「普段は愛人と閨に居るだけのぐうたらな奴だからな」

「…それにしても…一体誰が……」

「…詠ちゃん、もしかしたら李儒さんかな?」

「…その可能性も大きいけど……ハッキリそうだとは言えないわ」

「なら王允の可能性もあるのですよ」

「……王允?」

「恋、王允には何度も会っているであろうに。あの何を考えているのか分からない爺のことじゃよ」

「……あ」

 

 

 

だがここで考えても何も分からないという結論に至ったので皆はとりあえず現状の打開策を考えることしか出来なかった

 

 

 

「…とりあえず咲夜がここに呼ばれたのはここ最近頻繁に起こっている反乱を鎮めるために軍を出せという勅を受けるためだったのね」

「そういうことだよ詠。まさか俺の所までそんな命令が下るなんて思ってもみなかったけどさ」

「…拙いわね、そうなると月やボクは勿論、ねねや恋、華雄や霞もこの洛陽に来るのは出来ないわ。それに咲夜だってこの件で益々洛陽に来れなくなるだろうし…」

「洛陽には混乱の種を作る人しか残らなくなるってわけか…確かにそれは拙い……乱がなくなった後、一気に崩壊が加速する恐れがあるな」

「うう~~…どうすればいいのですか……このままだと」

 

 

皆頭を抱えて悩むしかなかった

これと言ってよい案が浮かばないのである

 

 

 

「ううぅ~~~、咲夜!! 何でこんな時にいい考えが浮かばないのですか!!」

「いや、俺のせい!?」

「ねね、やつあたりは良くないで」

「確かにそうね…でも誰かいい考えはないの? 貴方はどう、鳳統」

「う、う~ん…私は皆さんと違ってここは初めてですし…何より情報が足りません」

「…確かにそれはねぇ」

「せめて誰か一人でも絞り込めれば……」

「………同士討ち」

「「「「「……は??」」」」」

 

 

恋は静かに言った

――同士討ち

 

っと

 

 

 

それを聞いて咲夜、詠、雛里、音々音の四人は頭の中の種がパリーンと割れるようにアイディアが閃いた

 

 

「恋、それはいい考えだ!!」

「そうね…確かにその手は今までちょっとリスクが大きかったけど、今は朝廷も頻度の多過ぎる反乱でドタバタしてる」

「時期的には丁度いいのですよ!!」

「あわわ、なら直ぐに考案した方がいいと思います」

「そうだな!! よし、幸いここには誰の目もないようだし静かに討論を…」

 

 

「ちょ、待ってな!!」

「そちらだけで勝手に話を進めるんじゃない!!」

「咲夜様、教えてもらえますか? どうにも私だと分からない部分が多いのですが…」

「へぅ~、詠ちゃん~。教えて~~」

「妾を空気にするとは…」

 

どんどんと話を進めていく四人に流石に空気となっていたメンバーが総ツッコミした

 

 

 

「ああ、ごめん月。ついこっちに夢中になっちゃって」

「も、申し訳ありません、聖様!! 良き策が思いついたので…つい」

「その策とやら、妾にも教えてたも」

「…これから話すことは他言は駄目でございますよ?」

「無論じゃ」

「じゃあ、分かっていない焔耶達にも教えようか、雛里、詠、ねね」

「そうですね、これは味方が多い方がいいのですよ」

「そうね、後恋には後で何かお礼をしないと…」

「……?」

 

 

自分の手柄に気付かないでいる恋だった

 

 

 

「じゃあ雛里から説明を頼むよ」

「は、はひぃ。 で、では説明しまちゅ…あううぅ///」

「ゆっくりでいいからね」

「はい…え、えっとまず先程呂布さんが言った同士討ちという言葉…そこから導き出された答えは宮中に居る不正を行っている人たちを互いに疑心暗鬼に陥らせるというものです」

「…成程なぁ、ちょっとえぐいなぁそれは」

「へぅ…詠ちゃん、それ本当にやるの?」

「仕方ないでしょ? これしか今のところ思いつかないし」

「それに対象は今まで好き放題やってきた連中のみなのですよ。自業自得というやつなのです」

「じゃが効率的なのは確かじゃろうて」

 

 

 

ここまでの説明で理解出来たのは聖、月、霞の三人だ

 

 

残る焔耶と華雄は…

 

 

 

「「?????」」

 

 

ちょっと分からないようだった

 

 

 

「ハァ…焔耶、華雄。簡単に説明するとこの策は相手を互いに潰しあうように仕向けると同時にその際に何進に助言している輩を絞り込むことが目的なの」

「おお、そういうことか!!」

「? だけど咲夜様、潰し合いを促進させるのは分かりましたけど…どうやって何進の助言者を絞り込むんですか?」

「…見張りを立てるよ、勿論うちの自慢の密偵を使ってね」

「…ああ成程ね」

「確かにあの人だったらそれは可能ですね」

「? 誰のこと?」

「それは秘密、何故ならそいつのことを知っているのはうちの軍のごく僅かな人だけだから」

「…信用できる?」

「出来る」

「ならそっちは任せるわ」

 

 

 

 

 

こうして裏で動き始めた咲夜達

 

果たしてその結果が何を引き起こすのか…

それはまだ誰にも分からない

 

 

 

 

 

それから必要な処理を終えた咲夜は直ぐに洛陽から樊城へと戻っていった

その際に、またしつこい勧誘などがあったことは言うまでもないだろう…

 

 

 

そのせいで表面上では普通に振る舞っていた咲夜も心中ではかなり苛々していた

付き合いの長い焔耶はその為かなり脅えていたのだが、会ってまだ日の浅い雛里は何だかよく分からないという顔をしていた

 

 

 

道中、雛里は不思議に思って焔耶にその理由を聞いてみた

 

 

 

「焔耶さん、どうしてそんなに震えて?」

「あ、ああ…咲夜様、雛里にはどう見える?」

「え? えと…凄く笑顔でいるだけに見えますけど???」

「雛里には分からないだろけど…あれは咲夜様が本気で怒っている時の顔なんだよ」

「え!?」

「ああ…思い出すだけでも震えが止まらないよ……あれは雛里が来る前のことだった」

 

 

 

焔耶が語ったのは仕官してから少しした後、砦に立て篭もる盗賊団を討伐しに行くという聞くだけならそれほど難しくなさそうな仕事だった

それに赴いたのは咲夜と焔耶、そして500の兵だった

 

 

 

敵は3000、だがそこは咲夜の用いた策によって咲夜達は殆ど被害を出さずに賊を追い詰めることが出来た

だがその際に、砦に籠っていた賊の頭が捕えていたであろう小さな女の子を人質にして軍を引けと言ってきた

その瞬間、咲夜の顔が一変した

 

 

 

それまで真面目で引き締まった顔が笑顔になったのだ

ただ、その笑顔の裏には何故か鬼のような顔が見えたとか…

 

 

更に異常な位に低い声を出して、盗賊達を脅えさせ、その隙に咲夜は弓を引いて矢をその盗賊の頭の額のど真ん中に直撃させ、絶命させた

それと同時に焔耶達に突撃命令を下し、自身は先程まで囚われていた少女をすぐさま救出に向かい、その戦いは終わりを告げた

 

 

それから、兵士たちの間では咲夜を決して怒らせてはならないという暗黙の決まりが出来たのだ

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんなことがあったんですか?」

「…しかも帰ってからも暫くの間、咲夜様の機嫌が物凄く悪くて居るだけで殺気を振りまいてたから…(ぶるぶる)」

「焔耶さん!? だ、大丈夫ですか!!?」

「…ああ、悪い。ただもうあの雰囲気は味わいたくない……」

「……因みにどうやってそれは止まったんですか?」

「…璃々がそこに来て咲夜様と遊んでもらう約束をしてからだ」

「…へ?」

「そしたら咲夜様の殺気が嘘みたいに消え去って顔も普段の物に治ったんだ」

「…璃々ちゃんが治したんですか?」

「というよりも咲夜様は苛々した時子供と接してそれを発散させてるんだってさ」

「……」

 

 

 

 

意外な咲夜の一面を知った雛里だった

 

 

 

 

 

樊城に帰ってきた咲夜達はすぐさま会議室に向かった

事前に襄陽に使者を送り、紫苑達には既に樊城に来てもらうように指示しておいたのだ

 

会議内容は勿論のこと、出兵のことである

 

 

それを聞くとその場に居た皆が咲夜を労わる様な目で見始めた

その時の咲夜がストレスを抑えながら、あたかも冷静であるかのように話している光景が目に浮かんだのだろう

 

 

 

「さて、皆は出兵に関して何か言いたいことはあるか?」

「とりあえずどこに行く予定なんですか?」

「…まあ予定だとまず汝南、その次が江夏。その後は情報次第かな。この二つは俺達の領地の近辺で最も賊の被害が酷い場所なんだ」

「汝南って…確か袁紹の従妹の袁術の治める領地の近くじゃ…」

「………だから正直行きたくはないんだ。でも北は月…董卓や賈駆達の担当になったし…南東は長沙があるから紅蓮達がいるし、南と西は問題外、必然的に行けるのは東と北東だけになるんだよ」

「? 咲夜様、南は南郡が劉表の領地だからだというのが理由だというのは分かりますけど…どうして西まで??」

「…焔耶、西には主にどの城がある?」

「え、えとぉ…」

「…焔耶さん、ここから西にある城は上庸が一番近くです」

「あ、そ、そうか!! ありがとうな、雛里」

「い、いえ…どういたいまして…」

「そこは現在、有能な太守が治めているという情報が入っているし…何より西は比較的賊の被害は少ない。その理由は分かる、秋葉」

「うえっ!? お、俺か……えっと……Σ ああ、そういうことか。西には益州、もしくは漢中しかないからか」

「そういうこと、あの地は険しい山が多いし、正確な地図でも持っていないと進軍はかなり難しい。賊にとっても進み難い道だから、わざわざそっちを選んだりはしないだろうからな」

「成程…」

 

 

 

皆これで納得してくれたようだ

 

 

 

 

「さて、ではこれより部隊編制及び、俺のいない間に樊城、及び襄陽を守る将を言い渡す。心して聞くように」

 

 

 

 

 

 

「まず俺と共に出兵する武将は魏延将軍と太史慈将軍」

「しっ!!」←ガッツポーズ

「俺も出陣か…」

 

 

「次に軍師に程昱、副軍師に鳳統」

「あわわ、わ、私ですか///」

「…ふぅむ、初めての軍の采配となるわけですか~」

 

 

「次に襄陽で内政を行いつつ、劉表軍を警戒する将、黄忠、徐晃将軍。そして軍師に徐庶、副軍師に荀攸」

「あら。では咲夜様のご期待にこたえられる様にしなければなりませんね」

「ふわわ…お留守番ですかぁ」

「ふふふ、任せておきなさい。私がいるからには劉表軍なんてこっちに近寄れなくなる位にしてやるんだから」

 

 

「燐花、程ほどにね? コホン、次に樊城の太守を再び劉泌にお願いしたいのだが…よろしいですか?」

「ハッ!! 大役、この劉泌がしかと承りました!!」

「その補佐として姜維、諸葛瑾、董允、馬良、劉曄などを残しておきます。何かあれば相談して下さい」

「「「「はっ!!!!」」」」

 

「次に…」

 

 

 

こうして咲夜は次々と役職と仕事内容を告げていった

 

 

 

「最後に兵士達ですが…まず劉表軍との最前線になっている襄陽には一軍と五軍を配置。樊城には二軍と新兵達を。遊軍として四軍を配置しておきます。俺と一緒に行くのは三軍とまだ配置の決まっていない訓練を終えたばかりの人たちです」

「すべてにおいて優れている一軍と守りに特化した五軍…移動力のある四軍を遊軍として配置し、何かあれば臨機応変に対応できるようにして念のため二軍の兵士たちに樊城に待機させつつ、新兵達を鍛える。それは確かにかなり良い配置だと思われます。ですが…」

「咲夜様、よろしいのですか?」

「? 何が?」

「いえ…共にするのが三軍と訓練を終えたばかりの者のみで…」

「大丈夫だよ、皆あれだけの訓練をやり遂げた人たちばかりだし…それに何があっても対応できる三軍の人たちなら色々と応用が利くしね」

「…咲夜様がそれでもいいというのなら止めませんが」

 

 

 

そしてそれから数日後…

 

 

 

「じゃあ、紫苑に燐花、それに麻理。襄陽の留守は頼んだよ」

咲夜は先日言った通り、風、雛里、秋葉、焔耶と三軍の兵士3000と無所属の兵士2000、計5000の兵士を連れて出陣することになった

 

 

「咲夜様、お気をつけて」

「こっちのことは気にしないで、怪我とかしない様にして帰ってきてくださいね?」

「あ、それから他の討伐軍と会ったらちゃんと挨拶しておいてよ?」

「…三人は俺の母さんか? そんなに言われなくとも大丈夫だよ」

 

 

何となく締まらない出発となったのだが、士気は皆高いようだった

特に…

 

 

 

「うおおおおーーーーっ!!! 燃えるぜぇーーーー!!!」

「おお、やる気だな秋葉!! よぅし!! 私もやってやるぜぇーーーー!!!」

 

 

…テンション上がり過ぎて若干キャラが変わっている将が二人いたのだが…

 

 

 

 

「…ハァ」

「あわわ…さ、咲夜様」

「…ぐぅ~~…」

 

 

 

こんなんで本当に大丈夫だろうか…

咲夜は不安に思うしかなかった


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