不老不死の氷噺   作:アンフェンス

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いよいよこの物語もこの話を含めてあと2~3話です。
最後までお付き合いいただければ幸いです。


第三十九話

 

満月に夜襲を受けたあの日からそれなりの時間が立った。

あれ以来竹林の外では間欠泉が噴き出したり、空を船が飛んだり、逆さの城ができたりと様々なことがあったらしい。

その度に神社で宴会が行われたらしいが、引きこもっている俺らのもとには招待状が来るだけで、参加はしていなかった。

自分たちが関与していない異変に態々参加する理由が見つからなかったからだ。

そんな奴でも参加してほしいという意味の文を無視しているだけともいうが。

時々人里に出て、慧音や里の実力者と話し、妖怪の山で文たちと遊ぶだけの日々だった。

 

「只今」

「お帰り、妹紅。今日は輝夜に勝てた?」

 

ある日、輝夜との定例戦(殺し合い)を終えた妹紅が帰って来た。

いつもだったら俺もついていってたのだが、今日は紫とちょっとした野暮用があったので別行動していたのだ。

妹紅と紫はよくわからないが相性が悪いので紫と会うときは妹紅と一緒にいないようにしているのだ。

 

「また相討ちだったよ。そんなことより今日こんなものを拾ったんだけど」

 

そう言って彼女が取り出したのは紫色の玉。

今まで見たことがないそれは何かしらの力を感じた。

 

「なんだこれ?」

「私も知らないんだが、珍しいものだったし持ってきたよ」

「ふーん。ま、明日あたりにでも香霖堂に持って行けば分かるだろ」

「まぁね」

 

妹紅がその紫色の玉を片付ける。

そして人知れず俺らは異変に再び巻き込まれるのであった。

 

結論から言うと霖之助の説明を聞いてもちんぷんかんぷんだった。

 

「これは『オカルトボール』というもので用途は…なんだ?『知的好奇心を満たすための物』だとさ」

「知的好奇心を満たす?このボールはただのボールだけど?」

「僕の目にもそうとしか映らないね…良喜君はいままでこういったものを見たことはないのか?」

「あったらここに持って来てないから」

「それもそうだね。ところでこのボールってどうするつもりなんだい?」

「どうするって?」

「面白そうなボールだし、僕の店で取り扱ってもいいけど?」

「あー、それは無理な話だな」

「どうしてだい?こんなもの持っていたところでどうしようもないじゃないか」

「違うんだ。このボール他の人に渡せないんだよ」

「どういうことだい?」

「今こーりんがそれを持っているだろ?それでそのボールが手から離れるとなぜか私のところに戻ってしまうんだ」

「へー珍しい機能も持っているんだね」

 

そう言うと霖之助はボールを妹紅に投げ返す。

難なく受け取った妹紅は霖之助に言葉を返した。

 

「ありがとな、こーりん」

「次は客としてきてくれることを祈っているよ」

 

外に出ようとしたときに霖之助から声がかけられた。

 

「あ、そうだ。確か魔理沙や霊夢とかがそれみたいなボール探していたよ」

「彼女たちはなんて言ってた?」

「確か、集めると願いが叶うとか何とか言ってた気がしたなぁ」

「集めるって、どうやって集めるんだ?」

「さぁね。引き留めて悪かったね」

 

今度こそ外に出ると慣れた視線を感じた。

それは殺気。

感じると同時に屋根の上から小太刀片手に人が飛び降りてきた。

しかし。

あっけなくその男は燃やされていた。

 

(手加減された炎で)丸焦げになった男に話を聞くと、どうやら彼もオカルトボールを求めていたらしい。

それで妹紅を見つけて店から出てくるところを襲ってみたとか。

彼自身もそれを持っていたらしく、これを渡すから見逃してくださいといわれ、逃げられた。

 

「このボールって身体能力とかの向上もしているみたいね」

「集める気にはなったか?」

「全くならないけど、でも襲われるなら返り討ちにしないといけないかしらね」

「おぉ、こわいこわい」

 

 

それから一週間くらいが経過した。

妹紅が闘うところを見る機会が圧倒的に増えたが、難なく相手取っていた。

霊夢や魔理沙など分が悪い相手には負けることもあり、その時は持っていたボールをすべて渡していた。

そうして増えたり減ったりして行ったボールは3個ぐらいになっていた。

そしてその日も誰かと戦っていた。

 

「あー、今日は負けちゃった」

「おかえりー。相手はどんな奴だった?」

「なんか古い服着ているやつ。夜も遅いし明日竹林の外に届けるよ」

「へー」

 

そうして妹紅の後に入ってきたのは一人の女性。

彼女は物珍しそうに家の中をのぞく。

そして俺と目があった。

 

「布都?」

「…その顔、さては良喜じゃな!」

「あ?二人とも知り合い?」

 

呆然とする妹紅を傍目に、俺と布都は抱き合った。

互いがそこにいるという存在を確かめ合うかのように。

千年以上の再会を大事にするように。

布都の体温を感じていると何か自分の中が溶けていく感覚がした。

それを感じていると目の前がだんだんと暗くなっていった。

 

 

気付くと俺は河原に立っていた。

河原には俺以外に一人の女性が船のそばで眠っていた。

 


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