不老不死の氷噺   作:アンフェンス

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第三十話

 

「それで、出発してもいいのか?」

 

妹紅の衝撃の告白の後、顔を出した慧音がそんなことを聞いてきた。

それに答えたのは俺ではなく、妹紅。

何か踏ん切りが付いたのか、彼女は意外にも即答した。

 

「あぁ。私は出発しても大丈夫。それでどこに向かうのが一番いいと思う?」

「そうだな…やはり海沿いに行きたいところだけど正直北にはいきたくはないな」

「何故?北に行けばこの国の首都に近くなるんだろ?そっちの方が大きい街が多いんじゃ?」

「それはそうなんだけど、なんか最近そっちはきな臭いからな。あまり近づきたくはないんだ」

「ふぅん。それなら南にある程度行ってから戻る方がいいのか?」

「私としてはそれがオススメだな」

「よし!ならその案で行こう!良喜もそれでいいよな!」

「あ、うん、それでいい」

 

なんか決まってた。

 

南に向かっている途中、慧音に質問された。

 

「そう言えば、二人ってどんな関係なんだ?」

「俺はよき相棒だとは思っている」

「私としてはそれ以上の関係になりたいなー、なんて」

「そう言っているのにそうなってないということは良喜にはもう心に決めた人物がいるのか?」

「聞いてどうする?」

「いや、単純な私の興味だ。答えたくないならそれでもかまわない」

「…はぁ。大体その通りだよとだけ答えておく」

「それ以上は話さないということだな…それで妹紅はこいつのどこに惚れたんだ?」

「あまり話したくはないのだが…」

「それは、たった二人だけ生き延びたことと関連があるのか?」

 

慧音の言葉に俺と妹紅は押し黙る。

この沈黙を肯定と捉えたのか慧音は言葉をつづけた。

 

「なるほど。お互い隠していることがあるのか」

「それが分かったのならそれでいいだろ?」

「あぁ、今はそれでいいということにしてやる。…そのうち聞けることを願っているよ」

 

慧音が悲しそうな顔でそう言っていたのが印象的だった。

何か微妙な空気になってしまったので、話題を変えることにする。

 

「話を変えるけど、この先の一番近い街や村までどれぐらいの距離だ?」

「大体一週間ぐらいじゃないかな。川の入り江にある小さな漁村がそれだ」

「そんなに遠いのか。こっちで一週間も歩いたら村は絶対三つ以上は出会うぞ」

「私からするとそっちの方がおかしい話だけどな」

「やっぱり違うんだな」

「国の規模とかそういうのが違えばそこら辺の事情も変わってくるのだろうな」

「ところで、この国では道端に人が倒れているのはよくある話なのか?」

「滅多にないと思いたいな」

 

そう言う俺ら一行の前には、緑色の服を着た女性が倒れていた。

 

 

「いやー、助かりました!」

 

彼女に水と食料を与えたところ、すぐさま彼女は復活した。

紅美鈴と名乗った彼女は旅の途中で行き倒れていたらしい。

 

「ビックリしましたね!全然家も何も見当たりませんもん!」

「それで食料を取り損ねたのか?」

「ここら辺に村があるって聞いていたので全く準備していませんでした!」

 

えへへーと彼女ははにかむ。

 

「それでこれからどうするんだ?」

「どうせしばらくは旅を続けるつもりですので…あ、お三方の旅についていっていいでしょうか?」

「俺としてはどっちでもいいけど…二人がいいというのなら」

「私は構わないぞ」

「私もだな。旅の仲間が多いことはいいことだ」

「なら、よろしくお願いしますね!」

 

こうして四人の中国大陸旅が始まった。

 

 

「ところで美鈴、なんでこの言語話せるんだ?」

「秘密です!」

 


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