翌朝。
少し早く起きた俺がたき火の跡に砂をかけていると、後ろから妹紅が声をかけてきた。
「お、おはよう」
「おはよう。もう起きたのか」
彼女の目は赤く腫れているが、気にしないようにした。
「それで今日はどうするんだ?」
「慧音次第だが…彼女の準備ができたら出発、そうじゃないならもう一泊といったところか」
「そうか」
そう言うと彼女はこっちに抱き付いてきた。
「…妹紅?」
「昨晩いったことは本当?」
「…あぁ。丁度俺も死なない人間だからな。妹紅が飽きるまでは一緒にいるつもりだ」
「そう…良喜はさ、大丈夫なの?」
「今回のことか?…もう慣れてしまったからな」
「そうなんだ。ねえ、良喜の話を聞かせてよ」
思えば妹紅には俺の身の上話をしたことはなかったな。
聞かれたこともなかったし、自分から進んで話すような内容でもないから話していなかったが、案外丁度いい機会かもしれない。
「長くなるぞ?」
「構わないよ」
「そうか…なら始めるか」
身の上話をすること自体はあの晩、輝夜と青娥に話した時以来だ。
あの時と話していること自体は殆ど一緒だったが、相手の反応が違った。
妹紅が反応したのは主に布都との生活と雑賀との同居の話。
その時の彼女の反応はどこか嫉妬しているようであった。
…嫉妬?
まぁ、気にしないようにしよう。
そうして富士の山の麓に来た話までし終えると、妹紅が質問してきた。
「それでその布都とやらのことはどう思っている?」
「は?」
「ほら、元婚約者なんで、彼女は将来復活してくるんでしょ?もしそうなったら良喜はどうするのかなーって」
「へ?どうするって?」
「ほら、その、け、結婚とかするのかなって」
「あー、どうなんだろう」
「え?」
「そうなってみないと分からないなぁ…多分、するけど」
「するの?」
「向こうがしたいって言って来たらするなぁ。そのために生きてるようなもんだし」
「ふ~ん、そうなんだぁ」
「どうした?」
「いや、別にそうなったら私と一緒にいられなくなるなー。さっきいったことは嘘なのかなー」
明らかに妹紅の機嫌が悪くなる。
「いや、そうはいってもあいつが復活するのってかなり先だし、たとえ復活したとしても会えるかどうかわからないし、会ったとしても結婚しようとか言ってくるかは分からないし、そうなった時にお前が俺といるとは限らないだろ?」
「じゃあ仮定の話で聞いてみるぞ。もし私と布都だったらどっちを選ぶ?」
何を言っているんだこいつは?
そういう言い方、まるで…
「おい、妹紅、まさか…」
「良喜、私はお前のことが好きだ」
始め、彼女が何を言っているのか理解できなかった。
理解した時に初めに思ったのは『告白されたのは布都以来か』だった。
「え?ちょっと待って?え?」
「何度でもいうぞ。私はお前のことが好きだ。それこそ結婚したいと思う程度には」
「いや、いきなりにもほどがあるだろ!?」
「すぐに返事がもらえるとは思ってないけど、そう思っている人がここにいることは忘れないでくれ」
すがすがしいほどの笑顔でそう彼女は言い切った。
余談だが、このやり取りは全て慧音に見られていたらしい。
筆が乗って、キャラが勝手に動いた結果。
妹紅の告白はもう少し後でさせる予定でした。
なのに…なのに…