不老不死の氷噺   作:アンフェンス

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第二十九話

 

翌朝。

少し早く起きた俺がたき火の跡に砂をかけていると、後ろから妹紅が声をかけてきた。

 

「お、おはよう」

「おはよう。もう起きたのか」

 

彼女の目は赤く腫れているが、気にしないようにした。

 

「それで今日はどうするんだ?」

「慧音次第だが…彼女の準備ができたら出発、そうじゃないならもう一泊といったところか」

「そうか」

 

そう言うと彼女はこっちに抱き付いてきた。

 

「…妹紅?」

「昨晩いったことは本当?」

「…あぁ。丁度俺も死なない人間だからな。妹紅が飽きるまでは一緒にいるつもりだ」

「そう…良喜はさ、大丈夫なの?」

「今回のことか?…もう慣れてしまったからな」

「そうなんだ。ねえ、良喜の話を聞かせてよ」

 

思えば妹紅には俺の身の上話をしたことはなかったな。

聞かれたこともなかったし、自分から進んで話すような内容でもないから話していなかったが、案外丁度いい機会かもしれない。

 

「長くなるぞ?」

「構わないよ」

「そうか…なら始めるか」

 

身の上話をすること自体はあの晩、輝夜と青娥に話した時以来だ。

あの時と話していること自体は殆ど一緒だったが、相手の反応が違った。

妹紅が反応したのは主に布都との生活と雑賀との同居の話。

その時の彼女の反応はどこか嫉妬しているようであった。

…嫉妬?

まぁ、気にしないようにしよう。

そうして富士の山の麓に来た話までし終えると、妹紅が質問してきた。

 

「それでその布都とやらのことはどう思っている?」

「は?」

「ほら、元婚約者なんで、彼女は将来復活してくるんでしょ?もしそうなったら良喜はどうするのかなーって」

「へ?どうするって?」

「ほら、その、け、結婚とかするのかなって」

「あー、どうなんだろう」

「え?」

「そうなってみないと分からないなぁ…多分、するけど」

「するの?」

「向こうがしたいって言って来たらするなぁ。そのために生きてるようなもんだし」

「ふ~ん、そうなんだぁ」

「どうした?」

「いや、別にそうなったら私と一緒にいられなくなるなー。さっきいったことは嘘なのかなー」

 

明らかに妹紅の機嫌が悪くなる。

 

「いや、そうはいってもあいつが復活するのってかなり先だし、たとえ復活したとしても会えるかどうかわからないし、会ったとしても結婚しようとか言ってくるかは分からないし、そうなった時にお前が俺といるとは限らないだろ?」

「じゃあ仮定の話で聞いてみるぞ。もし私と布都だったらどっちを選ぶ?」

 

何を言っているんだこいつは?

そういう言い方、まるで…

 

「おい、妹紅、まさか…」

「良喜、私はお前のことが好きだ」

 

始め、彼女が何を言っているのか理解できなかった。

理解した時に初めに思ったのは『告白されたのは布都以来か』だった。

 

「え?ちょっと待って?え?」

「何度でもいうぞ。私はお前のことが好きだ。それこそ結婚したいと思う程度には」

「いや、いきなりにもほどがあるだろ!?」

「すぐに返事がもらえるとは思ってないけど、そう思っている人がここにいることは忘れないでくれ」

 

すがすがしいほどの笑顔でそう彼女は言い切った。

 

 

余談だが、このやり取りは全て慧音に見られていたらしい。





筆が乗って、キャラが勝手に動いた結果。
妹紅の告白はもう少し後でさせる予定でした。
なのに…なのに…

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