「かきねのかきねのまがりかどー♪」
「たきびだたきびだおちばたきー♪」
「あーたろうーか♪あたろうよー♪」
「きたかぜぴーぷーふいているー♪」
妖怪の山にも秋がやってきた。
旧自宅(今は保育所代わりになっている)の近くでイモが取れたので天狗の子供たちとともにたき火を焚いていた。
「ねぇー、まだー?」
「早くお芋食べたーい!」
「まだまだ。今火に入れたばっかりだからな」
こういっている間にも落ち葉はどんどん燃えていき、灰になっていく。
落ち葉をかき集めて作ったたき火で焼き芋を作るのは意外と難しい。
というのも芋が焼ける温度を長時間維持するには大量の落ち葉が必要となるからだ。
けど今の俺にはそんなことは些細な問題であるため、暇つぶしに作ることにしたのだ。
なんたって炎使いの相棒が俺にはいるから。
「妹紅、もうちょっと火をお願いできるか?」
「全く人使いの荒い奴だな…ほいっと」
俺の要請に妹紅が答える。
燃え上がり始めた炎を確認した俺は間髪入れずに子供たちに指示を出した。
「よーし、みんなー。落ち葉を乗せていけよー」
「「「はーい!」」」
このためだけに山中からかき集めた落ち葉を子供たちが懸命に乗せていく。
こうして新たな火種を手に入れたたき火の周りでみんなが歌い始める。
「さざんかさざんかさいたみちー♪」
「よし、出来たぞ!」
「「「わーい!」」」
頃合いを見計らって芋を取り出す。
それを二つに割るって子供たちに配る。
子供たちに配り切っても尚余った芋を今回の立役者の一人、妹紅のもとに持って行った。
「ほい、お疲れさま」
「食べていいのか?」
「むしろ食ってくれ。お前がいなければできなかった奴だから」
「そうか」
そうして妹紅は焼き芋を受け取る。
するとその焼き芋を二つに分けてその片方をこっちに向けてきた。
「なんだそれは?」
「お前の言い方を借りるならばお前が言いださなければできなかった奴だからお前も食べろよ」
そう言われては言い返す言葉もなく、その焼き芋を受け取る。
黄色い身はとても甘かった。
そうして二人で並んで食べていると子供たちの一人が爆弾発言をしていった。
「うわー、お兄ちゃんとお姉ちゃんって夫婦みたーい!」
「「…!?」」
同時にむせる。
そうして息を整えると妹紅が顔を真っ赤にして反論した。
「ふ、夫婦!?私と良喜はそんな仲ではない!」
「あれ?違うの?」
「違う!私とあいつの関係は旅仲間で相棒だ!それ以上でもそれ以下でもない!」
「えー違うんだー」
子供たちの無邪気な質問に慌てて答える俺と妹紅であった。
そんなこんなで梅の花が咲くころ。
旅荷物をまとめた俺たちは妖怪の山を後にしようとしていた。
殆どの住民は昨日の宴会で酔いつぶれていて誰も見送りをする者はいないと思っていた。
だからこそ彼女の姿は予想外だった。
「良喜お兄ちゃん、本当に行くの?」
「文か。態々見送りありがとうな」
「うん。それで今度はいつ帰ってくるの?」
あまりにも彼女が泣きそうな目でそう言ってくるので俺は彼女の頭をなでながら答えた。
「いつかは分からないけど、いつかは帰ってくるつもりだからな」
「…うん!」
そうして俺と妹紅は再び旅に出る。
この時はすぐに戻ってくる予定だった。
そう、あんなことに巻き込まれなければ。
――――第四章、完