不老不死の氷噺   作:アンフェンス

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第十七話

 

「お前、何か俺らに隠していることがあるだろ?」

「いきなり何よ」

 

ある新月の夜。

最近の輝夜の態度に対して疑問を抱いた俺は彼女にぶつけることにした。

 

「最近、お前がため息をつくことが多いからな。何かあったと思っただけだ」

「そう。ため息なんてついてないけどね」

 

この話はこれで終わりと言わんばかりに彼女は立ち去ろうとした。

やっぱりこれは何かあるな。

…竹取物語的にはあれしかないと思うけど。

 

「いつ釈放されるんだ?」

 

立ち去ろうとした彼女に聞こえるように俺は呟く。

その言葉に彼女は素早く振り向いた。

『どうしてそれを!?』と言いたそうな表情で彼女は口を震わせていた。

 

「やっぱりそうか。それでいつなんだ?」

「次の満月よ。でも、なぜわかったの?」

「輝夜の話から推測しただけだ」

「私の話?」

「あんた言ったろ?月で一番の科学者の過去の薬を飲んでしまったからここにいると」

「ええ、言ったわね」

「でもよく考えていたらふつうありえないことだよな」

「どこが?」

「その薬ってその科学者が政府から隠していたやつだろ?それを輝夜が飲むなんて輝夜地震がその科学者と知り合いというか、かなり仲良くないとありえない話だよな」

「…それもそうね。で、それがなぜ私の釈放とつながるのよ」

「その科学者って月で一番頭がいいんだろ?その関係者をこんなところに放置し続けるのもおかしな話だしな」

「……」

「まぁ、カマをかけたらうまいとこひっかかってくれたというのもあるけどな」

 

ここまで言うと彼女はため息をついた。

 

「はぁ。あんたには負けるわ。そうよ、その通り」

 

そして彼女は夜空を指さして言った。

 

「次の満月の夜に私は釈放される。その日、月から使者が来るからそれと一緒に帰るという話になっているわ」

「…ん?『話になっている』?」

「私にとってあそこは帰る場所じゃないわ」

「だから帰らないと?」

「ええ、そうよ。私は月には帰らずにこの星に居残ることにするわ」

「それって可能な話なのか?」

「どういうことよ?」

「いや、月に人を大量に連れていくほどの技術があるところから逃げるなんてできるのかなぁ、って」

 

話を聞く限りロケットはおろか、不毛の大地に生命を植え付けるほどの技術を持っている相手から逃げるなんて普通は無理な話だ。

例えるならば人工衛星を駆使する相手から見つからないように逃げ隠れるようなものだ。

 

「それに関しては大丈夫よ」

「随分と自信あるな。何か隠し玉でも持っているのか?」

「私には協力者がいるもの」

「協力者って…?」

 

月から逃げられるようにしてくれる協力者なんてそうそういないよな。

それこそその科学者が協力でもしてくれない限り…あ?

 

「気付いたようね。月で一番の科学者、名前は八意××っていうんだけど彼女が私の協力者なの」

「八意…なんだって?」

「あぁ、普通の人には発音できないんだったっけ。八意永琳っていうわ」

「永琳か。彼女がいれば大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。なんだって彼女は天才なんだから」

「へぇ。なら俺は必要ないってか」

「そうね。むしろ下手に入り込んで死なれても困るし」

「俺は死なないけどな」

「そういえばそうだったわね」

 

二人で笑いあった。

 

 

 

それからおよそ二週間後。

ついに輝夜が月に帰る日がやってきた。

彼女が帰ることに対して翁は息巻いていたが、何が起きるかを知っている俺は内心苦笑いしていた。

そしてその夜。

屋根の上で待機していた俺は月から来るものを見ていた。

それはロケットというよりかは戦闘機のようなものだった。

そしてその戦闘機から何かが投下された。

 

閃光。

そして衝撃。

 

屋敷を破壊するほどの爆発がそこにいた人々を蹂躙していった。

 

 

 

 

「あーあー、こりゃ随分と派手にやったもんだな」

 

瓦礫の下から這い出してきた俺は周りの惨状を見てそう漏らした。

おそらくだが月の人が落としたのは高性能な爆弾。

それが周りを吹き飛ばしたのだ。

 

…またこの状況か。

それなりの期間都にいたし、身を隠すのにはうってつけの機会だなこりゃ。

そう判断した俺は久々に空を飛んで都を後にした。

 

 

 

 

 

――――第三章、完




難産でした。
一話ぐらい番外編を書いてから新章に行きたいと思います。

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