テイルズ オブ フェータリアン ー希望を紡ぎ出すRPGー   作:逢月

33 / 92
Tune.29 「さよなら」

 

 

「エリック君……」

 

 血塗れの親友を前に項垂れるエリックの肩を軽く叩き、ポプリはその横に並ぶように腰を下ろした。マルーシャも、それに続く。

 

「悪い、こんなことになって……」

 

 今となっては聞くまでもない。血の繋がりが無かろうと、ポプリは本気でアルディスのことを思っていた。そしてそれは、自分同様にアルディスを本気で信じていたと思われるマルーシャにも当てはまる話だろう。それを考えると、どうしようもなく今の状況から逃げ出したくなってしまった。

 

 エリックがそれ以上言葉を紡げずにいると、また新たに、背後から誰かがやって来た。足音は二つ。そのうちの一つはフラフラと覚束無い足取りで、もう一つは、人間のものではなかった。振り返ったポプリは、その足音の持ち主達を見て、弱々しく言葉を紡ぐ。

 

「先生、ディアナ君。それに、チャッピー……」

 

「……」

 

 その声には答えず、新たにエリックの傍にしゃがみこんだのはジャンクだった。意識こそ戻ったようだが、傷が痛むらしい。今の彼は、呼吸さえも苦しげだった。

 

「ジャン、背中……大丈夫? 今、治すから……」

 

「僕は大丈夫だ。多少は自力で何とかしたし、ディアナも手伝ってくれたからな……それより、お前らの傷を治した方が良い。酷いですよ、その状態は」

 

「……」

 

 ジャンクの言う通り、アルディスとの戦闘で負った傷はかなりのものだった。今は皆、痩せ我慢をしているような状況だ。早く、どこか休める場所を確保すべきだとは思う。しかし、こうなった原因でもあるアルディスの問題を放置するわけにはいかないだろう。

 

「アルディス……どうして……」

 

 唯一、ディアナだけは無傷だったのだが、彼女は翼を失っている。ろくに身動きが取れない彼女は今、チャッピーの背に乗っているらしかった。

 

「ッ、これは酷いな……」

 

 ジャンクはアルディスの容態を確認し、微かに語尾を震わせた。よく見ると、彼の手には砕けたアルディスのペンダントが握られている。

 

「それ……」

 

「気になるなら、これはお前が持っておけ。それから……」

 

 ペンダントをエリックに手渡し、ジャンクは少しの間黙り込んでしまった。だが、この状況で黙り込んでいても仕方がない。そう思ったのだろう。彼は、どこか言い辛そうに、躊躇いがちに言葉を紡ぎ始めた。

 

「エリック……僕は先程まで完全に意識を手放していました。それにも関わらず、このようなことは言いたくない。いや……根本的にこんなことは、言いたくないんだが」

 

 聞き取るのに苦労するような声量で、彼にしては珍しい、かなり遠まわしな話し方。その声が醸し出す嫌な雰囲気に、エリックは漸く顔を上げ、ジャンクの姿を視界に捉えた。

 

 

「お前は、アルディスを……ノア皇子を、どうするつもりだ?」

 

 

「……!」

 

 傷のせいなのか、自身の発言のせいなのか。ジャンクの顔色はあまりにも悪い。そんな彼の顔を見て、その言葉を聞いて、エリックは言葉を失った。

 

「ジャン! 何言ってるの……!? 何で、そんなこと、エリックに聞くの……!?」

 

 今にも泣き出してしまいそうな声で、マルーシャは弱々しく叫ぶ。ジャンクは一瞬だけ彼女の姿を横目で見た後、エリックへと視線を戻した。

 

「あなただって、本当は分かっているんだろう?」

 

 そして結局、マルーシャの問いに答えたのはジャンクではなく、ディアナだった。

 

「……」

 

 ディアナを背に乗せたまま、チャッピーは静かに成り行きを見守っている。嫌な沈黙が続く。ディアナはため息を付き、青い瞳を伏せつつ話し出した。

 

「あなたの性格なら、この状況で真っ先にアルの傷を癒しているに違いない。それなのに、それをしないのは。彼が再び刃を向けてくることを、恐れているからだろう?」

 

「!? それは……ッ」

 

 ディアナの指摘は、最もだった。早く、傷を治さなければ手遅れになるかもしれない。それは、分かっていた――だが、どうしても親友であった筈の少年が豹変した姿が、脳裏を過ぎる。

 何の言葉も返せずに俯いたマルーシャはスカートの裾を掴み、両手をガタガタと震わせた。

 

「エリック、あなたもだ……あなたの立場を考えれば、彼を今どうするべきか、分かっているだろう?」

 

「――ッ!?」

 

 ディアナから目をそらしたエリックの瞳に、アルディスの首が映る。白銀の髪の間から覗くそれは、アルディスの呼吸に合わせて今も微かに動いており、簡単に斬り落とせそうな程に、細かった。

 

 つまりは、そういうことだ――本気で“それ”をやれというのかと顔を上げたエリックの目の前で、ディアナは悔しそうに顔を歪め、身体を震わせていた。

 

「オレは、それを命懸けで止めなければならない。それなのに、このザマだ……」

 

「あ……」

 

 彼女の背に、翼があったならば。戦いが始まる時点で、彼女が意識を保っていたならば。先程の戦いでの敵は、間違いなくアルディスだけでは済まなかっただろう。主人を護らない従者がいる筈がない。ディアナは、全力で自分達に斬りかかってきたに違いない。

 

「……僕も、ディアナと似たような状況ですよ」

 

 下がり気味になっていた眼鏡のブリッジに触れ、ジャンクはポツリとそう呟いた。痛々しい程に赤く染まった白衣の下は、一体どうなっているのだろうか。想像も付かない。

 

「ジャン……」

 

 そんな彼の姿を見て、そういえば、とエリックは思う。戦いの前に意識を失ったのは、ディアナだけではない。仮にあの時点で彼が意識を失わなかったとしたら、彼は自分の味方になってくれていただろうかと。

 

 

『それでも、アルに会おうと思うのならば……もう、僕は止めない。ただし僕も、自分が考えるように動きたいと思います。良いですね?』

 

 

――恐らく、それは無かっただろうとエリックは考える。

 

 

 彼は、端から自分とアルディスが戦うことを見越していて、それでいて忠告してくれたのだ。アルディスに会い、そのまま戦いになった場合でも、僕はお前の味方にはなりませんよ、と。

 しかし、アルディスが最初に二人を気絶させたことによって、そのような最悪の事態にならずに済んだのだ。

 

(待て! アルはわざわざ、自分の味方を減らす行動起こしたってことか……!?)

 

 ここでエリックは、ある矛盾点に気が付いた――勝利に固着する人間が、自分に貢献してくれたであろう者を拒むような、そのような行為をするだろうか、と。

 

 アルディスの場合、少なくともディアナは確実に味方だと分かっていただろう。それなのに、そのディアナにまで彼は手を下した。これは、明らかにおかしな行為だ。

 

(アル一人の力で、僕に勝ちたかっただけなのか……それとも……ッ!?)

 

 結論を出せずに考え込むエリックの首に、ひやりと冷たい物が当たる。それが何なのかと思考を巡らせるよりも先に、右手首を強引に捻られた。

 

 

「全員動くな! ……動けば、この男の首を、短剣が貫く……!」

 

 

 エリックが手首の痛みを感じるのと同時に響いたのは、酷く息を切らしたアルディスの声。彼の突然の行動とその光景に、仲間達は皆驚き、音にならない声を上げる。

 

(な……っ!?)

 

 エリックは自分に突き付けられた物の正体を知るべく、おもむろに目線を下げた。血に汚れたアルディスの左腕が握りしめていたのは、エリック自身が愛用する短剣。

 アルディスが倒れた後、精神的なショックから地面に投げ捨てたままになっていたそれは今、自分の首を貫かんとばかりに切っ先を皮膚に食い込ませていた。

 

「あ、アル……ッ!」

 

 完全に後ろを取られてしまった。いつの間にか両手は後ろで上手く押さえ込まれ、自由が効かない。それ以前に少しでも暴れれば、本当に首に短剣が刺さってしまいそうだった。

 

「こちらへ……来てください」

 

「ッ……!」

 

 荒い呼吸を繰り返すアルディスの表情さえも確認できないまま、立ち上がることを強制される。どうにかして逃げ出そうとも考えたのだが、体格の差があるにも関わらず、アルディスは一瞬の隙も見せなかった。

 

「アル……! お前……っ」

 

「……。無駄な、抵抗は止めた方が良いかと……まだ、私にはここにいる全員を巻き込み、大爆発を起こすくらい、の……力は、残っています、から……」

 

「――ッ!?」

 

 そんな言葉を掛けられ、抵抗しようというエリックの意欲は完全に削ぎ落とされてしまった。虚勢だろうと思いたかったが、彼の実力を考えれば真実である可能性が高い。肉体的にも精神的にも自由を奪われたまま、エリックは少しずつ、城の方へと誘導されていく。

 

「アルディス、何する気!? エリックを離して!!」

 

 マルーシャが声を震わせて叫ぶが、彼女はその場から一歩も動けなかった。彼女に限らず、他の仲間達もそれは同様で。

 誰もが、この状況を打開しようと思考を巡らせているのは確かだ。しかし、確実に失敗のない方法など、簡単には見つからない。

 失敗すれば、エリックの命は確実に無い。仲間の命がかかってくる以上、慎重になってしまうのが当然の心理だろう。

 

「皆さん、利口ですね……っ、私も、目的を成し遂げやすくて、助かります」

 

 本来なら、もはや動くことさえも辛いのだろう。アルディスの呼吸は、どんどん荒くなっていく。それでも彼が切っ先を動かすことはなく、腕を拘束する力を緩めることも無かった。

 

 

(くそ……っ!)

 

 気がつけば、城の傍にある崖先まで誘導されていた。一旦崖から落ち、そのまま飛んで逃げるつもりなのだろうか、とも考えたが恐らく違う。彼は失翼症だ。そう演じていたなどという器用な芸を見せてくれたのならば話は別だが、流石にそれはないだろう――となると、残された目的は限られてくる。

 

「……ッ」

 

 エリックは横目で崖下を確認した。岸壁から所々飛び出した鋭い岩と、そこに勢いよく打ち付ける荒波。落ちる場所によっては、即死は免れないだろう。本当に、どうしてこんな場所に城を建てたのかとフェルリオ皇帝家に問いたくなる。

 

(……いや、多分、そういう目的で……かつての皇帝は、ここに城を建てたんだ)

 

 

――恐らく、フェルリオ皇帝家は万が一に備え、『自ら命を投げ出すのために』この地に城を建てた。

 

 

 狂っている、と思った。

 

 そして自分は今、そんな狂った事情に巻き込まれようとしている。

 

「アルディス! あなたは一体何を考えているんだ!? 馬鹿なことはよせ!!」

 

「……」

 

 必死に叫ぶディアナの呼びかけに、アルディスは、何も答えない。呼吸こそ荒いが、そこに強い意志が秘められているのは分かる。

 崖に近くなるにつれて、アルディスの身体が微かに震えていることにエリックは気付いていた。水に強い恐怖心を持つ彼が、このような場所で平然としていられる筈がないのだ。それでも逃げ出そうとしないのは、彼の揺るぎない決意の表れに他ならない。

 

「ッ!?」

 

 そんなことを考えていたエリックの目の前で、今まで冷静さを保っていたジャンクが取り乱した。

 

「アルディス! やめなさい! 早まるんじゃない!!」

 

 彼の『早まるな』という言葉に、皆一斉に息を呑む。ジャンクの能力を考えれば、当然のことだ。

 

「え……っ!? ま、まさか……っ! ノア、待って!! お願い!!」

 

 その場から動くこともできず、地面に座り込んだままポプリは叫んだ。エリックがアルディスに拘束されていなければ、アルディスの立っている場所が崖先でなければ。自由の効かない状況に、彼女らは全員、どうしようもない程の無力感を感じていた。

 

 

「……」

 

 そしてエリック自身も、この状況を打破するのに仲間に助けを求める気は無かった。

 それが仲間達を追い詰める行為だということが分からぬ程に、馬鹿ではないつもりだったからだ。

 

「なあ、アル……とりあえず、話だけでも聞いてくれよ」

 

 だからこそ、自分が賭けに出るしかない。自分が何とかするしかない。

 腕を拘束されたまま、スティレットを突き付けられたまま、エリックは静かに言葉を紡ぎ始める。不思議と、恐怖は無かった。

 

 

「何というか、根本的に僕は愚かなんだろうな、と思うんだ……」

 

 アルディスは何も答えない。それでも良かった。そうなるだろうと、予想していた。

 

「僕自身の……ラドクリフ王子、アベルとしての立場を考えれば、お前を、討たなきゃいけない。それは、ちゃんと分かっているさ……だけど、さ」

 

 スティレットの切っ先が首をかすめ、ぷつりと表面の薄皮を割いた。脅しなのか、単純に余計な力が入ってしまっただけなのか、それは分からない。丁寧にしっかりと磨き上げられた短剣の刃なら、それくらいは容易だということだ。

 風に傷口が晒され、ピリピリとした微かな痛みは走る。その痛みに、エリックは僅かに眉を動かした。

 

「……無理、だった。殺せなかった……そこまでお前をズタズタにしといて、言える話じゃないとは思うけどな」

 

 切っ先が、少しずつ首に食い込んでくる。言い終わると同時に、喉を貫かれるかもしれない。その可能性は決して否定できない。それでも、エリックには伝えたい思いがあった。すれ違ったままどちらかが死ぬなどという結末を、迎えたくはなかった。

 

「それでも僕は、お前のことを親友だって思ってた。いや、過去形じゃない。今でも親友だと思っている。例え一方的な感情だったとしても、ずっと騙されていたんだとしても……今まで、本当に、楽しかったんだ」

 

「……っ」

 

 これは、最後まで変わることのなかった、この状況下でも、決して変わらなかった本心だった。後ろで、アルディスが息を呑んだのが感じ取れる。思いは、届いただろうか。

 

(少しでも、伝わっていれば……本望なんだけどな)

 

 これから紡ぐのは、半分が賭けで半分が本心な言葉。どうなるかは正直分からない。エリックは軽く息を付くと同時に両目を閉ざし、おもむろに口を開いた。

 

 

「……。やるならやれ。お前には……その権利がある」

 

 

「ッ!?」

 

 それはアルディスだけにしか聴こえないような、小さな声で紡がれた言葉。本当に首を貫かれると困るが、それも仕方のないことだろうとエリックは思っていた。

 仮に、ここが戦場だったとすれば。敵に情けをかけ、背を向けた自分に責任がある。相手に殺されたとしても、文句は言えない。それが戦場のルールだ。

 それに加えて、帝都のこの状況は完全にラドクリフ王国側の失態である。これは、戦争とは全く無関係な侵略行為に他ならない。失態には、責任が生じる。

 

「わ、私……は……」

 

 アルディスが動揺したのは、その姿を見ずとも分かる。エリックは何も言わず、目を閉ざしたまま彼の反応を待った。

 

「私は……っ!!」

 

 アルディスの声は、今までの威厳など一切感じさせない程に酷く、震えていた。スティレットの切っ先が、完全に宙を切り、大きく揺らぐ。

 

「君は、馬鹿だ……ッ、どうして、そこまで、俺、を……ッ」

 

 その声はあまりにも小さく、弱々しいものだった。間違いなく、遠く離れたマルーシャ達の耳には届いていないだろう。純血鳳凰(クラル・キルヒェニア)であるディアナですら、聴こえているかどうか怪しい程の声量だった。

 

「愚かなのは、俺の方だ……! 帝国のことを考えるのならば、君を殺さなければならなかったのに……っ! 八年間も、ずっとずっと、先延ばしにすることしかできなかった……」

 

 嗚咽混じりに紡がれる言葉を、エリックは何の抵抗もせずに聞き続けていた。相変わらずスティレットの切っ先はエリックの首に向けられていたが、両手の拘束は、もはや殆ど意味のないものに変わり果てていた。

 

「無理だ……できる、わけが、ない……! それでも、フェルリオの民を思えば、やらなくちゃ、いけなかった……俺には、もうそれしかなかったのに……!」

 

「……。アル……」

 

「俺はただ、この国を、守りたかった……なのに、俺には何もできな、かった……ッ、俺は一体、何のために、生まれてきたんだろう、ね……?」

 

 アルディスが泣き出したこと。それには皆、気付いたらしかった。しかし、短剣がエリックに向けられている以上、誰も下手に動けずにいる。

 

「もう、嫌だ……」

 

 フェルリオ皇子、ノアとしての苦しみが、悲しみが言葉となって、エリックに重くのしかかってくる。それは全て、天才と呼ばれた少年の悲痛な叫びだった。

 

(期待された分、ちゃんと答えなきゃいけなかった……そういう、ことだったんだろうな)

 

 ノア皇子も、人の子だった。そんな当たり前のことでさえ、エリックは完全に見失っていた。彼には、ちゃんと心があったのだ。そんなことさえ、エリックは分かっていなかったのだ。

 

 あまりにも悲しい、言葉が発せられると同時、エリックの腕の拘束は完全に解かれ、首に向けられていた短剣も漸く下ろされた。

 

 

「生まれ、た時……から、俺は“失敗作”だって、皆、分かってたのに……ッ、それでも、成長を期待して貰え、たのに……皇位継承を、認めて、もらえたのに……」

 

「え……?」

 

「結局俺には、存在意義なんて無いんだよ……ッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

――失敗作。

 

 

 その言葉の意味を聞く前に、エリックはアルディスに蹴り飛ばされ、地面にうつぶせに倒れた。背に鈍い痛みを感じ、顔をしかめる。

 

「や、やだ……っ! やめて!! アルディス――ッ!!」

 

「!?」

 

 マルーシャの悲鳴が響く。彼女だけではない、他の仲間達も、何らかの声は発していた。だがその声は――アルディスの姿を確認したエリックの耳には、届かなかった。

 

 

「やっぱり、俺は“いらなかった”……分かってた。だから、もっと早く……いや……」

 

「……、あ……」

 

 アルディスの口から、唾液が混ざった粘り気のある血が流れ落ちる。彼は大粒の涙を溢しながら、震える声でそう吐き捨てた。

 

「最初から、こうすべき……だった、んだ……」

 

 

――先程まで、自分の首に突き付けられていた短剣は、アルディスの腹を、深々と貫いていた。

 

「ッ、く……っ」

 

 潤んだ翡翠の瞳が、乾いた唇を震わせるエリックの姿を捉える。アルディスは自分の腹に突き刺さった短剣を引き抜き、そのまま後ろに、大きく足を踏み出した。踏み出した先に、地面は無かった。

 

「……。さよなら」

 

 重力に逆らうことなく、アルディスは背から崖下へと落ちていく。あの辺りは確か、鋭く尖った岩が海の底から突き出していた筈。

 

 

「アルッ!」

 

 咄嗟に、身体が動いていた。

 静止の声は、エリックの耳には届かなかった。

 

(これで終わりだなんて……認めて、たまるかよ!!)

 

 起き上がり、駆け出したエリックの腕が、宙に身を投げ出したアルディスへと伸ばされる。その身体を掴むと同時、エリックはアルディスと共に、崖下へと落ちていった。

 

 

 

―――― To be continued.

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。