テイルズ オブ フェータリアン ー希望を紡ぎ出すRPGー 作:逢月
Tune.0 ある青年と少女の話 -Prologue-
――この世界、アレストアラントはかつて、二人の英雄によって未曾有の災厄から守られたそうだ。
その二人の英雄というのが、龍王の子と呼ばれ、青く輝く光の翼を持つ女騎士ルネリアルと、鳳凰の子と呼ばれ、赤く神々しい実体ある翼を持つ大賢者スウェーラル。
彼らは世界を危機から救った後、世界を半分ずつ統治したという……君はこれを、たかが伝説だと思いますか?
ふふ、これに関しては学者達の間でも意見が分かれているんだ。というのも、ルネリアルやスウェーラルと同じ翼を持つ人々が、この世界には大勢存在するんですよ。
彼女ら亡き現在では、ルネリアルが治めていた世界の右半分、ラドクリフ王国では彼女と同じ光の翼を持つ“
ちなみに、翼を持つのは“純血の”
今となっては混血の人間の方が多いから、翼を持つ人間は随分と限られている。血統を大切にする王族が大半なのではないでしょうか……あと、
混血でもどちら寄りかによって見た目もかなり違うんだが、それぞれ体質も違ったり……おっと、そういうのは、これからの君の人生の中で知っていって貰おうか。
――話を終え、フードを目深に被った“青年”は手にしていた分厚い本を閉じた。
「やめないでよー! もう少しお話してよー!」
「はは、悪いな」
青年が羽織ったローブを引っ張り、続きを話して欲しいと訴えるのは顔に大きな絆創膏を貼った小さな少女だ。
フードの隙間から、青年の長い空色の髪がさらりと流れ落ちる。青年はそれをフードの中に戻しながら困ったように笑い、本を少女に返して頭を撫でた。
「だって……賢者さま、本に書いて無いお話もしてくれたから……」
「そうですね。せっかくだから、君が知っていて損の無い話もしておこうと思って」
「だから、もっとお話、聞きたいなって……」
賢者、と呼ばれた青年は少女の訴えにゆっくりと首を横に振った。
「人生というのは、儚く短いものだ……その人生の中で、何が得られるか。それは、君の行動次第。だから、何かを欲しいと願うなら、目先のもの以外にも手を伸ばしてみなさい。その方がきっと、得られるものは多い」
そうやって多くのことを学びながら、逞しく成長していった友人がいるんだ――そう言って青年は再び少女の頭を撫でる。
「そうですね、君なら……多くの人と触れ合ってみると良いでしょう。百聞は一見に如かず、だ。僕が言いかけた種族の違いというのも、実際に見ることでよく分かるでしょうから」
分かった、と少女は軽く青年に頭を下げてから走り去っていく。残された青年は「元気だなー」と苦笑しつつ、彼女が見えなくなるのを眺めていた。
「……精一杯、今を生きなさい。決して、後悔の無いように」
ぽつり、そんな言葉を残し――青年は消え去った。
まるで、最初から“そこにいなかった”かのように……。
Tales of Fatalien
ー希望を紡ぎ出すRPGー
ーーこれは、絶望の中に見出した光を信じ続けた、少年達の悲しくも暖かな“絆”の物語。