「な……お前は!?」
「その損傷じゃ戦闘はもう無理でしょう、すぐに撤退してください!」
もう身を隠すとか言っている場合ではありません。
視界が悪くなる仮面も投げ捨て、レ級から目を離さないまま、長門さんに告げます。
見たところまともに動けそうなのは既に装甲の厚い戦艦組のみ。
しかしその戦艦組も皆大破に近い状態です。
彼女たちがこれ以上ダメージを受ければ全員での撤退は難しくなります。
皆相応にプライドの高い方たちです。
素直に聞いてくれればいいのですが……。
「貴女、まさか噂の……」
陸奥さんが肩を押さえながら何かを言いかけます。
噂? 何のことでしょう。
いえそんなことより。
「私は敵ではありません、お願いですから信じて! 早く撤退を!」
その時、何故か呆然とこちらを見つめていたレ級が動きを見せました。
私を指差し、けたけたと笑い始めました。
『オマエ、オマエダ!!』
「……?」
『アア、アア、会イタカッタ……ゼ……!!』
『……なんか知らないけど、すごく気に入られてるようだね……』
「全然嬉しくないです」
何だかよく分かりませんが、こちらに執着してくれるなら好都合です。
私はあいつの出鼻をくじくために魚雷を一斉発射、それと同時にあいつの懐に飛び込もうとしました。
『ソノ手ハモウ通ジネーヨ……!』
ですがレ級は冷静に魚雷を迎撃、あるいは装甲の厚い部分で受け、まったくの無傷でやり過ごしました。
そして無防備に飛び込んでいく私に、横合いから長大な尾による一撃を食らわせます。
「ぐ……ッ!?」
とっさに回し受けの要領で受身を取り衝撃を殺しましたが、それでも軽量の私は吹き飛ばされてしまいます。
いったん距離を取りながら牽制の砲撃。
こんなもの、ヤツが相手では牽制にもなるとは思えませんが……。
やはりレ級はいっさい避けようともせず、お返しとばかりに私の豆鉄砲とは比べ物にならない長大な戦艦の主砲を向けてきます。
『ヤバい避けて!!』
「――ッ!!」
間一髪。
身を反らした私を必殺の砲弾が掠めていきます。
直撃していたら、耐久力だけは戦艦並みにある私でも無事では済まなかったでしょう。
長門さんたちが航空能力を潰してくれたお陰で、射撃の精度が落ちていたのが救いでした。
とはいえ……。
「強過ぎる……」
やはり、真っ向勝負ではどうにもなりません……。
戦艦組に意識を向けると、陸奥さんや大和さんは空母組を抱え、撤退の体勢に入っていました。
しかし長門さんはわずかに残った砲塔をレ級に向け、交戦の意思を捨て切れないようでした。
気持ちは分かりますけど、いくら長門型の主砲とはいえ、そんな半壊した状態ではヤツに通じるとは思えません。
焦りから、私は声を荒げてしまいます。
「何をしているんですか!? 長くは保ちません、早く!!」
どういう訳かレ級は動きを止めてこちらの動向を伺っているようでした。
しかしいつ気まぐれを起こすかも分かったものではありません。
陸奥さんが長門さんに空母の一人を押し付けて、怒鳴ります。
「長門、撤退するわよ!」
「しかし……!」
「旗艦としての務めを果たしなさいッ!!」
「くっ……必ずだ! この借りは必ず返すぞッ!!」
血を吐くようなその言葉は、私とレ級どちらに向けたものだったのか。
長門さんはようやく撤退の号令をかけ、海域から離脱していきました。
彼女たちの姿が見えなくなってから、私はレ級に向き直ります。
「……待っていてくれたんですか。正直、意外です」
『アア、モウアンナ連中ドウデモイイヨ。
コレデ思ウ存分……オマエヲ嬲リ殺シ二デキルンダカラナァァァ?』
レ級の眼が一際赤く輝きました。正直怖いです。
長門さんたちとの交戦で少なくとも中破はしているはずなのに、戦意にはいささかの衰えも見えません。
長門さんたちは既に撤退していますが、あの損傷で仲間を抱えながらでは速度もろくに出ないはず。
ここで私が逃げれば腹いせに長門さんたちが追われるかもしれません。
……私は、意を決しました。
「ワタシ、交代してください」
『……わかった。けど期待はしないでよ。はっきり言ってアレは私でも勝てない』
「はい、分かっています。……さっきも言ったとおり私に考えがあります。
少しだけ、時間を稼いでください」
『……わかった。その言葉、信じさせてもらうよ』
そうして身体の主導権をワタシに譲ると同時、私の意識は奥へと追いやられてしまいました。
それと同時に押し寄せる悪意の奔流。
「…………っ」
いつもなら必死に耐えてやり過ごすそれに、今回はあえて身を委ねました。
「探さ、ないと……!」
さて、ここからは非常に分の悪い賭けになります。
しかしこのままではどうあがいても勝ち目はありません。
(出来ればこの手にだけは頼りたくなかったけど……)
悪意の源泉を求め、私は更に己の意識の深層へと沈んでいきます。
あの。
私が生まれ変わった場所。
深淵の中で静かに燃える。
憎悪の炎を求めて。
駆逐聖姫 春雨
STAGE 07 深淵
……。
…………。
……………………。
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おや?
おやおや、また来たんだね。
うん、君は色々と愉快な子だったからね。覚えているよ。
ワタシちゃんも元気でやってるかな?
あの時はいいところでドタキャンされちゃったからねえ。残念に思ってたんだよ。
さて、用件は分かっているよ。
あまりもったいぶるのも何だし分かりやすくいこうか。
力ならここにある。
必要なら手を伸ばせばいい。
代償を覚悟の上であるなら――君はどこまでも強くなれる。
くっくっく。
ああその通り。
コレはねえ、破滅の鍵なんだよ。
選ぶのは君だ。
それでもコレを手に取るつもりがあるかい?
おおっと。
躊躇わないんだねえ。この前の寝ぼけていた時とは違うのに。
さすがここまでたったひとり戦い抜いてきただけのことはある。
いや、ひとりじゃあなかったっけ?
まあとにかくいい度胸だ。気に入ったよ。
君はどんな愉快なバケモノに成長してくれるのかな?
あるいは彼女にさえ匹敵するかもしれないな。
あぁ、とてもとてもとても楽しみだよ。
力が欲しければいつでもおいで。
コレはいついかなる時も君を拒みはしない。
くっくっく。
それじゃあ、マタね
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…………。
……。
「……っ!?」
私は意識の深淵に溶け込もうとしていた自分を引き剥がし身を起こしました。
寒気が酷い。
何か。
とても。
とてつもなくおぞましい声を聴いた気がしました。
「……いえ、今はそんな事を気にしている暇はありません」
初めて来たときと変わることなく、凍えるほどに寒い深淵の闇の中。
私の目の前にはいつか触れかけた闇の炎が浮かんでいます。
……それは私を深海棲艦へと変生させたこの世ならざる領域の力。
これから力を引き出す事が出来れば、あるいはあのレ級にも太刀打ち出来るかもしれません。
ここに立っているだけで、身に覚えのない憎悪に心がささくれ立っていきます。
それを意志の力で抑え込み、私は炎をしっかりと見据えました。
(……うん、大丈夫。気をしっかり持てば……)
深淵の中での時間の流れ方がどうなっているのかはわかりませんが、あの状況で時間をかけたくはありません。
意を決し、私は更なる力を求めて炎に手を伸ばします。
(今だけでいい、ほんの少しの間、この炎の憎悪と悪意に耐えることができれば……!)
そして私は。
今度は自分の意思で。
炎に触れました。
「あ」
それは、ざぶりと。
熱いのに冷たい水のような感触でした。
「あ?」
私の。
ソレに対する認識が。
どれだけ甘いものだったかを。
後悔する間もなく。
「あ」
炎が。
「あ、あ」
憎悪の、焔が。
「ひ……」
私を包み、焼キ尽くシて。
「ひ、ぃ……ア……ギ……」
憎悪が悪意ガ絶ぼ望うががガ、押ししヨせるるる。
「……………………ぁ」
殺せ。
殺せ。殺せ。殺せ。
殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
「うあ、あ、ああああああ!! ああああああああああああ!!」
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
ああああああああああああああああああああああああああああああ
堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ
堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ
堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ堕とせ
ああああああああああああああああああああああああああああああ
沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め
沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め
沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め
ああああああああああああああああああああああああああああああ
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ
沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ沈めろ
あああああああああああああああああああははははははははははは
沈めろ早く沈めろ何度でも沈め泣き叫んで沈め火の塊となって沈め
水底に沈め昏い海に沈め鉄の底へ沈め二度と浮び上れぬ深海へ沈め
憎悪で沈め怒りで沈め恐怖と共に沈め悔恨を胸に沈め慢心して沈め
死と共に沈め堕落して沈め絶望して沈め惑い狂い沈め沈む為に沈め
沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め沈め
あははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははは
沈 ん で し ま え ! !
「アァァァァァ――!!」
『えっ!?』
目が覚めた私はバケモノに追い詰められていたワタシを押しのけて主導権を取り返しました。
とりあえず叫んでからバケモノを殴り倒します。
『ナ……!?』
バケモノは頭から海面に突っ込みました。
頭がとてもとても痛かったけどちょっとすっきりしました。
「シズメェー!!」
『グッ……』
首を掴んでがんがんがんと連装砲で殴りつけます。あんまり効果がありません。
連装砲では威力が足りないようなので魚雷で殴る事にしました。
どかんとバケモノの頭が吹っ飛びませんでした。硬いです。
代わりに私の右手が黒コゲになりました。痛いです。
『ガッ――!?!?!?』
そういえば忘れてました。魚雷は撃つものでした。
外すともったいないので至近距離から頭に撃ち込む事にします。
バケモノが吹っ飛びました。私も吹っ飛びました。痛いけど楽しいです。
『ギ、ァッ!? ア、頭、ガ、ァ、ァ……!?
コ、コノ――!!』
バケモノがフラフラしながら立ち上がって何か言ってます。沈めましょう。
尻尾が飛んできたので右腕で受け止めます。痛いです。
そろそろ沈んで欲しいです。
はい。沈めるのは大事です。沈めましょう。
「シズメシズメシズメシズメシズメェ――!!」
連装砲で殴りつけます。尻尾を抱えて連装砲で殴りつけます。あんまり効いてません。
そういえば忘れていました。連装砲は撃つ物でした。撃つ。弾が出ません。撃つ。弾が出ません。
砲身が曲がってます。撃つ。出ない。撃つ。出ない。撃つ。なんか爆発しました。痛いです。
やっぱり連装砲は殴るものでした。でもどっちみち効かないので魚雷をいっぱい撃ちました。いっぱいです。
尻尾が吹っ飛びました。私も吹っ飛びました。痛いけど楽しいです。ちょう楽しいです。
『ギャアアァ!! コ、コノォォォ! オマエマタオレノ尻尾ヲ……!』
いい加減沈んで欲しいです。
はい。沈めるのは大事です。沈めましょう。
「シズメシズメシズメシズメシズメェ――!!」
『オマエガ沈メ――!!』
殴られました。痛いです。殴りました。痛いです。すっきりしました。
殴られました。殴りました。殴られた。殴った。殴られた。殴った。
殴られた。殴った。殴られた。殴った。殴られた。殴った。殴られた。
あ、魚雷を忘れていました。
撃った。バケモノが吹っ飛んだ。私も吹っ飛んだ。痛いけど楽しいです。
何だかだんだんノってきました。はい。
「シズメ、シズメ、シーズメシズシズ、シ・ズ・メ――ハイ♪」
『アアアアア、コノ××××ガ! イイ加減二……!!』
殴られた。殴った。殴られた。殴った。殴られた。殴った。殴られた。殴った――――――――
「シズメ?」
私は首を傾げます。
なんでこいつ沈まないんでしょう?
意識の奥で、突如押しのけられた『ワタシ』は焦燥に苛まれていた。
あのままならどの道勝ち目はなかったため『私』の言葉に望みを賭けて防戦に徹していたのだが、それがこのザマである。
『いったい何をしたんだあの私(アホ)は……!』
紅い焔を身に纏う今の『私』は明らかに正気を失っていた。
『上位種のエリート化……?』
そんな話は聞いたこともないが、急激なパワーアップといい、そうとしか考えられなかった。
一般に。
深海棲艦は負の感情を強く持てば持つほど、同型であっても強力に成長すると言われている。
それがエリートやフラグシップと呼ばれる存在たちだ。
だがあの度が過ぎるほどに穏やかな気性の『私』が、何故急にそんな感情を持ち得たのだろうか。
『……あ』
そこで『ワタシ』は気付いてしまった。
『ま、さ、か……』
いや間違いない!
あの暁の水平線バカは『アレ』に手を出したのだ!
それはおよそ海で沈んだ全てのモノどもの悪意と絶望が詰め込まれた、深海棲艦の集合無意識に存在する深淵の炎。
深海棲艦は皆その炎から力を得て現世に生まれ出ると『ワタシ』は【ドコ】かで【ダレカ】から聞いたことがあった。
あんなものに触れてしまったら、どんな強固な意志を持っていようが正気など保てるわけがない。
『ワタシ』ですら耐えられないのに、よりによって『私』が耐えられるわけがない!
……当初、中途半端な『私』にそれをさせるつもりであったことは、既に彼女の中では忘却の彼方だ。
深海棲艦として変生するなかで分かたれた人格とはいえ、どちらも所詮は春雨であった。
『ど、どど、どうしよう……このままじゃ私が本当に戻れなくなっちゃう……!』
あるいはその前に沈んでしまうか。
姫級とはいえ駆逐艦が戦艦とまともにやりあうのはどだい無茶なのだ。
耐久力はともかく火力が違い過ぎる。
これまで春雨は戦艦を相手にする時は夜戦や雷撃、あるいは奇襲などを使い仕留めてきた。
だが今は最強の戦艦を相手に真正面から殴り合いをやらかしていた。
どういう訳か、春雨の出力が異常なほどに上がっており、そのため駆逐艦と戦艦の殴り合いは成立していた。
しかしとっくに両者共に大破しており、どちらもいつ沈んでもおかしくはなかった。
『ああもう早く正気に返ってよ私――!!』
『ワタシ』が頭を抱えたその時。
彼女の索敵能力が、多数の深海棲艦がこの場所に接近してくるのを感じ取った。
『クッ……デク、ドモガ……寄ッテ、キチマッタ……カ』
「……シズメ?」
でく。木偶。本当です。
周りには哀れな哀れなデク人形の気配がいっぱいいます。沈めなきゃ。
駆逐軽巡戦艦空母重巡雷巡潜水艦よりどりみどりです。全部沈めなきゃ。
でも魚雷もうないです。連装砲もないです。どうしましょう。いいから沈めなきゃ。
『オイ』
ああその前にいつの間にか魚雷を握ってこっちに振りかぶってるこいつを沈め――
『イツマデモ、ラリッテンジャネー……』
どかん、と。
至近距離から斜め四十五度の角度で頭に魚雷を叩きつけられて、爆風と共に私は海面に頭から突っ込みました。
「!?!?!?!?!?!?」
突然の痛みと衝撃に意識が一瞬吹っ飛びます。
幸い私は頭部に甲虫のような形状の装甲を装着していたので、それが吹き飛んだだけで済みました。
しかし衝撃までは完全には殺せず、私の意識は眩暈と頭痛と耳鳴りと悪意と絶望とで悪夢のような混濁を引き起こしました。
「ああ姉さん私の麻婆春雨が今日も輸送任務でソロモンの悪夢はやっぱり仮面とマントとドラム缶を着けるべきだったんです」
『ナルホド……自分モ痛イ、ケド……割ト、使エルカモ、コレ……』
「ああ待って夕立姉さん突撃はダメです戻ってきてハウスハウスー…………ってあれ?」
絶望的な頭痛をこらえ、何とか意識を引き戻して顔を上げてみれば、いつの間にか目の前には戦艦レ級が佇んでいました。
どういう訳か彼女からはあの狂人じみた雰囲気が薄れているような気がします。
そして何故か私を見る目が酷く痛々しい気がしました。
『……ハァ。……白ケタ、カラ……今日ハ、モウ帰ル……』
「……?」
何故かほとんど轟沈直前の損傷を負っている彼女は、私から背を向け酷くくたびれた様子でふらふらと立ち去っていきます。
何が何だか分かりませんが、どう見ても止めを刺すチャンスです。しかし何故か私自身も同じくらいに全身が損壊していました。
装着式の砲は腕部から無残にひしゃげ、魚雷発射管は空っぽ。何より私自身、立っているのがやっとの状態です。
とても攻撃などできる状態ではありませんでした。
そのまま為すすべも無く何処かへと去るレ級を見送っていると、ワタシから怒鳴り声が聴こえてきました。頭が痛いです。
『やっと正気に戻ったのかこの大馬鹿!!
ワタシたちもさっさとここから離れるよ!!』
「……ワタシ……もう少し、声抑えて。頭が痛いんです……。
あと疲れて動けません……」
『自業自得だよぼけなす! てかそんな事言ってる場合じゃないの!
深海棲艦の群れがここに集まりつつある!』
「…………はいー!?」
こうして私は何が何だか分からないまま、轟沈寸前の身体に鞭を打ってほうほうの体で逃げ出しました。
CASE 30
作戦名:第二次サーモン海戦
旗艦:戦艦長門
判定:D
敗北
その後。
何とか泊地に使っている小島まで辿り着いた私は、修復剤(バケツ)を被ってすぐに倒れるように眠りこけました。
そしてその翌朝、ワタシから事の顛末を聞き、私は自分が何をやらかしたのかを大体思い出してしまいます。
一部記憶が抜け落ちている部分もあるのですが、多分思い出さないほうがいいほどの愚行の記憶でしょう。
自分の愚かさと身の程知らずさと果てしないほどのイタさを思い知って、しばらくの間私はひどく落ち込むのでした。
「……ところで私の体が赤く光るの、何とかならないのでしょうか」
『知るか』
###TIPS
長門艦隊
海軍全体で見ても最強の一角。
もう少し万全であればレ級を倒せる可能性は高かった。
ちなみにレ級の航空能力を潰したのは大和。
縺ォ繧・k繧峨→縺ヲ縺」縺キ
この作品においては全ての元凶その1。
ちなみに元凶その2はどこぞの深海で寝惚けている。
どちらも今後登場しない。
深海棲艦なんて名前なのにアレとの絡みがある二次創作が殆どないのが意外です。