Deadline Delivers   作:銀匙

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こんな物悲しい雨の日に、思い切り風邪をうつされました。
喉も痛いし熱いんだか寒いんだか解らないし。
そんな状態で小説を書く以外に何をしろというんですか。
おかげで筆が進む進む。
思い切りはかどってます。
と、いうわけで変則公開です。



第40話

 

ベレーの言葉に、ビットがコーヒーを啜りながら微笑んだ。

「正しいか正しくないかじゃなくて、自分達の命令通り動いてるか否かしか見てないからね、大本営は」

ベレーは俯いた。

「そんな・・」

「元々戦争自体が不条理だらけなんだれど、今は人類より遥かに力の強い深海棲艦が相手じゃない?」

「・・」

「深海棲艦が1度降伏しても、後で気が変わって力押しされたら人間や留置場なんかじゃ太刀打ち出来ない」

「・・」

「降伏を受け入れるな、じゃ無くて、降伏されても困る。本当はそういう事なんでしょうね」

ファッゾが頷いた。

「ビットの言う事が正解だろうな。大本営は死んでも認めないだろうが」

ミストレルが腕を組んだ。

「・・んだよ、そういう事ならそうと言えよ。頭ごなしに言われるよかよっぽど納得出来るぜ」

ファッゾがサングラスの上からミストレルを見上げた。

「納得したら撃てたかミストレル?」

「・・ごめん、無理」

「だろうな。俺も柿岩の当主をあの場で成敗する事は出来なかったよ」

「ちゃんと話が通じる、心が通じる相手だって解ったら戦いなんて出来ねぇよ」

「あぁ。ビットの言うとおり、戦争なんて不条理の塊だ。理性を吹き飛ばす程の理由でもない限り無理なんだよ」

「理由って?」

「親しい者を殺されたとか、祖国を焼け野原にされたとか、かな」

「・・じゃあ深海棲艦はなんで俺達に戦争をふっかけてるんだ?」

「ナタリアが言ってただろ。人類全体に恨みを持つのは少なくても、特定の司令官や艦娘に恨みがある奴は多いと」

「・・あー」

「1人1人がそれぞれ別の個人だったとしても、それが膨大なら人類対深海棲艦になっちまうんだろうよ」

ミストレルがガリガリと頭を掻いた。

「・・ほんとによー、ベレーじゃねぇけど堂々巡りの悩みに陥るよなぁ」

ファッゾは頷いた。

「考えないようにしてるってのはあるな。どうにもならん問題だし」

ベレーはファッゾに向かって言った。

「でもっ!ファッゾさんがちゃんと考えたから、地上組の皆さんは戦いを避けようと動いてます!」

「んー」

「ファッゾさんの行動は決して無駄なんかじゃない!無駄なんかじゃなかったんですっ!」

「ベレー・・」

「だって・・その話を聞いた時、私は、ファッゾさんと一緒にお仕事出来る事がとても嬉しくなったんです」

「・・」

「誰も戦いたい訳じゃない。でも戦いはきっと、憎しみあうだけじゃ終わらない」

「・・」

「だから、せめて、せめて助けを求めてる子に救いの手を差し伸べなきゃ・・いつまでたっても・・」

ビットが懐に手を突っ込んだ。

「深海棲艦の艤装直してあげたらさー、こんなのくれたんだよね」

そう言って取り出したのは、明らかに宝石と解るとても大きな石だった。

「ほう・・俺は詳しくないが綺麗な石だな」

「でしょ。私もこれの価値は知らないけどさ、これを見ると何度も頭下げて帰っていった事も思い出せるわ」

「・・」

「言葉が通じる子、通じない子それぞれ居たけど、まぁ身振り手振りで何となく解るし」

「・・」

「話せば解るんじゃないか、力押しで無理矢理何とかしようとする大本営のやり方が悪いんじゃないか」

「・・」

「そんな事を思った事はあったわよ。軍法会議ものだから言えなかったけどね」

ベレーがポツリと言った。

「・・私が思っていた事、皆さんと共通点があって、良かったです」

ビットがにこりと笑った。

「そうね」

「鎮守府に居た時から、この事を、誰かと相談したかった・・気がします」

ミストレルは腕を組んだ。

「アタシも誰かとこうやって話せたら、飛び出さなかったかもな」

「うん・・私の考えてる事・・おかしく・・なかった・・」

ファッゾがふとベレーを見ると、ベレーがうっすらと輝きだしていた。

「ん?ベレー、変身を解くのか?」

だがベレーはそれには答えず、目を瞑り、微笑みながら呟き続けていた。

「良かった・・誰か一人でも・・同じ思いの人・・居て欲しかった・・認めて・・欲しかった」

アイウィもベレーを見たが、既に放つ光はとても強くなっていた。

強いけれど柔らかく、包み込むような光。

アイウィが叫んだ。

「・・ベレーちゃん?ねぇ、ベレーちゃん!」

「認めてくれて・・ありがとう・・ございました・・・」

ミストレルが叫んだ。

「ちょ!ベレー!おい!お前何変な事言ってるんだよ!」

だが誰も、あまりに強い光に目が眩んで、その姿を見ることが出来なかった。

ビットだけが誰にも聞こえないくらいの声で

「そっか、思いを遂げたんだ・・良かったね」

そう言って、頷いた。

 

 

 

 


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