Deadline Delivers   作:銀匙

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第46話

ちょうど同じ頃。

 

「はいテッド仲介所・・あー、今取り込み中なんだ。後でかけ直す」

ガチャリと電話を切ったテッドは依頼人と交渉しながらもそわそわしていた。

龍田の声色が違った。ついにかかったか?

 

「・・・どういうこった?」

「んー・・私の方が聞きたいかなぁ」

テッドは町外れの高台にある広い駐車場で龍田と会っていた。

一人になった後、急いで龍田に連絡したところ、

「ちょっと指定する場所に着てくれないかしら。今すぐ」

と、龍田が低い声で短く場所を伝えたのである。

そして、ボディチェックをされた後、龍田から説明された内容は予想とは全く違ったものだった。

 

「・・・待ってくれ。じゃああの日、俺の事務所に居たメンバーから漏れてるってのか?」

「貴方達が私達と以外にどの噂が大本営まで聞こえてくるかって事を話してないなら、ね」

 

そう。

 

大本営に漏れてきたのは卒業検定で流している噂の全てに加え、

 

「そういう形で誰が噂してるかチェックしようとしている」

 

という話そのものだったのである。

龍田は低い声のまま続けた。

「貴方は漏洩させるメリットが何も無いと思うから伝えるけど、他の人には当面ナシでお願いね」

「し、しかし・・神武海運の連中だって何のメリットもねぇだろ・・・」

「でもね、聞こえてくる話を分析すると・・貴方達に話した事以外は聞こえてこないのよ、ね・・」

テッドが眉をひそめた。

「なに?」

「貴方には申し訳ないけど、あの日、私達は食事を兼ねて町の幾つかでわざと情報を流したのよ」

「・・・」

「でもそれらは1つを除いて漏れて来て無いの」

「1つってどこだ?」

龍田は一瞬間を置いてから答えた。

「・・香取さんに話したもの、よ」

テッドの顔色が変わった。

「おい待てよ、それじゃ共通点は1人しか居ねぇじゃねぇか」

「・・・」

「ま、待て。神通はそういう奴じゃない。違う。絶対違う」

「ともかく、今はそう言う状況。話はそれだけ。他言無用を忘れないでね~?」

「・・・あぁ」

「じゃ、そういう事で~」

 

その日の夕方。

「ただいま」

「よぅ武蔵お帰り。今日は何してたんだ?」

「今日は倉庫の掃除だ。ほら、来週、割と大きな輸送が入ってるだろう?妖精達に休みを取らせたかったしな」

「そ、そうだったな。他の皆も同じか?」

「いや、時雨は私と一緒にやっていたが、他はそれぞれ別の作業をしていた・・が・・」

「じ、あ、ああいや、そうか・・・」

テッドの返事を聞いた武蔵は首を傾げた。

「どうかしたのか?」

「うん?・・・あー・・・」

テッドは眉をひそめてしばらく考え込んでいたが、

「ちょっと出ようぜ」

そういうと車のキーを掴んだのである。

 

「いらっしゃい」

茶店の引き戸を開けたテッドは奥の座敷を指差しながら言った。

「すまねぇな・・大きな玉こんにゃくと、道明寺を2つくれ」

老婆はちらとテッドの目を見た後、こくりと頷いた。

「はいよ」

テッドについていきながら武蔵は尋ねた。

「ここに来るのであれば店先の駐車場に停めれば良かったのではないか?なぜあんな遠くに停めたんだ?」

テッドは座敷に上がり、武蔵を通した後にふすまを閉めた。

「・・・ま、とにかく座ってくれ」

少しして、老婆が静かにふすまを開けた。

「置いとくよ。済んだら出ておいで」

「悪ぃな」

「ごゆっくり」

テッドは出された茶と道明寺の皿を武蔵に手渡した。

「さぁてと。えっとな武蔵」

「ああ」

「この前は言わなかったが、ここの婆さんとは古い知り合いなんだ」

「・・知り合い?」

「そうだ。俺が元117研だってのは知ってるだろ?」

「あぁ」

「その時、証人を匿ってもらってた。いわゆる逃がし屋さ」

「・・今もか?」

「いや。とっくに足を洗ったけど、この店にはその頃のノウハウが詰まってる」

「どういう事だ?」

「店内は絶対に盗聴されないし、発信機の類も外から検知出来ない。完全な隔離空間なんだ」

武蔵は眉をひそめた。

「なんだそれは。そんな危険があるのか?」

「そういう事だ」

「・・他の客が入ってきたら?」

「話し終わるまで店を閉めてもらってる」

「穏やかじゃないな。一体何があったんだ」

「例の件、神武海運と俺の誰か、あるいは俺の事務所、このどこかから情報が漏れてる」

「なんだと?」

「俺はお前を信じてる。だから話した」

「・・龍田からそう言われたのか?」

「そうだ。今日至急会いたいと言ってきてな。直接、口頭で。ボディチェックまでされた」

「・・・」

「俺達が卒業試験という形で何の噂が漏れてくるか探知するって所まで漏れてると聞かされた」

武蔵の表情が険しくなった。

「俺はあの場でしかその部分は話してねぇ」

「・・いや。違うぞ」

「ん?どういうことだ?」

「我々の事務所でも計画の全容を説明したではないか」

「だがそこでもメンバーは俺と神武海運の7人だけだ」

「・・そうだな。他には何も聞こえてきてないのか?」

「いや、流す噂の内容が全部漏れてるらしい」

「ならばどちらかというと我々の事務所で話した時の内容の方が疑わしくないか?」

「・・そうか。それらを1度に全部話したのはあの時だけか」

「問題は・・・漏洩経路だな」

「そうだ。あと、龍田はもう1つ言っていた」

「?」

「龍田が香取達だけに話した噂が漏れてるらしい」

武蔵の眉が吊り上った。

「・・神通だと言いたいのか?」

「俺も絶対違うって言った。あいつはそう言う奴じゃねぇし動機もねぇ」

「・・」

「龍田もまだ断定してねぇ。だが漏れた情報はそれだけらしいんだ」

「・・・なるほどな」

武蔵は頬杖をつくと茶を一口啜った。

時間にして1分ほどだったが、その静寂はとても緊張感溢れるものだった。

「テッド」

「あぁ」

「外部から1人巻き込もう。ただし事を不必要に大きくしない奴だ」

「なぜだ?」

「私やお前では近すぎて目が曇る。最悪の場合にな」

「・・・となると」

 

 

 


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