Deadline Delivers   作:銀匙

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凄く熱心に読み込んでる読者様がいるのは嬉しいです。
後の展開が悟られてる?!
い、いやいやまだだ、まだ大丈夫だ。
そんなスリリングな毎日を頂けますし。

…まあ、こんなことを書くから御返事出来ないのです。
うっかりネタバラシしてしまいそうになりますからね。




第35話

・・・バタン。

 

事務所のドアが閉まり、3人が居なくなると、事務所内の空気が和らいだ。

テッドは額の汗を拭いながら神通達に話しかけた。

「や、や、本当に助かったぜ。ありがとうな。今度メシ奢るぜ」

山城がにやりと笑った。

「それなら全員揃ってるんだし、これから食べに行きましょうよ」

「んー?今日は別に用事もねぇし構わねぇけど、どこ行くんだ?」

武蔵が眉をひそめた。

「ここから近いのは蕎・・むぐぐぐ!」

武蔵の口を手で塞ぎながら大和が答えた。

「近衛屋さんに行きましょう!」

テッドと神通が首を傾げた。

「近衛屋?知らねぇなぁ・・」

「どこにあるんですか?」

龍驤がチッチッチと指を振った。

「あかんなぁ二人ともぉ、今日オープンした焼肉屋やで?」

「へー、まぁ大勢で肉食うのも良いか」

大和は武蔵の背中をぐいぐいと押した。

「ほら、そうと決まったら早く行きましょ!ほら!」

「な、き、急になんですか姉上!?姉上!?」

 

そして。

8人だと告げた龍驤に、店内を確認した店員は困り顔で答えた。

「すみません。テーブルが分かれてしまうのですが、よろしいですか?」

「かめへんかめへん。どこや?」

「4人がけテーブル2つか、6名様と2名様テーブルのどちらか・・」

龍驤は一応大和達に振り向いたが、大和達の「当然でしょ」という視線に頷くと、

「ほなそっちいこか!」

といってスタスタ歩き出したのである。

 

「・・・な、なぜこっちを選んだんだ・・龍驤」

龍驤はムフッと笑いながら答えた。

「大人数で来る組み合わせは少ないやろ?」

山城はしたり顔で頷いた。

「オープン初日なんだし、客の方から店に協力してあげないとね」

武蔵はがたりと立ち上がり、山城達を指差した。

「絶対嘘だ!こっちを見て楽しむつもりだろ!」

 

そう。

龍驤はあっさり6人掛けと2人掛けの組み合わせを選択した。

2人掛けのテーブルは奥の隅であり、店内とは神通達の座る6人掛けテーブルで仕切られる形であった。

それを確認した神通達は武蔵とテッドを追い抜くようにすばやく6人掛けへと着席。

6人は仲良く注文を選ぶような会話をしつつチラチラと2人掛けテーブルに視線を送ってくる。

その時になって初めて、テッドと武蔵は龍驤達の狙いに気づいたが時既に遅し、である。

 

武蔵の向かいに座り、おしぼりで手を拭きつつ、テッドは肩をすくめた。

「ま、しゃあねぇよ武蔵。折角だし好きな物食おうぜ。何が良い?」

武蔵は龍驤をもう1度殺意の篭った視線でひと睨みし、フンと鼻を鳴らすと答えた。

「まったく。あぁ、ええと、ロースとカルビがあれば嬉しいな」

「ホルモン系は?」

「わざわざ頼むほどではないが・・テッドは好きか?」

「いや、焼肉好きから言わせると勿体無ぇらしいけどよ、俺もロースとカルビが好きなんだよ」

「全く問題ないじゃないか。外野は好きに言わせとけば良い」

「なら、ロースとカルビ食べ放題セットと・・野菜盛り合わせも頼むか。飲み物どうする?俺は酒行くけど」

「私はウーロン茶で良い」

「お、ウーロン茶に大ジョッキサイズってのがあるぜ?」

「じゃあそれを。あと、ライスが欲しい」

「特盛、大、中、小どれだ?」

「特盛で」

「漬物は?」

「白菜の浅漬けはないか?」

「・・多分これじゃねぇか?」

テッドの指示した写真をじっとみた武蔵は

「・・かな。ではそれを」

テッドは頷くと神通達に声をかけた。

「よし。おーい、そっちは任せて良いか?」

龍驤が頷いた。

「ええよ。こっちは適当に始めとるし、気にせんときやー」

「早いな。そっちは何頼んだんだ?」

「オールホルモンセットやで?適当に焼いといてじゃんけんで順番に箸をつけるんや!」

「お、おう、なんか最初から罰ゲームみたいだな・・」

「何言うてんねや。普通に食うたかてオモロないやんか」

時雨と扶桑が早くも青い顔になっているのを見て、テッドは囁いた。

「・・なぁ武蔵」

「あぁ」

「俺、こっちのテーブルで良かったぜ」

「私もそう思う」

「じゃあ頼むか。コールボタンは・・これか」

 

「お待たせ致しましたぁ、カルローモリモリ食い放題コースでーす!」

「おっ、来た来た。真ん中に置いてくれ」

「はーい!えっと、お時間は90分で、このタイマーが鳴ったらラストオーダーでーす」

「ん。解った」

「肉のお代わりは皿が空いてからでお願いしまーす。炭と網はこちらで適宜交換しますんで!」

「OKOK」

「後は野菜盛り合わせと、お漬物と、あと・・特ライスでーす!」

「絵に書いたような・・てんこ盛りのどんぶり飯だな・・」

「国産コシヒカリをガスで炊いてるんでウマいっすよ!みっちりよそっときましたー!」

店員が目の前にライスを置こうとしたのでテッドが遮った。

「あ、違う違う。メシは向こうだ」

店員は武蔵のほうを振り向き、目を見開いた。

「えっ?・・と、特盛で良かったですか?今なら小さいのに変えられますけど?」

武蔵は肉を網に載せる手を止め、ひょいと丼を受け取ると首を振った。

「いや。お代わりは出来るのか?」

「へっ?あ、いや、お代わりは無いです。追加注文に・・なりますけど・・?」

「そうか。解った」

呆然とする店員にテッドが告げた。

「大丈夫。大丈夫だから。で、他に注意事項あるか?」

「え?あ、えーと、た、タレはこっちから、ゆず塩、オリジナル、ピリ辛になります」

「おう」

「取り皿がこちらで・・あ、レモンハイは・・」

「俺だ」

「ではウーロン茶はこちらに置きますねー」

「あぁ」

「ではごゆっ・・く・・り・・」

どうして店員が言葉に詰まったかというと、武蔵が手に持つ丼のライスが明らかに減っていたからである。

武蔵はちらと店員を見返したが、気にせずテッドに告げた。

「そのエリアのロースはもう大丈夫だぞ」

テッドは箸を取ると武蔵ににこりと笑った。

「サンキュー・・あ、兄ちゃんありがとな」

「は、はい、ご、御用の際はコールボタン押してくださーい・・」

 

 

 


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