Deadline Delivers   作:銀匙

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第15話

 

早霜は操作を終えると、3人の真ん中にスマホをそっと置いた。

スピーカーからコール音が数回して、程なく応答があった。

「はーい、どなたかしらー?」

「第110鎮守府の、早霜、高波、あきつ丸です」

「ふーん・・じゃあ1つ質問良いかしら」

「どうぞ・・」

「私が大本営で従わせてたロボットは何体?」

高波がにこりと笑った。

「2体です」

「じゃあその名前は?」

「アルファとベータ、かも」

「正解。周りには貴方達3人だけ?司令官は居ないわね?」

早霜が頷きつつ答えた。

「はい。3人だけです」

「ん、じゃあ早速聞くけど、そっちの様子はどうかしら?」

「司令官と秘書艦には、私が砲撃して2人を轟沈させたと報告しました」

「ええ」

「司令官は予想外だったようで、お二人の言い分を聞く機会を失った事を詫びておられました」

「・・そう」

あきつ丸はひやりとした。

これは最上級の機密を漏らしたと言えるレベルだろうか、違うだろうか、と。

だが、小さく首を振った。

多分、霧島殿が秘匿と言った真の部分からは・・外れているだろう。

早霜は説明を続けていた。

「・・そして、鎮守府所属艦娘や妖精達から聞かれるたびに、同じ説明をしておきました」

レイの声色がすこし強張った。

「ええと、早霜ちゃんそれで大丈夫?身の危険はなさそう?」

早霜はそっとあきつ丸を見てから答えた。

「少し睨まれていますが、今の所、それ以外に動きはありません」

「んー・・適当な時期をみて僚艦や妖精達には言っておきなさいよ、二人とも元気だって」

あきつ丸がびくりと反応し、そのまま反射的に喋った。

「ゆ、夕張殿と島風殿はご無事なのでありますか?」

「そうよ。そもそも貴方達は2人に会ってないし」

「「えっ?」」

目を丸くするあきつ丸と早霜を横目に、高波は静かに頷いただけだった。

「・・ど、ど、どういう事でありますか?」

やっとの事であきつ丸がそう話しかけると、少しの沈黙が訪れた。

「えっと・・高波さん」

「はい」

「貴方、からくり解ってるんじゃないかしら?」

「・・大体、つながってる、かも」

「じゃあ言ってみてくれないかしら。違う所は補足するわ」

あきつ丸と早霜は、そっと高波を見た。

高波は1つ咳払いすると、口を開いた。

「えっと、私達が行った海域には、ビットさんと島風さん以外の夕張さん達が集まっていたのかも」

「私達は遠く離れた所にいるビットさんと島風さんと、幹事君を使ってお話してたのかも」

「IDプレートは・・んー、ずっと前に二人から外されて、他の人が持ってきたの、かも?」

「早霜ちゃんがゴム弾で撃ったのは二人を模した人形だったのかも、です」

部屋に沈黙が流れた後、スマホからレイの声がした。

「・・全部正解よ。いつ気づいたのかしら?」

「夕張さん達が取り囲んだ後、すぐにIDプレートをレイさんに渡した時、かも」

「どうして?」

「そもそもレイさんは、私達がお二人に危害を加えるリスクについて全力で阻止すると仰ってました」

「・・良く覚えてたわね」

「それに、IDプレートは簡単に外れないし、夕雲型の主砲で軽巡と駆逐艦を一度に轟沈させるのは無理かも」

「・・ふふっ。閃光弾撃つタイミングがちょっと早かったからね。ナナミちゃん緊張してたし」

早霜が呟いた。

「本物だと思ってました。だから将来に遺恨を残さぬよう、あきつ丸さんに信じてもらう為に撃ったのです」

「遺恨、でありますか?」

「はい。お二人の行動を快く思わない方が将来報復を仕掛けないよう、既に死んだと広める為の工作です」

「・・あ」

「逃がしたとなれば、どこかで生きてるとなれば、また探し出し、消そうと動くかもしれない」

「・・」

「司令官がそうする可能性は消えましたが、艦娘の皆さんの中にはまだ恨んでる方が居るかもしれません」

「・・」

「好かれていた夕張さんを恨む気持ちは出しにくい。でも私がやったと言えば同調して名乗り出てくるかもしれない」

「・・」

「その恨みが深まる前に私が説得し、もう許してあげて欲しいと言いたい。そう考えたのです」

「そう、だったのでありますか」

「夕張会の反応が早く、しかも昇天に見せる光まで上がったので、話を合わせてくれたのだと思ってましたが・・」

レイが笑った。

「実弾でも耐えられる人形だったし、着弾の衝撃が意外と少なくて倒れないんじゃないかとヒヤヒヤしてたらしいわ」

高波が問いかけた。

「遥か沖合いに集合地点を作ったのは、二人と離す為、かも?」

「まぁそれもあるけど、貴方達も知らない追跡者が居ないか確認する為よ」

「遠距離でもお話出来る幹事君があったからこそ出来た、かも」

「そうなるわね」

あきつ丸は眉を顰めていたが、やがて腕を組みつつ口を開いた。

「えと、あの、全体を1度整理してもよろしいでありますか?」

「もちろんよ」

「ま、まず、我々の夕張殿と島風殿のお二人は、最初から安全な彼方の地に匿われていた」

「そうね」

「追跡者が居ない事を確かめる為に外洋まで連れ出された我々は、幹事君を使ってお二人と話をした」

「ええ」

「そして人形が近づいた時に早霜殿がゴム弾で撃ち、倒れた人形を他の夕張殿が取り囲んだ」

「倒れた後がずっと見えると人形だってバレちゃうからね」

「囲まれた夕張殿のどなたかが用意していた閃光弾を2発撃ち、轟沈したように見せかけた」

「割とそれっぽかったでしょ?」

「そしてあらかじめビットさん達から外していたIDプレートをレイさんを経由して早霜殿に渡した」

「時間をかけないとプレートが冷たい事を不審に思われるかもしれないからね」

「そして早霜殿と高波殿は、鎮守府内で夕張殿に恨みを抱く艦娘が居ないか、ずっと探していた・・」

高波が頷いた。

「です」

あきつ丸ががくりと頭を垂れた。

「・・・物の見事に騙されたのであります」

 

 

 


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