Deadline Delivers   作:銀匙

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第14話

 

天龍は金剛の後に大人しく従っていたが、ついに肩をすくめた。

「・・なんなんだよ、金剛さんよ。こんな裏っぺりまで連れて来てさ」

「んー・・」

金剛は周囲を何度か見回した後、頷いて言った。

「おかしいと思いませんカー?」

「何がだよ」

「早霜デース」

「・・イカれてるってんなら賛成だぜ。いきなり仲間撃ち殺したんだからよ」

「そこデース」

「・・あん?」

「早霜と出撃した時の事、思い出してみてくだサーイ」

「・・・」

「仲間を差し置いていきなり撃ったり、前に出たりする子ですカー?」

「・・ちげーな。アイツはずっと戦況を見てて、必要なら急所に一撃ってタイプだ」

「デース」

「だから今回だって夕張と島風を一撃で仕留めたんだろ?あってるじゃねーか」

「撃った理由はどうですカー?」

「・・・んー・・そういや・・」

「YES。あまりにも感情的で短絡的デース」

「・・どういう事だよ」

「NEXT。早霜はあんなに出歩く子ですカー?」

「・・いや・・あいつはむしろインドアタイプだ」

「デース」

「そういや・・昨日からやけに見かけるな・・高波と二人で・・」

「YES。あの子達は何かを探してマース」

「何かって何だよ。自分を睨む奴って事か?」

「それなら話を聞いた直後から露にしてる子は多いですし、もう解ってる筈デース」

「・・んー?」

金剛は天龍の耳元で囁いた。

「逆って事は、無いデスカー?」

「逆って・・睨むことの、か?」

「YES」

「・・け、けどよ、それを何で今更探すんだ?」

「それはつまり、夕張に害を成す存在デース」

「え?だってもう夕張は・・あっ!!!」

短く声を上げた天龍に、金剛は唇に人差し指を当て、声をひそめた。

「シーッ!全ては仮説デース。でもその方が、全部繋がると思いませんカー?」

「・・だから歩き回り、探してるってか?」

「ただそのやり方は、早霜と高波が自らを囮にしてるって事デース。Dangerousデース」

「それでもアイツらは・・夕張に今後危険が及ばないようにしてるってことか・・」

「YES」

「俺達はどうすりゃ良い?」

「仮説が正しければ、確認を終えたら二人から説明があると思いマース。それまで・・」

「二人に手出ししねぇよう引き締める、ついでにそっち側の奴も探す。だな?」

「YES。天龍は察しがイイネー」

「んー・・軽巡連中には仮説を説明しねぇと引き入れられねーぞ?反発してる奴も多いしよ・・」

「天龍から説明してもらうのは荷が重いですカー?」

「・・午後に川内型・球磨型全員とミーティングがあるが、その時説明して良いか?」

「あまり広範囲に行うと早霜のターゲットが警戒してしまいマース」

「んー・・夜戦馬鹿とクマと筋トレ女だけで大丈夫かなぁ・・」

「バランスがとても難しいネー、だから天龍に任せマース」

「そっちは、任せて良いんだな?」

「YES。重巡、空母、戦艦は私と霧島で話すネー」

「後は潜水艦か・・イクに言っとくか」

「潜水艦の子達は横の繋がりが太いデース。それで良いネー」

「やれやれ。それならそうと俺にくらい言えってんだ。高波も早霜も水臭ぇなー」

「・・あの子達はとても真面目で、最後までやり通す子達デース」

「けど、何でも背負い込みすぎるのが玉に瑕なんだよ」

「・・YES」

「ま、金剛の仮説を踏まえるとスッキリ説明が付くし・・それに」

「それに?」

「そうであって欲しいな。俺としてもよ」

金剛と天龍はニッと笑いあった。

 

こうして鎮守府は、どこかいつもとは異なる雰囲気に包まれていった。

その夜。

 

コン・コン・コン

ノックの音に一瞬の間を置いて、扉がゆっくりと開いた。

 

「・・・こんばんは、です」

「っ!」

ノックしたあきつ丸は、現れた高波の顔を見てどきりとしたが、すぐに目を瞑った。

そうだ。

高波も早霜と同じ夕雲型の生き残り。同じ部屋で当然だ。

レイ殿は気づいていたのでありましょうか・・当然、そうでありましょうな。

もし武器を持っていたら、あるいは間違えて・・

観念したように溜息をついたあきつ丸は、目を開けて苦笑した。

「こんばんは、であります」

「ちゃんと説明するので、入って欲しいかも、です」

あきつ丸は無言で頷き、中に入って行った。

部屋には布団が敷かれ、その奥できちんと正座した早霜が待っていた。

 

「・・・まずは、必要性があったとはいえ、騙した事を、お詫びします」

向かい合うように座ったあきつ丸に、早霜は深々と頭を下げた。

あきつ丸は怪訝な顔になった。

「・・砲撃した事、で、ありますか?」

「正確には、ゴム弾で撃った事を今まで言わなかった事、ですね」

「・・えっ・・なぜ・・・そん・・あ・・あむっ!」

あきつ丸はもう少しで大声をあげそうになり、慌てて自らの両手で口を塞いだ。

早霜は頷いた。

「これからレイさんに連絡を取り、答えあわせを行います」

「こ、答えあわせ、で、ありますか?」

「はい。状況から考えると、私が考えた事と、レイさんの企みは相違ない筈です」

早霜はスマホを手に取った。

「こちらに夕張会専用アプリ、幹事君をインストールしました。初期設定も済ませてあります」

「・・」

「では、レイさんに・・ダイレクトコールを・・行います」

早霜の手がかすかに震えている事に気づいた高波は、そっと早霜の太ももに手を置いた。

早霜は揺れる目で高波を見返した。

「ね、姉さん・・」

「大丈夫。早霜ちゃんの推測は間違ってないから、怖がる事は無いです」

早霜はぎゅっと瞑った後、薄く目を開け、幹事君のダイレクトコールボタンをタッチした。

IDは・・0が5つ・・

 

 

 


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