Deadline Delivers   作:銀匙

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第24話

 

場が静かになったので、フィーナは顔を上げ、ナタリアを真っ直ぐ見た。

「ボスは・・どうなりたいんですか?」

ナタリアは質問の意図を測りかね、そっと答えた。

「どう・・って?」

「ボスがレ級である限り、ランニングコストが膨大なのはご存知の通りです」

「・・うん」

「一方で神武海運の話によればソロルでは艦娘や人間に戻れるそうです」

「・・ええ」

「今のボスの姿で人間に戻って、ワルキューレも解散して、ファッゾさんに飛び込むのは1つの手だと思います」

「・・そうよね」

「ただ、それは後戻り出来ない選択ですから、お互いの合意の上で始めるべきです」

「ええ」

「そしてファッゾさんに気持ちを確かめるなら、気まずい結果かもしれない事を覚悟しないといけません」

「・・」

「その時ボスはワルキューレを、Deadline Deliversを、続けられますか?」

「・・」

「ボスの恋路ですから、私達だって手伝える事は手伝いますし、決定を邪魔するつもりはありません」

「・・」

「ただ、レ級のままファッゾさんに飛び込んでも、ファッゾさんは支えきれないと思います」

「・・」

「どの道でも今とは決定的に変わって行きます。踏み出す限り」

「・・」

フィーナはそこで言葉を切ってナタリアを見ていたが、続けた。

「だからずっと一人で悩まれていた。そういう事だったんですね?」

ナタリアは頷いた。

「・・だって、私が仮に人間に戻ってしまったら、貴方達だって困るでしょう?」

「まぁ2択ですけどね。ボスと一緒に人間に戻るか、3人でワルキューレ続けるか」

フローラが頷いた。

「独立だって出来なくは無いけど、何もメリット無いよね。皆と居るの楽しいし」

ミレーナが続けた。

「ワルキューレに愛着はあるし、レ級でいる為の仕組みもボスが整えてくれたしね・・」

「艦娘は無いわね」

「MADF?永久に勘弁して欲しいわ」

「まぁこんな感じで、もしボスが抜けたらその後は3人で話し合いますよ、心配しないでください」

ナタリアは溜息をついた。

「でも動かしたい理由は私の個人的感情。それも片思い。動くスケールと理由のバランスが取れなさ過ぎでしょ」

フィーナは首を傾げた。

「バランスが取れないと好きになった人に告白しちゃいけないんですか?」

「うっ」

「それは言い訳ですよ、ボス」

「容赦ないわね」

「変に達観して欲しくないのと」

「・・と?」

「ボスはウルトラ級の引っ込み思案だって良く解ったので」

「うっ」

フローラも頷いた。

「乙女モード全開で2時間語れるほど溜め込んでるとは思いませんでしたよ」

ナタリアは両手で頭を抱えて俯いた。

「あぁあぁあああ」

ミレーナはにこりと笑った。

「ただ・・ボスが躊躇うのはそれだけじゃないような気がするんですよねぇ」

ナタリアはミレーナの方を向いた。

「なによ、私もう全部喋ったわよ?」

「じゃなくて」

「えっ?」

「ボス、今の仕事どうですか?」

「んー?仕事?」

「結構のびのび、上手くやれてますよね」

「ええ。さすがにもう慣れたしね」

「レ級だからこそ好きな海原進んでいけますし、稼ぎもそれなりにあるから何でも買えますし」

「そうねぇ・・」

「地上でだってワルキューレの名前を出せば割と融通利きますよね」

「まぁね」

「ファッゾさんのお嫁さんとしてふっつーの人間になったら、それ全部無くなりますよ?」

「・・・あっ」

一瞬で顔色が変わったナタリアを見てミレーナは思った。

あ、余計な事言ったかもしれない。てっきり解ってるのかと・・・

 

「あーもーどうしよー、ねぇフィーナどうしよー」

涙目のナタリアにがっくんがっくん揺さぶられながらフィーナは無表情に答えた。

「どーしろっていうんですかー」

フローラは言った。

「いっそファッゾさん囲いますか?ツバメとして」

ナタリアはフィーナを掴んだままフローラの方を向いた。

「えっ・・どういう事?」

「援助交際の資本家的?」

「それ・・パ・・じゃない、ママって事!?」

「いやそんな言い回し初めて聞きましたし」

「私だって今初めて言ったわよ何言わせんのよ!」

「でも、それならボスは好きな時にファッゾさんと甘~い時間を過ごせますよ?」

ミレーナが頷いた。

「仕事も今のまま、町での権力も今のまま、私達も今のまま、ファッゾさんとの関係大前進!」

ナタリアは顎に手を置いた。

「意外と悪くな・・いやいやいやいやいや」

「考えましたよねボス」

「考えさせたの貴方達よね!?」

「でも結構現実解ですよね」

「そっ、そりゃ、ファッゾとご飯食べたり手を繋いだりあれとかこれとかキャー!」

「具体例は別に聞きたくないんで」

「冷たくない!?」

「ぶっちゃけ過ぎです。極端から極端へ飛びすぎです」

「もう何も怖いものなんて無いわ!」

「ねぇフローラ、クレイモアって武器庫にあったわよね?」

「ボスの部屋吹っ飛ばすくらいならM67を数個放り込む方が安いよー」

「それもそうね」

ナタリアがジト目になった。

「微妙にリアルな話しないで」

フィーナが頷いた。

「よし。ボス!」

「ええ」

「告白しましょう」

「・・は!?」

「で、ファッゾさんが良いって言うんなら先の事はファッゾさんと相談しましょう」

「そ、そっか。まぁファッゾだって色々あるわよね・・指輪とかー、新婚旅行とかー」

フィーナはナタリアのデレ顔にイラッとしたのでジト目で続けた。

「そもそもボスの事好きかどうか解りませんし」

「えっ」

「眉顰めて「俺はミストレルしか眼中にないんだ」と言われるかもしれませんし」

「・・うそ」

「「ベレーより上はBBA」ときっぱり言われるかもしれませんし」

「ぇええぇえ!?」

「まさかの「俺はテッドが好きなんだ」とか言うオチかもしれませんし」

「そんなぁあぁあああ!そっちなのぉぉお!?」

フローラとミレーナが声を揃えた。

「フィーナ待って!ボスのライフはもう0よ!」

 

 

 


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