インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第42話

「紅……椿……」

 

真紅のISが箒に与えられたIS。

一夏はそれを見て、顔が険しくなった。

 

「それじゃあ早速、フィッティングを始めようか!」

 

そんなことを気にしない束は箒を《紅椿》に乗せ、フィッティングを始める。

予め入れてあったデータに箒の新たなデータを更新するだけの簡単な作業だったため、あっという間に終わってしまった。

 

「そんで、いっくん」

 

束は《紅椿》が自動でやってくれるようにセットすると、一夏の方に振り向く。

一夏は簪の前に立ち、束の視界に写さないようにする。その後ろにはマドカが着く。

 

「《白式》はどうしたの?」

 

『あんなガラクタはスクラップにした』

 

一夏は《リンドヴルム》を何時でも展開できる状態にする。

相手は人の命など塵屑同然に扱うような存在だ。

当然、警戒を怠らない。

 

「……そんな塵機の方がいいの?」

 

『お前が作った全ての物の方が塵に思えるが?』

 

一夏と束を中心に異様な空気が流れる。

もし、ドラゴン〇ールで表すなら、双方の地面が陥没し、亀裂が出来ていただろう。

それぐらい、お互いに殺気を放ち、睨み合っていた。

 

「そう……なら……」

 

束は一夏に一つの提案を出した。

 

「箒ちゃんの《紅椿》といっくんの《リンドヴルム》……どっちが強いか決めようか」

 

《紅椿》のフィッティングが完了すると同時に束は一夏に決闘を申し込んだのだ。

一夏はその時……笑っていた。

 

「姉さん……」

 

最初から最後まで聞いていた誰もが、束の言葉を理解できなかった。

なぜ、そこまでして束は一夏に執着する理由があるのか。

 

『あぁ、いいぜ。やろうか……《リンドヴルム》』

 

そう言って、一夏は《リンドヴルム》を瞬時に展開する。

 

『マドカ……簪を頼む』

 

「わかった。兄さんも気を付けて」

 

『あぁ』

 

マドカは一夏から簪を守るようにと頼むと大きく頷いた。

 

「一夏くん!」

 

簪に呼び止められた一夏は後ろを振り向く。

 

「いってらっしゃい」

 

笑顔でそう言われ、一夏は僅かに微笑む。

体勢を低くし、簪の耳元で、

 

「行って来る」

 

いつもの機械音ではなく、一夏自身の生身の声で言ったのだ。

そして、その言葉を聞いたのは……簪だけだった。

 

『準備は終わったのか?』

 

「いっくんが今の箒ちゃんに勝つなんて、100%無理だからね」

 

『なら、その自信を打ち砕いてやるよ』

 

一夏と箒はお互いに空へと飛び立つ。

 

「やれる……この《紅椿》なら!!」

 

箒は遂に手に入れた力に心を躍らせていた。

ずっと先にいた一夏が今、目の前にいる。

やっと一夏と同じ土台にいると実感していたのだ。

 

「来い! 一夏!!」

 

だが、それは大きな間違いだった。

箒……束……いや、この場にいる全ての者が……織斑一夏と言う化け物の本気を知らなかったのだ。


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