インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第41話

「それでは予定通り実施試験を行う。候補生は自国の装備を、それ以外の者は……」

 

臨海学校二日目。今日から本来の目的である実施試験が行なわれた。

各自、織斑先生の指示に従い作業を進める。

そんな中を中断するかのように山田先生の声が横切った。

 

「おっ……織斑先生!!」

 

声からして異常事態だと言うことが分かり、マドカは何故か空を見つめている。

一夏も空を見つめると、何やらこっちに向かっている物があることに気付いた。

 

「上空から何かが接近してきます!!」

 

そして、それが生徒の前に落ち、一夏とマドカは瞬時に簪の前に立つ。

落ちて来た物は……ニンジンの形をした何かだった。

 

「……。やあやあ、お待たせしたねぇ」

 

中から出てきたのは……この世で誰もが知る人物だった。

もちろん一夏も知る人物であり、同時に最も良く知る人物でもある。

 

「はろーはろー! みんなのアイドル、篠ノ之束。ここに参上―――う!!」

 

IS……インフィニット・ストラトスの創造者であり、箒の姉……篠ノ之束が表舞台に姿を現したのだ。

一夏が最も警戒している人物が目の前に現れ、一夏は思わず《リンドヴルム》に手を乗せてしまう。

 

「篠ノ之束!?」

 

生徒の殆どは束の登場に驚いており、一夏が《リンドヴルム》に手をかけていることに気付いていない。

 

「ちーちゃ―――ん!!!」

 

束が織斑先生を見つけ、飛びつこうとするが……

 

「うるさい。やめろ」

 

アイアンクローが炸裂した。

しかも、本気のアイアンクローだ。

リンゴすら容易く砕いてしまう程の握力が目の前で披露され、生徒の殆どがその光景に驚いていた。

しかもただの驚きではない。

 

「相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

織斑先生のアイアンクローを受けてなお、悲鳴の一つを上げず、それどころか普通に会話をしていたのだ。

 

「今は授業中だ……何しに来た」

 

束にこの程度のダメージは通じないと分かったのか、織斑先生はその手を離す。

 

「そんなの決まってるじゃない! かわゆい妹に会いに来たんだよっ」

 

そう言って、束は箒の傍に寄る。

 

「箒ちゃんしばらく見ない内におっきくなったねえ! 特に……」

 

束が箒に手を伸ばすが……

 

「そういうのはやめてください」

 

はじかれてしまった。

 

「いっくん! 箒ちゃんがつめたいよー!! ひどいー!!」

 

そうい言って、束は今度は一夏の元に近づく。

しかし、一夏は待機状態の《リンドヴルム》を抜き、束の前にその剣を向けた。

 

「い、いっくん……?」

 

一夏の目には、明らかに敵意があった。

束もその敵意に何を感じたのか、その先には進もうとはしなかったが、その理由が一夏の後ろにいる子だと分かると、何故か大きな溜め息を吐く。

 

「何でそんな物を守ろうとするの? いっくん」

 

『主人を守って何が悪い? それと、物ではない者だ』

 

相変わらず身近な人間以外には興味の一欠けらすら持たない会話をする束だった。

 

「ふ~ん、主人ね。ガラクタを作っていい気になっているゴミが?」

 

その言葉に一夏は頬が一瞬動く。

束のその言葉は侮辱のそれ以外にはなかった。

だが、一夏は《リンドヴルム》を展開することはなかった。今ここで展開してしまえば、被害がどれぐらい出るのかが予想できない。

ましてや目の前にいるのは、今の世の中を作った人物である。

 

「あの……それで頼んでいたものは……」

 

そんな一夏と束の会話を中断させたのは、箒だった。

束は箒との会話だけは、素直に聞く。もし、他の人だったならその場は血の雨になっていただろう。

そして、箒の言葉を聞いて、束は先程までの覇気を全く感じさせず、通常運転に戻る。

 

「ああ。そうだったね! もちろん準備済みだよ。さあ、大空をご覧あれ!」

 

そう言って、空からまた何かが降って来る。

 

「束さんの最新作。全スペックが現行ISを上回る最高性能機……」

 

降ってきた翡翠型の何かが消えるとそこあったのは一機のISだった。

 

「これぞ、箒ちゃんの専用機。《紅椿》だよ!!」

 

真紅のISがそこにあったのだ。


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