インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第36話

私には物心が付いた時には親と呼べる者はいなかった。

白衣を着た複数の男女に毎日のように薬と実験と要した実戦訓練をやらされ、日々を過ごす。

そんなある日、私は聞いてしまった。

 

『またD判定だ。千冬が同い年の頃には、A判定だったというのに』

 

『IS適性を強制的に上げる処置も失敗した。どうなってるんだ』

 

『きっと……愛されていないのよ』

 

『世界に愛されていないのよ』

 

『誰にも愛されていないのよ』

 

『終わりのない憎しみしかないのよ』

 

『約束された未来などないのよ』

 

『希望などないのよ』

 

『絶望しかないのよ』

 

私の今までの努力が……ただの無駄でしかなかった。

希望のない者は処分される……それが、ここでのルール。

私の最後が訪れようとした時だった。

 

「生存者がいた」

 

ISアラクネを纏ったオータムに私は出会った。

亡国機業が研究所を襲撃し、そこにいた被験者を保護していたのだ。

その日、私は運が良かったのか、生き残った。

 

「この先、貴女は……Mよ」

 

救い出された私は、亡国機業の一人として活動することになった。

そして、与えられた名前は……M。

同時に私は黄昏種と呼ばれる者だと分かった。そして、私の新しい人生の始まりだった。

 

「ほらほら」

 

オータムが所属する部隊で、私はIS訓練を続けた。

一日の殆どをオータムとその隊員と共に過ごす。

失敗した時、成功した時と共に笑ってくれる仲間が出来た。

それが、私にとってはとても嬉しくて、誇らしかった。

 

「ほらよ……M。おめでとうな」

 

そんな日々の中、オータムが珍しく私に何かをくれた。

それは、タグで裏にA/0と刻まれた物だった。

それを見た隊員が驚きながら拍手を贈る。

 

「?」

 

私は分からなかった。

ただ、名前と所属が刻まれたタグを渡されただけで、皆が祝福してくれるのが。

 

「もしかして、分かっていないのか、M?」

 

その言葉に私は頷く。

それを見て、皆が笑い出し、私はムカついた。

 

「その裏に刻まれているのは、階級だ」

 

「階級……?」

 

「あぁ。黄昏種はSからDと階級が付けられ、それに応じて強さが違う」

 

「MはA/0だから、この中では結構強い方だな」

 

そう言って、隊員の一人がタグを私に見せる。

そこには、A/3と刻まれていた。

私の所属する隊の中には、黄昏種……兄弟は十人ほどがそうだ。

オータムもそうで、私を除くと最高は今見せてくれた奴が最高だったらしい。

 

「上の連中にSがいたな」

 

S……黄昏種の中では最高ランクで、目にすることは全くと言っていいほど拝めない存在らしい。

それもそのはずだ。

黄昏種は短命の為、そこに到達する前に死んでしまう。

成れた奴は相当運がいい奴だろうと隊員は話す。

 

「S……か」

 

私は渡されたタグを首に掲げ、そう呟いた。

 

「任務だ」

 

タグを渡されてから数ヶ月が経った時だった。

オータムの指示に従い、ISを手に私はその後を無言で追う。

任務は、敵をここにおびき寄せて叩くらしい。

そして、その時が来た。

 

「秘密結社《亡国機業》。コードネーム《M》」

 

水色の髪の少女……更識楯無。オータムから渡された資料にあった少女と同じだったので、私はIS《サイレント・ゼフィルス》を展開した。

楯無もISを展開し、戦闘が開始した。

 

「その程度なの?」

 

しかし、思ったより弱かった。

オータム……兄弟よりかなり弱い。

 

「さようなら」

 

私は楯無に止めをさそうと、ブレードを振り下ろす。

しかし、それは届かなかった。

私の持っていたブレードを大槍が破壊し、そのまま私は取り押さえられたのだ。

眼の前にいる男性はISを纏っており……そいつがあの織斑一夏だとすぐに気付いた。

 

「!?」

 

私はすぐにも引き離そうとしたが、びくともしなかったのだ。

 

「邪魔をするなぁ!!」

 

私はシールド・ビットで撃ち抜こうとし、それに気づいた一夏はすぐにその場から離れる。

そして、離れる時に一夏の首に提げている物に目がいった。

それは、私が持っているタグと全く同じ物であり、そいつも私と同じ同類だとわかった。

そして、お互いにそのタグに刻まれている階級を見せあう。

 

「A0級……」

 

私は初めて同じ階級の者に出会った。

お互いに戦闘が始まったが、オータムにやられた分のダメージが多かったのか、回避行動ばかりする。

しかし、一夏は広域殲滅兵器を放ち、その戦いを強制的に終わらせた。

 

「あの野郎……自爆覚悟であんな物撃ちやがって」

 

自殺覚悟で放ったあれに一夏は姿を消し、私たちの任務は終わった。

オータムは満足いかなかったようだが、あの状況で仕方なかったが、私も同じく。

 

「次は……私が勝つ」

 

次はお互いに完全な状態で戦い。

しかし、それは訪れる前に……事件が起こった。

 

「一階が突破された!」

 

私たちがアジトにしているホテルにハンターと呼ばれる者たちが襲撃してきたのだ。

ハンターは無慈悲に私たち……兄弟、隊員を虐殺していく。

室内とのこともあってISを満足に展開できない状況で、私たちは戦わされ追い詰められた。

 

「下がりなさい!」

 

楯無がその場に現れ、自殺覚悟で大技をはなったのだ。

私たちはすぐさま物陰に隠れ、その一撃をなんとか回避した。

そして、瀕死となった楯無を救ったのは……あの男だった。

 

「織斑……一夏」

 

一夏は壁を突き破り、ISを完全展開状態で楯無を抱えながらハンター二人を相手していた。

しかし、状況はいい方向へと進むことはなく。

 

「はぁ……M」

 

オータムはそう言うと、黄昏種用投与剤が大量に入ったバックを手渡される。

 

「合図したら、アイツの所に走れ」

 

オータムは何を言っているのか分からなかったが、今はそう言っている状況ではないと私は思いその指示に従う。

そして、オータムとスコールの合図に私は一夏の元に駆け寄る。

 

「小僧! そいつを連れて行けぇ!!」

 

その一言が何を示しているのかが分かり、私は……

 

「待って! まだぁ!!」

 

だけど、それは届くことはなかった。

一夏は私を抱き抱え、外へと出ると否や、広域殲滅兵器をホテルに撃ち放つ。

光弾が弾け、ハンター諸共消滅させ、戦闘を終わらせた。

 

「オータム、スコール……。なんで……なんでよ!!」

 

その日……私は兄弟を多く失った。

私の居場所も同時に。


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