一夏の《
操縦者を守るためにシールドエネルギーが防御に回り、膨大なエネルギーを消費し、もう戦うことはできない。完全なラウラの敗北が決まった瞬間だった。
「こんな……こんな所で負けるのか?」
確かにラウラは相手の力量を見誤った。それは間違えようのないミスだ。しかし、それでも―――
「(嫌だ……負けれない……私……私は……)」
―――だが次の瞬間、異変が起きた。
◇
「今日からお前はラウラ・ボーデヴィッヒだ」
人工合成された遺伝子から作られ、戦いの為だけに鍛えられた存在……私は優秀だった……世界最強の兵器、ISが現れるまでは……。
ISとの適合性向上の為……私は肉眼にナノマシンの移植手術が施された。『
しかし、私の身体は適応しきれず……最強だったはずの私は、いつしか出来損ないの烙印を押されていた……。
そんな時だった。彼女と出会ったのは。
彼女の名は織斑千冬。世界最強のISの使い手……。
教官は極めて優秀な指導者だった。教官の教えを忠実に取り入れる事で、私はたった一月で最強の座に返り咲いた。
教官の強さ、凛々しさ……そして、自らを信じる姿。その全てに憧れた……私もああなりたいと……。
「教官……どうしてそこまで強いのですか? どうすれば、強くなれますか……?」
ラウラはある日訊いてみた。
「……そうだな」
「(……えっ……)」
その時―――ああ、その時だ。あの人が、鬼のような厳しさを持つ教官が、わずかに優しい笑みを浮かべた。
ラウラは、その表情になぜかだか心がちくりとしたのを覚える。
「私には弟がいてな……あいつを見ているとわかる時がある。強さとはどういうものなのか……その先に何があるのか……」
優しい笑み、どこか気恥ずかしそうな表情―――
「いつか日本に来る事があれば……」
違う。
私が憧れるあなたは、強くて、凛々しくて、堂々としていて……それがあなたなのに。
許せない。あなたにそんな顔をさせる男が……!
◇
「(織斑一夏……教官の弟。教官の栄光に泥を塗った男……あいつを敗北させると決めたのだ。完膚無きまでに叩き伏せると!! 欲しい……今より強い力……比類無き最強の力が!!)」
その時、ラウラの奥底で何かがうごめく。
「うあああっ!!」
突然、ラウラが身を引き裂かんばかりの絶叫を発する。
「な……なに!?」
一夏と簪は目を疑った。その視線の先では、ラウラが……シュヴァルツェア・レーゲンが変形していた。
『ISに……取り込まれているだと……』
「そんな……変形するISなんて、聞いた事も無いよ!」
『非常事態発令! 全試合を中止! 鎮圧の為、教師部隊を送り込む! 来賓、生徒は速やかに避難すること』
『どうやら、ヤバい状況みたいだな』
「う、うん。一夏は?」
『このまま、避難するのがベストだろうが……』
そう。このまま簪を連れて避難しても良かった。しかし、一夏は変形したラウラのシュヴァルツェア・レーゲンを見て、それは出来ないと判断した。
「(最後まで面倒事を持ち出しやがって……)
変形したシュヴァルツェア・レーゲンの姿は元の姿とはかけ離れ、あるISへと変わり、それは―――千冬が使っていたIS《暮桜》その物だ。だから、これは一夏がやらなければいけないと思ったのだ。
『俺が終わらせる』
そう言って、一夏は《リンドヴルム》を解除する。
「一夏!? 何故、ISを解除する!」
『《リンドヴルム》の武装ではラウラを殺してしまうからな』
意識を取り戻した箒が目にしたのは、試合が終了した後であり、今一状況が理解できていなかった。
そして、明らかにISを解除するべきではない状況で一夏はISを解除し、思わず声をあげてしまう。
箒は一夏がISを解除することが意味の分からなかったが、一夏の言う通り、《リンドヴルム》の武装では殺傷能力が強すぎたのだ。
『だから……コイツを使う。簪、サポート頼む』
「うん。でも、無理だけはしないで! それ、まだ調整が終えていないから」
『ああ』
一夏が《リンドヴルム》から取り出したのは、一本の日本刀だった。
『―――浸食せよ、凶兆の化身たる鏖殺の邪竜。まつろわぬ神の威を振るえ』
展開されたISは―――刃のような鋭い形状の装甲と、腰回りを覆う奇妙な
『《