インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第26話

数日後。放課後の第三アリーナで鈴とセシリアは鉢合う。

 

「一人で自主練なんて……。あんたまさか、あの噂を……」

 

「鈴さんこそ……。熱心に個人練習をなさる理由がおありで?」

 

二人の間に見えない花火が散る。どちらも狙っているのは優勝のようらしい。

 

「お互いに優勝狙いってことね……! それならいっそ、トーナメント前に白黒つけちゃう?」

 

「あら…いい考えですわね。どちらの方がより強く優雅であるか、この場で……」

 

お互いにメインウェポンを呼び出すと、それを構えた。

だが、そんな二人の間を超高速の砲弾が飛来する。

 

「なっ…なに!?」

 

「誰ですの! いきなり攻撃するだなんて……」

 

緊急回避の後、鈴とセシリアは揃って砲弾が飛んできた方向を見る。そこには漆黒の機体がたたずんでいた。

 

「あんた……」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……!!」

 

 

 

 

「ドイツのシュヴァルツェア・レーゲン……ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

 

「……二人がかりで量産機に負ける人間が代表候補生とは……よほど人材不足なのだな。数くらいしか能のない国と古いだけが取り柄の国は」

 

いきなりの挑発的な物言いに、鈴とセシリアの両方が口元を引きつらせる。

 

「なに? アンタ。ドイツからスクラップにされに来たってわけ? セシリア……どっちからやるか、ジャンケンしよ」

 

「わたくしはどちらでも構いませんわよ」

 

ラウラの全てを見下すかのような目つきに並々ならぬ不快感を抱いた二人は、それでもどうにか怒りのはけ口を言葉にみいだそうとする。

 

「二人がかりで来たらどうだ? くだらん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」

 

ぶちっ―――!

 

何かが切れる音がして、鈴とセシリアは装備の最終安全装置を外す。

 

「「上等ッ!!」」

 

 

 

 

「ねえ、ちょっと聞いた!? 今、第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦しているって!!」

 

何やら騒がしくなっていることに気付いた一夏は、隣を歩いている簪に何を言っているのか聞いてみる。

 

「第三アリーナで、代表候補生が、模擬戦を、している」

 

『代表候補生……』

 

この学園にいる代表候補生は簪を含めて六人。その内、二人は上級生である。

 

「(なんか、無性に嫌な予感がする……)」

 

一夏は第三アリーナへと方向を変え、刺突剣(レイピア)に手をかける。

 

 

 

 

一夏が第三アリーナに着いた時には、その嫌な予感が的中していた。

鈴とセシリアがラウラを相手に戦闘を行なっており、二対一の図に関わらず、ラウラが優勢だったのだ。

しかし、一夏の嫌な予感はそんなことではなかった。

 

「くっ……」

 

ラウラは既に限界まで来ている《ブルー・ティアーズ》に止めを刺そうとレイザー・ブレードを振り下ろされようとしていた。

その一撃は大怪我を待逃れない勢いだったのだ。

 

『《雷閃(らいせん)》』

 

一夏はそんな間に《雷閃(らいせん)》を打ち込む。

 

「ちっ! ようやく姿を現したな……織斑一夏!!」

 

『無性に嫌な予感がしたから、来て見れば……やはり、お前だったか。ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

一夏が来たことにより、ラウラは鈴とセシリアには全く興味を示さず、一夏だけを見る。

 

「貴様を倒す以外、この学園には用はない」

 

『そうかい。なら、さっさと愛しのお国に帰りな』

 

「貴様をミンチにしてからなぁ!!」

 

ラウラがまさに飛び出そうとしたその瞬間、一夏は領域を展開する。

 

『《支配者の神域(ディバインゲート)》』

 

一夏が七色の光輪に包まれると、その場から消えた。

 

「ちっ! 瞬間移動か……この目で見るまで疑っていたが、本当に実在していたとわな」

 

ラウラも一夏の《リンドヴルム》の情報を得ていたが、桁外れの能力には耳を疑っていたようだが、今この場でそれは確信に変わる。

 

『鈴、セシリア。生きているか?』

 

一夏が転移した場所は、先程までラウラがいた場所であり、鈴とセシリアがいる場所だった。

 

「う……一夏…」

 

「無様なところを…お見せしましたわね…」

 

『損傷が酷いな……とりあえず、耳だけでも塞いでいろ』

 

一夏は鈴とセシリアのISを見て、撤退が不可能だと判断する。

なので、一夏は《雷光穿槍(ライトニングランス)》をラウラに向け、

 

『《雷閃(らいせん)》』

 

ラウラの反撃を許さない。

しかし、ラウラは《雷閃(らいせん)》を回避する否やワイヤーブレードを一夏目がけて飛ばす。

回避できない一夏は、ワイヤーブレードに縛られ、両手が使えない上に、《支配者の神域(ディバインゲート)》を封じられた。

 

「消えろ!!」

 

ラウラはレイザーブレードを振り下ろそうとする。

 

「一夏ぁ!!」

 

簪の声に一夏は《雷光穿槍(ライトニングランス)》に力を入れる。

 

『《(らい)……》』

 

しかし、一夏とラウラの間に影が入り込み、それは実行されることはなかった。

 

「……!! きょ……教官!?」

 

「やれやれ……これだから、ガキの相手は疲れる」

 

『千冬姉……』

 

その影は、織斑先生だった。

 

「織斑先生!?」

 

「す、すごい……生身でIS用のブレード振り回している……」

 

織斑先生は、普段のスーツ姿で、ISなど装備せず、IS用の接近ブレードを軽々と扱っていたのだ。

それにはその場にいた生徒たちは驚いていた。

 

「模擬戦をやるのは構わん。……が怪我人を出す事態は黙認しかねる。この戦いの決着はトーナメントでつけてもらおうか」

 

「……教官がそう仰るなら」

 

「織斑。構わんな?」

 

『構わん』

 

その言葉を聞いて、千冬は改めてアリーナ内全ての生徒に向けて言った。

 

「では……学年別トーナメントまで、一切の私闘を禁ずる! 解散!!」

 

それはまるで銃声のように鋭く響いた。


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