インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第21話

「ちっ!」

 

『《雷光穿槍》』

 

オータムの背後から伸びる八つの装甲脚と一夏の大槍がぶつかり合う。

しかし、一夏はすぐさま数歩下がる。

 

「スタン効果か……厄介な物を持っていやがるな」

 

一夏の《雷光穿槍》を受けたはずの装甲脚が何故かスタンせず、襲いかかったのだ。

そして、一夏はあることに気付く。

 

『俺の雷を地面に誘導したか……』

 

「ほう。良く気付いたな」

 

オータムは一夏の《雷光穿槍》がスタン効果を持っていると判断し、装甲脚の一本を地面に刺していた。

これにより、雷撃は地面に流れ、ほぼ無効化していたのだ。

ISは本来は上空で闘うため、こう言ったことは殆ど起こらない。

 

「まさか、男性操縦者の織斑一夏が《黄昏種(トワイライツ)》だったとは思わなかったぜ……」

 

黄昏種(トワイライツ)?』

 

「あ? なんだ、もしかして自分の正体すら知らなかったのかよ!? こりゃあ、傑作だぜ」

 

オータムはゲラゲラと笑い、腹を押さえる。

 

認識漂(タグ)ってのはな普通、戦死した人間をそれと確認する為のモノだがな。()()を首に提げると、意味合いが違ってくる」

 

オータムは首に提げられたタグを手に取り、このタグの意味を説明し始める。

 

「呼び方は色々とあるな。「タグ付き」、「怪物(モンスター)」、「被害者」、お偉方は「負の遺産」なんて呼ぶしな」

 

オータムは何かの薬を取り出す。

 

「まあ、ざっくり言っちゃえば。私らは幸福を得られない者さ」

 

オータムは数個飲み込む。

 

「久しぶりに同類に会えてしまって、ちっと話し過ぎたな。こっからは本気で()ってやるよ」

 

オータムはIS《アラクネ》を完全展開する。

それは、背中に8つの独立したPICを展開していた装甲脚を備え、蜘蛛を模した異様な容姿をしたISだった。

 

『一つ訂正だ』

 

「あ?」

 

『幸福を得られない者と言ったな。だが、俺は今でも幸福を得ているよ』

 

そう言って、一夏もIS《リンドヴルム》を完全展開させた。

 

「はん、そうかよ。だが、お前は近い将来……後悔するな」

 

またしても同時に、瞬時加速を始める。

さらに脚部スラスターを総動員させて出力をあげていく。

お互いのアーマーがミシミシと音を立てている。

 

『《雷閃》』

 

バシィィィッ!!

 

雷鳴が鳴り響く。

 

 

 

 

ドォォンと、衝撃音を遠くに聞きながら、楯無は訝しげに表情を張り詰める。

 

「これだけ騒ぎを起こして、誰も出てこない? やっぱりおかしいわ」

 

冷たい鋼鉄製の床を歩きながら、楯無は考えていた。

 

「なら、私の相手をしてくれるか?」

 

「!?」

 

いきなり背後からかけられた声に、驚いて振り返る楯無。

そこに立っていたのは、一夏とオータムが首に提げていたのと同じ認識漂(タグ)を付けた少女だった。

しかし、楯無が一番に驚いていたのはそんなことではない。

その少女の顔が―――織斑千冬と瓜二つだったからだ。

 

「秘密結社《亡国機業》。コードネーム《M》」

 

Mと名乗る少女の身体が輝きISが展開される。

楯無もMと同じくIS《ミステリアス・レイディ》を展開した。

 

「何分持つかしら?」

 

Mの見せる笑みに楯無は冷や汗を流す。

楯無はこの少女が自分より強いと確信していたのだ。

この瞬間、四機のISが海上でぶつかり合う。


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