「ちっ!」
『《雷光穿槍》』
オータムの背後から伸びる八つの装甲脚と一夏の大槍がぶつかり合う。
しかし、一夏はすぐさま数歩下がる。
「スタン効果か……厄介な物を持っていやがるな」
一夏の《雷光穿槍》を受けたはずの装甲脚が何故かスタンせず、襲いかかったのだ。
そして、一夏はあることに気付く。
『俺の雷を地面に誘導したか……』
「ほう。良く気付いたな」
オータムは一夏の《雷光穿槍》がスタン効果を持っていると判断し、装甲脚の一本を地面に刺していた。
これにより、雷撃は地面に流れ、ほぼ無効化していたのだ。
ISは本来は上空で闘うため、こう言ったことは殆ど起こらない。
「まさか、男性操縦者の織斑一夏が《
『
「あ? なんだ、もしかして自分の正体すら知らなかったのかよ!? こりゃあ、傑作だぜ」
オータムはゲラゲラと笑い、腹を押さえる。
「
オータムは首に提げられたタグを手に取り、このタグの意味を説明し始める。
「呼び方は色々とあるな。「タグ付き」、「
オータムは何かの薬を取り出す。
「まあ、ざっくり言っちゃえば。私らは幸福を得られない者さ」
オータムは数個飲み込む。
「久しぶりに同類に会えてしまって、ちっと話し過ぎたな。こっからは本気で
オータムはIS《アラクネ》を完全展開する。
それは、背中に8つの独立したPICを展開していた装甲脚を備え、蜘蛛を模した異様な容姿をしたISだった。
『一つ訂正だ』
「あ?」
『幸福を得られない者と言ったな。だが、俺は今でも幸福を得ているよ』
そう言って、一夏もIS《リンドヴルム》を完全展開させた。
「はん、そうかよ。だが、お前は近い将来……後悔するな」
またしても同時に、瞬時加速を始める。
さらに脚部スラスターを総動員させて出力をあげていく。
お互いのアーマーがミシミシと音を立てている。
『《雷閃》』
バシィィィッ!!
雷鳴が鳴り響く。
◇
ドォォンと、衝撃音を遠くに聞きながら、楯無は訝しげに表情を張り詰める。
「これだけ騒ぎを起こして、誰も出てこない? やっぱりおかしいわ」
冷たい鋼鉄製の床を歩きながら、楯無は考えていた。
「なら、私の相手をしてくれるか?」
「!?」
いきなり背後からかけられた声に、驚いて振り返る楯無。
そこに立っていたのは、一夏とオータムが首に提げていたのと同じ
しかし、楯無が一番に驚いていたのはそんなことではない。
その少女の顔が―――織斑千冬と瓜二つだったからだ。
「秘密結社《亡国機業》。コードネーム《M》」
Mと名乗る少女の身体が輝きISが展開される。
楯無もMと同じくIS《ミステリアス・レイディ》を展開した。
「何分持つかしら?」
Mの見せる笑みに楯無は冷や汗を流す。
楯無はこの少女が自分より強いと確信していたのだ。
この瞬間、四機のISが海上でぶつかり合う。