インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第10話

公立IS学園。

ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、その運営および資金調達は原則として日本国が行う義務を負う。

ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、隠匿を行う権利は日本国にはない。

また当機関内におけるいかなる問題にも日本国は公正に介入し、協定参加国全体が理解できる解決をすることを義務づける。

また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保障すること。

―――IS運用協定『IS操縦者育成機関について』項より抜粋。

 

 

 

 

SHRが終わり、一限目も終えて、休み時間になった時だった。

 

「一夏、話がある」

 

突然、話しかけられた。しかし、一夏には聞こえる訳がないが、そこに感じる気配に一夏は反応する。

 

『箒?』

 

「…………」

 

目の前にいたのは、六年ぶりの再会になる幼馴染だった。

篠ノ之箒。一夏が昔通っていた剣術道場の娘で、当時の髪型のままポニーテール。肩下まである黒髪。

 

『なんだ話って』

 

「いいから早くしろ」

 

空中ディスプレイに書かれた言葉に箒は睨む。

そんなことを気にしない一夏は立ち上がり、すたすたと廊下に行ってしまう箒の跡を追う。

 

「一夏。あれは何のマネだ」

 

『これのことか』

 

「っ……」

 

箒は空中ディスプレイを払い、詰め寄る。

 

「貴様。いい加減にしろ! ちゃんと口で話せ!!」

 

一夏の行動が気に喰わなかったのか、箒は一夏の襟を掴む。

しかし、一夏はその手を掴み、無理矢理外す。

 

「あ゛―――そ う か い゛ぃ 。こ れ゛で い゛い゛な ら」

 

一夏から放たれた言葉は普通の人が話すような言葉ではなかった。

片語とにしか読み取れない言葉を聞いた箒は先程までの覇気を感じれなくなった。

 

「い、一夏……一体、お前に何があったんだ……」

 

『事故った。ただそれだけだ』

 

「事故って……」

 

キーンコーンカーンコーン。

 

チャイムが鳴るが一夏には聞こえない。そんな一夏に後ろから叩いてくれる女子生徒がいた。

 

『オリム―。時間だよ』

 

『ああ。わかった』

 

同じクラスののほほんさん。本名はもちろん知っているし、同じ職場の人だ。

手話で会話して、一夏は教室に戻る。

 

「お前に一体何があったんだ……」

 

箒はその場から動くことは出来なかった。

 

 

 

 

「それでは、この時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明を……ああ、その前に再来週のクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

ふと、思い出したように千冬が授業を中断して語り出した。

 

「は―――い!! 織斑くんがいいと思います!」

 

「そーね。せっかくだしね」

 

「私もそれがいいと思います」

 

何やら周りが騒がしくなっていく。

それが、一夏を示していることは自身は気付いていない。

のほほさんからメッセージを受け取ってからようやく気付き、一夏はため息を吐く。

 

「自薦他薦は問わない。他に候補者はいないか? 無投票当選になるぞ? ちなみに他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

反論する意味が全くないことは一夏は気付いており、完全に諦めていた。

 

「納得できませんわ!!」

 

バンッと机を叩いて立ち上がったのは金髪の女子生徒だった。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表なんて、いい恥さらしですわ! このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

後ろで何を言っているのか、一夏は特に気にしていない。

しかし、のほほさんのメッセージを見て、一夏はこめかみに指をあてる。

後ろのに方いる金髪の女子生徒。セシリア・オルコットはIS世代に生まれた現代っ子なのだ。

ISの登場により、女性の地位が上がり付けあがったのが今の世の中だ。

そんな現代っ子が今、ここにいる。

 

「聞いていますの!!」

 

何だかいつの間にか俺に標的が絞られていた。

千冬の指を見て、後ろを向くと。

 

「反論の一つ位言ったらどうですの!!」

 

めっちゃ怒っていた。

なので一夏はセシリアに向けて空中ディスプレイを飛ばし。

 

『別に? お前がやりたいんなら、俺は大歓迎だぜ?』

 

「なっ!!」

 

予想外の回答にセシリアは驚き。

 

「あ、あ、貴方はプライドはないのですか!!」

 

『プライド? それは美味しいのか?』

 

一夏はあえて分かっていながら、そう返信する。

それが火に油を……いや、ガソリンを注いでいたことに気付かず。

 

「決闘ですわ」

 

『……はぁ。いいだろう』

 

これ以上言ったところで何も変わらないと判断した一夏はセシリアの決闘を買う。

 

「とにかく、話はまとまったな」

 

ぱんっと手を打って千冬が話を締める。

 

「勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。それぞれ、用意をしておくように」

 

「はい」

 

『了解』

 

両者の回答を聞き、授業が再開された。


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