インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第1話

「ねえ……今日も行くの?」

 

少女は訪ねる。

日本の都会で二人暮らしをしている彼女はテーブルの反対側でトーストをかじっている彼に訪ねた。

彼はトーストから手を離し、両手で何かの形を作る。

 

『ああ、そうだが? ちょっくら、義姉さんからの頼みだから行くだけさ』

 

少年が使っているのは手話と呼ばれるやつだった。

手話を終えるとまたトーストをまた食べ始める。

だけど彼女は行ってほしくはなかった。

 

「でも……」

 

あの日、自分のせいで彼は音と声を失った。

だから、彼女は彼を危険な所へ行かせることには絶対にしたくはない。

しかし、それでも彼は行く。

 

『大丈夫だ……さっさと終わらして来るからさ』

 

彼は朝食を終えると席から立つ。

その時、彼の首にぶら下がっている二つのタグがぶつかる。

軍人とかが使っているタグで、そこには自分の身元を証明する文字が刻まれたていた。

だけど、彼がしているのは普通タグではない。タグの裏にA/0と大きく刻まれたていた。

 

『じゃあ……行ってくる。簪』

 

「うん……いってらしゃい。一夏」

 

彼……織斑一夏は簪との出会いを不幸だとは思っていない。彼はあの日から彼女……更識簪を守ると心から誓っていた。

 

 

 

 

 

彼は生まれつき少しおかしかった。理解力は人一倍いいのに文字だけはド下手だったのだ。しかも、何処で覚えたのか手話での会話をたまにしていた。

 

「一夏ー。今日もゲーセンに行くか?」

 

「今日は止めとく。財布がピンチなんでな」

 

「そうか……じゃあ、またな」

 

「おう」

 

赤髪の青年、五反田弾の誘いを断り、一夏は荷物をまとめさっさと学校を出る。校門を抜けると首にぶら下がっていた二つのタグを外へと出す。

小学校の修学旅行で京都に行った時に見つけた露店で作ったタグ。

見た目は普通のタグだが、裏にはA/0と大きく刻まれている。

 

「……し……ださ……」

 

「ん?」

 

路地から僅かに聞こえた女性の声に彼は反応する。声がした路地を覗くと紙袋を持った水色の髪の少女一人に対して男たち三人が囲んでいた。

 

「……………」

 

一夏はめんどくさそうにはぁ~とため息を吐き、そのまま路地へと足を進めた。

 

 

 

 

 

「離してください!!」

 

「いいじゃないか。俺たちと一緒にちょこっとドライブするだけだからさ」

 

「そうそう。ちょこっとだけだからさ」

 

嫌がる彼女に男たちは、しつこく誘う。女子学生をナンパするぐらいなら、そこらの子でもよいのだが、男たちが目をつけたのは彼女の通う学校の制服だった。

水髪の少女が着ている制服は名門学校の制服で、そんなお嬢様が一人で下町を歩いていたのだ。

 

「ほら、いくぞ」

 

「いや! 離して……」

 

「邪魔」

 

嫌がる彼女の腕を掴もうとした瞬間、男は蹴っ飛ばされる。

 

「あん? なんだてめぇは!!」

 

「男はお呼びじゃあねんだよ!!」

 

突然の出来事に彼女はその場から動くことはできなかった。そして、助けてくれた彼は残り男たちと乱闘になる。しかし、彼はそんな男たちを相手に一方的にぶちのめす。

 

「この糞ガキがぁ!!」

 

最初にぶちのめされた男がナイフを取りだす。

それひとつで大ケガを間逃れないのに一夏は持っていたスクールバックを盾にしてナイフの刃をへし折った。止めの一撃に膝げりを入れ、男は倒れる。

あっという間に男たちはやられ、一夏はそのまま立ち去ろうとした。

 

「あ、あの……」

 

「あん?」

 

一夏は絡まれていた彼女に呼び止められる。

 

「た、助けてくれて、あ、ありがと……ございます」

 

後半につれて声のトーンが低くなる彼女からお礼の言葉をもらう。一夏はめんどくさそうに頭を掻く。

 

「そうかい。んじゃ、次からは気を付けな」

 

「は、はい……」

 

そう言って一夏は立ち去ってしまった。その時、彼女はあることを思い出す。

 

「名前を聞きそびれちゃった……」

 

手に持っていた紙袋を抱きしめ、自分の住む家へとご機嫌ななめで戻っていた。

 

 

 

 

 

「今日、何かいいことでもあったの?」

 

家に戻ってからも彼女のご機嫌が良く、姉はその理由を聞く。

 

「うん……」

 

「へぇ……その人の特徴分かる?」

 

「う~ん……そう言えば、首に二つのタグをぶら下げていたよ」

 

「タグ?」

 

「うん。軍人とかが下げているのと同じ物を」

 

「……その裏に……何か書いてなかった?」

 

「確か……A/0だったかな?」

 

「……ッ!?」

 

「どうしたの?」

 

「……何でもないよ」

 

そう言って姉は行ってしまった。

 

「また、会えるかな……」

 

彼女はまた出会えることを願うが、それが最悪な結末を生むことを彼女は知らなかった。


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