スリザリン生の優雅な生活   作:モンコ

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イジメⅡ

「メグちゃあーん、夜までそこで我慢してたら制服かえしてやるよー」

「うっわww夜まで裸かよwwwカッワイソー」

「しっかし、コイツの制服でけぇなー、どこに隠すべき?」

「むしろ燃やせばよくね?」

「うお、名案!!」

 

またも笑い声が狭い部屋に響く。

 

「はいはーい、お楽しみのところすいませぇん」

 

その笑い声が、ダルそうな声にかき消された。

 

「自分で彼女をつくることすらできない童貞君たちに朗報でございまぁす。我らがスリザリンの気高き黒薔薇、ラーニャさまが直々に貴様らを処分いたーすー」

「ちょ、ロザリー、そのキャッチコピーはなんなの?」

「今即興で考えた。ピッタリじゃね?」

「恥ずかしから止めて」

「ちぇー」

 

「おい、お前らなんなんだよ? スリザリン生か?」

「イエスイエス、まったくその通りだとも、童貞君。ただ、お願いだから君のその汚い顔をラーニャに見せないでくれるかい?」

「んだと、ガキが………!」

 

向こうが杖を取り出してきたので、うん、粛清開始?

 

「エクスペリアームス」

「ぅあっ」

 

おお、うまくいった。

杖がぱしーんって。

本見ただけなのに、結構できるな。

 

「いやーん、最高!」

「ありがと、ロザリー」

「な、て、てめぇ――――!」

「コンファンド、錯乱せよ」

「え? ひ、い、あああああああああああああああああ!!!」

「おっ、ラーニャすごいすごぉい!」

「まだまだあるんだよ、ライラ姉さまが教えてくれたのとか――――レダクト!」

「ぎゃっ!?」

「あら、外れた」

 

杖を振ると、青年の後ろにあった花瓶が粉々に砕けた。

彼らが逃げようとしているが、そうはいかない。

 

「インペディメンタ、妨害せよ!」

 

そうすると、彼らが固まった。

 

「マーガレットちゃんは、えっと―――この中、だね」

 

ロザリーが気まずそうに指差したのは、掃除道具入れである。

でられないように魔法がかかっていた。

 

嫌悪感がふつふつと沸いてくるのを感じながら、呪文を解く。

 

「アロホモーラ、開け」

 

がしゃん、と音が鳴って、扉が開かれる。

 

中に居たのは、体育座りにうずくまった、背の高い女の子だった。

虚ろな目で、眩しそうにこちらを見ている。

 

不安を与えちゃだめだ。

出来る限り、笑顔で。

 

ただし悪そうに見えないやつ。

 

「こんにちは、ミス・ビジィア―――えっと、もう平気よでしてよ。ほら、制服はここにありますわ。立てますかしら?」

「はぁ……、ありがとう、ございます?」

 

虚ろな声。

ダルそうなのはロザリーと同じだったが、ロザリーのような人を小馬鹿にした響きでなく、心底面倒くさいというような感じだった。

 

「っと、あなたがた、きみたち、おまえら? いや、これはぜったいちがう。あなたがたはだれですか?」

「我らがスリザリンの気高き黒薔薇、ラーニャさm」

「スリザリンのラーニャ・ギルティクと申しますわ、よろしく」

「……黒薔薇、らーにy」

「こっちは同じくスリザリンのロザリオ・アルナティア。ほら、ロザリー、挨拶は?」

「―――――よろしく……」

 

まだ黒薔薇がどうのこうのと言っているロザリーを残し、私は青年たちへと近づいて行く。

 

「みなさま、御機嫌よう。床に寝そべるとは感心いたしませんわね」

「ち、近づくな――――――!」

「いったい、誰に命令していますの?」

 

杖を向けると、彼らは小さくヒッと呻いた。

 

「お分かりいただけたと思いますけれど、もう二度とこんなことはなさらないよう。でないと、今度は本当にあなた方の誰かが犠牲になってしまいますわ。

そんなの、嫌でしょう? 私も嫌です。でも、進化に犠牲はつきものですの。付き物というべきか、憑き物というべきか。まぁどうでもいいことですわね」

 

そこで一旦台詞を区切って、にっこりと笑う。

きっと、私の悪役顔もあいまって、かなり恐ろしく見えたことだろう。

 

「告げ口などはなさらないほうがあなた方の身のためですわ。よろしくて?」

 

こくこくと、一斉に頷いたので、呪文を解除してやった。

一目散に逃げていく足音が完全に聞こえなくなったところで、マーガレットちゃんに話しかける。

 

「平気ですか?」

「はぁ、だいじょぶだとおもいますが」

「んー、とろい答えだなー。ラーニャ、これはダメだぜ、何回助けたってまたいじめられるタイプだよ」

「ロザリー!!」

「ごめんごめん。マーガレットちゃん? メグでいい? 仲良くしようねー」

 

そういって、ロザリーが左手を差し出す。

明らかに挑発と思われるロザリーの言動(本人にその自覚がないのが一番の問題)にも気を悪くしたふうはなく、メグちゃんは普通に握手した。

 

少し感受性の鈍い子なのかもしれない。

 

「じゃ、あたしらはこれで。さいならー」

「さよなら、ミス―――」

「メグでいい」

「……ありがとう、メグ」

 

部屋から出て、もう一度後ろを振り返った。

 

メグが頭を下げていた。

 

あぁ。

あの子は、感受性が鈍いわけじゃないんだ。

だって、ちゃんと、人間らしい感情があるんだから。

 

感謝は、素晴らしい感情だ。

 

「あー、楽しかったー。メグたんも無事助けれたし。収穫はとくになかったけどねー」

「そう?」

 

ロザリーの言葉に対し、自然に、頬がほころんだ。

 

「新しい友達が、出来たじゃない」

 




呪文がたくさんかけて楽しかった♪
ラーニャは一応、天才設定はいってます。

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