守りたいんだ 作:未完
私しか出来ないことがる。もしそうしないと他の人が困る。そんな時私はそれをこなさなければならないと思う。当然の事だ。それが私の責任じゃないかなって思う。
ゆっくりと階段を下りていく。足音は消している。廊下に出るところでは警戒度を限界まで引き上げる。音を立てないよう廊下を慎重に覗く。
(一人か…)
回りに気を配っても奴以外の気配はほとんど感じない。少し賭けが混ざっていたが良かった。二階は奴等の巣窟だった。なんていう冗談みたいな最悪の事態にはなっていないらしい。これなら一人でも大丈夫だったんじゃないか。脳内を戦闘状態に切り替える。
(今だ!)
奴がゆっくりと逆の方向を向いたところで、床を蹴り飛び出した。
一仕事を終えた。私はゆっくり歩き出す。皆が寝ている内に二階を偵察すれば明日を安全に過ごせる。そう思った私は今ここに居る。余裕があったら簡易的なバリケードを作りたい。机を置いとくだけなら私がやったのバレないはず。
(もう少し奥まで行こう。)
廊下を進んでいく。この際単独行動禁止というのは完全に無視している。もうここまで来たら最後まで行ってしまおう。奴等は階段を登ってはこれないはず。脅威となるのはあの日以来二階にとどまってる奴等だけ。それもこの様子だと殆ど居なそうだ。
(しかし寒いな。)
今夜は妙に寒い。あの日のせいで窓が割れているので廊下は外の風がそのまま吹きさらしているから当たり前…
「ん、雨か。」
その割れた窓から見える黒い空に細長い雫が見えた。どうやら降り始めたらしい。どうりで寒いわけだ。早めに用事を済ませよう。
調理室に来た。きっと調理部の部員なのだろうか。ボロボロのエプロンらしきものを首にかけた奴がいた。それを始末する。残骸は隣の準備室に移動させた。きっと準備室は見ないはず。私がこっそり二階に来たことがバレないようにしないといけない。怒られるのもそうだけど、何より皆を心配させたくなかった。
調理室には電子レンジもガスコンロもある。ひとまず明日の目的は達成出来そうで安心だ。仕事を終えた。そろそろ戻るとしよう。ヒタヒタと床を響かせながら閉めたドアの前にたどり着く。取っ手を掴んだ。
ドンッ
「!」
いきなり物凄い勢いで扉が叩かれた。落ち着いていた身体から一気に冷や汗が吹き出す。急いで扉を押さえる。まさか、奴等が…
(いや、落ち着くんだ。)
二階に上がってくる奴はそうそう居ないはず。きっと今まで回ってきたところで見落とした奴だろう。数は少ない、はず。今は冷静さを失う方が恐ろしい。大丈夫。少数なら問題ない。ドアを背中に息を整える。
(今だ!)
音のしなくなったドアから背を離し向き直るそしてドアを勢いよく開いた。
「はっ!」
支えを失って倒れこんでくる奴の姿を認めて気合い一閃を振るう。その一撃で奴は倒れる。心のなかで謝りながら踏みつけて部屋の外へでる。早いところ戻ろう。そう思って廊下に出た。
だけど一瞬で絶望で満たされる。
「まじかよ…」
まるで私の行き先を防ぐように並んでいる。それは奴等だった。
一心不乱にスコップを振るい奴等を蹂躙する。しかし、どこからか次から次へと涌き出てくる奴等にじりじりと囲まれていく。数が多すぎる。いつも夜は校庭の奴等が少なくなる。だからと油断していた。まさかこんなに上がってくるとは思ってなかった。今日に限って何で…
心のなかで神を罵りながら。スコップを振るい続ける。そう遠くないうちに体力が尽きるだろう。そうなったらお仕舞いだ。それまでにどうにか突破しないと…!
足に力を込めて蹴りだす。奴らをどかしてとにかく全力で走る。こっち側はまだ少ない。中央の階段から上がれるかもしれない。これなら行けるか!?
階段の前に来た私はもう絶望しなかった。
(くそっ遅かったか…)
半分は予想できていたからか、それとも諦め始めているからなのかわからない。
カタンと乾いたおとを立てて赤く染まった床にスコップを立てる。そしてそれに寄っ掛かるようにして。もう、諦めようか。そんな考えが頭の中を過る。それを降りきるように頭をふって立ち上がる。こんなとこで終るわけにはいかないんだ。ここで私が終わったら残された皆はどうなるのか。自分の油断でやられるなんて全く笑えない。
(はあ!)
心中で雄叫びを上げてスコップを振り回す。倒す倒す倒す。ひたすらに奴らをなぎ倒し続けるやっと開けた。そう思うのもつかの間階下から新手が上がってきた。くそ…まだ諦めてたまるか。振り続ける手が段々としびれてきた。寝間着のはずのジャージはもうすでに汚れきっている。
「グオォ」
奇声、いや声とは言えないような音を出しながら二体が一度に襲ってきた。一体を有無を言わさず素早く倒す。しかし、もう一体へと向かった時に限界が、来た。
「!」
腕が動かない。ゆっくりと動くそれはまるで相手の目の前に差し出したようだった。それをゆっくりと奴は掴む。そして人外の力でそれを投げ飛ばした。反動で後ろに倒れこむ私。少し後ろの方でカランとスコップが落ちる音がする。力が尽きたように壁に座り込んだ。もうここまでだろう。だんだんと奴らが私によって来る。それを何となく人ごとのように思いながら。これで私は責任を果たすことはできない。みんなごめん。そう思った。とてもやるせなくて情けない。ここで死ぬのかという実感なんか沸かない。心残りは何だろうか。と思ったとき亜やっぱり浮かんできたのは先輩の顔だった。なんてデジャブ。当然のことながら黙って出てきた私のことなんか知るはずもの無いのだから今彼がここに来るなんてことはあり得ない。
化け物の顔が直角に曲がった。
ありえないはずのこと。だから最初は夢でも見始めたのかと思った。
「な、んで。」
直後に吹き飛ばされたそれは他の奴をなぎ倒しながら転がっていった。そして私の前には少し息を荒げた彼がいた。視線は鋭い。
「話は後だ!胡桃走れ!」
そう言って先輩は私の腕を少し乱暴に掴んだ。引っ張られ立ち上がった私はそれに引っ張られるがままついて行った。
先輩はずっとこうだ。
随分間が相手忘れられてそうな気がします。なんとなく道筋は考えてあるので高校編終わるまではやります。亀更新ですがよろしければお付き合いください。