テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター13:ロキ王の悩み、王都への到着

「私達が目指す場所がフェアロ・ドーネ騎士団本部のある王都、フェアロ・リイルアって事はもう確定してるのよね」

 

 山を降りていく途中でルンは書きかけの地図を広げながら言った。

 ルンを仲間に加えた一行は、7年前の事件の記録があるかを調べる為に騎士団本部の持つ資料を探しているのだ。

 

「俺達のいるこの山からはどのような方向に行けばいいんだ」

 

 ロストは未だにこのフェリサ・テック恐山からどの方向へ向かえばいいのかわからず、ルンを先頭にして歩いている状態だ。

 

『この山からは東に真っ直ぐ向かえばすぐに着くぞ』

「そうか」

 

 チャールが軽くフェリサ・テック恐山からリイルアへの大まかなルートを尻尾でなぞる。と、そこでルンがずっと気になっていたのか控えめな様子でチャールを見つめていた。

 

『ん?なんだ?』

「やっぱり、喋ってるのね」

 

 ルンの視線を感じ取ったチャールは、ルンの方を向く。ルンは固まった表情を浮かべていた。

 

「あー、やっぱりルンちゃん、チャールの事気になってるのかな」

『あっ』

 

 チャールがルンを見ると、ルンは訝しげにチャールを覗いてくる。

 少しだけチャールはルンの瞳を見て『うっ』と露骨に嫌な顔をしたがルンはそれに構わなかった。

 

「チャール、と言ったわね…あなた、何者なの?」

『そうだなー…狐、とても言っておくか?』

「犬じゃなかったの!?」

「犬だと思ってたのか!?」

 

 チャールの言葉にララやロストもそのような反応をするので、ルンは本格的にチャールの正体がわからないのか、とため息をついた。

 

「しかし、これを見ると本当にあの山を通らなければ王都への道のりは遠いんだな」

 

 ロストが話を逸らすようにルンの話を頭の中で整理しながら言った。

 ルンの話によると、フェリサ・テック恐山を通らなければピーアから王都リイルアまでは3日近くかかるのだという。

 

「だから、あの山をどうにかして一般人も通れるようにできないか私も模索してるの。それが私のいるパーフェクティオ隊の今の任務なの」

 

 ルンはしっかりとした瞳でそう言い切った。どうやらルンには何かしらの決意があるらしい。

 

「こんな時に隊長さん連れ出しちゃってよかったのかなあ…」

 

 ララも流石にルンが隊長であることについてわかって来たらしく、ロストに耳打ちした。

 

「大丈夫じゃないのか?なにやら深刻な事が起こっていたらしいしな」

「うん…でも、私達のことに巻き込んじゃ…」

 

 珍しく消極的な事を言うララの声はルンに聞こえたのか、ルンがララをじっと見上げる。

 

「あのねえ、私は巻き込まれたんじゃないの。自ら貴方達の事情を聞いた上で同行してるの。何でもかんでも自分で背負うのは……」

 

 そこまで言ったところでルンの口がとまる。何か言い淀んでいるようだが、ララはルンに「ありがとう」と言った。

 

「ルンちゃんが手伝ってくれるんだもん!私が一番頑張らなきゃ!」

「…そうと決まれば、王都へすぐ向かおう。俺達の目的はそこにあるからな」

「じゃあ、王都へは私が案内するわ。ついてきて」

 

 フェリサ・テック恐山を出るあたりで、ルンは地図をしまって歩き出した。ロストとララ、チャールもそれに続くように山を出た。

 ルンは山を振り返って小さく「行ってきます。みんな」と、改めて言った。

 

*****************

 

「…エッシュよ」

「何でございましょう。陛下」

 

 王都フェアロ・リイルアの城の中。

 王の間でフェアロ国王、サイスロキア・ヘンリー・フェアロ。通称ロキ王は傍にいる大臣、エッシュに声をかけた。ロキ王は年老いた見た目をしており、次の後継者を早く王座にあげなければならない。

 

「まだ、ディアロットは見つからないのか…それに、アンリも…」

「すみません…ですが陛下、アンリ様はともかくディアロット様は」

「ディアロットが死んでいるわけはなかろう!いや、あってたまるものか!!」

 

 突然声を張り上げたロキ王にエッシュはびくりと肩を震わすものの、ロキ王を見つめた。ロキ王の息子であるディアロットという人物、そして、ディアロットの子であるアンリという人物が行方不明になっているのだ。

 

「陛下……」

「すまぬ、少々取り乱した」

「もう国民に隠すことは無理です陛下。ディアロット様を大々的に捜索するしか」

「国民にいらぬ心配をかけさせたくないのだ。それはわかってくれ、エッシュよ」

 

 ロキ王は頭を抱え、俯いた。

 

「ディアロット様が行方不明になられてもう、18年ですか…」

「アンリとブラッティーアの娘が行方不明になってからは7年じゃ。あの忌々しい拉致事件さえなければ…」

「フェアロ・エルス、フェアロ・リースの襲撃事件の事ですね。もう、ブラッティーア家には生き残りはいないと」

「じゃが、母親であるリノスがアンリを保護してくれていたという話も、リースのレイシから聞いておった。アンリは絶対に生きている」

 

 はっきりと確信したように言うロキ王に、エッシュはため息を隠せなかった。

 

「ですが、ウンディーネ様は今、この世界に居りませぬ。水属性の均衡が今、この世界では崩れかけてるのです」

「リノスはウンディーネ…ウンディーネの消滅は、本当の話なのじゃな」

 

 ロキ王はなんとも言えない、という風に目を細める。そこへ1人の男性がやってきた。

 ルンの父親であり騎士団長のリンブロア・ドーネだ。

 

「リンブロア、お主か」

 

 ロキ王はリンブロアに親しげに話しかける。

 2人は昔からの友人という事もあり、国王と騎士団長という立場ではあるもののリンブロアはロキに対して敬語を使ったり遠慮したりはしない。

 

「先程から声はかけていたのだが、お前が返事をくれないから入らせてもらった。しかしながらロキ。お前はまだディアロットの事を諦めていないのか…」

 

 リンブロアに言われロキ王は「またその話か」と呆れたように呟いた。

 それほどまでにロキ王は行方不明になった息子を探し続けているのだろう。いなくなって20年近くも経つというのだ。普通は生きているとは思わない。

 

「もう諦めるんだな。私は近々ルンが報告の為に王都へ戻ってくるからその準備をしないといけない、すぐに退室させてもらう」

「…この親バカめが」

「お前に言われたくない」

 

 リンブロアはにやりと笑ってその場を後にした。

 

「はあ、騎士団長と陛下は、本当に仲がよろしいのですね…」

「リンブロアと話したら、少し楽になったわい。さて、公務に戻るかの」

「休憩もほどほどにしてくださいよ、陛下」

 

 エッシュは疲れたようにいう。ロキ王の表情には先程とは違う晴れたような表情が見えた。

 

********************

 

「はああっ!!」

 

 ルンの大鎌がモンスターへと向かう。その刃はモンスターを切り裂いた。

 王都へ向かう道の途中には、当然モンスターが潜んでいた。

 

「ふう、ルンがいてくれて心強いな…」

「そんな、私はまだまだよ。ユアさんにはかなわないもの」

 

 ルンは周囲にもうモンスターがいない事を確認しながら言った。ロストは「そうなのか?」と首を傾げたが、ルンの返しは気弱なものだった。

 

「騎士団の副団長、ユア・メウルシーはとても凄い人よ。何せ、100年前の三国戦争を終結へ導いた英雄だもの」

 

 ユア・メウルシーと聞いた途端にロストは何かが引っかかったのか目を細めた。それとは逆にララはルンの話に食いつく。

 

「すごーいっ!フェアロにはそんな凄い人がいるんだ…!ルンちゃんもいつか、そのユアって人みたいになりたいの?」

「ユアさんみたいになるにはまだまだ鍛錬が足りないわ…でも、いつか仕える殿下の為にも、もっと強くならなくちゃ」

「でんかって……なに?」

「あなたそれも知らないの!?」

 

 女子2人のトークについていくことも出来ず、チャールはロストの肩の上に飛び移った。

 

『はあ…』

「お疲れの様子だな。それにしてもチャール、一つ気になったんだが」

『な、なな、何?』

 

 ロストの問いかけに何故かとても挙動不審な態度を見せたチャールにロストは訝しげな視線を送る。

 

「何でそんなに挙動不審なんだ…。ララ、あまりにも常識を知らなすぎないか?」

『村の人達に異様に過保護にされてたからな…村の外にだそうだなんて考えてなかったさ、あの大人達は』

 

 ロストとララは似ている境遇のはず…だとロストは思っていたが、ララの方は少し自分とは村での扱いが違ったようだ。

 

「ララの方はそうだったのか…まあ、俺もシェルフィールの森より外には出たことは無かったが…あそこまで何も知らない訳では無い」

『…やっぱ、少しは教育した方が良かったよなあ』

 

 チャールはララの方を見ながら少し自責気味に言った。

 

「お前が教育するのか…?」

『突っ込むのそこかよ…』

「話し込んでるところ悪いけど、早く行くわよー!」

 

 ルンはララとの話が一段落ついたのかロストとチャールに声をかけた。

 

「わかった。行くぞ」

『へいへい』

 

 チャールはララの方に乗り移って3人と1匹は王都への道をまた行った。

 

 

 

「うっわー…凄い門」

 

 そうして歩く事恐らく10分近く、ララは王都へ入る入口を見て感嘆の声を漏らした。大きな門が開いていてそこをたくさんの人が通っていく。流石国の中心部とも言えるだろう。

 ロストも流石に(恐らく)王都を見るのは初めてなのできょろきょろと辺りを見渡していた。

 

「さて、と騎士団の資料室へは一旦本部で許可を取ってから行くわ。騎士団の資料室はとても厳重にしなければならない事から地下洞窟の奥にあるの」

「地下洞窟なんてものがあるのか…」

「ええそうよロスト。だから武器の準備もしておいてね。魔物使いの使役するモンスターが大半だけれども、野生のモンスターも住み着いてしまってるもの」

『なるほどなあ…確かにただの人間には入れないな』

 

 モンスターが蔓延っている。という事なのだろう。チャールは『ボクも行かなきゃなのかー』と不満の声を漏らしていたが。

 

『なあ、ボクは別行動していいか?今から騎士団の本部に行くんだろ?』

「そりゃそうだけれども…許可は取りに行かなきゃいけないもの」

 

 チャールは何かを思い出したようにして苦い表情を浮かべる。

 

「でもチャールだけで行動は危ないし…」

『ならロスト!お前がボクと行動しろ』

「俺!?」

 

 突然話を振られたロストは「ええ……」と明らかに嫌そうな顔をする。少し騎士団の本部を見てみたい気持ちはあったのだろう。

 

『お願いだ!ということで、ボク達は宿屋にいる!じゃあな!』

「おいチャール!引っ張るな!くそっ!ララ、ルン、すまん……後は頼む……」

 

 ロストはチャールに引きずられながらララとルンに言った。ララは「あちゃー」と苦笑いしていた。

 

「連れていかれたわね」

「うーん、なんかチャールの様子がおかしい気もするけど…私達は騎士団の本部にいこっか」

「ええ、そうね……」

(本当に、挙動不審だった…チャールは何かを知ってるの……?)

 

 ルンはチャールの行動に疑問を持ちながらも、騎士団の本部へ向かうことにした。

 

 

続く


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