火の聖痕が欲しいです!   作:銀の鈴

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前話では、予約投稿をしてみました。うまくいってよかった♪


3話「模索の日々」

「次は結界術を教えてもらえないでしょうか?」

 

「いいけど、お前が結界術なんか覚えてどうするんだ?」

 

「やだなぁ、自分の引き出しは多い方がいいに決まってるじゃないですかぁ」

 

「…お前って本当に小学一年か?」

 

僕は、叔父上である『大神雅人』に師事しているが、すぐに問題点に気付いた。

 

「叔父上も攻撃一辺倒の人だったとは思わなかった」

 

原作通りに『大神雅人』は、分家最強の術者であり、そして若い頃は外国にも武者修行に赴いていた。

 

原作を読んだ僕のイメージで、炎術だけに捉われずに多種多様な術を習得している人だと勝手に思っていたのだ。

 

「確かに退魔師として『浄化の炎』なんて便利な力があれば、他の術を学ぶより炎術を鍛えるよね」

 

神凪一族の炎には、破邪の力が宿っている。それが他の精霊術者を抑えて、最強の一族と目される秘密だった。

 

魔に対して圧倒的な力があるため、わざわざ他の術を学ぼうとする人間は皆無に近かった。叔父上も海外での武者修行中に学んだのは肉体鍛練の方法ぐらいだそうだ。叔父上いわく、

 

「肉体を鍛え、妖魔に負けぬ体力と、妖魔の攻撃を躱す反射速度を身に付ければ、後は妖魔を焼き払う炎術を磨くのみだ!」

 

だそうだ。

 

結局、分家最強の術者も神凪一族の多くの人達と同じように脳筋だった。

 

「でも、最強最強っていうわりに分家の炎って、たいして役に立たないんだよね」

 

最強であるはずの神凪一族の炎だが、原作では『最弱っぽい』と思えるほどに役に立たない。最高位といわれる『黄金の炎』でやっと敵と同じ舞台に立てるかな?といった感じだったはずだ。

 

しかし、どんなに鍛えたところで、分家の僕では『黄金の炎』は手に入らないだろう。それなら色々な術を覚えて、応用力を養うべきだと思う。

 

敵の目を欺き、敵の罠を躱し、敵の接近を感知したらさり気なく逃げる。それが原作モブの僕が生き残る一番の方法だろう。

 

そのため僕は他の術を学ぼうと思ったが、肝心の師事できる相手がいなかった。期待していた叔父上は脳筋だし、仕方なく他の術者を紹介してほしいと頼んだら「そんな無駄な時間があるなら炎術を修行しろ」と、にべもなく断られた。

 

師事せずに、独学で危険な術を学ぶほどの無謀さを僕が持っているはずもなく、いきなり窮地に立たされてしまった。

 

「まだだ、まだ諦めないぞ。何か手はあるはずだ」

 

炎術師最大の弱点である感知に関しては、個人的に良好な関係を築いてる風牙衆の子供達を頼れるだろう。

 

でも、風術を僕が身につけることはできない。精霊術は適性がなければどんなに修行しても無駄だからだ。

 

「まさか、ずっとそばに侍らすわけにもいかないしね」

 

神凪一族の下部組織とはいっても、小学一年の僕には、彼らに命令する権限など当然なかった。

 

やはり、自分で術を身につけて危険を回避する能力を磨かなくていけない。

 

「やっぱり、彼に頼るのが一番かな」

 

脳筋揃いの神凪一族において、数少ない例外…他の術に精通している天才が僕の身近にいた。

 

「全く、お前も変わっているよな。俺なんかに術の教えを請うなんてよ」

 

そう、原作の主人公『神凪和麻』である。


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