火の聖痕が欲しいです!   作:銀の鈴

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39話「愛を識る者」

「僕は少し焦ってたみたいだね。ここは初心に戻ろうと思う」

 

突然の僕の言葉に、紅羽姉さんは訝しむような顔になる。

 

「初心に?今さら初心に戻るより作戦を立てる方が大事じゃないかしら」

 

確かに紅羽姉さんの言うことに間違いはない。既に数々の修羅場を潜り抜けてきた僕達が、今さら初心が云々いっても始まらないと思うだろう。

 

でも僕が言いたいのは、戦いに際しての心構えがどうのといった初心の事じゃないんだ。

 

「ククク、なるほどな。貴様の目の輝きが昔に戻りおったわ。最近の貴様は小難しい事を考えすぎてオッサン臭くなっておったから心配じゃった」

 

「オッサン臭いって、ピチピチの僕に酷いなぁ。臭いのは宗主だけで十分だよ。僕はいつまでも爽やかな香り漂うパパのままでいて、未来の愛娘と仲良く過ごすんだからね」

 

「いや、貴様の宗主に対する言葉の方が酷いと思うぞ。彼奴は本気で泣いておったからな」

 

最近の宗主は加齢臭に磨きがかかり、綾乃姉さんに同じ洗濯機で洗う事を拒否されていた。

 

「もう、あなた達は何を遊んでいるの。今は真剣に流也への対策を考えるときでしょう」

 

僕達の軽口に紅羽姉さんが痺れを切らしてしまったみたいだ。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと作戦は考えているから、紅羽姉さんは豪華客船に乗ったつもりでバカンスを楽しんでよ」

 

それでも僕は軽口を叩きながら紅羽姉さんに笑いかける。やっぱり男たるもの常に余裕が必要だよね。

 

「ふふ、マリアが言うように武志は昔の雰囲気に…そうね、和麻さんが行方不明になる前に戻ったみたいね」

 

紅羽姉さんのその言葉で、僕は和麻兄さんを思い出すと同時に目眩を覚える。

 

そうだった。僕が色々と思い悩むようになったのは、和麻兄さんが凰家の虚空閃を盗んだあげく、女二人と高飛びしたせいだ。

 

2年前にその連絡を受けたときには、本気で和麻兄さんに対して殺意を覚えたものだった。

 

そのせいで風牙衆独立の件がポシャりそうになるのを必死に食い止めたり、凰家からの抗議を有耶無耶にするために駆けずり回ったりと本当に大変だった。

 

原作とは少し流れが違うけど、和麻兄さんは風術師として目覚めて順調に成長していたから、原作の惨劇(僕が殺される大事件)が起こる前にコントラクターになって帰って来てくれる事を期待していたのに。

 

「く、紅羽姉さん…和麻兄さんの事は思い出させないで欲しい」

 

「あっ、ごめんなさい。あんな最低な男の事を口にしてはダメね」

 

「ふむ。私は和麻とやらには会った事はないが、話を聞く限りだと世話になった恩人達に唾を吐くが如くの悪行じゃな」

 

「うん、いつか見つけ出して綾乃姉さんにお仕置きしてもらう予定だよ」

 

まあ、今は和麻兄さんの事は横に置いておこう。

 

「よし、気分を入れ替えて流也に対して手を打つために電話をかけるよ」

 

「どこに電話をするのかしら?」

 

神凪一族は最強の炎術師として警察からの依頼を頻繁に受けているからその縁は太い。

また僕は個人的にも信頼関係を築いていたりする。

これから電話をかけようとしているのは、その中でも最も協力的で融通の利く相手だ。

 

トゥルルルー、ガチャ

 

「もしもし、霧香さん。武志ですけど、実は少し協力してもらいたいことが…」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

流也side

 

「どうなってやがる?京都に着いた途端、引っ切りなしに職務質問を受けるとは…なにかの行事でもやっているのか?」

 

神の封印の地で神凪宗家を迎え撃つ計画だというのに、まさか警官共に纏わり付かれて移動もままならないとは予想外にも程がある。

 

だからといって、強引に警官共を振り解けば公務執行妨害になっちまう。

公務執行妨害は軽犯罪じゃ済まないから下手をすれば指名手配だ。

 

俺は一族の為に命を捨てる覚悟は出来ているが、警察に公務執行妨害で指名手配にされるのは何かが違う。

 

もちろん、必要あらば警官共を皆殺しするのは容易いことだ。だが逆をいえば必要ないのに殺すこともない。

俺は別に無差別大量殺人をしたいわけじゃないからな。

 

そもそも職務質問を受けたから警官を殺したとして、その事を一族の奴らに知られたら俺は只のバカだと思われかねん。

 

命を賭して一族の復讐を果たした英雄として、永遠に語り継がれる予定なのに、そんな不名誉な誹りを受ける危険など犯せるわけがない。

 

「そこの君、ちょっといいかな?」

 

また職務質問か・・・まあ仕方ない。

 

「はいはい、なんですか」

 

警官共など適当にあしらえばいいだけの話だからな。

 

「さて、先に進むとするか」

 

何度目になるか分からない職務質問を切り抜けた俺は、封印の地へと足を向ける。

だが今度は通行止めの看板が俺の前に立ち塞がった。

 

「なになに、この先で遺跡が発見されたから発掘のため通行禁止なのか。流石は京都だな、こんな街中にも遺跡があるのか」

 

中々に珍しい現場に出くわしたみたいだな。時間があれば見物をさせて貰いたいところだが、残念ながら今はそれどころじゃない。

 

「迂回路は・・・えらい遠回りになるんだな。まあ、仕方ないか。遺跡の発掘現場を横断なんかしようものなら騒ぎになりそうな予感がビンビンするからな」

 

貴重な遺跡を踏み荒らした野蛮人だとマスコミにでも報道されでもしたら末代までの恥となる。

そんな無駄な危険など犯せるわけがない。

 

「そこの君、ちょっといいかな?」

 

チッ、また職務質問かよ。

どうやら今日はツイテない日のようだ。

こんな日はさっさと宿をとって寝ちまうとするかな。

 

「はいはい、なんですか」

 

そうと決まれば、俺の洗練させた職務質問応答の妙技でこの警官をあしらうとしよう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

武志side

 

霧香さんへの依頼が終わった僕は携帯電話を切ると紅羽姉さん達の方へ顔を向ける。

 

「取り敢えず時間稼ぎの手筈はついたよ」

 

「あの…話は聞かせて貰っていたけど、そんな子供騙しな手で流也が止まるとは思えないのだけど?」

 

「当たり前じゃ!職務質問だの、通行止めだの、そんなアホな事で神の力を得た男が止まる訳ないだろうが!」

 

どうやら二人には僕の作戦は不評のようだ。

でも僕には自信が、いや確信があった。

 

「男は誇りを重んじる生き物なんだよ。子供騙しなアホな手だからこそ、逆に騒動を起こして不名誉を受ける危険など犯さないよ」

 

「そうなのかしら?でも、武志は流也と同じ男だから考えが分かってもおかしくないのかも知れないわね」

 

「いやいや、そんな訳無かろう。第一、空を飛べる流也が徒歩で街中をトコトコと歩いている可能性の方が低いだろう」

 

紅羽姉さんは納得してくれたけど、マリちゃんは中々に頭が堅いみたいだ。

 

「それこそ無かろうだよ。風術で空を飛べるからって、真っ昼間から空なんか飛んでいたら一発で見つかって晒し者になっちゃうよ」

 

「流也も馬鹿正直に姿を晒して飛ぶわけ無かろう。人の目を誤魔化すなら幻術を使えば簡単だし、風術師ならば空気を歪めてしまえば光の屈折で姿を隠せるだろう」

 

「流也は幻術は使えないだろうし、光の屈折を利用したら流也自身も周囲が見えなくなるから短距離しか飛べないよ」

 

「周囲が見えずとも、そんなものはどうにでも・・・もしかして、ならんのか?」

 

「マリちゃんなら大丈夫なんだろうけど、風術で空を飛びながら、同時に空気を操作して光の屈折の制御、その上で周囲の状況を精霊からの情報を受け取って把握する。完全に人間のキャパを超えちゃうよ」

 

僕の言葉にマリちゃんは「ウググ、なんと軟弱な」と文句を言いながらも納得してくれた。

 

「それで、流也の足止めをしている内に私達は封印の地に先回りをするのかしら?」

 

「そうだね。折角だから道中に罠も仕掛けておこう。上手くすれば流也の体力を削れるし、怒って冷静さを無くせばつけ込みやすくなるよ」

 

「うむ、姑息だが悪くない手だな。ところで、その罠は誰が仕掛けるのだ?」

 

「あはは、嫌だなぁ、もちろんマリちゃんに決まってるじゃん。頼りにしてるよ!」

 

「いやまあ、そうじゃな。そうに決まっておったな。私としたことがウッカリしておった。ハハハ…」

 

「ふふ、武志は完全に本調子に戻ったみたいね。ところで、封印の地で決戦をするとして戦闘時は予定通りに、前衛に私が出て、武志は“火武飛”で牽制、マリアは遠距離で全体の補助と緊急時の対応でいいわね」

 

紅羽姉さんが以前から決めておいた戦闘時の役割分担の確認をする。

ちなみに僕達の中で戦闘力は圧倒的にマリちゃんが上だ。たぶんマリちゃんなら神の力を得た流也ですら容易く倒せるだろう。

 

だけどマリちゃんの力は流也も把握している。それでも戦う意思を持っているのだから、何か策が、奥の手のようなものを準備しているはずだ。

その為にマリちゃんには何が起こっても対応が出来るように後方で控えてもらう作戦だ。

 

「うむ、念には念をいれて損はない。何しろ彼奴は、最強の炎術師である神凪宗家を纏めて屠るつもりなのじゃからな」

 

「そうね。どんな奥の手があるか分かったものじゃないわ」

 

マリちゃんと紅羽姉さんの二人は最大限の警戒をしていた。

 

もちろん僕も同じなんだけど…

 

「あのさ、実は僕、ちょっとした作戦を考えたんだけど聞いてもらえるかな?」

 

「作戦?聞くのはいいけど、今さら中途半端なことをするのは逆に危険よ」

 

「そうじゃな。道中に罠を仕掛けるぐらいなら許容範囲といえるが、相手がどの様な手段を取るか分からない以上、最低限の役割以外を決めてしまうと、突発的な状況になった場合に反応が遅れるかもしれん」

 

二人共、乗り気じゃない反応だけど、折角だし思い付いた作戦を言ってみよう。

 

「実はね…」

 

僕は思い付いた作戦を説明してみた。

 

 

 

 

「ええと…うん、そうね。流也には効果的な作戦だと思うわ。思うんだけど、その、あの……ううん、私は武志の味方だから大丈夫よ。操だってきっと同じことを言うわ」

 

「ふははははっ!!貴様は面白いことを考えるのう!!これでは貴様の方が…いや、そうじゃな。これでこそ我が見込んだ男というものじゃ!!」

 

意外と好評だった。

 

「あの…マリアはともかく、私は積極的な賛成じゃないわよ?」

 

「何を言っておる。武志の渾身の作戦ではないか、我らが応援せずに誰が応援するというんじゃ。操が居れば、顔を輝かせて武志を称賛しておるぞ」

 

「うーん。そうね…あの子はそういう子よね。分かったわ、武志の悪評は私達の悪評でもあるわ。武志、こうなったらトコトンやりなさい!」

 

うん、大好評の作戦だね。

 

「あはは、それじゃ作戦開始といこう」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

流也side

 

ドカーン!!

 

周囲に響き渡る爆発音と同時に、爆炎から飛び出しながら俺は無様に地面を転がる。

 

「クソッ!魔術的な罠だけじゃなく爆薬まで仕掛けてやがる!」

 

京都の街で何故か数日間も足止めを喰らった俺は、封印の地へと続く途中の山道で数々の罠に嵌っていた。

 

「か、神の力がなかったら間違いなく死んでいるぞ」

 

辺り一面を覆い尽くす強力な雷撃を喰らったり、千発を超える魔力弾に襲われたり、落石に連動した毒霧に包まれたり、百体以上のゴーレムに囲まれたり、次元の狭間に落とされかけたりと散々だった。

 

「…俺、よく生きてるよな」

 

まるで、どこぞのクソゲーのようなエゲツないトラップの数々を思い出し、我ながら生き残ったことに感心してしまう。

 

「ここまで来るのに力の大半を浪費しちまったが大丈夫だろう。俺には切札があるからな」

 

これだけのトラップがあるからには、封印の地では神凪の連中が待ち受けているだろう。

力を消耗したのは辛いところだが、俺にはヴェサリウスが残した強力な切札がある。

ヴェサリウス自身は二年程前から音信不通になっていたが、あいつの事だからそう簡単に死んではいないだろう。

それどころか、今の俺の様子をどこかで高みの見物をしながら嘲笑っていても可笑しくはない。

 

「とにかくもうすぐだ。もうすぐ長年の恨みを晴らしてやる。待っていろ、神凪一族め!」

 

俺はへたり込みそうになる身体を叱咤して、引き摺るように前に進んだ。

 

 

 

 

 

 

「流也さん、少しでも動いたら此奴らがどうなるか分かるよね」

 

封印の地に着いた俺を待っていたのは、卑劣にも俺の仲間を人質にとった大神家の連中だった。

 

「流也っ!俺たちに構わずに此奴らを倒せっ!!」

 

「うるさいよっ、とりゃ!」

 

「ぐわあっ!?」

 

「止めてくれっ!!」

 

身動きを取れないように拘束された親友が蹴り飛ばされて宙に飛ぶ。

受身など当然取れないあいつは固い地面に叩きつけられた。

 

「おや、こっちの君も反抗的な眼をしているよね、てりゃ!」

 

「ゴフッ!?」

 

「止めろぉおおおっ!!!!」

 

俺を兄の様に慕ってくれている奴が鳩尾に拳を突き立てられて崩れ落ちる。

 

「こっちの君は何か怪しい動きをしているよね、うりゃ!」

 

「ガアッ!?」

 

「もう、止めてくれ……」

 

俺の幼馴染が顎を蹴り上げられて不自然な体勢で倒れこむ。

その後も仲間達の悲鳴と肉を殴る音が続いていく。

 

「うぅ…ちくしょう。貴様は…貴様は、悪魔だぁあああっ!!」

 

「悪魔だなんて酷いなぁ、これでも正義の味方のつもりだよ。流也さんの方こそ正義に楯突く悪役だよね」

 

大神家の小僧は、倒れた俺の仲間の頭を踏みにじりながらニタリと邪悪に嗤う。

 

「その足を退けろっ!!俺には切札がある。こいつを使われたくなければ仲間達を解放しろっ!!」

 

俺は懐からヴェサリウスから渡され呪具を取り出すと大神家の悪魔に見せ付けるように掲げてみせる。

 

「なるほど、やっぱり奥の手があったんだね。うん、僕達の予想通りだよ」

 

その言葉に俺は内心動揺するが、そんな事は関係ないとばかりに大声を発する。

 

「さっさと仲間達を解放しろっ!!こいつは一度発動させれば誰にも止めることは出来ないぞ!!」

 

「それは怖いね。じゃあ、流也さんがその呪具を僕に渡してくれるならこの人達を解放してあげるよ」

 

この呪具を渡してしまえば、もう俺に勝ち目はないだろう。

 

それでも俺はあいつらを助けたい。

 

この数年、風牙衆全体が神凪一族との和解する雰囲気になっていくなかで、俺は強硬に復讐を叫び続けた。

そのせいで村八分にされても、あいつらは見放さずに友達でいてくれた。

そんな連中を見殺しにするのなら俺もまた神凪一族と変わらない外道に落ちるだろう。

 

復讐と友情なら、俺は友情を選ぶ。

 

「先ずは仲間達を解放してくれ。そうしたら呪具は渡す」

 

「あはは、そんなの無理に決まってるよ。この人達を解放した後に、流也さんがその呪具を発動させない保証はないからね」

 

「俺は約束は守る!仲間達を解放してくれたならこんな呪具などくれてやる!」

 

「そんな口約束を信じる馬鹿はいないよね」

 

悪魔は俺の言葉を信じてくれない。

だけど俺が先に呪具を渡しても、あの悪魔が約束を守るとは思えない。

渡したが最後、理不尽に嬲り殺しにされる可能性が高い。

 

俺はどうすればいいんだ。

 

その時だった。

親友が傷付いた身体でフラつきながらも喉も裂けよとばかりに咆哮した。

 

「流也っ!!俺たちに構うなっ!!どうせ神凪一族が俺達を許すわけないんだっ!!それなら俺達はお前と共に神凪一族を道連れにして地獄に行ってやるぜ!!」

 

その魂からの叫びに、俺の心が熱く震える。

 

そして気付いてみれば、他の奴らも覚悟を決めた目で俺を見つめていた。

 

俺は無言のまま目で全員に問いかける。

 

“本当にいいのかと”

 

俺の無言の問いかけに対して、静かに頷く者、親指を立てる者、サムズアップをする者と様々だったが、その気持ちは一つになっていた。

 

「本当に…馬鹿ばっかりだぜ」

 

もう俺に迷う気持ちなど無かった。

俺は手の中の呪具を発動させるために力を集中しようとした。

だけどそれは、悪魔を前にして余りにも遅い決断だった。

 

「うんうん、熱い友情ってヤツだね」

 

「あら、戻ってくるなり男同士の暑苦しい友情なんて見せないで欲しいわ」

 

「少しばかり探し出すのが遅くなったが、間に合ったようじゃな」

 

いつの間にか悪魔の横には、二人の女悪魔が増えていた。

そして、その女悪魔共に連れられていたのはーー

 

 

 

「流也…」

 

 

 

俺の最愛の女性だった。

 

 

 

 

 

 

「これでチェックメイトだね」

 

悪魔の言う通りだった。

彼女を見つけられた時点で俺の敗北は決定していた。

 

「俺の負けだ。俺はどうなっても構わない。ただ彼女は、彼女にだけは…」

 

俺は恥も外聞も投げ捨てて、悪魔に土下座をする。

必死の思いで悪魔に慈悲を請う。

 

「姉さんにだけは手を出さないでくれ」

 

しかし俺は、口では慈悲を請いながらも心のどこかで既に諦めていた。

だが、そんな惰弱な俺を叱咤するかのような怒声が返された。

 

「ふざけた事を抜かすなっ!!僕が“姉さん”と言う名の女性に手を出すものか!!」

 

「ほ、本当なのか…?」

 

「当たり前だっ!!“姉さん”に手を出す事は僕が許さない!!それは他の弟の“姉さん”でも同じ事だぁあああっ!!!!」

 

その男は、天をも砕かんばかりの勢いで咆哮する。

 

「僕は“姉さん”の為なら世界そのものを敵に回しても守り抜いてみせるっ!!」

 

その“漢”は、神の力も持つ者すら戦慄するほどの気炎を吐く。

 

そして俺は気付くことになる。

 

姉さんが哀しげに俺を見つめていることに。

俺は姉さんの制止を振り切り、神凪一族への復讐に走ったことを今更ながらに思い出した。

 

そして俺は、俺の前に立ち塞がっている“漢”の顔を、この戦いが始まって以来初めて、真っ正面から見据えた。

 

そこには、目に熱い(姉弟愛)の光を宿す“漢”の姿があった。

たとえ外道に身を落としてでも(姉さん)を守り抜くという強き意志を秘めた“漢”の姿があった。

 

 

 

「完全に俺の負けだ…」

 

 

 

(姉さん)を顧みずに戦う俺が、(姉さん)と共に戦う“漢”に勝てる道理などなかった。

 

 

 

「お前の勝ちだ。(姉弟愛)を識る“漢”よ」

 

 

 

 

こうして、神凪を揺るがした俺のーー風巻流也の復讐劇は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな流也っ!!俺との熱い友情はどうなったんだよ!!」

 

「なんだとっ!?お前には(姉弟愛)が分からねえのか!!」

 

「お前は何を言ってんだっ!?」

 

どうやら俺の親友は(姉弟愛)が分からぬ者だったようだ。

 

「お前はただのシスコンだろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 




紅羽「予想外な決着ね」
マリア「予想外すぎないか?原作ファンから苦情がこないか心配になるレベルじゃぞ」
紅羽「きっと大丈夫だと思うわよ」
マリア「ふむ。その答えに根拠はあるのか?」
紅羽「ふふ、原作イメージを大事にするファンなら、こんな話は最初から読んでいないわよ」
マリア「なるほどのう、それもそうじゃな」

紅羽「ところで、次回で原作1巻の話は終わりになるそうよ」
マリア「原作に入るまでは長かったが、入ってしまうとハイペースじゃな」
紅羽「更新スピードは逆だけどね」
マリア「それは言わぬが花じゃろう」
紅羽「では次回、第40話『俺は紅羽姉さんと添い遂げる!』乞うご期待!」
マリア「その手の冗談は、操には通用せんぞ」
紅羽「はっ!?殺気!?」



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