【完結】 遊戯王 5D's 転生者と未来のカードたち   作:DICHI

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色々ぶっ飛んですみません。一話か二話入れても良かったのですが、なくても結果変わらないって結論に至りました。

デュエルは次回に、私、途中で切るのがどうも嫌で・・・一話で完結させたいんです。


第196話 それぞれの未来

遊輝 side

 

 

♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜

 

「OK!」

 

「はぁ〜・・・やっと通しでできた・・・」

 

ライブでやる最後の曲が弾き終わって近くにある椅子に腰をかける。全く・・・・この曲なかなかにハードだ。しかし全くもっておかしい話だ・・・高等部に進学するはずの俺たちが高等部に進学した生徒に向けて歓迎ライブをやるなんて・・・・

 

「新入生歓迎会のライブ練習はこれまで、ちょっと休憩に入ろう」

 

「良かった〜、飯食べよう」

 

「お疲れ様です。あの、これ・・・」

 

「恭輔っちありがとうね〜、毎日弁当持ってきてくれて」

 

部室には弁当を持つ恭輔と部屋の隅で紙を広げて鉛筆を持った祈がいる。龍亞と龍可はやらなきゃいけない事があるっと言って何処かに出かけている。

 

「この卵焼き、美味しい!」

 

「唐揚げもきんぴらごぼうも美味しいわね。本当に恭輔君、腕を上げたね」

 

「ありがとうございます。これも師匠のおかげです」

 

「お前、本当に才能あるよな〜。正直羨ましいぜ」

 

今日持ってきた弁当は恭輔の手作りなんだが、本当に美味い。俺にあって約2年と半月、デュエルのことを教えながら俺が料理しているところを見て、それを学んで料理をしていった。最初こそ失敗だらけだけど、気づいていったら俺が学んだことを全て吸収していった。こいつ、実はとんでない才能をもっていたんだ。

 

「どう祈ちゃん?」

 

「む、難しいです・・・・いざ自分でデザインを考えてみると・・・・」

 

「そんなに難しく考えなくていいわよ。お母さんも言っていたけど、自分の直感と個性で書いていくことが大事だから」

 

「は、はい」

 

一方、部屋の隅で頭を抱えている祈にレミと茜は色々とアドバイスを送る。祈は祈で少しずつ、すみれさんの下でファッションデザイナーとしての道を歩みだそうとしている。

 

「そこ、その部分は削った方がいいわよ。お母さん、そういうの嫌いだから」

 

「な、なるほど・・・」

 

ガラガラ〜〜

 

「お前ら、元気にしてるか」

 

「うん?クロウさんじゃないですか。久しぶりです」

 

部室の扉を開いて現れた、セキュリティの制服を着てヘルメットを持ったクロウ。WRGP終了後、セキュリティの試験に合格したと連絡来た時はみんなして度肝抜かれた。なんせクロウはマーカー付きだから。

 

「にしても似合わないわね〜。やっぱマーカー付きがセキュリティの制服着ていたら違和感あるわ」

 

「しょうがねぇだろ、私服で回るわけにも行かねぇんだから」

 

「それで何の用で来たのですか?」

 

「イェーガー長官からお前たちに招待状だ。市長就任パーティーに来てくれって」

 

クロウはポケットから封筒を取り出して近くにいたスバルに渡した。それを受け取ったスバルは封を切って中の手紙を見る。

 

「へぇ〜そうか。もうそんな時期か。あっという間だな」

 

「俺や遊星も行くぞ。もっとも、ジャックが見つからないんだけどな、ったくあいつは何処に行ってるだか・・・・」

 

「あ、アハハハ・・・・」

 

乾いた笑い声がスバルから聞こえてくる。ジャックは今年になってから突然、ポツンと姿を消した。置き手紙で『修行に行く』と書き残して、Dホイールとともにどこかに行ってしまった。

 

「(・・・・・となると、もうすぐなんだな。チーム5D'sのメンバーが一緒にこの街で過ごすのも・・・)」

 

WRGP終了後、いや、去年の夏ごろからなかなか遊星さんたちに会う機会がなかったな。俺たちが全国を駆け回ったりしたからけど・・・

 

「(・・・そうか、俺も決断しなくちゃいけない時が来るんだな・・・・・)」

 

チーム5D'sのメンバーがネオドミノシティから離れる・・・・つまり、龍亞と龍可もこの街から離れる。

 

「(・・・・・いざ、この状況に追い込まれると悩むな・・・・龍可とは一緒にいたいけど、こいつらとのバンド活動も続けたい・・・)」

 

何だろうなぁ・・・すごい欲張りなことを言っているのは自分でも分かるんだが、そうしたい思いは強くなる・・・・

 

「・・うき、遊輝!」

 

「!?な、何だ!?」

 

「どうしたのよ、さっきからボウ〜として」

 

「え、あ、ああ・・・・悪かった」

 

「とりあえずお前たちも来いよ。久しぶりにみんなであってワイワイ話そうぜ」

 

「そうですね。出来る限り予定は入れないでおきます」

 

「出来る限りじゃなくて入れるなよ。じゃあな」

 

右手で手を振ったクロウは部室の扉を閉めて出て行った。

 

「さてと・・・お昼からまた練習ね、次はツアーよ」

 

「あいよ」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「招待状?ああそれなら私たちにも来たわ」

 

「みんなに会うの久しぶりだな〜、ここんところ遊星もクロウもアキさんも忙しそうにしていたし」

 

「ねぇ・・・招待状・・・私」

 

「だからお前は戸籍が無いんだから仕方ないって」

 

夜、部活の練習が終わって夕飯を食べる時間、今日クロウから渡された招待状の話をみんなに話したら龍亞と龍可のところにも来たみたいだ。

 

「あれ、よく見たら関係者だけの極秘みたいだな。公には確か次の日にお披露目だけど」

 

「イェーガーさんも忙しい身だから・・・・かな?関係者以外は入れないってアキさんが言っていたわ」

 

「アキさん?今日アキさんと会ったの?」

 

「ほら、アキ姉ちゃん、まだ遊星に告ってないじゃん。だから俺たちがアドバイスしに言っていたんだよ」

 

え、えぇ・・・あのアキさんが龍亞と龍可に恋のアドバイス・・・・龍可はともかくこいつが・・・・

 

「何だよその目!!まるで俺じゃ役立たないみたいな!!」

 

「だってぇ・・・お前だぜ・・・」

 

「気持ちは分かるけど」

 

「龍可!!」

 

俺が疑いの目を龍亞に向けると龍亞はバンッと机を叩いて立ち上がる。しかし龍可は俺の見方をしてくれて、龍亞はさらに膨れっ面になる。

 

「私・・・ぼっち・・・」

 

「ああ分かった分かった、さすがに関係者限定のパーティーには連れていけないけどそれまで構ってやるから」

 

一人、ポツンと夕飯を食べているアリアを見て、俺は頭を撫でながらそう言った。さすがに隣であんな暗い空気を出しながら飯を食べるのはやめてほしいし・・・・

 

「ほんとに!?じゃあ明日私の買い物に付き合って!」

 

「買い物?まぁいいけど・・・お前昨日も買い物してなかったか?」

 

「あれは仕事道具を買いに行ったのよ。ミシン壊れちゃって」

 

あ〜あのミシン、とうとう動かなくなったのか。たしかに結構オンボロだったからな。

 

「でもお前、自分のミシン持ってなかったか?」

 

「この際だし、ちゃんとした高性能のミシンを買いに行ったのよ」

 

「ふ〜ん・・・俺には分かりっこないね」

 

料理関係なら多少は分かるがそれ以外は全くもって皆無、最近剣道の道具すら名前を忘れることもあるんだから・・・未だに楽器関係の道具は覚えていない。っていうか大概レミが勝手に揃えてくれるし。

 

「そう言えばさ、アルバムいつになるの?」

 

「うん?あれはリリースは9月の中旬だぞ」

 

「えぇ〜、長くない?」

 

「収録は終えても編曲とか著作権の関係とか色々あるんだよ。手続きに手間取ることも考えて長くしたんだよ」

 

特に今回は初めてCDを出す、いわゆるレーベルっていうのもレミのお父さんの会社だからなぁ・・・初めてだらけで何起こるか全くわからないもんだ。

 

「まぁ出す言うてもそんなに売るつもりないし・・・・売れるとは思ってないし」

 

「えぇ、あれだけ人気なのに?」

 

「あれはカバー曲が人気なんだよ。オリジナル曲が好きな人ってそう簡単に出来るかいな」

 

カバー曲マジ強し・・・・まぁ最初は学校の一部活動として活動していたんだから当たり前なんだけど。

 

「でもいい曲多いじゃん」

 

「そうだよ遊輝ちゃん。割と真面目にいい曲あるよ」

 

「ちゃんとCD出たら買うから心配しないで」

 

「そう言ってもらえるだけありがたいよ。レミとかに言ったら大喜びするだろうな」

 

レミの苦労は果てしないからなぁ・・・まじあいつ、寝てないんじゃないのか?リーダーとしてやること多すぎるし・・・ちとこっちに頼ってもいいんだけど、何せ分からないことだらけだ。

 

「まぁ最初から売れるとは思ってないし、学生の間だけかもしれないから気楽でいけるか、ご馳走さま」

 

そんな呑気なことを言って、食べ終わった食器をまとめてキッチンに運ぶ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「うおおお!!すげぇ!!あれもこれもどれも美味そう!!」

 

「ちょっと龍亞!!はしゃがないでよ!!」

 

「龍亞さんは相変わらずですね」

 

「全く・・・・・ちとお灸を据えないとダメだな」

 

イェーガーの市長就任パーティー(本当は前祝いパーティーだけど)に呼ばれた俺たちはアカデミアの制服を着てやってきた。龍亞と龍可はちゃんとした服だけど。早速龍亞は食べ物を取りに走り出す。他のみんなも皿を受け取って適当に料理を取っていく。

 

「みんな、久しぶりね」

 

「!アキさん!」

 

「おお!髪伸ばしたんですね!」

 

入り口の方から声が聞こえてきたのでそっちの方に振り向く。赤いドレスを着て、髪を伸ばしたアキさんが手を振りながらこっちにやってきた。

 

「アカデミアデュエル大会以降はなかなか会えなくてごめんね」

 

「いえいえ、アキさんも進路とかで大変でしょ?こっちから邪魔しちゃ悪いですし」

 

「えぇ・・・・まあね」

 

「アキさんも大変ですよね・・・・進路は決まったのですか?」

 

「まだ悩んでいるわ・・・・周りはデュエリストって言っているけど・・・」

 

「ああ・・・医者の道ですね」

 

「ええ・・・」

 

前に一度、アキさんが部室に来て俺たちにぶっちゃけた。周りはデュエリストとして煽てるけど私は医者の道を進んでみたいって・・・・ただ、俺たちが返した返事はそれは俺たちじゃなくてアキさん自身が決めなくちゃいけないことだと。

 

「前にあなた達に相談してからも考えているけど、やっぱり決めきれないのよね・・・」

 

「まぁ前にも言いましたが、これは俺たちが決めるべき問題じゃないですから・・・」

 

「そうよね・・・ちゃんと考えるわ」

 

「やっと見つけた!お前ら!」

 

「あっ!クロウさん!遊星さんも!」

 

「久しぶり遊星!」

 

今度は入り口から遊星さんとクロウが入って俺たちを見つけた。遊星さんは私服の上に白衣を着ていて、クロウはこの前と違って私服を着ていた。

 

「遊星さん、開発の方はどうですか?」

 

「順調だ。明日にも完成しそうだ」

 

「そうなんだ!やったね遊星!」

 

「ああ」

 

相変わらず遊星さんはクールだね・・・・反応が小さい(汗)。

 

「クロウさん、結局ジャックさんは見つからなかったのですか?」

 

「ああ、でもあいつがいたら騒がしくなるからこれはこれでいいかもしれないぜ。一昨年のWRGP発表会のパーティーも派手に登場して・・・」

 

「ああ・・・・たしかに・・・・」

 

スバルや恭輔、他のメンバーも苦笑または遠い目をする。たしかにあの時のジャック、白の服だったのに派手だったな・・・あんなのいたら目立って仕方ない。

 

「遊星、久しぶりね」

 

「アキ、すまない。しばらく会えなくて」

 

「うんうん、大丈夫よ。遊星も忙しかったのでしょ?」

 

「ああ、でももう大丈夫だ」

 

「(・・・・・あれ?あの二人ってあんなに関係近くなっていたっけ?)」

 

『皆さまお待たせしました。これよりイェーガー長官の市長就任パーティーを開催いたします。イェーガー長官、どうぞ』

 

パチパチパチパチ

 

司会者の声が聞こえて、部屋の照明が落ちる。ステージの方ではサーチライトが照らされてステージの端からイェーガー長官がゆっくりと歩いて中央についた。

 

『皆様、今日は私の市長就任パーティーにお越しいただきありがとうございます。皆様のご存知の通り、明日、ネオドミノシティから治安維持局が解体、それに伴い治安維持局長官職も無くなり、新たに市長が誕生します。私は皆様の推薦をいただき、市長に就任致しますがまだまだ力不足だと痛感しています。これからも皆様のお力をお借りして、このネオドミノシティの更なる発展に尽力を尽くしたいと思います』

 

パチパチパチパチ!!!!

 

なんか・・・・風格感じるな。ゴドウィンの尻尾を掴んでいた頃とは大違いだ。

 

『本日はささやかなものですが皆様におもてなしをしたいと思い、パーティーを開催いたしました。硬い挨拶はこれまでとして、あとは和気藹々とお話しください。では』

 

イェーガー長官の挨拶が終わり、部屋の照明は点く。ステージを見ていた人たちはまばらになって再び会食を始める。

 

「うう〜ん・・・・なんか立食って疲れる」

 

「なんだ?お前そんなに疲れていたのか?」

 

「疲れるも何もここ最近まともに寝てないもん。誰よ・・・・役員資料ブチまけて持ち帰ったやつ・・・・八つ裂きにしてやるんだから・・・」

 

「お、おいこら、こんなところでそんな物騒な話をするな」

 

レミの目からハイライトが消えてブツブツと危ないことを言い出した。「お陰で私の睡眠時間がなくなった」とか「何でアルバイトの私がこんなことをするのよ」とか何か良からぬ方向に行きだした・・・・

 

「お前疲れてるだけなんだよ。今日は早く帰って寝たらいいんだよ」

 

「寝る?寝れたらいいわね。だって今日は高橋さんと編曲作業だもん。寝ている「分かった分かった分かった!!高橋さんには俺から今日は休みっていうから寝ろ!!」

 

レミの精神状態に異常が見られたのですぐに止める。ああ・・・これは本当に不味いやつだな(汗)。とりあえず1週間休ませよう、レミのお父さんに行って無理矢理でも休ませよう。

 

「ああ・・・・こんなところで暗い話を持ち込むなよ」

 

「おい遊輝!お前明日のバーベキュー行くか!?」

 

「?バーベキュー?」

 

「遊星さんが明日、ガレージでみんなで集まってバーベキューしよって!お前も行くよな!?」

 

バーベキューか・・・・まぁ別に予定ないし。

 

「いいよ。何か持っていけばいいのか?」

 

「肉持ってきてくれって。お前のつてならいい肉貰えるだろ」

 

「ん、肉ね。分かった」

 

んじゃ、明日は久しぶりに市場に行こうかな。最近練習のせいで全然行けてないし。

 

 

〜〜(翌日)〜〜

 

 

「んじゃあ行くぞ〜」

 

「まって遊輝、まだ龍亞が降りてきてない」

 

「えぇ、あれだけ出る時間確認していたのに」

 

「龍亞くん〜、早くしないと置いて行くよ〜」

 

「待って!今降りるから!!」

 

買ってきた食材を保冷バッグに詰め込んで肩に背負い、出かけると声をかけたら龍亞だけまだリビングに降りてきてなかった。すでにオシャレして準備万端の龍可とアリアは少し退屈そうにしている。

 

「お待たせ!ちょっと探し物していたら時間かかっちゃって」

 

「はぁ、ほら行くぞ。約束の時間過ぎてしまう」

 

♪♪♪〜〜〜

 

「ん?電話?誰かな・・・・」

 

家を出ようとしたその時、突如電話が鳴り、龍可が駆け寄る。受話器を取って電話をかけてきた相手と話し始める。

 

「もしもし・・・・お父さん!?ど、どうしたの!?・・・・えっ!?ちょ、ちょっと待って!?龍亞!!」

 

「?どうしたの?」

 

「ちょ、ちょっとこっち来て。悪いけど遊輝とアリアお姉さん先に行っててくれる。あとで追いかけるから」

 

「?分かった。じゃあ遊輝ちゃん、行こう」

 

「ん、鍵頼んだ」

 

返事を返した頃にはすでに龍亞と龍可は電話相手と話を続けていた。俺とアリアは荷物を持って遊星さんのガレージへと向かう。

 

「にしてもどうしたのかね?あの龍可ちゃんの慌てよう」

 

「さあな、お父さんからだったみたいだし結構重要なこと・・・ってお前知らないのか?」

 

「?・・・・ああ、そうか、もうそんな季節か」

 

「3月って別れの季節って言うけど本当にそうなんだな・・・」

 

「それは卒業式のシーズンだからでしょ」

 

「そりゃそうなんですけどね〜、アカデミアはエスカレーター方式だし、俺と中学卒業2回目だからそんな感情湧かねぇんだよ」

 

「おっさんね〜」

 

「おっさんだよ」

 

そりゃお前、見た目15だけど中身はもう20近くなんだから、おっさんみたいな考えをするわ。そんなくだらない事を話しつつ遊星さんのガレージに着いた。

 

「よっと、遅くなってすみませ〜ん」

 

「ん?あ〜、遊輝とアリアさん」

 

「まだ大丈夫ですよ師匠、みんな来ていません」

 

「あれ?何で?もう時間だよね?」

 

「みんな遅れるそうだ。さっき連絡あったから俺たちで先に準備している」

 

シャッターを開けて中に入ると炭に火を付けているスバルとそれを手伝っている恭輔、あとはレミと響と茜が周りの準備していた。

 

「よっと、肉持って来たぞ。とりあえずこれだけ一旦冷蔵庫」

 

バタン!

 

「すまない、遅くなってしまった」

 

「ああ遊星さん、大丈夫ですよ。まだみんな来てませんから」

 

「よう遊星!みんな!待たせたな!」

 

「遊星!」

 

「ごめん!遅くなっちゃった!」

 

「みんな!」

 

遊星さんが入ってきてすぐ、クロウやアキさん、龍亞と龍可もやってきた。

 

「よっし!景気良く燃えてきたぞ!いつでも始められる」

 

「じゃあみんな揃ったし、レッツバーベキュー!」

 

響がトングを使って塊肉を網の上に乗せる。ジュ〜と焼ける音が聞こえてきた。

 

「こっちは野菜とか乗せるね」

 

「調理用のハサミどこだっけ?」

 

「すまないな。こっちが企画したのに何から何まで準備してもらって」

 

「気にしなくても良いですよ。最近皆さん忙しいのですから。こう言う時こそ、今暇人の私たちがやるべき事なんですから」

 

それからしばらく、肉や野菜が焼けてきた頃にみんながワイワイと食べながら話し始める。俺たち軽音部組は焼きながらみんなの皿に料理を乗せていった。そんな時だった。

 

「何でみんな・・・・私の将来を勝手に決めるのよ!」

 

「お、おい・・・どうしたんだよ」

 

突然、クロウと遊星さんに話していたアキさんが怒鳴るように怒り出した。

 

「クロウ!あなたはしゃぎ過ぎなのよ!さっきからおんなじことばっかり言って!やりがいやりがいって本当にやりがい感じているの!?」

 

「ア、アキさん、落ち着いて・・・・・」

 

「・・・・みんな、悩んでいるんだよ。クロウ、お前は海外のプロリーグからオファー来ているんだろ?」

 

「なっ!?な、何で知って」

 

「アキ、お前は医科大学の留学・・・・」

 

「!?ど、どうして!?」

 

「クロウはスカウトから、アキはご両親から相談がきた。みんな、一歩踏み出したい気持ちはあるんだ。だけどこの街が大切でどうしても踏み出せずにいるんだ」

 

「・・・あ、あのね!!実は俺たち、さっき親から電話があって・・・・一緒に暮らそうって」

 

「る、龍亞・・・」

 

「だ、だって今言わなきゃ・・・タイミング逃すじゃん・・・俺、その話を聞いた時、すっげえ嬉しかった!だけど・・・まだ決めてないんだ・・・・」

 

「・・・・みんなと、みんなと一緒にいたい。ネオドミノシティにいたいの」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「ふん、なんだこの空気は。ここは葬儀場か!?」

 

「!?ジャック!?」

 

シンとした空気になりみんなが黙っていた時、突如上から声が聞こえてきた。みんながそっちの方に向くとジャックが腕を組んで立っていた。

 

「お前、今までどこ行ってたんだよ!?」

 

「ふん、今はそんなことはいい。今日はみんなに報告することがある」

 

そう言ってジャックは飛び降りた。

 

「俺はネオドミノシティから離れる!」

 

「!?」

 

「な、何言ってるんだよジャック!?」

 

「俺はこの3ヶ月間、武者修行の旅に出ていた。そして俺は世界最強のデュエルリーグ・ライド・エースから誘いがきた!俺はそこに挑戦して真のデュエルキングになってやる!!」

 

「何言ってるんだよジャック!!だったら俺たちの、ネオドミノシティとの絆はどうなるんだよ!?」

 

「そうやっていつまでも甘えているからダメなんだ!!」

 

「!!」

 

「いつまでもこの街がとか絆とかにしがみつくからダメになるんだ!!己の力を世界に試して、この街から出て挑戦してみないと思わないのか!?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「俺は挑戦したい!!どこまでやれるかは分からない!!だからこそ燃えるんだ!!それに、ここでお別れして、俺たちの絆は終わりか!?」

 

「・・・・・・・・」

 

「遊星!当然お前にも誘いが来てるんだろ!?」

 

今までクロウと言い争って、クロウを黙らせたジャックが今度は遊星さんに振る。

 

「・・・・ああ、確かに俺のところにもきた。だからこそ迷っている。この街は大好きだ。だが、ジャックの言う通り挑戦したい気持ちも確かにある」

 

「風の噂によるとメインフレームを完成したらしいな」

 

「そうだ。だからこそ、次の目標が無いんだ。この街に残って目標があるのか?だったらこの街から離れた方がいいんじゃ無いかって・・・・」

 

「ゆ、遊星・・・・・」

 

遊星の本音・・・・それを聞いてみんな黙ってしまう。俺たちも肉を焼くのをやめてこの話の決着を見ている。

 

「俺たちはチームで挑戦した。結果は準優勝だったが俺たちの力は世界中に見せつけた。ならば!!今度は自分自身の力で世界を見せつけて、切り開くんだ!!」

 

「それが出来ねぇから悩んでいるんじゃねぇか!!俺だって・・・俺だってどうすればいいのか分からねぇんだよ・・・・」

 

「ク、クロウ・・・・・」

 

「・・・・・ジャック、デュエルしよう」

 

「ゆ、遊星さん?こんな時に何を?」

 

「デュエルはいつだって俺たちを導いてくれた。俺たちが迷っているならその答えはデュエルでしか見つからない」

 

「ふん、良いだろ。世界に出る前にお前を倒さなくちゃいけないと思っていたからな」

 

「あ、あのスバルさん・・・・」

 

「口挟むな祈、これはあいつらの問題なんだ。俺たちはただ黙って見ていればいいんだ」

 

「は、はい・・・」

 

「1時間後、場所は港の入り口からだ」

 

そう言ってジャックさんはガレージから出ていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ゆ、遊星・・・お前・・・」

 

「俺も分からない、分からないからデュエルに聞くんだ。すまないがこれは俺自身の問題なんだ」

 

「・・・・分かった、だったら俺も見届けてやる」

 

「私も・・・何かきっかけを掴めば」

 

「お、俺も!」

 

「私も!」

 

「よし・・・・お前ら、Dホイールは?」

 

「心配しなくてもちゃんと持ってきてるぜ。荷物運びには便利なんだから」

 

「龍亞と龍可、アキさんに祈と恭輔は俺たちの後ろに乗れ。すぐにコースに行くぞ」

 

「わ、わかりました師匠!」

 

「っと、その前に炭の火を消すぞ」

 

すっかりバーベキューのこと忘れてしまったぜ・・・これ消して行かなきゃ火事になる。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

時刻はもう夜の12時を回っている。本当なら帰らなくちゃいけない時間だ。だが、そんなことは気にしてられない。それに今日はセキュリティ(クロウ)公認だ。

 

今、俺たちは遊星さんとジャックのスタート地点から離れた海の見えるところで陣取り、Dホイールの画面を二人のDホイールに映るようにしている。

 

「・・・・・何だろうこの感じ」

 

「?クロウ」

 

「遊星とジャックのデュエルはガキの頃から何度も見ているんだ・・・・なのに・・・何だこの震えは・・・・・」

 

『遊星、思えばお前とのデュエルはフォーチュン・カップ以来だな』

 

『そうだな。あれからもう随分時間が経ったな』

 

『その間に色々とあった。まさかお前と共闘して様々な敵と戦うとはあの時は思いもしなかった』

 

『ああ』

 

『だが、俺は心の奥底で待ち望んでいた・・・・お前と再びデュエルすることを!』

 

『・・・・・俺も、心の中でそう思っていたかもしれない。だからこそ、今、凄い燃え上がっている』

 

『ふん、それは俺もだ。ダーク・シグナーもイリアステルもいない・・・もう俺たちのデュエルを邪魔するものはいなくなった!』

 

『ああ!全てをぶつける!このデュエルに!』

 

『無論だ!俺もお前に全てを叩きつける!デュエルに取り憑かれた、このジャック・アトラスがな!!行くぞ!!』

 

『スピード・ワールド2!セットオン!』

 

2人のDホイールを中心に緑色の空間が広がり、高速道路は変形をしてライディングデュエル専用のレーンが作られた。

 

『ライディングデュエル!!アクセラレーション!!』

 

シグナルが赤から青になったタイミングで二人のDホイールは飛び出した。

 

「行けぇ遊星さん!!ジャックさんを倒しちゃえ!」

 

「ジャックさん!ここで負けたらデュエルキングになっても意味ないよ!!」

 

俺たちは思い思いにこのデュエルを見る。そして遊星の先行でデュエルが進んでいた時・・・・

 

「・・・・遊輝」

 

「ん?どうした龍亞?」

 

「俺も・・・・・俺もデュエルしたい。俺なりに結論を出したい」

 

「・・・・・分かった」

 

後ろにいた龍亞から声をかけられてそっちに振り向く。何事かと思ったが、龍亞の目が本気だったので俺はそれを承諾した。Dホイールに置いてあるカバンの中からデュエルディスクを取り出してセット、ベルトに付けてあるデッキケースからデッキを取り出した。すでに龍亞は準備万端のようだ。

 

「言っとくが手加減はしねぇぞ。お前を勝たせるためにやるデュエルじゃないんだから」

 

「当たり前じゃん!これは・・・これは俺なりのケジメをつけるためのデュエルなんだ!だから・・・・本気で来て!」

 

「行くぞ!」

 

「デュエル‼︎」 「デュエル‼︎」

 




霊夢「肉捨てるなんて持ったいない!私にちょうだい!!」

遊輝「え、ええ・・・・こんな時に?」

フラン「さすがにこの局面でそれはちょっと・・・」

霊夢「私にとっては死活問題なのよ!明日の食料確保が大事なのよ!」

遊輝「・・・良い話が台無しだよ」

フラン「そんなに困ってるなら紅魔館くれば?一日くらいなら多分いけるけど」

霊夢「そんな事したら人里の人たちに博麗の巫女は妖怪と手を組んだとか言われるじゃない!」

遊輝「・・・・もう知らね、次回、ついに最後のデュエル。相手は俺がこの世界に来て最初に戦ったデュエリスト、龍亞」

フラン「【遊輝vs龍亞 未来へと続く道へ】。次回もよろしくね!」

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