【完結】 遊戯王 5D's 転生者と未来のカードたち   作:DICHI

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後編です。原作とかなり違いますが、劇ですので許してください。


キャスト及びスタッフ


保登心愛(ココア)・・・・・小野寺響
香風智乃(チノ)・・・・・・遠藤遊輝
天々座理世(リゼ)・・・・・水野奏
宇治松千夜(千夜)・・・・・栗城茜
桐間紗路(シャロ)・・・・・葵レミ

条河麻耶(マヤ)・・・・・・美穂
奈津恵(メグ)・・・・・・・京子

青山ブルーマウンテン・・・彩
保登モカ・・・・・・・・・琴音

香風タカヒロ・・・・・・・遊城スバル

ティッピー(声当て)・・・・男子生徒


大道具・・・・・・・・・・男子生徒たち
小道具・・・・・・・・・・女子生徒たち
音響・・・・・・・・・・・男子生徒・女子生徒
照明・・・・・・・・・・・男子生徒・女子生徒

衣装提供&アーティスト・・アリア・リューベック

台本&総監督・・・・・・・彩



OP:Daydream café(Petit Rabbit's)
ED:ときめきポポロン(チマメ隊)


第191話 文化祭の劇 『ご注文はうさぎですか?』後編

No side

 

 

木組みの家と石畳の街・・・・

ここに来た一人の女性、その女性は街に沢山いる野良うさぎを可愛がっていた。

 

「可愛いね〜、本当にいい街だわ」

 

「そうでしょう。私もこの街が大好きなんです」

 

「あらっ?」

 

女性は独り言のつもりで言ったはずが誰かに聞かれていたみたいだ。キョロキョロと辺りを見回すと同じくらいの歳の女性・・・・・青山さんが座っていた。女性もベンチに座っている青山さんの隣に座る。

 

「こんにちは」

 

「こんにちは〜。今日はどうしてこの街に?」

 

「一年ぶりに妹に会いに来たのですよ。妹はこの街の高校に入学するため、この街で下宿しているのです」

 

「まぁ、妹さんの下宿先に行くなんて仲の良い姉妹なんですね」

 

「そうなんです」

 

「でもせっかく行くのでしたら、そうですね・・・・・サプライズを仕掛けたり、変装してこっそり近づいたりしたら面白そうですね」

 

「た、確かに!私もビックリさせるの大好きなんです!この本もイタズラ心満載で素敵なんですよ」

 

そう言って女性はカバンの中から一冊の本を取り出す。表題は『カフェインファイター』だ。

 

「あ、それは私が書いた本ですね」

 

「それはサプライズですか?騙されませんよ〜」

 

「あら?」

 

 

 

 

一方、その頃ラビットハウスでは・・・・・

 

「うう〜〜ん・・・・うう〜〜ん」

 

「お姉さん、遅いですね」

 

「確かに・・・・もう来てもいい時間なんだけど」

 

なかなかココアのお姉さんが来ずに時間だけが過ぎていく。ココアは落ち着くことができずに先ほどから店の中をウロウロと徘徊している。

 

「この街は複雑だからきっと道に迷ってるんだ!私探してくる!」

 

「あっ、おい!そんな事しなくてもそのうち」

 

リゼの話も聞かずにココアは飛び出してしまった。

 

「・・・・最初は道に迷いまくっていたのに、あいつも頼もしくなったな・・・」

 

「そうですかね・・・・どこかで道草を食いそうですけど」

 

ピロリン♪

 

「メール?ココアからだ」

 

『かわいいうさぎ見つけた!』

 

「おい!姉はどうした!?」

 

「やっぱり・・・・・・」

 

カラ〜ン

 

予想通りの展開にため息をつくチノ。するとそこに、一人のお客さんが入ってきた。

 

「あっ、いらっしゃ・・・・・・」

 

慌ててチノはお客さんの方に振り向いて挨拶しようとしたが、途中で途切れた。何故なら入ってきたお客さんは女性だが、サングラスにマスク、帽子を被っていて明らかに不審者同然の格好だった。

 

「1名だけど」

 

「は、はい。こちらへどうぞ」

 

こんな格好をしているとはいえ、お客さんであることには変わりがないのでチノは少し怪しみながらもお客さんを案内する。席に着いた女性はメニュー表を見る。

 

「ご、ご注文は?」

 

「オリジナルブレンドとココア特性厚切りトーストで」

 

「か、かしこまりました」

 

メニューをとったチノはそのまま早足でお客さんから離れる。

 

「あの子は厨房にいるのかな?この格好で仕事ぶりを確認してみよう♪」

 

「な、何ですかあの人・・・」

 

「明らかに怪しい・・・・あの風貌、スパイか運び屋だな?」

 

「何故そんな物騒な考えになるのですが?他の発想があるでしょう。芸能人とか」

 

「とりあえずチノは下がっておけ、私が対応しおう」

 

「わ、わかりました。オリジナルブレンドと厚切りトーストです」

 

チノが注いだコーヒーとトースターで焼いた厚切りのトーストをお皿に乗せてリゼが先ほどのお客さんに配膳する。

 

「お待たせしました。オリジナルブレンドとココア特性厚切りトーストです」

 

「ありがとう♪」

 

お客さんはテーブルに置かれたパンを一切れ手に取り、クンクンと匂いを嗅いだのち、一口食べる。

 

ガタン!!

 

「(ビクッ!!)」

 

「このパン、モチモチが足りない!!!

 

「えっ?あ、あの?お客様?」

 

「私が本当のパンを教えてあげる!!」

 

椅子を後ろに倒して急に立ち上がったお客さんは横に置いていたカバンに手を取り、開ける。その中にはビニールでパッキングされた大量の白い粉がたくさんあった。

 

「白い粉!?」

 

「やっぱり運び屋だったじゃないか!!お前は誰だ!?」

 

突然の出来事と怪しい風貌で一気に怯えるチノ、そしてそんなチノを自分の後ろに回して拳銃を構えるリゼ。

 

「私?私は・・・・」

 

そう言ってお客さんはマスクとサングラス、そして帽子をバッと外す。そして高らかに言った。

 

「私は私よ!!」

 

「「本当に誰!?」」

 

 

 

 

 

一方その頃、ココアは街を駆け巡りお姉さんを探していた。

 

「全く、お姉ちゃんどこにいるのよ〜・・・・あっ!シャロちゃん!千夜ちゃん!」

 

「あら?ココアちゃん」

 

「どうしたのよそんなに慌てて」

 

「お願い二人とも!!一緒に私のお姉ちゃんを探して!」

 

「ココアちゃんのお姉さん?」

 

「携帯で連絡すればいいじゃない」

 

「お姉ちゃん、機械苦手だから持ってないの」

 

「う〜ん・・・・どんな人なの?さすがにココアちゃんのお姉さんだけじゃ私たち、分からないし」

 

「じゃあモノマネするね!」

 

偶然見つけた千夜とシャロに協力してもらおうとしたココア。お姉ちゃんのモノマネとしてYシャツの左袖のを捲り上げて力拳を作るように腕を曲げる。

 

「お姉ちゃんに任せなさ〜い!!」

 

「・・・・・自分のマネ?」

 

「いつものココアちゃんじゃない」

 

「・・・・・あれ?」

 

 

 

 

その頃、ラビットハウスでは変装を解いたお客さん、モカがチノやリゼに事情説明をしていた。

 

「ココアさんのお姉さんでしたか・・・」

 

「ココアならあなたを探しに」

 

「別にそんな事してもらう必要なかったのに、相変わらずそそっかしいわね〜」

 

「そのうち帰ってくると思います。ここでゆっくりとしてください」

 

「君がチノちゃんでリゼちゃんね。二人の話をも聞いているよ。写真も見たよ」

 

そう言ってテーブルの上に置かれていく写真。ココアがリゼにジャイアントスイングを決められたり、チノのピントがブレた写真などまともな写真が一つもない。

 

「あいつ、ロクな写真を送ってないな・・・」

 

「エヘヘ、みんな可愛い〜」

 

「どこが!?」

 

「せっかくだし、妹が帰ってくるまでお手伝いしようかな」

 

「そ、そんな、お客さんにそんなことは」

 

厨房に行こうとするモカを止めようとするチノ。次の瞬間、モカは振り向いて力こぶを作るように腕を曲げた。

 

「お姉ちゃんにまかせない♪」

 

ピカアアアアアア!!!!!!

 

モカが言ったそのセリフ、そのセリフからチノとリゼの二人には神々しく見えた。

 

「こ、これが・・・・・」

 

「頼れる姉のオーラ!?」

 

「いつものココアさんが・・・・・」

 

「茶番のようだ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「出来た〜、二人とも召し上がれ〜♪」

 

結局、モカは厨房を借りて自宅から持ってきた小麦粉を使いパンを作った。焼きたてのパンを二人は一つ手にして口に運ぶ。

 

「お、美味しい・・・・美味しすぎて涙が・・・」

 

「さすがココアの姉・・・・普段ココアが作っているものよりもずっと美味しい・・・」

 

「ありがとう、嬉しいわ」

 

嬉しそうな表情をしてモカはパンを食べているチノの頭の上に乗っているティッピーを撫で始める。

 

「それにしてもチノちゃんは偉いね〜、中学生でお仕事をしているのでしょ?」

 

「マスターの孫として当然です」

 

ティッピーを撫で終えたモカは隣にいたリゼの頭も撫で始める。

 

「リゼちゃんもかわいいわね〜」

 

「高3ですが・・・」

 

「私から見たら可愛いの!年下だし」

 

「うっ!?えつ!?」

 

モカに可愛いと言われ、顔を真っ赤にするリゼ。モカはリゼを撫でるのをやめない。こういう事に慣れていないリゼの頭はだんだんと混乱してきた。

 

「真っ赤になるのもかわいいなぁ」

 

「うっ・・・・ううう・・・・」

 

「かわいいかわいい♪」

 

「うわあああ!!!!!」

 

「逃げた!?あ、あのリゼさんがタジタジなんて・・・」

 

「もう、素直じゃないわね。それにしても二人ともモフモフして気持ち良さそう・・・」

 

「えっ?あっ・・・モ、モフモフしますか?」

 

モカが何か羨ましそうな目をしてきたのでチノは頭の上に乗っていたティッピーを手に取る。しかし、モカは何も言わずにチノを抱きしめた。

 

「チノちゃんって本当にモフモフなんだね〜、あったか〜」

 

「・・・・・・お母さんのような温もり・・・・」

 

モカに抱きつかれたチノはその安心感に包まれ、身を寄せてしまう。それを柱の陰から見るリゼ。

 

「チノが捕まってしまった!?」

 

「ん?隠れてないでおいでー」

 

「ち、近寄るなぁ!!」

 

柱に隠れるリゼを見つけてモカはチノを離してリゼの方に近寄る。リゼはポケットからハンドガンを取り出して脅しをかけるが、全く通用せずに抱きつかれてしまった。

 

「捕まえた!」

 

「お、脅しが効かない!?」

 

「ほれ、モフモフ〜モフモフ〜」

 

「うっ、あっ・・・ウワアアアア!!!!」

 

 

〜(数分後)〜

 

 

「まんぞくまんぞく♪」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「わ、私が・・・・モフモフされるなんて・・・・」

 

モカから解放されたリゼは床にヘナヘナと崩れ落ち、ガタガタと震えていた。

そして、そんな様子を見ている3人の少女・・・・・ココア、千夜、シャロの3人だ。

 

「探す必要なかったじゃない」

 

「馴染みすぎて三姉妹みたいだね」

 

「・・・・・・・」

 

「あれ?ココア?・・・・・泣いてる!?」

 

「チノちゃんも・・・リゼちゃんも取られた・・・・グスン」

 

返事がない事に違和感を覚えたシャロはココアの方を見る。ココアは涙をポロポロと流していた。慌てたシャロはココアと千夜の手を握り上にあげる。

 

「わ、私たちだって三姉妹よ!」

 

「天下もとれるわ〜」

 

シャロと千夜はココアを慰めようとするが何をやってもココアは泣きやまない。

 

「私どうすればいいの!?このままじゃ二人とも取られちゃう!?」

 

「取る取られるかは置いといて・・・・たしかに入りにくい雰囲気ね」

 

「んん〜、じゃあこうしてみましょう♪」

 

 

 

 

 

 

 

カラ〜ン

 

「いらっしゃい・・・・・?」

 

扉が開く音が聞こえたのでチノが反射的に振り向いて声を上げようとしたが続きが出なかった。なぜならそこにはサングラスをしてベレー帽を被り、コートを着たココアがそこにいたからだ。

 

「なんだココアか、お帰り」

 

「何しているんですか?あっ、さっきのうさぎ、可愛かったです」

 

「あれっ!?」

 

「ココア!?その変装は・・・・ダサい!!」

 

「数分前に同じ光景を見たぞ!?」

 

「あんたの作戦失敗じゃない!!」

 

「あれぇ〜?」

 

「あっ、千夜さんにシャロさん。こんにちは」

 

「?ほんとだ。二人とも、何でここにいるんだ?」

 

窓越しでシャロは千夜に怒られる。その様子をチノがとリゼはしっかりと見ていた。

 

「とにかくココア。久しぶりだけど元気そうで良かったわ」

 

「お・・・・お姉ちゃん!!!」

 

久しぶりにお姉さんに会えて嬉しいココアはそのまま抱きついて甘える。しかし、後ろから感じる4人の視線にハッと我に帰り、バッと離れる。

 

「みんなの前で恥ずかしいよ!しっかり者の姉で通っているから!!」

 

「「「んんん?」」」

 

しっかり者の姉という言葉に反応して疑問符をつくチノ、リゼ、シャロの3人。

 

「そっか〜、すっかりお姉さんだね〜」

 

「まってください、違います。ココアさんはしっかり者で」

 

モカはココアの言葉を信じきってしまう。チノが慌てて訂正しようとするが何も聞き入れない。一方、ココアはお姉さんに褒められたのが嬉しかったのか目でもっと褒めて欲しいと合図を送ったり身体を揺らす。

 

「まるでしっぽを振る犬のようだな・・・」

 

「実は一つご報告が・・・・・私、明後日までここに宿泊させてもらう事になってるんです!?」

 

「ほんと!?」

 

「ま、待ってください。私何も知りませんよ」

 

『ワシも知らないぞ!?』

 

「すでにタカヒロさんから許可を頂いております!」

 

「お、お父さん・・・・」

 

モカの突然の発表にココアは喜び、チノは恨み節を言う。一方、モカの方は先ほどのココアと同じようにおねだりをしてもらうような状態だ。

 

「・・・・血の繋がりを感じる」

 

「分かります先輩」

 

「ココアちゃんが二人いるみたい〜」

 

「あっ!そうだ!」

 

何かを思い出したようにココアは一度厨房に行き、ソーサラーを乗せたカップを一つ手にしてモカに渡した。

 

「あのね・・・・これ、ラテアートって言うんだけど」

 

「すごい!ココアが作ったの!?」

 

ココアからコーヒーカップを受け取ったモカはコーヒーに描かれたラテアートを見て驚く。

 

「サプライズ負けしちゃったわね・・・」

 

「ココアさんがこの一年で成長した証です」

 

「お客さんのために練習したんだね」

 

「それか日向ぼっこしているかのどっちかだもんな」

 

「ココア!?!?」

 

 

 

 

「二人もココアの友達よね。確か・・・・」

 

「千夜で〜す。ココアちゃんと同じクラスです」

 

「初めまして、私は桐間紗路。みんなからシャロと呼ばれてます」

 

テーブルについたモカ、その反対側に千夜とシャロの二人が座る。ココアの友達ということで二人と会話したいとモカが言ったので、ラビットハウスでこの場を作ってもらった。

 

「2人はとても仲良しなのね」

 

「はい、シャロちゃんとなら漫才で日本一を取れそうです」

 

「私は目指さないわよ」

 

「やん、冷たい」

 

「一々突っ込むこっちの身にもなってちょうだい」

 

「じゃあ今からシャロちゃんに変わってツッコミをやりま〜す」

 

「はっ?」

 

「ねぇねぇシャロちゃん。どうしてシャロちゃんのお家は貧乏なの?」

 

「人が気にしているところを土足で踏み込んできた!?」

 

「それにシャロちゃん、最近少し体重増えてきてない?おすそ分けしている和菓子も最近よく食べるし」

 

「う、うるさいわね!!何であんたにわたしの体重を教える必要かあるのよ!!」

 

「それにシャロちゃん、最近はバイトと勉強ばかり・・・・私を捨てたのね」

 

「何でそうなるわけ!?それとさっきから突っ込むどころかボケてばっかりじゃない!!」

 

「100点満点☆」

 

「いい加減にしなさい!!」

 

「フ、フフフ、本当に仲良しだね。ココアの言った通りだわ。そうだわ、これ、さっきチノちゃんやリゼちゃんに作ったパンの余りなの」

 

「まぁ、頂きます」

 

「わ、私はちょっと・・・・」

 

「どうしたのシャロちゃん?体重増えるのがそんなに心配?」

 

「う、うるさいわね!た、ただ、ちょっとお腹周りのお肉が気になるだけだよ!」

 

「う〜ん・・・・・」

 

「ふぇっ!?」

 

モカが持ってきたパンを一つ手にとって食べる千夜、シャロはお腹の方を触りお肉を気にして食べようとしない。そんな様子を見ていたモカがシャロの方に近寄り抱きしめた。

 

「な、ななな、何ですか一体!?」

 

「うん、もっとモフモフしていいと思うよ!」

 

「何ですかその基準!?で、でも・・・それだったら食べても」

 

「イヤアア!!!私の友達が次々にお姉ちゃんの妹になっていくよ!!」

 

抱きつかれたシャロもそこまで抵抗をせずにパンを手にして食べ始める。そんな様子を見ていたココアは泣き出した。

 

「そもそも取られるってどういうことですか」

 

「このままじゃみんなお姉ちゃんの妹になっちゃうよ!」

 

「まずその考えがおかしいのです」

 

「なに言ってるの!?みんな私をの妹よ!」

 

「誰一人としてそんなこと認めていないぞ」

 

「モ、モカさん」

 

「ん?どうしたのかな千夜ちゃん?」

 

「わ、私も・・・私もモフモフしてください♪」

 

「いいよ♪」

 

「ヴェアアアア!!!!!千夜ちゃんも取られる!!!」

 

「コ、ココア!?おいココア!?」

 

千夜が自分からモフモフされに行った状況を見て、ココアは発狂して倒れてしまい、気絶してしまった。それを見て慌ててリゼとチノがココアの看病をする。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かココア?」

 

「お、お姉ちゃんに・・・・取られちゃう」

 

「まだそんな事言うのか・・・・・」

 

何とか目覚めたココア。すでにお店は喫茶店からチノの父が経営するバータイムへと変わっていった。

 

「それじゃ私は帰るから。また明日よろしく」

 

「う、うん、リゼちゃんありがとう」

 

ココアの看病を終えたリゼはそのままココアの部屋から出て行った。それと変わるようにしてチノとモカが部屋に入ってきた。

 

「やっと目覚めたわね、お寝坊さん」

 

「ココアさん、大丈夫でした?」

 

「もう大丈夫だよ!どんと来い!」

 

「あらあら、そうだわ。今から夕ご飯のオカズを買いにスーパーに行くの。みんなで行きましょう」

 

「本当!?私、お姉ちゃん特製のハンバー・・・はっ!?」

 

「?ココアさん?」

 

「こ、ここで甘えちゃチノちゃんに『甘えん坊』って思われちゃう・・・・・わ、私、明日のパンの材料買ってくるから!!」

 

「コ、ココアさん!?待ってください!」

 

慌てて部屋を飛び出したココア、それを見てチノは追いかける。一方、置いてけぼりにされたモカは・・・・・

 

「・・・・・チノちゃんのお姉ちゃんはココアの方が向いているのかな?」

 

という訳の分からないことを呟き、一人で買い物することに。

その夜、夕ご飯のモカ特性ハンバーグを食べた3人はココアの部屋で談笑する。

 

「もうこんな時間ね。今日は3人で一緒にお風呂入ろっか〜」

 

「わーい!私洗いあっこ・・・・はっ!?・・・・・ひ、一人で入る!」

 

「えっ!?コ、ココア!?」

 

「め、珍しい・・・・・」

 

「コ、ココア・・・・・・」

 

深夜、バータイムとなったラビットハウスにはチノの父とその頭の上に乗ったティッピーがある女性の相手をしている。

 

「マスター・・・・なんだかココアが冷たいようー・・・シクシク」

 

「ミルクでも飲んで落ち着きたまえ」

 

『弱点はココアか』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「私の妹、ココアは昔から私のマネが大好きでした。四兄弟の末っ子なので色んな影響も受けてます。ところが・・・・」

 

「ダメ!!お姉ちゃんは入っちゃダメ!!」

 

バタン!!

 

「妹の姉離れが深刻です」

 

「深刻なのは姉の方だ。そんなところで体育座りをして何してるんですか?」

 

翌日、今日もココアに冷たい態度をとられていじけてしまって三角座りをしているモカにすかさずリゼが突っ込んだ。モカは音を立てないようにそろりそろりと扉を開ける。その中にはココアの方にチマメ隊の姿もいた。

 

「あの子達は?」

 

「チノの友達だよ」

 

「これ、開幕一番にかまそうと思って」

 

「今度の集まりは戦争って聞いたから派手なの持ってきたの」

 

「どんな話!?」

 

「いい?開幕の合図は私が指示するからね」

 

「「イエッサー!」」

 

「ちびっこマフィアの抗争!?」

 

「変な影響を受けているだけの遊びだよ。休憩時間だから今日は私が街の案内するよ。甘兎庵に行こう」

 

「千代ちゃんのお店?」

 

リゼはモカを連れてラビットハウスを出る。そのまま甘兎庵に連れて行くのだが・・・・

 

「ねぇ、エスコートしてくれる割には距離が?」

 

「!?」

 

リゼとモカの間は2m近く離れている。昨日のモフモフにより、リゼはモカに対して恐怖心を抱いている。

 

「まあリゼちゃんの後ろ姿も可愛いから良しとしましょう」

 

「(ビクッ)や、やっぱり後ろはダメだ!!っていうかちかづくなぁあ!!!」

 

「案内放棄!?!?」

 

 

 

 

 

こちら、甘味処甘兎庵。ココアの友達である千夜が働いている和菓子などを提供する喫茶店だ。

 

「はぁ・・・・中抜きで3時間とか退屈でしょうがないじゃない」

 

「制服のままここに来るなんて珍しいわね」

 

「着替えている時間がもったいないわよ。それにどうせこの後チラシ配りだから直接行った方がいいわ」

 

現在、バイト休憩中のシャロがここに来て千夜と世間話をしている。

 

「今頃ラビットハウスではココアちゃん達が明日に向けた準備をしているんでしょうね〜」

 

「昨日、ココアからメールが来た時はビックリしたよ。まぁ、ココアらしいけど」

 

バタン!!

 

「た、助けてくれ!!」

 

「せ、先輩!?」

 

「あら、リゼちゃん。いらっしゃい」

 

二人の世間話の途中、突然甘兎庵の扉が開いた。そこには慌てた姿のリゼがいて、驚いて立ち上がったシャロの後ろに隠れる。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「命までモフられる!!」

 

「リゼちゃんみぃ〜つけた!」

 

シャロの背中に隠れて怯えるリゼ、そこに目をキラキラとしたモカがやって来た。シャロは両手を広げてリゼを守ろうとする。

 

「あわわ・・・・あの先輩がタジタジになって・・・」

 

「逃げると追い詰めたくなっちゃうぞー」

 

「その気持ち分かります」

 

「分かるなあぁぁ!!!!!」

 

「あら?千夜ちゃんその制服イケてるわね」

 

「本当ですか!?」

 

リゼを捕まえようとしていたモカだが、千夜の制服を見てコロッと様子が変わる。

 

「シャロちゃんが働いている喫茶店のミニスカも可愛いんですよ!」

 

「へぇ〜、こんな感じなのね。行ってみたいわぁ。私もまだまだミニスカで働けるかな?どう思うシャロちゃん」

 

「えっ?そ、そうですね・・・・」

 

突然振られたシャロはモカの身体・・・・・特に張っている胸を凝視する。そこでシャロは過去に働いたリゼの姿と重ね合わせる。

 

「・・・やめましょう・・・トラウマになる子もいるんですよ・・・」

 

「トラウマ!?」

 

 

 

 

「明日帰っちゃんですね」

 

「妹に避けられているのがちょっとだけ気がかりだけど・・・・」

 

あの後、休憩が終わりそうだということでリゼだけが(逃げるように)ラビットハウスへ帰って行き、モカはせっかくだということで甘兎庵で休憩していくことになった。

 

「ココアがグレてブラックココアにならないようにお願いね」

 

「何ですかブラックココアって・・・・」

 

「あの子の取り柄って言ったら温かい笑顔くらい」

 

「おもてなしのアイスココアです」

 

「アイス・・・ココア・・・・・この冷たい感じ・・・・今のあの子にそっくり」

 

「空気読みなさいよ!!」

 

「準備したのはシャロちゃんよ」

 

 

 

〜〜(翌日)〜〜

 

 

ラビットハウスの一室ではモカが荷物をまとめて鞄に詰める作業をしている。テーブルの上には色んな写真があった。作業の手をやめてその写真を手に取る。

 

「甘えん坊の妹はこの写真だけにしか残ってないのかな・・・・」

 

込み上げて来る思いに堪えきれず、モカは涙を流してしまう。

 

「うぇるかむかもーん」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ようこそ木組みの街へ」

 

「何!?」

 

突然部屋に入ってきた怖いうさぎの被り物を被った人だった。突然のことでモカは慌てふためく。そのままうさきの被り物を被った人に腕をとられて何処かに連れていかれてしまう。うさきの被り物を被った人が扉を開けた。

 

パーン!!パーン!!!

 

「!?」

 

「サプライズパーティの始まりだよ!!」

 

そこはラビットハウスのホール、色鮮やかに飾り付けられたホールでクラッカーを鳴らしたチマメ隊。そのままモカは椅子に座らせる。

 

「こ、これは・・・・」

 

「ようこそモカさん」

 

「モカさんが元気がないからって励まそうってココアちゃんが」

 

「ココアじゃないよ!この街のマスコットキャラクターぴょん」

 

厨房から料理を運んできたシャロと千夜。千夜がモカに説明をする。それを聞いたモカは嬉し涙を流してうさきの被り物を被ったココアに抱きついた。

 

「ぐへっ!?」

 

「元気ないのはあんたのせいでしょうーー!!!」

 

「ま、待ってお姉ちゃん!変な音鳴ってる!」

 

「こんにちは〜!私マヤだよ!この銃私が買ったんだ!」

 

「こんにちは。メグです。この被り物私が選んだの」

 

強く抱きしめるココアの両隣にマヤとメグが現れてモカさんに自己紹介をする。

 

「マヤちゃんにメグちゃんね。いいセンスだ!」

 

「やったあ!モカ姉って呼んでいい?」

 

「モカお姉ちゃ〜ん」

 

「うんうん、順調に甘え上手な妹に育っているようね」

 

「急にあの二人の将来が心配になってきました」

 

モカに甘えるマヤとメグを見てニヤニヤするココアとそんな二人の将来を心配して冷たい視線を送るチノ。モカは二人の肩を掴んでニコリとした表情を見せる。

 

「この子たちも私へのプレゼントかな?」

 

「違うよーーー!!!!!もう!!お姉ちゃんは見境がなさすぎるよ!!」

 

「んん?それは聞き捨てならないなぁ」

 

「あ、あの、喧嘩は・・・・」

 

険悪な雰囲気になってきたのでチノはココアとモカの間に入ろうとするが、マヤとメグがそれを止めた。

 

「あれくらいならアニキといつもやってるよ」

 

「じゃあ心配いらないねぇ〜」

 

「あのくらい・・・姉妹なら普通・・・・」

 

ココアとモカのちょっとした喧嘩に一人っ子のチノは羨ましそうな表情で見ている。

 

「めんどくさくなったらGQCでねじ伏せれば完璧だね」

 

「なっ、なるほど」

 

「それはマヤちゃん家だけだと思うよ」

 

「あっ!そうそう!今日はスペシャルゲストもお呼びしているんだよ!」

 

「スペシャルゲスト?」

 

ココアは何かを思い出したようにラビットハウスの入り口にある扉に向かう。扉を開けるとそこには青山さんが立っていた。

 

「お姉ちゃんがファンの青山ブルーマウンテン先生に来てもらいました!」

 

「!?あ、あなたはあの時の!?」

 

「?知ってるのか?」

 

「ココアさんのお姉さんだったんですね」

 

「はわわわわ・・・・本当に作者様だったなんて・・・・私、私・・・・こっ、これにサインを!!」

 

「一体どこから麺棒を!?」

 

憧れの青山さんに会えてテンパるモカ、懐から自分の麺棒を取り出してサインを求める。青山さんは麺棒を受け取り、サインを書き出した、が・・・・・

 

「失敗しました・・・・」

 

「字がでかい!!!」

 

「青山ブルーマ」までは大きく、残りは少ないスペースで小さく「ウンテン」とサインした。

そこからチノのお父さんが作った料理を食べたり、みんなと遊んだりしてモカの顔は笑顔へと変わっていった。

 

「ココアの友達は年齢層が幅広いなぁ・・・」

 

「ねえねえ見て見て!!お姉ちゃんとお揃い!!」

 

モカはココアを見る。そこには自分と同じ髪型をしたココアがいた。その時に思い浮かんだのはまだココアが幼い頃、自分がココアに同じ髪型をして喜んでもらった時の思い出が蘇った。それを思い出し、ポケットから花柄の髪飾りを自分の髪へとつけた。

 

「私もココアのマネ!」

 

「その髪飾りまだ持っていたの!?」

 

「当たり前じゃない。これは私にとって大切なものなのよ」

 

「・・・・・良かったですね。モカさん、元気になって」

 

「ああ、昨日とは大違いだ」

 

仲良さそうに話をする姉妹を見て、チノやリゼ、千夜たちも微笑ましい顔で二人を見ていた。

そして、夕刻、モカが帰る時間になった。ココアとチノはモカを見送るためラビットハウスの外に出た。

 

「もう帰ってしまうんですね」

 

「あんまり長居してしまうとお母さんが大変だからね。でもまた今度、フラッと遊びに来るよ」

 

「元気でね〜」

 

「ココアもたまには帰ってきなさい!」

 

「でも私が帰っちゃうとチノちゃんが寂しがるから・・・」

 

「わっ、私を引き上いに出さないでください!」

 

「ウワアア!!!怒らないで!!ホントは私が寂しいの!!ゴメンね!!」

 

「ケンカにすらならない・・・」

 

チノが怒ったような仕草をしたのでココアは泣いてチノに抱きつく。鬱陶しく感じたチノはココアを話して技をかける。

 

「ナニコレっ!?」

 

「マヤさんに教えてもらったGQCです」

 

「・・・・ああ、そっか・・・」

 

そんな二人の様子を見ていたモカはそっと呟いた。

 

「もう・・・私のマネじゃなくて本当のお姉ちゃんなんだね・・・」

 

「えっ?何か言った?」

 

「うんうん、何でもない。そうだ・・・成長したココアにこれを受け継がせる時が来たようね・・・・」

 

そう言ってモカは懐を探ってドヤ顔で青山さんのサインが入った麺棒を差し出した。

 

「それ渡しちゃっていいの!?」

 

「モカさん、そろそろ・・・」

 

「そうね。じゃあ二人とも、元気でね」

 

「バイバ〜イ!!」

 

「ありがとうございました」

 

鞄を持ってモカは駅に向かって歩き出した。二人はモカの姿が見えなくなるまで手を振り、見送った。

 

「・・・・行っちゃいましたね」

 

「・・・本当はもう少し甘えたかったなぁ」

 

「そういえばモカさん、帰り際にラテアートを描いてみたいです」

 

「ほんとに!?初めてなのに一生懸命に作ったんだろうなぁ」

 

モカが作ったラテアートを見るため、二人はラビットハウスの中に入り、厨房に行く。そこには一つのコーヒーカップが置かれていた。そのコーヒーには細やかな模様まできちんと描いたお花のラテアートが描かれていた。

 

「私よりも上手い!?」

 

「すごい・・・ずっとウチで働いてもらったです」

 

『即採用じゃな』

 

キラキラとした目でチノはコーヒーカップを手に取る。そんなチノを見て、ココアはワナワナと震え出した。

 

「もう!!お姉ちゃんは去った後でも私の妹の心を奪っていくよおお!!!!」

 

 

 

 

 

・・・・♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜

 

ココアのセリフが終わった後、ココアは舞台袖に下がっていき、マヤとメグの2人が舞台に現れてチノと3人で歌い、踊り始める。曲が止まり、舞台の幕が下がった。

 

パチパチパチパチパチパチ!!!!!

 

『以上をもちまして中等部3-1、『ご注文はうさぎですか?』の演目を終了します。ご観覧くださり、ありがとうございました』

 

 

 

 

響 side

 

 

「お疲れ〜!!!みんなよくやってくれたよ!!これ、スポーツドリンクよ!」

 

「ありがとう彩」

 

無事に劇が終わり、男子たちが舞台の撤収作業をしている中、監督をした彩からスポーツドリンクを貰った。ペットボトルの蓋を開けて、そのまま勢いで飲む。

 

「プハァ・・・生き返る〜」

 

「出来も良かったし、お客さんの反応も良かったよ!これなら優勝目指せるんじゃない!?」

 

「さすがに優勝は無理でしょ・・・高等部の出来も凄いんだし」

 

「そんなの分からないわよ!」

 

「凄い気合が入っているわね、彩」

 

「それが空回りしなきゃいいんだけどね」

 

気合いが入り、背中に炎が見える彩を私は奏と二人、パイプ椅子に座って見ていた。

 

 

 

 

その後、文化祭最後に行われた劇の最優秀作品で見事、私たちの作品が選ばれ私たちは舞台の上で大騒ぎをした。




レミ「彩喜んでいたわね」

茜「気合の入りようが違ったからね。まさか最優秀作品を取るとは思わなかったよ」

奏「高等部の劇も凄い凄いって言われていただけに、って感じよね」

響「発表された後の彩の顔、泣き噦んでいたよね」

レミ「これでようやく文化祭は終わり。次はまた日常の話をするかな?」

奏「それじゃ、次回もよろしくお願いします」

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