【完結】 遊戯王 5D's 転生者と未来のカードたち   作:DICHI

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・・・・・なんか思っていたよりも長くなった(汗)。というわけでまさかの前後編の二部構成です。どうしてこうなった・・・・・

劇が始まりますと地の分は少なめです。あくまでこれは劇ですので。
台本書きは悩みましたが、やめておきます。
時間的には多分30分ギリないくらいですかね?文化祭の劇ですし、1時間も取ってられません。
参考にしたのはモカさんがラビットハウスに始めて来たお話を簡略化したお話です。あれが私的には一番ごちうさらしさがあると思ったからです。


えっ?他の服の着替えはないかって?考えてみてくださいよ。普通の劇で着替えなんてありませんよ。どこかの某アイドルグループみたいな早着替えなんてしません。


キャスト及びスタッフ


保登心愛(ココア)・・・・・小野寺響
香風智乃(チノ)・・・・・・遠藤遊輝
天々座理世(リゼ)・・・・・水野奏
宇治松千夜(千夜)・・・・・栗城茜
桐間紗路(シャロ)・・・・・葵レミ

条河麻耶(マヤ)・・・・・・美穂
奈津恵(メグ)・・・・・・・京子

青山ブルーマウンテン・・・彩
保登モカ・・・・・・・・・琴音

香風タカヒロ・・・・・・・遊城スバル

ティッピー(声当て)・・・・男子生徒


大道具・・・・・・・・・・男子生徒たち
小道具・・・・・・・・・・女子生徒たち
音響・・・・・・・・・・・男子生徒・女子生徒
照明・・・・・・・・・・・男子生徒・女子生徒

衣装提供&アーティスト・・アリア・リューベック

台本&総監督・・・・・・・彩



OP:Daydream café(Petit Rabbit's)
ED:ときめきポポロン(チマメ隊)


第190話 文化祭の劇 『ご注文はうさぎですか?』前編

遊輝 side

 

「ピンマイク大丈夫!?」

 

「おいこの小道具どこに置いておくんだ!?」

 

「バカ!!そんな所にそんな物を置かないでよ!!」

 

「ふわぁ・・・いよいよだね・・・・」

 

ガヤガヤガヤガヤと舞台裏が慌ただしくなっている。あるものは板状のものをセッティング、あるものは机やテーブルなどを端に寄せて準備、またあるものは台本を見てセリフを確認している。

白いブラウスの上にピンクの袖なしベスト、胸に赤のリボンをつけて黒のスカートを履いた薄ピンクの髪の色をしたココア役の響がそんな様子に声をあげる。

 

「な、なんか・・・・大会やライブよりも緊張してきた・・・」

 

「奏〜、固くなりすぎよ。別に失敗して良いんだから。みんなに見てもらう劇なんだし」

 

響の隣には響と色違いのお揃いの衣装、ピンクのベストが紫、胸リボンが紫の紫の長髪のリゼ役、奏がガッチガチに緊張していた。それを見て、監督も兼ねている彩が肩を揉み、緊張をほぐす。奥から着替えが終わったレミや茜、スバルに京子と美穂がやって来る。

 

「お待たせ〜、着替え終わったよ」

 

「これでダンスってきついよ」

 

「まぁまぁ・・・・早着替えするよりマシだろ」

 

「そうなんだけどさ・・・・」

 

「チノちゃんはどう?」

 

響がこっちに振り向いて俺の頭の上に乗っているティッピーの人形を撫でながらそう言ってくる。何故かカチンと来たので少しチノっぽく返そう。

 

「ココアさん、いい加減真面目に働いてください。ココアさんなんて嫌いです」

 

「ヴェエエエエアアア!!!!チノちゃんに嫌われた!!」

 

「大丈夫だよココアちゃん、チノちゃんはココアちゃんのことが好きで注意しているのよ。だからもっとチノちゃんに振り向かせるために声をかけるのよ。『チノちゃん、もっと私のことを抱きしめていいんだよ』って」

 

「それだと逆効果にならないか?」

 

「せんぱ〜い、私この後の展開がよそうできるのですが・・・・」

 

「あんたたち絶好調ね〜。こんな時でもキャラになりきれるなんて」

 

「その自信はどこから湧いてくるんだ・・・・」

 

「まもなく本番です!!配置についてください!!」

 

「は〜い!!!」

 

タイム管理を担当している生徒会の生徒が俺たちに声をかける。その声を聞いた後に響が返事をして響を真ん中に俺とレミ、奏と茜が響を囲むように配置につく。

 

 

遊輝 side out

 

 

No side

 

文化祭最終日、この日もアカデミアのホールは大盛況である。ガヤガヤと雑音が入る鳴り響く中、観客は劇が始まるまで今か今かと待っている。

例年、文化祭で行われる劇は中等部の3年と高等部の3年がやっており、この日も午前中に高等部の一クラスが劇を行なった。そして、次が最終のクラスとなる。最後の公演も相まって、さらに、今年の最終公演はアカデミアの生徒たちの間ですでに話題を呼び起こし、ホールには入りきれないほどの外部からの人たちやアカデミアの生徒たちが入ってきている。

 

『お待たせしました。14時開始、中等部3-1による劇、『ご注文はうさぎですか?』、まもなく開演いたします』

 

パチパチパチパチ!!!!!

 

ウィーーン

 

『ワアアアアア!!!!!』

 

舞台の幕が機械音を立てながらゆっくりと上がっていく。ステージには舞台セットが立てられて、5人の少女がピンクの髪をした少女を中心に配置に付いていた。ピンクの髪をした少女の両隣に水色の髪をした少女と紫色の髪の少女が並んでいる。3人の服は色違いという点を除いてお揃いの制服だ。中央から見て右側で膝をついているのはロップイヤーをしたメイド服を着た黄色の髪をした少女、その反対側には和服を着た綺麗な黒髪の少女が同じく膝をついている。

 

・・・・・♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜

 

『ワアアアアア!!!!!』

 

ホールの壁についている大型のオーディオから歌が流れ始め、その歌に合わせてステージ上の5人の少女が歌い、踊り始めた。観客は歓声を上げ思い思いに叫んでいる。

 

♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜

 

「みんな!こんにちは!!」

 

『こんにちは!!!』

 

歌が終わりかけたところでピンク色の髪をした少女が一人前に出る。

 

「私はココア!高校入学の時にこの木組みの家と石畳の街に引っ越してきたの!」

 

『ココアちゃ〜ん!!』

 

「ここは喫茶店ラビットハウス!私が下宿しているところよ!今日はこの町に来てから出来た私の大切なお友達を紹介するね!まずはこの子!!この子はチノちゃん!」

 

『チノちゃん!!』

 

「チノちゃんはこのお店のマスターの一人娘で、そして私の大事な可愛い妹!」

 

「妹じゃないです。だいたい、ココアさんはいつもいつも私のことを妹と言いふらして、私がそれを訂正しているのですよ。少しは・・・」

 

「それでチノちゃんの頭の上に乗っているこのモフモフとしたもの!ラビットハウスの看板うさぎのティッピー!」

 

「ココアさん、私の話を聞いていますか?これに懲りて無駄な話を広めないでください」

 

「続いてリゼちゃん!」

 

『リゼちゃ〜ん!!!』

 

「リゼちゃんは私よりも先にラビットハウスでアルバイトしているちょっと変わった女の子なの!」

 

「か、変わってなんかない!私は至って普通の女子高校生だ!」

 

「普通の女子高校生がハンドガンとかナイフとか持ってないよね?」

 

「えっ!?持ってないのか!?」

 

「その反応自体が普通の女子高生生じゃないんだよ。そのお隣は千夜ちゃん!」

 

『千夜ちゃ〜ん!!』

 

「千夜ちゃんは私と同じ高校のクラスメイトで甘味処、甘兎庵の看板娘として働いているの!そして私とは凄く気が合うの!」

 

「ココアちゃんと同じクラスで本当に良かったわ。ココアちゃんがいなければ私、私・・・・・生きていけない!!」

 

「ココアがいないだけで大袈裟すぎるでしょ!!」

 

「そんな千夜ちゃんの特技は新商品の商品名を考えることと〜〜!!」

 

「ハッ、ホッ、お盆三刀流よ〜」

 

『おおおお!!!』

 

「何であんたはいつもいつもそんな危ない運び方をするのよ!!しかも一番悲惨な事になるカキ氷を頭の上に乗せるなんて!!」

 

「さっきから千夜ちゃんに対して叫んでいるこの子はシャロちゃん!」

 

『シャロちゃ〜ん!!』

 

「千夜ちゃんと昔からの幼馴染で甘兎庵のお隣にある倉庫で住んでいるの!」

 

「倉庫じゃないわよ!私の家よ!」

 

「普段は紅茶を扱っているフルール・ド・ラパンに働いているの。シャロちゃんはリゼちゃんと同じ高校に特待生として通っている秀才よ!」

 

「チノ〜!!遊びに来たよ〜!!」

 

「お邪魔しま〜す!!」

 

「マヤさん、メグさん、いらっしゃいませ」

 

ステージ5人の紹介が終わったところでステージ袖から学校の制服のようなものを着て、ランドセルを背負った二人組みの女の子がやってきた。一人は赤色の長髪、もう一人は青色に近い髪をした女の子だ。

 

「この子たちはマヤちゃんとメグちゃん!チノちゃんのお友達だよ!」

 

「チマメ隊、久しぶりだな」

 

「マスター、ブルーマウンテンをお願いします」

 

「やあ青山くん、今日もネタ詰まりなのかね?」

 

「そうなのです〜、凛ちゃんから逃げてきました〜」

 

先ほどの少女2人と同じステージ袖から今度はロングワンピースを着て、袖に原稿用紙を挟んだスラリとした女性が現れる。反対側のステージ袖からはYシャツを着てスーツのズボンを履いた男性が現れて、お客さんの接客を始めた。

 

「この人は青山さん!有名な小説家でラビットハウスの常連さんだよ!そしてこの人がチノさんのお父さん!ダンディな声で普段は夜にバーをやっているんだ!」

 

「ココアさん、そんなところで遊んでないで早く仕事に戻ってください」

 

「じゃあココアちゃん、私は甘兎庵に戻るわね」

 

「私もバイトに戻るわ。そろそろ休憩時間が終わるから」

 

「チノ〜!私たちも手伝ってあげる!」

 

「いえ、大丈夫です。今は余裕がありますし、もうすぐ店仕舞いですから」

 

「じゃあ遊ぼう〜!また私のレベルアップを」

 

『ヒィエエ〜〜』

 

「ティッピーは魔物じゃないです」

 

「相変わらずだな、マヤは」

 

「じゃあマヤちゃん!私と遊ぼう!」

 

「ココアさんは仕事をしてください」

 

「じゃあココア!今からかくれんぼしようぜ!チノもリゼも一緒に!」

 

「私もか!?」

 

「マ、マヤさん、あまりお店で遊ばれても」

 

「構わないさ。今日は青山くんで最後のお客様だから」

 

「お父さん・・・・・すみません」

 

「リゼもかくれんぼやろうぜ!」

 

「そうだな・・・・ひさびさに楽しむか」

 

「あらあら〜、じゃあ私も『お前はさっさと仕事をしろ』!?い、今、マスターの声が!?」

 

「どうしたのかな青山くん?」

 

「い、今、確かにマスターの声が?」

 

「きっと天国から見ているのでしょう。このブルーマウンテンを飲んで仕事を頑張ってください」

 

「は、はい〜」

 

「チノちゃんチノちゃん」

 

「何ですかココアさん?」

 

「エヘヘ、チノちゃんだ〜いすき!!」

 

デレッデレのココアはチノにギューと抱きつく。いつもいつもやられていて、チノはついポロっと毒を吐いた。

 

「・・・・・ココアさんなんて嫌いです」

 

「ヴェエエエアアア!!!!!チノちゃんに嫌われた!!」

 

チノの毒づいた言葉にショックを隠しきれないココア、そのまま倒れてしまい魂が抜けてしまう。

 

「お、おいココア!?しっかりしろ!!」

 

「大変だよメグ!ココアが死んじゃったよ!」

 

「多分、死んではいないじゃないんかな〜」

 

「全く・・・・いつもいつも賑やかで、少しは静かにならないのですかね、お爺ちゃん」

 

『ホッホッ、だが楽しくていい。ワシが生きている間では考えられないくらいじゃ」

 

「・・・・・本当に、しょうがないココアさんです」

 

こうして、ココアが来てからのラビットハウスは毎日が賑やかでいた。そんな日の夜・・・・・

 

 

「今日も一日楽しかったな〜。明日も楽しい一日になるといいなぁ〜、ん?何だろう」

 

今日一日の出来事が終わり、部屋に戻るココア。机の上には1つの封筒があった。それを手に取り、差出人を確認する。

 

「わぁ!!お姉ちゃんからだ!!お姉ちゃん元気にしているかな〜〜?・・・・・・ん?んん?・・・・・・」

 

ココアは自分の部屋に置かれている手紙を見て大きく目を見開く。そして翌日の朝・・・・

 

・・・チュンチュン

 

「ココアさん、いつまで寝ているのですか?起きてください。春休みだからって寝坊はいけませんよ。・・・・・あれ?」

 

チノは朝早くから寝坊しているココアを起こすため、布団を揺さぶり、取り上げる。しかしその中にはココアの姿は無く、ぬいぐるみが置かれていた。

 

「ぬ、ぬいぐるみ!?じゃ、じゃあココアさんは!?」

 

「おはようチノちゃん・・・・」

 

突如、扉の方から声が聞こえたチノはバッと振り向く。そこには制服にエプロン姿のココアが立っていた・・・・・・・焦げたステーキが載っているお皿を持って。

 

「朝食が冷めちゃうよ?」

 

「い、いつもと違う!?!?・・・・でも焦げてる・・・・」

 

 

 

 

 

「ココアの様子が変?」

 

「はい・・・・」

 

その日の午前中のラビットハウス・・・・バイトに来たリゼにチノは耳打ちで今朝の出来事を話す。それを聞いたリゼはチラッとココアの方を振り向く。

 

「・・・・・・・・・」

 

無言で窓拭きをしているココア、動きが俊敏である。

 

「確かにいつもよりキレがあるな・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「ティッピーの撫で方も機敏だ」

 

「ティッピーを撫でることは変わらないのですね」

 

「すみませ〜ん、またブルーマウン「1名様ですね。お席はこちらです」あら〜?」

 

「客の招き方も機敏だ!」

 

「違うお店みたいですからやめてください」

 

「それにしても・・・・・あんなココアは初めてだ・・・・・もしかして偽物?」

 

「まさか・・・・・あっ、髪の分け目がいつもと逆・・・・」

 

「本当だ・・・やっぱりあいつは偽物か?」

 

「だからなぜその発想に思い浮かぶのですか?」

 

「よし、あのココアが本物かどうか確かめてみよう!チノ!こっちに来てくれ!」

 

「?」

 

リゼはチノを呼び、ラビットハウスの裏側に連れ込む。数分後、頭にティッピー、さらには沢山のうさぎのぬいぐるみと一緒に縛られたチノがリゼに連れられて戻って来た。

 

「本物ならこうすれば抱きついてくるはずだ」

 

「何で私を・・・・」

 

「どうだココア!!これなら」

 

ココアはチノの姿を見て身体を震わせる。だが両手で目を覆いそっぽ向いた。

 

「ま、真面目に仕事しなきゃダメだよ!!」

 

「・・・・何故か分かりませんがすごく悔しいです」

 

「地味にショックだな」

 

ココアに無視されてプゥ〜と頬を膨らませるチノと反応が違って困惑気味のリゼ。結局、どうすることもできずにそのまま放っておくことにした。

 

「仕事熱心なのは構わないが・・・・気を張りすぎて熱を出さなきゃいいけ(ムギュッ)ん?」

 

何かを踏んだと足元を見るリゼ、そこには倒れ込んでいるココアの姿がいた。

 

「言ったそばから!!」

 

「だ、大丈夫ですかココアさん!?」

 

「大丈夫かココア!?一体何があってこんなになるまで!?」

 

「お、おね・・・」

 

「何だって!?」

 

「お、お姉ちゃんが・・・・明後日来るんだ・・・・(ガクッ)」

 

「「それとどう関係が!?」」

 

とりあえず倒れたココアをリゼは肩を貸して椅子に座らせて、チノはビニール袋に氷を入れて手渡す。そしてココアはこれまでの経緯を2人に語った。

 

「つまり、明後日来る姉に良いところをしっかりしているところを見せたかったのか」

 

「そうだよ」

 

「ココアさんのお姉さんって厳しい方なのですか?」

 

「そんなことないよ!!すっごく優しいお姉さんだよ!!お兄ちゃんも二人いるんだけど躾けて従えている姿がカッコ良かったんだ〜」

 

「調教師か・・・・・うん?」

 

ココアの話を聞いたリゼはなぜかカタカタと震えているぬいぐるみと一緒に縛られたチノの方に振り向く。

 

「ちょ、調教・・・・私これ以上何されるんですか・・・・?」

 

「怯えてしまった!?ってか解くの忘れてた!!」

 

慌ててリゼはチノを解き、そしてココアのことについて考え始める。

 

「・・・よし、私もココアに協力しよう!」

 

「ありがとうリゼちゃん!!」

 

「しかし兄弟がいるのは羨ましいなぁ・・・私は一人っ子だから・・・」

 

「リゼちゃん・・・・だったらリゼちゃんもチノちゃんと一緒に私の妹だって紹介するね!!」

 

「普通に友達でいい。とりあえずみんなに来てもらって相談しよう」

 

抱きついてくるココアの頭にチョップするリゼ、そして携帯で知り合いにラビットハウスに来てもらうようにメールを送った。数分後、ゼェゼェと息を吐く千夜と落ち着いた様子のシャロが来た。

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・・コ、ココアちゃんに何があったの!?」

 

「落ち着きなさいよ千夜、まずは息を整えなさい」

 

「二人ともすまない。実は・・・・・・」

 

「お姉ちゃん修行?」

 

「つまりココアはお姉ちゃんにしっかりしているところを見てもらいたいわけね」

 

「そうなのシャロちゃん!どうしたらしっかり見えると思う?」

 

「そうは言われても・・・・」

 

「とりあえずあそこで怯えているチノに対して何か声を掛けて安心させてくれ」

 

「ちょ、調教師・・・・調教師・・・・」

 

「チノちゃんは何があったの?」

 

「とりあえず私がやってみるわ。コホン・・・・・・大丈夫、私がいるから」

 

「おお分かった!!こうすればいいのね!!・・・・・だいじょーぶ!!私がいるから!!どんとこい!!」

 

「シャロさん・・・・・」

 

「チノちゃん取られた!?」

 

「同じセリフなのに・・・・この違い・・・・・」

 

「ウエエエン!!!!千夜ちゃんどうすればいいの!?」

 

「ココアちゃんがしっかりみえる・・・・そうだわ!!逆にリゼちゃんたちがドジな姿を見せたらしっかり見えるんじゃ」

 

「「逆転の発想!?」」

 

千夜の衝撃的な発言で戸惑うチノとリゼ、しかしココアは下から目線で二人に無言の圧力をかけてくる。

 

「わ、分かった・・・・やってやる!!」

 

「先輩!?」

 

「リゼさん!?」

 

「じゃあ早速、あそこにいる青山さんをお相手にしてみようかしら、青山さん」

 

「はい〜」

 

千夜はちょうどお店に来ていた青山さんにお願いを頼み込む。青山さんは快く引き受けてメニュー表を手に取った。

 

「すみませ〜ん、コーヒーの注文をお願いしたいです〜」

 

「ほら、チノちゃん。行ってきて」

 

「は、はい・・・・」

 

「私、コーヒーの銘柄ってあんまり理解していないので、オススメを教えて欲しいのですが〜?」

 

「わ、私、コーヒーの区別がつかないので・・・・」

 

「ココア〜!!助けてくれ〜〜!!」

 

「シャロちゃんも」

 

「わ、分かったわよ・・・すみませ〜ん、お会計をお願いします」

 

「わ、分かりました・・・・ハワワ!!け、計算を間違えてしまいました!!」

 

「ココア〜!!パンって火炎放射器で焼けるの〜?」

 

次々とドジっ子や失敗の演技をするチノとリゼ。それを見ていたココアはワナワナと震え出して泣き出した。

 

「こんな二人見てられないよおおお!!!ウワアアンン!!!!」

 

「お前のためにやってるのだぞ!!!!」

 

「あんたの作戦ダメじゃないの!!!」

 

「あれぇ〜?」

 

「こんにちは〜!」

 

「ココアのお悩み解決の手伝いに来たぜ!」

 

千夜の作戦が失敗に終わったところでマヤとメグのコンビがラビットハウスにやって来た。千夜は今までの経緯を二人に説明する。

 

「なるほど〜、じゃあ今度は私たちが鍛えてあげるよ!」

 

「よろしくですサー!」

 

「じゃあまずは・・・・・ココアさん、ここまだ埃が残っていたわよ」

 

「姑!?」

 

「このフリスピーをとっておいで!」

 

「ワン!」

 

「犬!?」

 

「ところぜリゼ、これ何の特訓?」

 

「おい」

 

「あんた教えてなかったの!?」

 

「ココアちゃんを鍛えてとしか」

 

「どうして肝心なところが抜けているのよ!!」

 

「てへぺろ♪」

 

シャロの説教を聞き流す千夜。リゼは二人に何の特訓かを教える。

 

「なるほど〜、お姉ちゃんらしくなる特訓か〜」

 

「お姉ちゃんらしく・・・ココアさんは充分お姉ちゃんだと思いますが」

 

「メグちゃんありがとう!でも今のままじゃダメなんだ!」

 

「今のままだともっとダメです」

 

「オッケー!チノ!」

 

「はい・・・・」

 

マヤに呼ばれてチノは近づく。マヤとメグはチノ手をそれぞれ持ってココアに抱きついた。

 

「ココアお姉ちゃん〜パンが食べたいな〜」

 

「私は宿題手伝って〜」

 

「あはは〜〜いいよ〜〜」

 

チマメ隊とココアによる和やかな寸劇が始まった。その様子を3人はじっくりと見て、シャロがつぶやいた。

 

「あれいつまで続くんですか?」

 

「ココアが無意味だと気づくまで・・・・」

 

「それ、一生終わらないじゃないですか?」

 

「ココアさんは十分お姉さんらしくやっていると思いますよ〜」

 

「青山さん?」

 

戯れるチマメ隊とココアを冷めた目でみていた3人に後ろから青山さん呟きだした。

 

「あんなに仲良く、まるで姉妹のように見えるなんてココアさんの凄いところだと思います〜」

 

「・・・・・そうね、確かにココアちゃんは私たちにはない、人を惹きつける力があるかも」

 

「そうだな」

 

「そうですね、先輩」

 

「ところでシャロさん、『カフェインファイター』の次回作のモデルのためにまたスカートの下を・・・」

 

「何で良いこと言った後にそんなこと言ってくるのですか!?

 

「だって・・・・アイデアが真っ白」

 

「あんたはさっさと仕事をしろ」

 

 

 

 

 

「よいしょっ・・・・みんな!今日はありがとう!こんなことでしかお礼ができないのだけど、カフェラテよ」

 

数時間後、お姉ちゃん修行(?)を終えたココアはお盆にコーヒーカップを乗せてみんなの前に配っていった。先に置かれたシャロはコーヒーカップを手にしてハッと驚いた。コーヒーの上には綺麗な花のラテアートが書かれていた。

 

「これ・・・・ココアが書いたの!?」

 

「そうだよ」

 

「初めてもらっときからすっごく上手になってるよココアちゃん!」

 

「ずっと見ていたから気づきませんでした・・・」

 

「良かったなココア、ちゃんとした成長の証があったじゃないか」

 

「リ、リゼちゃ〜ん・・・・」

 

「ココアちゃんすご〜い!!」

 

「カッコいい!!」

 

「よーし!!今からもっとすごいものを振る舞うからね!」

 

「じゃあココア!!私、3Dラテアートをやってみたい!」

 

楽しそうなマヤとメグ、ココア。そのやり取りを後ろから見ていたチノはむす〜とした表情をしてつまんなそうだった。

 

「店員としては成長しても姉としてはまだまだです」

 

「・・・・素直じゃないんだから」

 

「できたああ!!!3Dラテアート!!」

 

ココアが手にしていたのは巨大カップの上に入ったティッピーだった。

 

「それただのティッピー!!!」

 

 

 

そして二日後、ココアのお姉さんが来る日・・・・・

 

「ついにこの日が来たか・・・・」

 

「そうですね」

 

「どうだココア?楽しみか?・・・・ココア?」

 

返事がないココアにリゼはココアの方を振り向く。そこには石のようにガッチガチに固まっているココアがいた。

 

「ココアさん!?緊張で固まってます!?」

 

「おい接客業!!そんな調子じゃお客さんのもてなしができないだろう!!」

 

「・・・・ココアさんのお姉さん、どんな人なんでしょうか?」

 

 

その頃、この木組みの家と石畳の街をカバンを持った女性が、一人スキップしながら歩いていた。

 

「うっさぎーうっさぎー♪」

 

 

 

 


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