もしキリトさんが茅場晶彦によってSAOのレベルのまま迷宮都市オラリオに送られたら。 作:機巧
日は既に西へと傾いていた。
あのコボとうとやらを買ってから、その作者ーーヴェルフ・クロッゾとか言うらしいーーの作品を見て見たりしながら時間を過ごした。
作品のセンスとかはいいのに……本当にネーミングセンスが全てダメだった。
なんで牛の全身鎧《フルプレートアーマー》が、モーさんになるんだよ。
本当に。
本当に他の部分はいいだけに残念だ。ツーかあれか、騎士王の息……どっちだっけ?
もっとも、少し図書館によって調べ物をした結果得られた情報よりはネーミング良かったが。
……この世界の人ってみんなチューニビョウなんだな。
……そして、神様のほとんどが某巨大掲示板サイトの住人なんだということにも気がついた。
なんだよ。猛者でおうじゃと読むとか……カッコいい‼︎
じゃなくてゲフン。それ一個ならともかく……多いとさすがに……な?
「ダンジョンはダンジョンだろ。ダンジョンにダンジョン以外の何を求めてるんだよダンジョン」とかいう発言とかもな。
ちょっと残念すぎて沈黙がヤバイ。
そんなこと考えながら帰路へつくキリトであった。
□
「えーー? キリトさんがこのファミリアに入って貰える事になったんですか?」
「うん。その通りなんだよ、ベルくん」
「やったーーーーーーーっ! 二人目の団員ですよ? やりましたね、神様」
俺が帰ってきた後ですぐにベルも帰ってきて俺がファミリアに入ることを伝えてそんな風にいきわいわいとしていたベルたちであったが。
ベルがステイタス更新をしてから不穏な空気となった。
どうやら上がり幅が大きいらしい。
それを疑問に思った結果、ベルが質問した。
すると……ヘスティアさまが、
「……知るもんか」
とか言い出し、バイト先の打ち上げへといってしまわれた。
その結果、ベルと二人で朝ベルが行くと約束したらしい『豊穣の女主人』に行く事になった。
「へぇ、キリトさんは片手剣使いなんですか。すごいなあ。1回もたせてもらっていいですか? ……っておもももももももももも‼︎」
ベルが片手剣を一回持ってみたいと言ったので渡してみたら、重たそうにしていた。
確かこの夜空の件には適正レベルとかいうものが書かれていたような気がする。それを満たして以外からなのだろうか。ということは、適正レベルは、40ちょい。この世界の最高は8……誰も持てねー。
「キリトさんこんな重い剣を得物にしているなんて凄いなぁ」
「そうか……?」
「はい、ものすごく!」
ベルがキラキラした目で見ている。ベルはどうやら英雄に憧れているらしい。
「さぞかし強いんだろうなあ……」
「剣なら今度教えてやるよ。暇なときにな」
「本当ですか?お願いします」
強くなりたいという気持ちは分かる。だから、手伝おう。腐っても同じファミリア、なんだからな。
ファミリアと言えば、ヘスティア様、起こった時の明日菜に似ていたなぁ、と今更ながら思った。
□
まあそんなことをしながらお店に着いた。
「ベルさんっ。来てくれたんですね?いらっしゃいませ!あれ、隣の人は?」
「ああ、同じファミリアなんです」シルさんというベルと約束した店員さんにあった。
すると座席に案内され、店主のミアさんから、
「アンタがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ、二人共。大食漢なんだって。
じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってくれよぉ!」
「えっ!?」
隣のベルを見ると度肝を抜かれたような顔をしていた。
どうやらこのシルさんという人、侮れない人らしい。アルゴやエギルと接するくらいのつもりでちょうどいいかもな、とこれから注意しようと考えた。
□
少し食べてベルたちと会話した後。
食べていた俺に予想外のワードが入ってきた。
「ロキ・ファミリアが入って来たぞー」
「ブブーッ。」
「わぁどうしたんですか、キリトさん」
「いや、気にしないでくれ。奥で少し食べてくる。ベルはシルさんと話していてくれ。アディオス」
ロキ・ファミリアってあいつらじゃないか。見つかったら面倒くさい事になりそうだ。
陰で軽く〈隠蔽〉して食べ続ける。どうやらばれずにすみ、ロキ・ファミリアの打ち上げが始まった。
「今日は宴や!飲めぇ!」
「「「乾杯ー!!!」」」
凄く人気があったりしている。
その中で獣人の青年が。
「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「あの話…?」
「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろう!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」
まるで。面白いネタを提供するように。
「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出したやつ?」
「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」
「そんでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ白い髪のガキが!」
白い髪……思い浮かぶのばベル。ベルの方向を見ていると、ふるふると体が震えていた。
「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際に追い込まれちまってよぉ!しかも、アイズがミノを細切れにしたからそいつ全身にくっせー牛の血浴びて…真っ赤なトマトになっちまったんだよ!」
「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。」
まだ、青年の話は続く。もしかしたら、この話は……。
その後、他の団員が、諌めるが、止まらない。
そして……。
「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。…じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、結婚するならどっちがいい?
「……私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」
これに反応し、
「無様だな」
緑の髪のエルフが言う。
「黙れババアッ。…じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」
「……っ」
「そんなはずねえよなぁ。自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、他ならないお前がそれを認めねえ」
決定的な一言を。
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」
ベルは、逃げ出した。
「あれま、食い逃げか?」
「ようやるなあ」
俺は、そんな言葉を尻目に、自分への怒りが止められなかった。あそこで止めるべきだったんだ。
ガタッとその場の席を立ち、
「すみません。お金なら俺が」
そう言ってお金を放る。ロキ・ファミリアと離れて地上に帰ってくる時の魔石のだ。
「……ちょうどさね。……中では騒ぐんじゃないよ」
そうミアさんが入って来た。俺がしようとすることを察してくれたらしい。
俺は、ありがとうございますと呟いてから、青年の前に近づく。
「君は⁈」
小人……パルゥムというらしい少年ーーフィンくんがこちらに気がついた。
そして、
「あん?なんだ?てめえは?」
「少し、表に出てくれないかな? 流石に友人のことを笑い者にされて黙っているのは趣味じゃないんだ」
「はっ。友人?……もしかしてさっきのガキのことか? いいぜ、やってやるよ」
「決闘《デュエル》成立だ」
ハイ、ベルくんの強化フラグ、ベートさんのフラグが立ちました。感想、ブックマークお願いします。