Fate/overlord ~雨生龍之介は死と出会えたようです~ 作:bodon
*誤字修正
*誤字修正2
『遊びは無い!それは本気になっていただけると!!』
謎の
ギルガメッシュ。古代メソポタミア文明の最古の王にして英雄。
神秘とは古ければ古いほど、その力を増すが、彼は身体的強さを持っていない。いや確かに文献などでは文武に優れた王であったと言われているが、此処がギルガメッシュの認知度…ギルガメッシュ叙事詩などに数えられる彼の偉業が伝わっていないのも、彼が元は武を用いない者であった可能性もあるが、基本的にギルガメッシュはその身で戦おうとはしない。
では何故遠坂時臣は、此処まで彼に全幅の信頼を寄せているのか。それは彼の偉業の中で、この世の全ての財を手に入れたとされているからだ。つまり…
「王の財を以てすれば、この戦争など一夜で片が着くのは間違いないがな…」
彼の本気とは、その集めた財宝による圧倒的飽和攻撃。
それぞれ高い神秘を帯びた宝具は、彼にももはや全貌が把握できない程多くある。故に、彼は世界最古であるなら、その物語……世界が一つだったころ、彼は王であり、彼の偉業は後世、その英雄たちの原点でもある。その英雄達が用いた武具全てのは、彼の財の中に原点があるのだ。ハッキリ言ってあらゆる英雄の弱点がつけるのだから反則もいいところの強さだ。
詰まるところ、ギルガメッシュの強さとは、その圧倒的宝具数、金に飽かした最強装備なのだ。
『そのお力振るわれるのなら、僭越ながら今夜にで「馬鹿め、我が早々本気になる物か」……え?』
熱が抜けていくように、間の抜けた声。
ギルガメッシュはため息交じりに時臣をたゆす。
「全く…お前は何のために我を呼び出したと思っておる」
『それは!王こそがこの聖杯戦争において、最も強く尊い英雄であらせられるからです』
「その通りよ。ならばこんな面白そうなこと、早々に終わらせてはつまらんであろう?」
『つ……つまらないでありますか』
ギルガメッシュの答えに困惑する時臣。
彼は魔術の才能は極めて凡庸である。特に秀でる物は彼の属性である火以外、然程目を引く能力ではない。しかし彼は、必要とされる結果を出すためなら、その数倍の修練と幾重もの備えをもって事に当たり、常に結果を出してきた。弛まぬ努力と、惜しまぬその『本物の貴族』的あり方、『常に余裕を持って優雅たれ』を体現し続けた男だ。だからこそ裏付けされた自信があり、それ故自分の行動には間違いがないと思っている。
で、あればこそだ。
『……恐れながら、彼の英雄王の威光に怯え、あのような粗末な者を寄越した狼藉、遺憾しがたきものかと…』
「ほう…お前はあれが”粗末な者”だと?」
『ッつ!!い、いかに高位のリビングデッドであろうとも、王に対し取り合わせなく襲撃を掛けてき「もう良い、お前の真意などとうに知れているは時臣」……御見通しであらせましたか』
「ふん全く…お前のことだ、どうせ我の宝具でさえ捕えられなかった者が居ることを危惧し、これでアサシンによる諜報も難しくなると考えているのだろう」
『……全く持ってその通りでございます』
ギルガメッシュによって考えを読まれた時臣は、王の審眼とも言うべきか、その洞察力に舌を巻く。
時臣はこの事態、想像以上に拙いことになっていると確信していた。それはこのことが他のマスターにばれれば、確実にアサシンについて言及してくるからだ。
(そうなっては想定していた計画がご破算だ。王が本気になって下さればそれが全て解決するのに…)
「まあ、我としても吝かではないのだ」
『……っと、言いますと?』
一転して意見を変えたギルガメッシュに、時臣は疑問を持つ。
「奴は我の宝具……A+ランク相当の銅鏡にかからなかった。我としてもこれは中々に面白いとも思うが、同時に何故か危険だと、この我が思っているのだ」
『な!A+の宝具を!!』
時臣は使用した宝具のランクの高さに驚き。それ以上にそれの目を欺いた存在がさらに恐ろしく感じ始めた。いくらギルガメッシュが最強でも、それは時臣自身が強くなったわけではない。今回のような搦め手で、時臣を狙って来れば、一気にこの聖杯戦争は危ういものとなるのだから。
「騒ぐでない、それより何故我はこれほど危惧している?」
それは独り言のように聞こえた。
『?……それはどういった意味で』
「…………」
ギルガメッシュは答えない。これは自身のプライドに関わることだからだ。
彼は傲慢だ。王としての姿を体現した存在と言ってもいい。
だからこそ、この感情が気に入らない。
(……この我が怯えている?そんな馬鹿なことあり得るか!一体どこに、この我を超える英傑が居ると言うのだ。だがここで本気になったとすれば…)
それはギルガメッシュが、謎のサーヴァントに怯えていると証明するようなこと、絶対にそれは認めてはならないし、決して彼はそれを他者に悟られはさせないだろう。
「……いやもういい、どちらにしろ今は取れる手段は無い。動きが有るなら今夜あたりだろうが……、それまでは散策でもして無聊を慰めていよう。時臣、委細は任せておく」
『はッ!』
「……それと」
『……はい』
「…………バーサーカーにはその動向、気を付けておけ」
『ん?何故バーサーカーが……』
ここでの狂戦士の介入は、全く時臣としても予想外であった。
考えられる今回のリビングデッドの出処としては、アーチャー、アサシンを除き、セイバー、ランサー、ライダー、召喚され余りにもその行動が早すぎるため、キャスターは除外しても、バーサーカーがあれほどのリビングデッドを宝具として呼べるかと言えば疑問であるからだ。
「これ以上はお前で考えろ時臣、我はもう行く」
『ハッ!お気をつけて……』
金色の粒子となり消えてゆくアーチャーから、繋がっていた念話が切れる感覚がする。
「……………ふう、さてどうするか」
優雅たれ、その家訓を守るため、時臣は常に冷静を持たなければならない。
混乱していた脳は次第に次の一手を導き出していた。
「……まずは綺礼に連絡して、これからのアサシンの動きを決めないとな……」
時臣は座っていた革張りのソファーから立ち上がり、魔術によって作った、遠隔通信式の蓄音機が置いてある、地下室に潜って行った。
・・・・・・・・・・・・・・
蓄音機から発せられる情報に、時臣は隠しきれない動揺を見せる。
「な!………なんだと!!」
『師よ、私もこの事態に対し、どれが最善か答えあぐねております。……私がもっと、魔術の造詣に深ければ、彼奴の正体を見破れたかもしれませんが…』
言峰綺礼の魔術の才は、こと「傷を開く」魔術特性に特化したため、魔術師としての腕は「見習いの修了」レベル、治癒魔術は並の魔術師以上の物なのだが、大抵の魔術に通ずる以外、どれも平凡の域を出ない。
しかしこれは何も、綺礼が才能の無い人物である…と言った安直な話ではないのだ。
魔術を行使するには魔術回路と言われる、要は生命エネルギーである貯水庫から、どれだけ多くのパイプを繋げるかが、魔術師としての力を表しているのだ。
綺礼は父、八極拳の達人でもある言峰璃正直伝の業を使う元代行者だ。そもそも魔術を使うことは無いのだが、魔術回路は瑠正が長年の信仰によって得た秘蹟の恩恵で「秘蹟を再現する資格」を持って生まれたため、魔術の行使自体は出来る。これ故魔術回路は長い年代を重ね、それでようやっと増えていくものなので、綺礼のような一代目の魔術回路の持ち主は、誰も彼も見習いなのだ。
それもあって、どうやっても増やすことは出来ない、また増やすとしても相当危険な……例えれば別の人間の臓器を移植するようなもので、魔術回路とはそういったデリケートな物なのだ。
綺礼にはこれ以上魔術を伸ばすことが出来ないことから、時臣からは「見習いの修了」までのことしか教わっていないのだ。それが今回彼にしてみれば、知識に無い者との遭遇……いやあれは……
『私自身、代行者時代からあのような屍を刈ってきました……だからわかります。あれはもはや通常のリビングデッドなどではないことを……、師よ!あれは何なのか教えてください!もはや私の知識ではあれを特定できません!』
背後に控える言峰瑠正も、あのような
フリーランスの死霊術師の中で、凄腕の魔術使いが居ると聞いたことはあったが、それでもあのような異常個体を作り上げることなど、その死霊術師でも不可能であろう。
瑠正としても、下手に代行者としてそういった邪悪な物に触れてきた故、相手の異常性が分かったことから、このような想定外の事態にどう対処していいのかわからなかった。
「……綺礼よ」
『はい…』
「………私の所も襲撃を受けたのだ」
『!!なぜッ!!情報が!!私たちの同盟がばれたのですか!?』
「………それはわからない」
時臣はこの事態にどう対処すればいいか、家訓である優雅さを捨てるほど焦りに焦っていた。
(一体何が目的だ!!何故アサシンのいる教会にリビングデッドを差し向けた!?糞一体何が起きているんだ!!)
混乱が混乱を呼ぶ。
時臣は僅かな理性でもってそれを押さえつけ、綺礼に事のあらましを説明した。
「実はあれは恐らく━━━」
『━━━━』
宝具の可能性、ギルガメッシュの銅鏡から隠れる隠密性、あれは恐らく一体だけでないということ全て伝え終えると、場はかなり重苦しいものとなっていた。
『なんと………それではザイードの死は無駄であったと!?』
陰に潜むアサシンたちから、僅かに動揺がある。彼らも全て同じ、元は一つの肉体があったのだ。その一つを失ってまでやった行為が無駄であったなどと、アサシンの吟味が無ければ離反していたかもしれない。
彼らが暗殺者としての立場を理解している故、一応今は従ってはいるが、やはり感情は消せない。綺礼は感じ取ったのか、時臣に無駄ではないと何とか言ってもらいたいのだが……。
「……無駄ではない………が、これからはかなり難しくなっただろう。アサシンはそこ居るのか綺礼」
『…はい、居ります』
「そうか……少し話させてくれないか?」
『わかりました』
即座に控えていたアサシンの一体に来るように命じた綺礼は、入れ替わるようにしてアサシンの後ろに着く。
「……今回はかなり想定外の事態が起きている、君たちの行動にも支障が出るかもしれないが、これからも絶対にその姿が見つからないよう、気をつけてくれるか?」
『…戦争に想定外とはつきもの……、そう心配なされるな、マスターの師よ、私としても思う所はあるが、決して主となったものを裏切りはしませぬよ』
「そういってくれるとありがたい、山の翁よ」
取りあえずは無駄な令呪を使わなくて済んだと、時臣はほっと胸を撫で下ろす。
「さて………相手は恐らく偽装死したアサシンの対策が緩んだ、その瞬間の狙ったのだろうが結果は知っての通り。何故そちらにも行ったかは知らないが、重要な物は大丈夫か綺礼?」
『そこは滞りなく、あっても重要度の低いものですので…』
「うむ、それで彼奴の足取りは?」
『はい、ただいまアサシンを3人、尾行に付かせておりますが……ん?』
「?どうした綺礼」
何やらまた不穏な空気が漂うはじめ、時臣の背にも嫌な汗が流れる。
『……………念話が繋がらない?』
「……どう言うことだ!?まさか倒されて」
『いえ、それはありません、放ったアサシンのパスは未だ繋がっております。しかし奇妙なことに念話だけが繋がらずに………』
「…………」
この不自然さ、言峰も時臣も、何やらまずいことが起きていると悟る。
「綺礼!!他の情報収集に当たっているアサシンを戻せ、それとそのアサシンもだ!!」
『………ダメです!念話が繋がらず命令が出せません!!』
「令呪を使うことを許す…」
『ッ!!しかし宜しいのですか!?この序盤で!!』
「構わんさ、それよりも嫌な予感がする!」
令呪とはサーヴァントに対しての絶対命令権。これは高密度の魔力であり、三度までならその力を使い、空間転移すら可能にする代物だ。それを怪しいからと言って、この序盤で使う時臣に、綺礼は驚いていた。時臣は慎重な方だと思っていたが、此処まで思いっきりがあったとは。
(王との会話でもわかったが、この相手は不気味すぎる!!!)
『わかりました!!……アサシンよ、令呪を以て告げる』
綺礼の手に宿る令呪が赤く光る。効果を示す証拠だ。
『…この場に居ない者よ、空間を越え我の元へ集え!!』
光が発せられた瞬間。そこには確かに、分裂させておいたアサシンが居るのだが……
「どうだ綺礼?」
『………………』
「?綺礼、どうした綺礼!!」
返答の無い綺礼に焦り、時臣としては珍しくその声は優雅とはかけ離れたものだった。
『………師よ』
「おお綺礼!どうした一体!?」
『アサシンが足りません』
・・・・・・・・・・・・・・
「うわ!!なんだこの網は!!」
「くそ!!どうなってる!!マスターと連絡が取れんぞ!!」
「っく!!殺せ!!」
「モウシワケゴザイマセン!!!フカクコノミ、ビコウヲユルスナド……カクナルウエハコノミヲモッテ……」
「キャスターさん!!コイツらの仮面ってイカしてないっすか!!いい感じにCOOLだぜあんた!!」
「………………どうしよ」
トラップにかかったアサシンに、アインズは頭を抱えた。
ふう…着々とアインズ様の知略にみなさん躍っていますな(棒)
次回はケイネス先生無双回の予定!!